牧冬吉

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まき ふゆきち
牧 冬吉
本名 岡村 信行
生年月日 1930年11月28日
没年月日 1998年6月27日(満67歳没)
出生地 日本の旗 秋田県
民族 日本人
ジャンル 俳優
活動期間 1951年 - 1998年

牧 冬吉(まき ふゆきち、本名:岡村 信行1930年11月28日 - 1998年6月27日)は秋田県出身の俳優

来歴[編集]

1930年(昭和5年)、秋田県大館市公務員の息子として生まれる。

1948年(昭和23年)、秋田県立大館鳳鳴高等学校卒業後、舞台芸術学院に入学する。

1951年(昭和26年)、舞台芸術学院を中退し、「前進座」に引き抜かれ入座。

1955年(昭和30年)、舞台芸術学院の仲間と「舞芸座」を創設し、シェークスピア劇などを演じた。しかし生活は苦しく、アルバイトに明け暮れていた。

1959年(昭和34年)、宣弘社のテレビ番組の現場で照明係の手伝いなどをする姿をプロデューサーの西村俊一が目に留め、同社制作のテレビドラマ『豹の眼』(KRテレビ)で敵役として抜擢された。

1960年(昭和35年)、続いて同社制作の人気テレビドラマ『快傑ハリマオ』(日本テレビ)で、ギャングのボスを演じる。

1962年(昭和37年)、『快傑ハリマオ』での演技が船床定男監督に認められて、宣弘社のテレビドラマ『隠密剣士』(TBS)で悪役「柘植の黒兵衛」として登場、人気を集めた。これを受けて、第三部からは、善玉の準主役「霧の遁兵衛」役に抜擢された。当初高田馬場に住まいがあったが、東映京都撮影所での仕事が多忙を極め、飛行機で往復する毎日となった。

1964年(昭和39年)、テレビドラマ版を映画化した『隠密剣士』(東映京都、船床定男監督)で、本格的に映画デビュー。

1967年(昭和42年)、『仮面の忍者 赤影』(東映関西テレビ放送)に「白影」役で出演し、人気を得る。老け役だが、この当時牧は37歳だった。この作品で、再婚を機に京都に移った。

1968年(昭和43年)以降、『河童の三平 妖怪大作戦』(NET)、『柔道一直線』(TBS)、『好き! すき!! 魔女先生』(朝日放送)、『変身忍者 嵐』(毎日放送)など、東映制作の子供向けドラマに名脇役として次々と出演した。

1973年(昭和48年)、『宮本武蔵』(松竹、加藤泰監督)に出演。以降もテレビ、映画を問わず、時代劇を中心に活躍。

1998年(平成10年)6月27日、間質性肺炎のため死去。67歳没。

人物・エピソード[編集]

高校時代に演劇部で演劇に目覚め、親に「早稲田大学を受験する」と偽って上京、舞台芸術学院の入学試験を受けた。ところが面接で与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」を朗読したところ、あまりの訛りの強さに試験官からひと言「やめとけ」と言われ、不合格となった。そこで牧は標準語を猛勉強し、4カ月間聴講生として通い、その熱意を買われて入学となった。

1952年(昭和27年)に新星映画の映画作品『箱根風雲録』(1952年、山本薩夫監督)に出演したが、当時は着物の着方を知らず、周りから「この役者の値打が分かった」と言われ悔しい思いをし、これをきっかけに一人で着物の着付けができるようになったという。

バラエティ番組テレビ探偵団』(TBS)でゲストに招かれ、感謝状を渡されたことがある。牧は「表彰されたことがなかったので、大変うれしい」とコメントしていた。

仮面の忍者 赤影』では、ピアノ線で吊り下げた「大凧」に赤影(演:坂口祐三郎)や青影(演:金子吉延)らと乗るシーンが多かったが、よくピアノ線が切れたという。その際には必ず子役の金子を抱え、落ちるようにしたという。乗馬での爆発シーンでは、馬が転倒し、牧をかばって死んでしまい、今でも涙が出ると偲んでいる。京都の撮影所ではロケ弁当が出ないので、坂口祐三郎の祖母が牧の弁当をいつも作ってくれたという。夏場の撮影となった『赤影』第三部では、冷やした梅酒をロケに持ち込んでいたが、金子吉延がこれを飲んでしまい、酔っぱらったまま演技をしたことがある(第28話)。

「霧の遁兵衛」や「白影」は水に入ってのアクションが多いが、「学生時代に水泳で鍛えていたことが生かせた」と後に述懐している。『仮面の忍者 赤影』の主演・坂口祐三郎は泳ぎが不得手だったため、赤影が水に入るシーンはすべて牧が吹き替えていた。潜水したのち水面にガソリン着火するシーンでは、火の海となったことがあり、このときは「もう駄目だ」と覚悟したという。

