演技性パーソナリティ障害

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演技性パーソナリティ障害
分類及び外部参照情報
ICD-10 F60.4
ICD-9 301.50
MedlinePlus 001531
MeSH D006677
プロジェクト:病気Portal:医学と医療
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演技性パーソナリティ障害(えんぎせいパーソナリティしょうがい)は、日常生活の中において役者演技のような行動をし、その結果自分が注目の的とならなければ大きなストレスを受けるため、自己破壊的な行動や、あるいは自己破壊的なまでに挑発的な性行動を取ったりする精神疾患である。

概要[編集]

もともとヒトは、ウィリアム・シェイクスピアが「物みな舞台、人みな役者」と表現したように、職業人として、家庭人として、友人として、あるいは行きずりの他人としてのペルソナを場合によってかぶり分けるものである。だが本症においては、こうしたペルソナの使い分けができず、ある一つのペルソナにこだわることによって社会生活に支障を来たす。 また、自分を美化させるために人を利用し、自分を受け入れない者には敵意を払うが、他人には興味がなく、他人を受け入れることができずに他人と継続的で豊かな関係を保てない。自己愛性パーソナリティ障害とも似ているが、自己愛性パーソナリティ障害の場合は自分は偉いから他人を利用して当然という考えであり、演技性パーソナリティ障害の場合は他者からの尊敬や注目を集めるために人を利用するという点で自己愛性パーソナリティ障害とは異なる。

他人への思いやりがなく、目的のためなら他人の優しささえも利用したり、悪化すると周囲の気を引くために自殺未遂など反社会的行動を平気でするため、入院が必要な場合もある。 原因は日本では虐待や両親からの愛情を受けずに育った、もしくは今でも自分の存在を周囲に認められていない人になりやすいと考えられているが、アメリカでは正反対に過保護が一番の原因とされている。

外向性[編集]

外向性が強いことが特徴である。同時に、内面が希薄であり、アイデンティティの確立が弱い。そのため、被暗示性が強く、他人からの影響を受けやすい。他者からの注目が自己の基準となっていて、そのために外見など表面的な手段を使う。

虚言[編集]

演技性パーソナリティ障害と関連する精神疾患にプソイドロギア・ファンタスティカ、いわゆる病的虚言症がある。願望にもとづき、自分を実際以上に見せるために、あらゆる妄想虚言を吐く、一群の病者である。願望による妄想を事実であるかのように語る。外見を良くするために化粧をするが、それと同じ感覚で外見を良くするために虚言を吐く。有名人や権力者と知り合いであるかのように、会話中にはネーム・ドロッピングを行う。高い知性を伴えば、スタンドプレイの好きな、権力志向の人物という評価内に納まることもあるが、多くは周囲との利害を調整できず、詐欺などの犯罪を犯すこともある。

本症を罹患している者の依存者による妄想虚言の解き明かしを行った場合、症状が悪化(境界性パーソナリティ障害の急性症状に近似)する場合がある。

本症診断を、虚言性パーソナリティ障害と表現する医師もあるが、現状ICD10のカテゴリF60及び、DSM-IV-TRでは定められていない。

診断基準[編集]

DSM-IV-TRによると、以下の基準に5つ以上当てはまる場合、演技性パーソナリティ障害が疑われる。『DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引』(著者:American Psychiatric Association、翻訳:高橋三郎、大野裕、染矢俊幸、出版社:医学書院、ISBN 4260118862) より引用。

過度に情緒的で、度を過ごして人の注意を引こうとする行動の広範な様式で、成人期早期に始まり、さまざまな状況で明らかになる。

  1. 自分が注目の的になっていない状況では楽しくない。
  2. 他人との交流は、しばしば不適切なほどに性的に誘惑的または挑発的な行動によって特徴づけられる。
  3. 浅薄ですばやく変化する感情表出を示す。
  4. 自分への関心を引くために絶えず身体的外見を用いる。
  5. 過度に印象的だが内容の詳細がない話し方をする。
  6. 自己演技化、芝居がかった態度、誇張した情緒表現。
  7. 被暗示的、つまり他人または環境の影響を受けやすい。
  8. 対人関係を実際以上に親密なものとみなす。

詳細[編集]

発症の男女比率[編集]

9割が女性である。対称的に「反社会性パーソナリティ障害」においては9割が男性である。それぞれの文化圏で両障害の生涯罹患率が同程度であり、また「他人から美化され注目されることを望むが、自分は他人に対して関心を払わず、他人を尊敬することもしない」、「他人の心身の痛みを理解できない」などの病像が共通するため、同じ疾患が性差として現れたものとの解釈もある。それら原因となる神経伝達物質遺伝子の探索が行われている。

境界性パーソナリティ障害[編集]

生育歴及び家庭環境(過干渉虐待)により、一概に本症単独罹患ばかりではなく、境界性パーソナリティ障害を併発している場合もありうる(その場合、本症単独罹患より、本症の病像は不明瞭となる)。

境界性パーソナリティ障害DSM-IV-TRの診断基準の中で、3項目以上、特に

  1. 見捨てられ不安
  2. 理想化とこき下ろしに特徴づけられる不安定な対人関係
  3. 怒りの制御の困難

が周囲から客観的に判断できる場合、境界性パーソナリティ障害)の併発を疑う(パーソナリティ障害のクラスターBの併発)。

誤診[編集]

注意点として、周囲が間違った診断をし、本人に告知した場合(例:境界性パーソナリティ障害解離性同一性障害ないし解離性障害)、本症の特性で近似症例となる場合がある。それらの疾患のレッテルを貼られていると本人が感じ取ったとき、その患者としてのペルソナをかぶってしまうからである。

関連項目[編集]