メタンハイドレート

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燃えているメタンハイドレート
燃えているメタンハイドレート

メタンハイドレート (Methane hydrate) とは、メタンを中心にして周囲を水分子が囲んだ形になっている固体結晶である。 低温かつ高圧の条件下で、水分子は立体の網状構造を作り、内部の隙間にメタン分子が入り込み氷状の結晶になっている。

目次

[編集] 概要

分子式はCH4・5.75H2Oと表され、密度は0.91g/cm3。この構造を維持するためには、環境が低温かつ高圧であることが求められる。地球上では、シベリアなどの永久凍土の地下数100m - 1000mの堆積物中や海底でこの条件が満たされ、メタンハイドレートが存在できる。実際にはほとんどが海底に存在し、地上の永久凍土などにはそれほど多くない。またメタンハイドレートを含有できる深海堆積物(地層)は海底直下では低温だが、地中深くなるにつれて地温が高くなるため、海底付近でしかメタンハイドレートは存在できない。また、圧力と温度の関係から同じ地温を成す大陸斜面であれば、深くなるほどメタンハイドレートの含有層は厚くなる。これらの場所では、大量の有機物を含んだ堆積物が低温・高圧の状態におかれ結晶化している。

地表の条件では、分解して吸熱反応を起こす。この時精製される水はの薄膜を形成するため、メタンハイドレートは常圧下-20℃程度でも長く倉庫に保存できる自己保存性を持つ。

見た目はに似ているが、火をつけると燃えるために「燃える氷」と言われることもある。1立方メートルのメタンハイドレートを1気圧の状態で解凍すると164立方メートルのメタンガスに変わる。このメタンはメタンハイドレートの体積の20%に過ぎず、他の80%はである。石油石炭に比べ燃焼時の二酸化炭素排出量がおよそ半分であるため、地球温暖化対策としても有効な新エネルギーであるとされる。

[編集] 海底のメタンハイドレート

1996年のアメリカ地質調査所の調査によるメタンハイドレートの分布図
1996年アメリカ地質調査所の調査によるメタンハイドレートの分布図

(状況によって異なるが、おおむね)大陸棚が海底へとつながる、海底斜面内、水深1,000から2,000メートル付近での、地下数百メートルに集中する、メタンガス層の上部境目に多量に存在するとされている。通常は、高圧下でありながら、凍った水分子の、篭状の結晶構造に封じ込められている。

前述のとおり、石油資源に換わるエネルギー源として期待される一方、海中に湧き出したメタンが、大気中に出ることによって、地球温暖化の一因になっていると考えられている。大気中のメタンは、二酸化炭素の20倍もの温室効果があるとされている。メタンは大気中で12年程度で分解される。 しかし、現在燃料として使用されている、石油や天然ガスよりはるかにCO2の排出量は少ない。

[編集] 日本近海のメタンハイドレート

日本近海は世界有数のメタンハイドレート埋蔵量を誇ると言われ、このため日本のエネルギー問題を解決する物質として考えられているが、現在のところ政府が試掘を続けている南海トラフでは採掘にかかるコストが販売による利益を上回っている。そのため、商用としては成立せず、研究用以外の目的では採掘されていない。

日本近海で初期に日本政府(メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム)によるメタンハイドレート採取の研究が行われたのは南海トラフであった。この海域では、1999年から2000年にかけて試掘が行われ、詳細な分布状況が判明しているが、総額500億円を費やしたにもかかわらず、商業化には至っていない。これは、南海トラフのメタンハイドレートは、泥の中に埋まっており、探索・採取が困難を極めているからであるとされる。

その後、日本海沿岸でも海底面に露出したメタンハイドレートが発見されている。日本海沿岸で採取を始めれば、大幅なコストダウンが可能である(しかし詳細な調査が行われていないため、採算性などについては未知数な部分もある)。日本海沿岸のメタンハイドレート資源については、現在、東京大学海洋研究開発機構産業技術総合研究所などによる調査が行われているところであるが[1]、メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアムによる調査は行われていない。これは、政府が面子と南海トラフに今まで費やした費用などに固執し、日本海側での採取・調査が全くの及び腰の為である。