変身忍者嵐』で牧と共演した南城竜也は、牧について「演技にはとても厳しい人」とし、寝起きの顔での演技を避けるため、ロケバスの中で寝ないよう指導されたエピソードを語っている。

夫人は歌手、タレントの牧吉佐登(旧芸名:藤吉佐登)。夫人と二人で京都先斗町に「吉佐登(きちざと)」というクラブを開いていた[1](2005年閉店)。店には「白影」を訪ねての来客が引きも切らなかったという。

『ワタリ』『赤影』『河童の三平』などで共演した金子吉延のことを褒めちぎっており、牧の息子は金子に対して嫉妬していたという[2]

出演作品[編集]

映画[編集]

テレビドラマ[編集]

レギュラー・準レギュラー出演[編集]

ゲスト・単発出演[編集]

<ゲスト出演多数の作品>
  • 銭形平次CX / 東映
    • 第67話「捕縄の誓い」(1967年) - 清三郎
    • 第111話「蛇と人形」(1968年) - 伝蔵
    • 第150話「謎の供養料」(1969年) - 佐吉
    • 第381話「天女を女房にした男」(1973年) - 新助
  • 素浪人 花山大吉NET / 東映)
    • 第17話「美人だらけの町だった」(1969年) - 大工棟梁・留蔵
    • 第25話「笑う機械がこわれていた」(1969年) - 三国屋番頭・与吉
    • 第44話「おいらの父ちゃんカモだった」(1969年) - 口入れ屋・菊五郎
    • 第56話「昔の美人が揃っていた」(1970年) - 佐七
    • 第73話「喰い逃げ野郎はツイていた」(1970年) - 市村屋の伊助
    • 第93話「腕白小僧が知っていた」(1970年) - 松の家のとっつぁん
    • 第104話「男は笑って別れていた」(1970年) - 伍作
  • 大岡越前TBS / C.A.L
    • 第1部 第18話「復讐の十手」(1970年7月13日) - 杁兵ヱ
    • 第2部 第7話「燃える牢獄」(1971年6月28日) - 弥太
    • 第4部
      • 第6話「黒い影」(1974年11月11日) - 千吉
      • 第15話「ともだち」(1975年1月13日) - 唐次
    • 第5部 第22話「父娘の絆」(1978年7月3日) - 米吉
    • 第9部 第20話「見えぬ目が見た真犯人」(1986年3月10日) - 権三
    • 第10部 第20話「親不孝息子の敵討ち」(1988年7月11日) - 与七
    • 第11部 第2話「吉宗暗殺の野望」(1990年4月30日) - 駒吉
    • 第12部
      • 第2話「無慈悲裁いた怒りの白洲」(1991年10月21日) - 質屋
      • 第15話「裏切り女房の偽証言」(1992年1月27日) - 与作
    • 第13部
      • 第4話「掏った財布に葵の御紋」(1992年12月7日) - 六兵衛
      • 第15話「河童にさらわれた若旦那」(1993年2月22日) - 牛倉の五郎蔵
  • 水戸黄門(TBS / C.A.L)
    • 第3部 第15話「忍びの掟 -伊賀上野-」(1972年3月6日) - 松丸
    • 第4部
      • 第8話「忍び狩り -米沢-」(1973年3月12日) - 三郎兵衛
      • 第35話「旅こそ人生 -水戸-」(1973年9月17日) - 逃水の利兵衛
    • 第5部
      • 第5話「苦難を越えて -松本-」(1974年4月29日)
      • 第21話「幽霊船の怪 -下関-」(1974年8月26日) - 辰丸
    • 第6部
      • 第11話「黄門さまの縁むすび -出雲-」(1975年6月9日) - 柘榴伝次
      • 第31話「人情潮来節 -潮来-」(1975年10月27日) - 紋次
    • 第7部
      • 第16話「突っ走れ!!韋駄天野郎 -鶴岡-」(1976年9月6日) - 藤八
      • 第28話「ひょうろく玉の仇討ち -諏訪-」(1976年11月29日) - 数永
    • 第8部 第25話「初春博多囃子 -博多-」(1978年1月2日) - 弥平次
    • 第9部 第12話「二人いた弥七 -新潟-」(1978年10月23日) - 戸倉屋嘉右衛門
    • 第10部 第14話「鬼が盗んだ運上金 -草津-」(1979年11月12日) - 左源太
    • 第12部
      • 第4話「兄と呼ばれた格之進 -諏訪-」(1981年9月21日) - 木鼡の久蔵
      • 第15話「娘意気地の生一本 -柳井-」(1981年12月7日) - 米吉
