渋谷員子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

渋谷 員子(しぶや かずこ、1965年9月4日 - )は、日本のCGデザイナー。ドットクリエイター。スクウェア(現スクウェア・エニックス)所属。

概要[編集]

石井浩一デザインの絵を『チビキャラ』と呼ばれるドット絵に起こし、2D時代の印象的なFFグラフィックを構築していた人物。

学生時代は『宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999』に憧れ美術部に所属し、一時期はアニメーターを目指して現場でアルバイトをしていたが、国際アニメーション研究所在学中にスクウェアの求人募集を見て同社に入社した[1][2]。 入社当時はドット絵という言葉すらわからなかったが、田中弘道が作成したパソコン用ゲームソフト『アルファ』で初めてデザイナーとして開発に参加し、その後『キングスナイト』『とびだせ大作戦』『水晶の龍』を経てファイナルファンタジーシリーズを手掛けるようになった[1]

FFIII』では、キャラクターは担当せず、モンスターや戦闘背景、ダンジョンマップなどのドットを手掛けたが、特に、ラスボスの「くらやみのくも」のアレンジで知られている。「くらやみのくも」は、天野喜孝のイラストでは正面向きの全身立ち姿、マントを羽織った半裸女性のイラストだったが、そのままドットに起こした場合、中ボスのザンデとも印象が被るうえに、ラスボスとしての迫力に欠けてしまうため、大胆にも下半身を削除し、上半身だけの横向きのポージングにし、見た目も人間より化け物に近い印象に変更した。さらにプレイヤーたる子供たちへの影響を考え、原画では普通の肌色だったものを緑色に変更。原画からはかなりの改変になるが、上半身のみにしたことで、ゲーム中最大のキャラサイズになって迫力が増し、“全身緑の女性”という姿も、不気味さと強烈なインパクトを生み、まさにラスボスとして申し分のない効果を与えることとなった。また、FF3はファミコンのパッケージイラスト(青年が正面を向き双剣を交差している絵)も有名だが、それも天野氏に発注する際に使ったイメージのラフ絵は渋谷が描いている。ラフ絵では兜をかぶっているものの、人物の正中線をやや左に傾かせ、正面を向いて双剣を交差、マントをはためかせつつ片足を上げているポージングは、ラフ絵の時点で完成イラストとかなり近いものであった。

FFIV』ではパッケージアートを、『聖剣伝説 〜ファイナルファンタジー外伝〜』では宣伝用イラストを描き、デザイナーとしてドット絵以外でも活躍の場を見せる。『FFV』では石井浩一の『FFIII』のジョブデザインを参考に数多くのジョブイラストを発表し、坂口博信からもチビキャラを絶賛されていた。『ロマンシング サ・ガ』ではキャラクターデザインを担当した小林智美のイラストをドット絵で表現するにあたり、繊細な色使いを残すことに注力した。渋谷のドット絵を見て、小林は「自分の色を残してくれている」ことに感激したとのこと。

FFVII』以降はゲーム業界が3Dのリアルな映像にシフトしたため、ドット絵を担当することは少なくなった。ただし、現在もデザイナーとして現場で活躍している。

旧来のチビキャラの人気は高く、FF携帯機移植化計画で『FFI』、『FFII』『FFIII』がやや異なる頭身のデザインにリメイクされる中、『FFIV』『FFV』が彼女のチビキャラをリスペクトした新イラストで発表されたり、野村哲也も携帯アプリゲームの『モノトーン』で似せた頭身のイラストを描くなど、独特なスタイリングをした渋谷絵の潜在需要は高い。

FFIV THE AFTER 月の帰還』では久々に渋谷がチビキャラをデザインした。『FF』シリーズで新たなチビキャラを書き起こすのは『FFVI』以来14年ぶりとなる。

代表作[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c 『WEEKLYファミ通』993号(エンターブレイン、2007年)94頁
  2. ^ 『FF』のドット絵師 渋谷員子 ファミ熱!!ゲームの匠(ホーム社)取材・文とみさわ昭仁、2018年10月30日閲覧。
  3. ^ 渋谷員子のツイート、2017年12月17日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]