湖水地方

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
6月の湖水地方
湖水地方の位置

湖水地方(こすいちほう、Lake District)は、イングランド(England)北西部ウェストモーランドカンバーランド郡ランカシャー地方にまたがる地域の名称である。

概要[編集]

氷河時代の痕跡が色濃く残り、渓谷沿いに大小無数の湖(英:lake)が点在する風光明美な地域でイングランド有数のリゾート地・保養地としても知られる。一般にはThe lakes、やlakelandなどとも呼ばれている。

湖水地方のほとんどの地域に相当する約2300k㎡については、1951年にレイクディストリクト・ナショナルパーク(Lake District National Park)と呼ばれるナショナルパーク(National Park、日本国立公園に相当)に指定された。イングランドとウェールズにある13のナショナルパークにおいては最も広い面積を持ち、イギリス全体で見てもスコットランドにあるケアンゴーム・ナショナルパーク( Cairngorms National Park)に次いで2番目の広さを誇る。

地理[編集]

スコーフル・パイクとU字谷

湖水地方は今から約15000年前の最終氷期の終了とともに形成されたと考えられている。氷河が衰退するとそのあとには氷河が土砂を削り取ったU字谷圏谷が残る。これらはその多くが水を貯めこみ湖となった。湖水地方近辺は緯度が高く、平均気温が低いために遷移が進みづらく湖とならなかった部分は岩場やムーアが形成されてシダなどが繁茂した。森林限界以下にはオークが茂り、19世紀にはマツのプランテーションが開かれた。標高800mから900mあまりの山がいくつもあり、イングランド最高峰のスコーフル・パイク(標高978m)を擁し、イングランドでもっとも深い湖もある。

また、地形は以下のようにいくつかの区分に分けられている。

中央高原 (central fells)[編集]

北西高原 (north western fells)[編集]

ダーウェントウォーター(Derwent water)を南側から見た景色)

北西高原は湖水地方の北西部、ボロウデール(Borrowdale、渓谷)やBassenthwaite Lakeから、バターミア(Buttermere、湖)までの間の地域を指す。

The North Western Fells lie between Borrowdale and Bassenthwaite Lake to the east and Buttermere and Lorton Vale to the west. Their southernmost point is at Honister Pass. This area includes the Derwent Fells above the Newlands Valley and hills to the north amongst which are Dale Head, Robinson. To the north stand Grasmoor - highest in the range at 852m (2795ft), Grisedale Pike and the hills around the valley of Coledale, and in the far north-west is Thornthwaite Forest and Lord's Seat. The fells in this area are rounded Skiddaw Slate, with few tarns and relatively few rock faces.

西部 (western fells)[編集]

東部高原 (eastern fells)[編集]

極東高原 (far eastern fells)[編集]

南東高原 (south eastern fells)[編集]

南西高原 (south western fells)[編集]

中央部[編集]

気候[編集]

イギリス気象庁の観測によると、湖水地方の平均降水量は年間2000mmということであるが、地域によって大きな差がありボローデール(ボロー渓谷)に位置するセスウェイト集落が最も多く年間3300mm程度、場所によっては5000mmを記録するのに対し、東側のペンリス(厳密には湖水地方から外れる)では1000mmに満たないという。3月から6月にかけてが降水量が少なく、10月から1月にかけて多い。

月別平均気温は1月の 3℃(37°F) が最低で、7月の 15℃(59°F) が最高である。湖水地方はロシアのモスクワとほぼ同緯度だが、北大西洋海流の影響でモスクワよりも温暖である。このため山間部を除けば、雪が積もることもほとんどない。ただし、年間を通じてが発生し日中に平均2.5時間、沿岸部では平均4時間程度は霧に包まれる。

地質[編集]

湖水地方の地質はとても複雑であるがよく研究されている。北西から南東へ時代が新しくなる地層で3区分される。最古の地層は約5億年前のオルドビス紀前期の泥岩で、Skiddawスレートと称されてきた。中部はオルドビス紀後期の泥岩と火山岩からなり、南東部はシルル紀まで及ぶ泥岩と砂岩で、縁辺では石炭紀の石灰岩も含み特徴的な地形をつくる。

