消費者契約法

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消費者契約法
日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称 消契法
法令番号 平成12年法律第61号
種類 消費者法
効力 現行法
成立 2000年4月28日
公布 2000年5月12日
施行 2001年4月1日
所管通商産業省→)
内閣府→)
消費者庁
国民生活局→消費者制度課/消費者政策課)
主な内容 消費者と事業者との間の契約に関する民法・商法の特別法
関連法令 民法商法消費者裁判手続特例法
条文リンク 消費者契約法 - e-Gov法令検索
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消費者契約法(しょうひしゃけいやくほう、平成12年法律第61号)は、「消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするほか、消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができることとすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」、日本の法律である(第1条)[1]。2000年(平成12年)5月12日公布、2001年(平成13年)4月1日施行[2]

消費者団体訴訟制度を盛り込んだ改正法(消費者契約法の一部を改正する法律、平成18年法律第56号)が2007年(平成19年)6月から施行されている[3]

当初の所管は旧通商産業省で、国会審議も商工委員会で行われたが、中央省庁再編に伴い内閣府国民生活局消費者企画課へ移管。さらに2009年(平成21年)9月に消費者庁が発足したため移管され、現在は消費者庁消費者政策課および消費者制度課が担当する。

構成[編集]

  • 第1章 総則(第1条 - 第3条)[1]
  • 第2章 消費者契約[1]
    • 第1節 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し(第4条 - 第7条)[1]
    • 第2節 消費者契約の条項の無効(第8条 - 第10条)[1]
    • 第3節 補則(第11条)[1]
  • 第3章 差止請求[1]
    • 第1節 差止請求権(第12条・第12条の2)[1]
    • 第2節 適格消費者団体[1]
      • 第1款 適格消費者団体の認定等(第13条 - 第22条)[1]
      • 第2款 差止請求関係業務等(第23条 - 第29条)[1]
      • 第3款 監督(第30条 - 第35条)[1]
      • 第4款 補則(第36条 - 第40条)[1]
    • 第3節 訴訟手続等の特例(第41条 - 第47条)[1]
  • 第4章 雑則(第48条・第48条の2)[1]
  • 第5章 罰則(第49条 - 第53条)[1]
  • 附則[1]

消費者、事業者、消費者契約とは[編集]

  • 2条1項
    • 「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいい、事業は、営利、非営利を問わない[4]
  • 2条2項
  • 2条3項
    • 「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう(ただし、労働契約を除く)[4]

消費者契約の取消し[編集]

消費者契約法に基づく、消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消しについて説明する。

  • 不当な勧誘(4条関係)[5]
    • 誤認型
      • 1. 不実の告知(4条1項1号)
      • 2. 断定的判断の提供(4条1項2号)
      • 3. 故意による不利益事実の不告知(4条2項)
    • 困惑型
      • 4. 不退去(4条3項1号)
      • 5. 退去妨害または監禁(4条3項2号)
  • 不当な契約条項(8〜10条関係)[6]
    • 事業者の損害賠償責任を免除する条項(8条)
    • 消費者の解除権を放棄させる条項等の無効(8条の2)
    • 事業者に対し後見開始の審判等による解除権を付与する条項(8条の3)
    • 消費者が支払う違約金等の額を過大に設定する条項 (9条1号)
    • 年14.6%を超える遅延損害金を定める条項(9条2号)
    • 消費者の利益を一方的に害する条項(10条)

消費者の利益を一方的に害する条項の無効[編集]

任意規定の適用による場合に比べ、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効となる[7]

運用[編集]

消費者契約法上、オンラインゲームの利用規約が不明確で複数の解釈の余地がある場合、「自己に有利な解釈に依拠して運用している疑いを払拭できない」ため、規約差し止めとなった裁判事例がある[8]。また、オンラインゲームの一方的なアカウント停止は権利濫用[9]、損害が発生している場合は損害賠償請求[10]、無料利用であってもポイントなどに財産的利益を主張できるとする立場がある[9]

ただし、建物賃貸借契約における更新料特約を無効[11]、有効とした裁判事例もある[12]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 消費者契約法 - e-Gov法令検索. 総務省. 2021年1月15日閲覧。
  2. ^ 日下部真治 (2016年7月). “重要改正法紹介 消費者契約法の第二次改正 (主要改正部分は平成29年6月3日施行)(PDF)”. アンダーソン・毛利・友常法律事務所. DISPUTE RESOLUTION GROUP NEWSLETTER. アンダーソン・毛利・友常法律事務所. 2021年3月15日閲覧。
  3. ^ 消費者契約法”. 消費者庁. 消費者庁. 2021年1月15日閲覧。
  4. ^ a b c 呉世煌、西村多嘉子『消費経済学体系 3 消費者問題』慶應義塾大学出版会、2005年10月25日、23-42頁、ISBN 978-4-7664-1213-0
  5. ^ 宮下修一 (2014年4月8日). “【第2回消費者契約法の運用状況に関する検討会(平成26年4月8日)資料】消費者契約法に関する裁判例の検討①――契約取消権(PDF)”. 消費者庁ウェブサイト. 消費者庁. 2021年3月15日閲覧。
  6. ^ 鹿児島県知名町企画振興課 (2017年6月). “知っていますか?消費者契約法(PDF)”. 鹿児島県知名町. 広報ちな No.563 2017年6月号. 鹿児島県知名町. 2021年3月15日閲覧。
  7. ^ 川井康雄 (2017年9月22日). “消費者契約法・ 特定商取引法の解説(PDF)”. 第二東京弁護士会. NIBEN Frontier 2018年5月号. 第二東京弁護士会. 2021年3月15日閲覧。
  8. ^ モバゲー規約、二審も「不当」 利用停止の賠償応じず”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2020年11月5日) 2021年10月10日閲覧。
  9. ^ a b 増田拓也 (2017年10月16日). “第110回 アカウント利用停止措置(いわゆる垢BAN)対応のまとめ”. 色川法律事務所. 色川法律事務所. 2021年10月10日閲覧。
  10. ^ オンラインゲームにて一方的にアカウント停止措置をされた場合 (ECOMネットショッピング紛争相談室)”. 一般社団法人ECネットワーク. ECnetwork (2007年). 2021年10月10日閲覧。
  11. ^ 村川隆生「最近の判例から (5) 更新料特約が消費者契約法10条に反し無効とされた事例 (大阪高判 平21・8・27 金法1887-117) (PDF) 」 『RETIO』2010年4月号No.77、一般財団法人不動産適正取引推進機構、2010年、114-115頁。
  12. ^ 村川隆生「最近の判例から (6) 更新料特約は消費者契約法10条に反せず有効とされた事例 (大阪高判 平21・10・29 金法1887-117) (PDF) 」 『RETIO』2010年4月号No.77、一般財団法人不動産適正取引推進機構、2010年、116-117頁。

参考文献[編集]

  • 日本弁護士連合会消費者問題対策委員会編『コンメンタール消費者契約法』商事法務、2019年12月、ISBN 978-4-7857-2758-1
  • 落合誠一『消費者契約法』 有斐閣、2001年10月1日、ISBN 4-641-13277-1
  • 林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』「消費者契約法4条2項(不利益事実の不告知)の適用例」ロゴス社、2009年7月、ISBN 978-4-904350-13-3

関連項目[編集]

外部リンク[編集]