    • 第13部
      • 第7話「うなぎ屋義侠の恩返し -浜松-」(1982年11月29日) - 聖天留五郎
      • 第21話「身代り八兵衛お殿様 -唐津-」(1983年3月7日) - 勘助
    • 第14部
      • 第4話「わがまま姑の嫁いびり -白石-」(1983年11月21日) - 権造
      • 第31話「天下の怪盗葵の光右衛門 -大坂-」(1984年5月28日) - 唐兵衛
    • 第15部
      • 第11話「老公暗殺! 火炎地獄 -福岡-」(1985年4月8日) - 仁兵衛
      • 第21話「意地で守った名人芸 -鳥取-」(1985年6月17日) - 浅吉
      • 第33話「わしは天下の占い師 -小諸-」(1985年9月9日) - 御殿医
    • 第16部 第13話「想い叶えた愛の組紐 -膳所-」(1986年7月21日) - 鍾馗の権兵衛
    • 第17部 第5話「男十手の木曽節仁義 -妻籠-」(1987年9月28日) - 空っ風の権次
    • 第19部 第15話「陰謀暴く天狗面 -新発田-」(1990年1月8日) - 奥医師
    • 第20部
      • 第4話「偽黄門は正義の味方 -島田-」(1990年11月19日)
      • 第25話「紫頭巾が悪を斬る -中津-」(1991年4月29日) - ツムジ風の源八
      • 第37話「悲願を秘めた水芸師 -長岡-」(1991年7月22日) - 鍵屋
    • 第21部
      • 第1話「悪鬼が巣喰う岡崎城 -水戸・岡崎-」(1992年4月6日) - 伍平
      • 第11話「姫君替玉大作戦 -阿蘇-」(1992年6月15日) - 権十郎
      • 第21話「身ぐるみ剥がれた黄門様 -伊丹-」(1992年8月24日) - 黒須軍太夫
    • 第22部
      • 第6話「嘘で悟った女房の真心 -浜松-」(1993年6月21日) - 定平
      • 第15話「牢屋に入った黄門様 -広島-」(1993年8月23日) - 多聞天の権蔵
    • 第23部
      • 第2話「育ての父は鷹匠 -大宮-」(1994年8月8日) - 芳造
      • 第13話「姫様狙う悪の罠 -福井-」(1994年10月31日) - 茶店の主人
      • 第25話「怨念!化け猫騒動 -佐賀-」(1995年1月30日) - 甚六
      • 第32話「酒にのまれて人殺し -兵庫-」(1995年3月20日) - 六兵衛
      • 第39話「白いお髭のお婿殿 -府中-」(1995年5月8日) - 三蔵
    • 第24部
      • 第18話「銘酒の里の悪退治 -柳井-」(1995年1月22日) - 市兵衛
      • 第33話「涙でついた父の嘘 -仙台-」(1996年5月13日) - 茶店の主人
  • 必殺シリーズABC / 松竹
    • 必殺仕置人 第15話「夜がキバむく一つ宿」(1973年)- 百姓 多吉
    • 暗闇仕留人 第8話「儲けて候」(1974年) - 仁助
    • 新・必殺からくり人 第1話「東海道五十三次殺し旅 日本橋」(1977年) - 備前屋
    • 江戸プロフェッショナル 必殺商売人 第2話「誘拐されて女よろこぶ」(1978年) - 弥造
    • 必殺仕事人
      • 第24話「冥土へ道連れを送れるか?」(1979年) - 利兵ヱ
      • 第60話「狙い技仁義無用斬り」(1980年) - 中津屋権三
      • 第79話「隠し技潜入喉輪攻め」(1980年) - 源次
    • 新・必殺仕事人
      • 第15話「主水公休出勤する」(1981年) - 勝蔵
      • 第28話「主水弁解する」(1981年) - 上田
    • 新・必殺仕舞人 第1話「草津湯煙 血の煙」(1982年)- 仁兵衛
    • 必殺仕事人III
      • 第19話「にせ物に踊らされたのはせんとりつ」(1983年) - 陶雅堂
      • 第28話「相撲取りに惚れられたのは加代」(1983年) - 相模屋徳右衛門
    • 必殺渡し人 第13話「秋雨の中で渡します」(1983年) - 大黒屋辰蔵
    • 必殺仕事人IV 第13話「お加代 りつの殺しを頼まれる」(1984年) - 但馬屋利兵衛
    • 必殺仕切人 第5話「もしも鳥人間大会で優勝したら」(1984年) - 利兵衛
    • 必殺仕事人V 第10話「主水 ヘソクリを盗まれる」(1985年) - 大和屋徳兵衛