動植物[編集]

ヴェンデイスVendace (Coregonus vandesius)は、イングランドの湖水地方のみに存在する希少種。

湖水地方には多くの動植物が生息している。キタリス(現地ではレッド・スクレイルと呼ぶ。赤いリスの意)は最も多くみられる動物の一つである。植物は貧栄養地を好む食虫植物の仲間が多い。魚ではサケ科の3種、ヴェンデイスCoregonus vandesius)、Schellyホッキョクイワナが貴重である。特にヴェンデイスはバセンスウェイト湖、ダーウェントウォーターの2か所でしか確認されていない。これらの希少種の保護を目的に14の湖で生き餌ルアーによる釣りを禁止する条例が2002年6月より施行された。外来種の問題は特に魚において顕著である。スズキ目ラッフ (: ruffe、学名: Gymnocephalus cernua)は、ほかの魚の卵を食べてしまうという点で脅威となっており、特に産卵から孵化まで120日もかかるヴェンデイスでは深刻な問題となっている。

もっともイギリス固有の動植物は種レベルで見た場合の「固有種」では0と言われており、一般的な種類は他の地域やヨーロッパの大陸部(アルプス山脈以北)でも見られる。

文化[編集]

産業[編集]

新石器時代の湖水地方は石斧の産地だったと考えられている。

牧畜、特にヒツジの牧畜はローマ時代より続くこの地域の主要産業である。現在ではヒツジは肉や羊毛で地域経済を支えるだけでなく、観光客が求める風景の一部にもなっている。各地で見られる石垣も元はと言えばヒツジが逃げ出さないように建てられたものだ。2001年に大流行した口蹄疫は牧場主に大きな打撃を与えた。これは湖水地方で用いられていたフェンスの貼り方に問題があり、山頂側はフェンスを張らず通電させなかったことにある。これが山を越えて行き来する一部のヒツジ同士で接触を招き感染が拡大したとされている。以後、山頂部にもフェンスを張り通電させるようになっている。

鉱業はを産出する。また重晶石(主成分:硫酸バリウム)、グラファイト粘板岩(スレート)を産する。湖水地方の伝統的な家屋ではスレートを薄くしたもの積み重ねて外壁を構成している。

19世紀になると織物の原料につかう糸巻き(ボビン)の生産が盛んであったが、20世紀にはいると交通機関の発達により主要な産業は観光業に移り、それが今日まで続いている。

アクセス[編集]

自動車[編集]

鉄道・フェリー[編集]

ロンドンからはスコットランドまで向かう幹線路線、ウェスト・コースト本線(West Coast Main Line)を利用する。途中のオクセンホルム・レイク・ディストリクト鉄道駅(Oxenholme Lake District railway station)から湖水地方南部にあるウィンダミア(Windermere)まで伸びる支線が分岐している。

また、ウェストコースト本線でさらに北(スコットランド方向)に進むと、湖水地方よりやや北にあるカーライル鉄道駅(Carlisle Railway Station)を経由する。この駅から分岐するカンブリアン・コースト線(Cumbrian Coast Line)は湖水地方を西海岸沿いを走る。ただし、湖の点在する高原地帯は経由せず、そこへ行きたい場合は駅から別の交通機関を利用する必要がある。

西海岸のレーブングラス鉄道駅(Ravenglass Railway Station)からはレーブングラス・アンド・エスクデール鉄道(Ravenglass and Eskdale Railway)という軌間381mm(15インチ)の保存鉄道が走っている。また、別の保存鉄道Lakeside and Haverthwaite Railwayがウィンダミアから出ており、これに乗るとフェリーターミナルまで行くことが出来る。

ウィンダミアには船自身は動力を持たずにケーブルを動力源とする「ケーブルフェリー」(ケーブルカーのフェリー版のようなもの)が存在し、頻繁に運転されている。このほかにもいくつかの湖ではフェリーが運転されている。

主要都市[編集]

湖水地方を舞台とした作品[編集]

外部リンク[編集]