日本のメタンハイドレートの資源量は、1996年の時点で、天然ガス換算で7.35兆m³(日本で消費される天然ガスの約96年分)と推計されている[2]今後、埋蔵量が残り少なくなった石油や天然ガスの採掘コストが上がり、メタンハイドレートが主要なエネルギー源となった場合、日本は世界最大のエネルギー資源大国になるとする説もある[要出典]。日本政府は2016年までにこれらのメタンハイドレートの商業化に必要な技術を完成させる計画である[3]。また、近年の資源価格の高騰を受け、経済産業省は、2009年度から2011年度まで南海トラフを中心に実証実験を実施し、2012年度から海洋産出試験を行って、2018年度以降の商業化を目指す方針を明らかにしている[4][5][6]。 ただし、採油技術の向上により石油の可採量が増大したり、他のエネルギー源が主流になる場合には、メタンハイドレートが少なくとも当面の間は商業利用されない可能性もある。

[編集] 採取方法とその課題

南海沖海底のメタンハイドレートは潜水士が作業できない深海に存在し、また地層中や海底で氷のように存在するため、石油やガスのように穴を掘って簡単に汲み上げることも、石炭のように掘ることもできない。ゆえに低コストでかつ大量に採取することは技術的に課題が多い。 日本海側のメタンハイドレートでは、メタンプルーム直下の海底付近にピストンを打つ方法で、効率よくメタンハイドレートを採取出来ることが、独立総合研究所などの試掘で実証されている。 採取方法によっては、大量のメタンハイドレートが一気に気化し大気中に拡散、地球温暖化に拍車を掛ける恐れもあり、慎重に検討すべきと指摘する研究者もいる。

現在までに提案されている主なメタン回収法は

  • 加熱法(温水圧入法・坑井加熱法)
  • 減圧法
  • 分解促進剤注入法(メタノールなど)
  • ガス圧入法(二酸化炭素窒素など)
  • ピストン打法(独立総合研究所が開発)

の4種である。いずれもメタンハイドレートを現位置(メタンハイドレート貯留層内)で分解させ、メタンガスを回収する手法である。これらのうちでは減圧法が最も実現性が高いと考えられているが、2008年3月石油天然ガス・金属鉱物資源機構は、カナダ北西部のボーフォート海沿岸陸上地域で永久凍土の地下1100mに存在するメタンハイドレート層から減圧法によってメタンガスを産出することに成功したと発表し、これを受けて同機構は4月、メタンハイドレート事業を2018年頃に商業化する方向を示した。

[編集] 発見の歴史

  • シベリアなどの寒地において、天然ガスパイプライン内にできるガスハイドレート(周辺構造は、メタンハイドレートとほぼ同じ)という現象や物質自体は、1930年代に確認されていた。
  • 1960年代には、永久凍土内で、天然ハイドレートの堆積層が発見された。
  • 1967年に、天然ガスハイドレート岩石資料が世界で初めてシベリアのヤクーチャの永久凍土地帯で採取された。
  • 1970年代に至って、海底において大量に存在する可能性が予測され、実際に計測が行われた。
  • 1974年、カナダのマッケンジー・デルタで、天然のメタンハイドレートが浅い砂質層に埋蔵されている事が発見された。
  • 1996年アメリカ合衆国内の海底において発見され、具体的研究が進められる。
  • 2000年 南海トラフでメタンハイドレートの存在を確認。
  • 2002年、日本・カナダ・アメリカ・ドイツインドの国際共同研究として、カナダのマッケンジー・デルタ Mallik 5L-38号井において、世界で初めて地下のメタンハイドレート層から地上へのメタンガス回収に成功した。
  • 2006年 東京大学海洋研究開発機構の研究グループによると新潟県上越市直江津港沖合30km付近に海底上(水深約900メートル)に露出しているメタンハイドレートを確認。海底面上にあるのは東アジア初。
  • 2008年 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構が、カナダの天然資源省との共同研究で、永久凍土の地下1100mのメタンハイドレート層から減圧法によってメタンガスを連続的に産出することに成功。これを受けて同機構は、2018年頃にメタンハイドレート事業を商業化すると発表する。