    • 必殺橋掛人 第2話「佃島のおとめ魚を探ります」(1985年)
    • 必殺仕事人V・激闘編
      • 第8話「初夢千両殺し」(1986年) - 錦屋
      • 第16話「主水、クモ男を捕り逃がす」(1986年) - 松ヱ門
      • 第26話「主水、殺しに遅刻する」(1986年) - 幸二郎
    • 必殺まっしぐら! 第1話「秀が帰ってきた!」(1986年) - 鉄輪の権造
    • 必殺仕事人V・旋風編 第8話「主水、コールガールの仇をうつ」(1987年) - 騎西屋宇兵衛
    • 必殺仕事人V・風雲竜虎編 第14話「お化け縁切り哀話」(1987年) - 池田屋
    • 必殺剣劇人 第3話「むふふ、バカめ!」(1987年) - 鬼勘
  • 桃太郎侍NTV / 東映)
    • 第9話「伊之助慕情」(1976年) - 久兵ヱ
    • 第62話「孤児を食った鬼」(1977年) - 庄田九郎兵ヱ
    • 第83話「命を賭けた恩返し」(1978年) - 松田
    • 第123話「別れに泣いた信州路」(1979年)
    • 第147話「万才! 桃太郎先生」(1979年)
    • 第173話「恋女房は人の妻」(1980年)
    • 第183話「結びの神は桃太郎」(1980年)
    • 第193話「お化け長屋の牛騒動」(1980年)
    • 第232話「嫁にするなら錦絵の女」(1981年)
  • 暴れん坊将軍シリーズ(ANB / 東映)
    • 吉宗評判記 暴れん坊将軍
      • 第9話「義賊江戸を走る」(1978年) - 同心・堀田文之進
      • 第46話「天下御免のお年玉」(1979年) - 佐平次
      • 第79話「天下御免! おふくろの味」(1979年) - 竹山軍太夫
      • 第127話「狼の里に罠を張れ!」(1980年) - 与平
      • 第148話「日本一の小泥棒」(1981年) - 甚右衛門
      • 第173話「瀬戸のさざ波乙女波」(1981年) - 杢兵衛
      • 第199話「最後に微笑った悪い奴」(1981年) - 八代屋徳兵衛
    • 暴れん坊将軍II
      • 第10話「泣くな吉宗 大江戸無情」(1983年) - 牢礼伴作
      • 第32話「潜入! 花のお江戸の三人娘」(1983年) - 大隅屋四郎兵衛
      • 第50話「女だてらの荒療治!」(1984年) - 安田順庵
      • 第76話「才蔵覚悟! 死者からの挑戦」(1984年) - 藤間陣馬
      • 第104話「一大事! 花嫁候補勢揃い!」(1985年) - 望月三左衛門
      • 第132話「弁天様の甘い誘惑!」(1985年) - 珍斉
      • 第190話「食通くらべ日本一!」(1987年) - 権六
    • 暴れん坊将軍III
      • 第8話「晴れて夫婦の目安箱」(1988年) - 中屋清助
      • 第71話「大暴れ! 但馬のヤッサ神輿」(1989年) - 惣右衛門
    • 暴れん坊将軍IV
      • 第13話「血ぬられた折鶴」(1991年) - 喜助
      • 第31話「お役者新さん花の回り舞台!」(1991年) - 立花右近
      • 第63話「情けに泣いた復讐鬼!」(1992年)
      • 第66話「めおと三味線上州しぐれ!」(1992年) - 田島屋彦蔵
    • 暴れん坊将軍VI
      • 第23話「わが子を裁く鬼の父」(1995年) - 杢兵衛
    • 暴れん坊将軍VIII
      • 第2話「狙われた新妻 殺意を呼ぶ過去」(1997年)
<その他出演作品>

オリジナルビデオ[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 石橋春海 2013, p. 78, ヒーローを探して 牧冬吉 再録インタビュー(ミリオン出版「ズームイン」1985年より再録).
  2. ^ 石橋春海 2013, p. 110, ヒーローを探して 金子吉延インタビュー.

参考文献[編集]

  • 『テレビマガジンヒーロー大全集』(講談社)
  • 『テレビジョンドラマ別冊 仮面の忍者赤影』(放送映画出版)
  • 『赤影大辞典』(たちばな出版)
  • 『月光仮面を創った男たち』(平凡社新書)
  • 石橋春海 『’60年代 蘇る昭和特撮ヒーロー』 コスミック出版〈COSMIC MOOK〉、2013年12月5日ISBN 978-4-7747-5853-4