浜田宏一

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
浜田 宏一
生誕 1936年1月8日(78歳)
国籍 日本の旗 日本
研究分野 国際金融論ゲーム理論
母校 東京大学
イェール大学
影響を
受けた人物
大石泰彦
館龍一郎
小宮隆太郎[1]
ジェームズ・トービン[2]
フランコ・モディリアーニ
チャリング・クープマンス
影響を
与えた人物
白川方明
池田信夫
山崎元
福田慎一
田村耕太郎
三村和也
受賞 日経・経済図書文化賞
エコノミスト賞
テンプレートを表示

浜田 宏一(はまだ こういち、1936年1月8日 - )は、日本経済学者。専門は、国際金融論ゲーム理論東京大学名誉教授イェール大学名誉教授Econometric Society終身フェロー

専攻は国際金融論ゲーム理論[3]

人物[編集]

1936年生まれ。当初は東京大学法学部に進み、在学中に司法試験や国家公務員上級職試験にも合格したが、卒業後は同大学の経済学部に学士入学し、経済学者への道を進んだ。その後、東京大学大学院にて経済学修士号を、イェール大学にて経済学の博士号を取得した。イェール大学では、ジェームズ・トービン教授(1981年ノーベル経済学賞受賞)に師事した[4]

国際金融に対するゲーム理論の応用で世界的な業績があり[5]理論・計量経済学会(現日本経済学会)会長、法と経済学会初代会長、Econometric Society理事、世界貿易機関事務局長助言グループのメンバーを歴任。

バブル崩壊後の失われた10年においては金融政策の失策がその大きな要因とみなし[6][7]、特に岩田規久男の主張を評価している[8]日本銀行の金融政策を批判し[9][10][11][12]リフレーション政策の支持者の一人とされる[13][3]

トービンの教え[編集]

「アメリカに留学するなら、イェール大学に行って、ジェームズ・トービンに学びなさい」という館龍一郎のアドバイスに従い、浜田は後にノーベル経済学賞を受賞することになる経済学者に教えを請うことになった[14]

浜田は著書『アメリカは日本経済の復活を知っている』の中で「館と同じように、トービンも、学問はもとより人柄もプリンシプル(主義や信条)の面でも、本当に立派な学者だった。文字通り、私は敬服の限りだった」と述べている[14]

また浜田は「トービンとの師弟関係のなかで印象的だったことはいくつもある。一つは、博士論文を書こうとした際トービンに指導教授になってもらい、自分の論文を書こうという段になった。テーマは国際間の資本移動である。私が『文献を調べる』といったところで、途端に遮られた。トービンに『自分で考えずに文献を調べてはいけない。先行研究すると、君の発想・アイデアが消されてしまう。まずは、自分の頭で考える。そうすることで、先人がどのように苦労してきたかが分かる。その上で、困ったときに他の人の文献を見ればいい』とアドバイスされた」「日本にはないやり方であり、非常にありがたい助言だった。その影響で、私は先行研究を知ることに熱心ではない。勿論、論文を公刊する前に先人の業績とどう違うか調べなくてはならない。時には怠って、すでに発表されているものと重複してしまい、審査員に突き返されることもある。トービンの指導は、自分の発想の持ち味を殺さないという意味で貴重であった」と述懐している[14]

来歴[編集]

主張[編集]

構造改革[編集]

自身の考えを「私はもしかしたら竹中平蔵氏の考えに近すぎるかもしれない」「構造改革はとても重要であり、竹中氏がずっと唱えているようなアイデアをたくさん導入すべきである」「政府が弱者のためにセーフティネットを用意するのは大事である。しかしそうかといって、大金持ちの子どもも、貧乏人の子どももみんな高校授業料の無償化をするというのは、所得再分配効果としてはものすごく不能率である。そういうことはやめていかないといけない。そういう意味で、竹中氏はあんなにいいことをやっているのに、どうしてみんながついていかないのか疑問である」とし、竹中平蔵の考えや政策を称賛し、同政策の推進を日本外国特派員協会の会見にて語っている[1]

法人税[編集]

日本の法人税は、国際的にみて高めの実効税率を引き下げる必要性を指摘し、「法人税を今(2013年)のまま日本に投資を誘致しようとしても難しい[15]」「規制緩和と一緒に法人税を引き下げることが重要である。グローバル化した社会の中で、法人税を高いままにしておくと租税競争で負ける[16]」「高い法人税率は日本への投資を阻害しており、20%台に引き下げれば、日本の資本市場も変わる[17]」と述べている。

為替と物価[編集]

円高と日本のデフレーションについて「日本の場合、円高などで企業所得は減っても雇用は減らさない。各企業が無駄な雇用まで抱えて能率が悪いことをやっている。(企業が)損失が出しても我慢しているということであり、それは大変である」と述べている[10]。また自身の著書で、人口減少をデフレの原因とする説には根拠がないと指摘している[18]

日本銀行の2%の物価目標について「財・サービスや消費、投資、雇用などにどれだけ早く効果が及ぶかが問題である。経済が回復してくれれば、1%に越したことはない。過剰設備を解消し、失業率も改善し、有効求人倍率も1より大きな地域が増える状態が望ましい」と述べている[19]。また「物価は2%までなら何の問題もないが、4-5%になれば国民への大衆課税となる。インフレは行き過ぎないように止めることは重要である」と指摘している[20]

日本銀行[編集]

