狐の嫁入り
狐の嫁入り(きつねのよめいり)は、北海道と沖縄県を除く日本全国に伝わる怪異[1]。
[編集] 概要
一般には夜の山中や川原などで、無数の狐火が一列に連なって提灯行列のように見えることをいい、狐が婚礼のために提灯を灯しているといって「狐の嫁入り」と呼ぶ[2]。これらの怪火は遠くからしか見えないという特徴がある。徳島県ではこれを嫁入りではなく狐の葬式とし、死者の出る予兆としている[1]。
怪火が狐の嫁入りと考えられただけでなく、江戸時代の随筆『古今妖談集』には実際に嫁入りに遭ったという話がある。寛保5年(1745年)に、本所竹町の渡し場に現れた男が、自分の仕える主人の家で婚礼があるために渡し船を多数寄せるよう依頼し、渡し場の亭主に祝儀として金子一両を渡した。亭主が喜んで多くの船を準備して待っていると、立派な嫁入り行列がやって来たので、亭主は丁重に一行を送り届けた。しかし翌朝には、祝儀の金はおろか、渡し賃まですべての金が木の葉に変わっていた。人々は葛西金町(現・東京都葛飾区)の半田稲荷から浅草の安左衛門稲荷への婚礼があったと噂したという[1]。
新潟県の麒麟山にも狐が多く住み、夜には提灯を下げた嫁入り行列があったといわれる。これに由来する祭事が同県の狐の嫁入り行列である[3]。
[編集] 天候に関する言い伝え
天気雨のことを「狐の嫁入り」と呼ぶのは、天気雨のときには狐の嫁入りがあるという俗信に由来しており、「狐の祝言」とも呼ばれる。江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎による『狐の嫁入図』ではこの俗信に基き、狐の嫁入り行列と、突然の天気雨に驚いて農作物を取り込む人々の様子が描かれている[4](画像参照)。
狐の嫁入りと天候との関連は地方によって異なることもあり、熊本県では虹が出たとき、愛知県では霰が降ったときに狐の嫁入りがあるという。福島県では旧暦10月10日の夕方にすり鉢を頭にかぶり、腰にすりこぎをさしてマメガキの下に立つと、狐の嫁入りが見えるという[5]。
[編集] 脚注
- ^ a b c 村上健司編著 『日本妖怪大事典』 角川書店〈Kwai books〉、2005年、117頁。ISBN 978-4-04-883926-6。
- ^ 笹間良彦 『図説・日本未確認生物事典』 柏書房、1994年、109頁。ISBN 978-4-7601-1299-9。
- ^ “津川 狐の嫁入り行列実行委員会 狐のメイクをした人々が練り歩く幻想的なイベントを町を挙げて展開”. サントリー (1999年11月). 2008年12月15日閲覧。
- ^ 京極夏彦文 多田克己・久保田一洋編 『北斎妖怪百景』 国書刊行会、2004年、58頁。ISBN 978-4-336-04636-9。
- ^ 水木しげる 『妖鬼化 1 関東・北海道・沖縄編』 Softgarage、2004年、42頁。ISBN 978-4-86133-004-9。