[編集] 生成原因

メタンが海底下で大量に発生する要因は、非生物(マントル)起源と、生物起源に大別される。

中でも、現在までに報告されているメタンハイドレートを構成するメタンの炭素同位体比は比較的小さい値(13Cが少ない)を示しており、これらのメタンは海底熱水系等において確認されている非生物起源のものではなく、堆積物中で有機物の分解によって生じる生物起源のものを主としていると考えられている。

生物生成メタン

メタンハイドレートは大陸周辺の海底に分布しており、大陸から遠く離れた海洋の底には少ない。それら分布領域における表層堆積物の特徴は、長い運搬過程を経た粒度の小さい砕屑物鉱物粒子、火山灰などの他に有機物有孔虫などの生物遺骸が含まれる海底泥質堆積物である。その海底面(表層)では生物活動による土壌が作られ、土壌の上に新たな堆積物が積み重なり海水の比率が減少するとともに堆積物の続成作用が働く環境となる。堆積作用により表層から埋没後しばらくはArchaeoglobus(限界生育温度95°C)などの硫酸還元菌の活動が続き、この活動している地層を硫酸還元帯という。活動時間が長い深部になるほど炭素同位体比は大きい値を示す。硫酸塩の枯渇などにより硫酸還元菌の活動が終わると、メタン生成菌の活動が活発になり、メタン炭酸水素イオンが生成される。ここでは地層深部の圧密作用を受けメタンや炭酸水素イオンを含む水が上層へ移動し、一定の条件下で水分子のかご構造にメタンが入り込みメタンハイドレートとして蓄積される。このメタン醗酵が発生する層では13Cが炭酸水素イオンに濃縮されるため、メタンの炭素同位体比は軽く(13Cが少なく)なる。

熱水噴出孔などでこれらのメタン菌の活動を垣間見ることができる。2008年にMethanopyrusの新たな株の発見により、メタン菌の増殖温度が12°C更新され、最高122°C(400気圧)を記録した。この古細菌は水素と二酸化炭素からメタンを合成する。この他Methanocalculusなどのメタン菌が油田から得られている。

熱生成メタン

更に地中深くなると、地温が上昇するとともに微生物の活動は減少し、有機物は熱によるカルボキシル基が除去される反応によってメタンが生成される。ここでは生成された炭酸水素イオンから炭酸塩物を折出する。これらの炭素同位体比は、硫酸還元帯にみられる有機体と比べ大差がない(近似値を示す)特徴がある。ただし、上記Methanopyrusの培養の際、高温高圧下では炭素同位対比の重いメタンを合成することが報告されており、今後研究の進展しだいでは一部の熱生成メタンの起源について再考される可能性もある。

[編集] 地球温暖化

メタンハイドレートは、海水温が2-3度上昇するだけで溶け出しメタンを大気中に放出するといわれている。

温暖化がすすむと海水温が上がり、メタンハイドレートが溶け出す。するとさらに温暖化がすすみ海水温を上げ、さらに多くのメタンハイドレートが溶け出す悪循環をおこす。2億5千万年前のP-T境界では、この現象が実際におこり、大量絶滅をより深刻なものにしたとされている。

[編集] 脚注

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  1. ^ 新潟県上越市沖の海底にメタンハイドレートの気泡を発見 - 東京大学・海洋研究開発機構・東京家政学院大学独立総合研究所・産業技術総合研究所、2007年3月2日発表
  2. ^ どこにどれだけあるのか? - メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム
  3. ^ 基本方針と組織 - メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム
  4. ^燃える氷をすくい取れ 「メタンハイドレート」試験採掘へ”, 産経新聞, 2008年8月19日. 2008年8月19日 閲覧。
  5. ^次世代燃料メタンハイドレート、海洋産出2012年度試験”, 日本経済新聞, 2008年8月19日. 2008年8月28日 閲覧。
  6. ^メタンハイドレート “燃える氷”採掘試験 来年度、日本近海で”, フジサンケイ ビジネスアイ, 2008年8月19日. 2008年8月28日 閲覧。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク