犬コクシジウム症

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犬コクシジウム症(coccidiosis)は、原虫であるコクシジウム(球虫、coccidia)が腸管に寄生することによって発症する、およびの感染症である。

主に幼犬に、下痢、脱水症状、嘔吐、食欲不振などの目立った症状が現れる。

病原体[編集]

犬ではシストイソスポーラ(Cystoisospora spp.)が比較的よくみられるコクシジウムである。品種特異性があり、犬に感染するのはCystoisospora canisCystoisospora ohioensisである。[1]

原因[編集]

幼犬へは、ほとんどの場合、母犬の糞便を介して感染する。あるいは、胞子形成オーシストや、マウスなど待機宿主を摂取することによる。 成犬は寄生虫の接合子嚢オーシストを糞便中に排出していても免疫力がついているため、無症状であることが多い。その一方で、免疫機構が未発達な6か月未満の幼犬に感染しやすく、ストレス(新しい飼い主、運搬、季節変化、栄養不良、その他の感染症など)が引き金となって、寄生虫が増殖し発症すると考えられている。[2]

症状[編集]

一般的にいずれの種も固有宿主では病原性が低く、軽い下痢を引き起こす程度である。 約13日間の潜伏期間を経て、発症する。最も顕著な症状は、持続的な水っぽい、粘液まじりの下痢である。重症な場合には、血便、嘔吐、食欲不振、脱水症状が伴い、衰弱することもある。[3]

治療[編集]

1週間から3週間のサルファ系抗生物質の投与でコクシジウム症は、治癒可能である。薬が原虫を死滅するのではなく、増殖を止め、その間に犬の免疫力がつき撲滅するものである。

予防[編集]

犬が妊娠し、出産を予定している場合には、子犬への感染を防ぐ目的で検便すると良い。感染が確認された場合には、隔離して駆虫する。また糞便が、餌と水に混入しないような清潔な飼育環境を徹底すべきである。

コクシジウムは、ほとんどの消毒剤で死滅しない。糞便の焼却、蒸気清浄、煮沸消毒、10%アンモニアを用いることが最も有効な方法である。

犬猫に寄生するコクシジウムは、人間へ感染することはない。[4]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 獣医学教育モデル・コア・カリキュラム準拠 寄生虫病学改訂版(緑書房)
  2. ^ [1](2012年6月19日閲覧)
  3. ^ [2] (2013年6月19日閲覧)
  4. ^ [3] (2013年6月19日閲覧)