日本銀行法について「1998年に新日本銀行法が施行されて以降、日本経済は世界各国の中でほとんど最悪といっていいマクロ経済のパフォーマンスを続けてきた[6]」「あまりドラスチックに改正する必要はないが日銀法を変えるべきである[21]」「誰が総裁になるにしろ、いつも次の国会に行ったら問責されて首になると思ったら、いい金融政策はできない。ある程度自由に、柔軟に、しかも中長期の見通しの上に立った金融政策を推進すべきで、総裁の罷免まで法律に書くのはいかがかなと思う[7]」「旧日銀法にあった総裁の罷免権まで財務大臣に与えるというのは極端で、そこまでやる必要はない。目標が達成できないときに、日銀が説明責任を負うことは最低限必要である[22]」と主張している。

アベノミクス[編集]

アベノミクスの三本の矢を大学の通知表にならって採点すると「金融緩和はAプラス、財政政策はB、成長戦略の第三の矢はE(ABE)」としている[23]

構造改革の必要性を強調し、「低調な景気回復が供給面の制限によるものであれば、規制緩和、貿易自由化、法人税減税を含む(アベノミクスの)第3の矢が生産能力の拡大促進への解決策となる」と提言している[24]

通貨統合[編集]

2004年時点では単一通貨について、金融政策が制約されても、通貨取引のコストの節約、通貨相場変動の安定によって貿易が活性化すると指摘しており、日本・中国を中心、或いは日本・中国・韓国・ASEAN・オーストラリアが協力して東洋の通貨圏の形成を考えてもよいと指摘している[25]

外交[編集]

2014年6月、「平和と安全を考えるエコノミストの会」が首相官邸へ日・中・韓の関係改善を提言。会側の一人として名を連ねた。提言の内容は河野談話村山談話の踏襲、靖国神社に代わる無宗教の慰霊施設設置、領土問題の棚上げなどであったが、官邸側は受け取りを断っている[26]

評価[編集]

経済学者の片岡剛士は「浜田氏の名前を知らない経済学徒は『もぐり』である」と述べている[4]

批判[編集]

2013年2月27日付の朝日新聞に齊藤誠一橋大教授による強烈な浜田批判が掲載された[27]。批判の内容は「物価が2%上昇すると金利は3%になり、企業コストが膨らみ、国債価格が急落して国も銀行も企業も困る」というもので、それに対し浜田は「斎藤教授の理論は、貨幣とモノ・サービスは分離されているので、貨幣政策によってモノ・サービスの向上は図れないというものである。だがリーマン・ショック後の世界は、貨幣とモノ・サービスとが切り離せないことを示した。一時の流行で貨幣の役割を無視する経済学を教えられる学生はかわいそうであり、それで苦しむ国民はもっと気の毒である。国民が目の前で苦しんでいるのに、経済学者が動かないでどうする」と述べている[27]

また「斎藤教授には、経済政策についてインタビューを申し込んだことがあるが、『自分は純粋な経済学しか追究しない』という理由で断られた。朝日新聞のインタビューで私を大々的に批判するのは研究で、私との討論は研究ではないのか」と述べている[27]

著書[編集]

単著[編集]

  • 『経済成長と国際資本移動--資本自由化の経済学』(東洋経済新報社, 1967年)
  • 『損害賠償の経済分析』(東京大学出版会, 1977年)
  • 『国際金融の政治経済学』(創文社, 1982年)
  • 『為替レートの決定要因(経済研究所シリーズ<No.4>)』 (経済同友会経済研究所, 1983年)
  • The Political Economy of International Monetary Interdependence, trans. by Charles Yuji Horioka and Chi-Hung Kwan, (MIT Press, 1985).
  • 『エール大学の書斎から――経済学者の日米体験比較』(NTT出版, 1993年)
  • 『モダン・エコノミックス(15)国際金融』(岩波書店, 1996年)
  • Strategic approaches to the international economy : selected essays of Koichi Hamada , (Edward Elgar, 1996).
  • 『アメリカは日本経済の復活を知っている』(講談社, 2012年)
  • 『アベノミクスとTPPが創る日本』(講談社, 2013年)

共編著[編集]

  • (島野卓爾)『日本の金融』(岩波書店, 1971年)
  • (村上泰亮)『経済学の新しい流れ――日本経済の理論と現実』(東洋経済新報社, 1981年)
  • (黒田昌裕堀内昭義)『日本経済のマクロ分析』(東京大学出版会, 1987年)
  • (野口悠紀雄コウゾウ・ヤマムラ編) 『比較・日米マクロ経済政策(シリーズ・現代経済研究)』 (日本経済新聞社, 1996年)
  • (岩田規久男編著) 『金融政策の論点―検証・ゼロ金利政策』(東洋経済新報社, 2000年)
  • (内閣府経済社会総合研究所) 『世界経済の中の中国』(NTT出版, 2003年)
  • (堀内昭義・内閣府経済社会総合研究所)『論争日本の経済危機――長期停滞の真因を解明する』(日本経済新聞社, 2004年)
  • (原田泰・内閣府経済社会総合研究所)『長期不況の理論と実証――日本経済の停滞と金融政策』(東洋経済新報社, 2004年)
  • (野口旭編) 『経済政策形成の研究―既得観念と経済学の相克』 (ナカニシヤ出版, 2007年)
  • Ageing and the Labor Market in Japan: Problems and Policies, co-edited with Hiromi Kato, (E. Elgar, 2007).
  • (大塚啓二郎東郷賢ほか) 『模倣型経済の躍進と足ぶみ -戦後の日本経済を振り返る-』 (ナカニシヤ出版, 2010年)
  • Japan's bubble, deflation, and long-term stagnation, co-edited with Anil K Kashyap, and David E. Weinstein, (MIT Press, 2011).
  • (岩田規久男原田泰編) 『リフレが日本経済を復活させる』 (中央経済社, 2013年)

共著[編集]

訳書[編集]

論文[編集]

公開書簡[編集]

主な門下生[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b 株高円安は日銀の不熱心さを露呈させた――浜田宏一氏が語る金融政策のあり方 (1/4)Business Media 誠 2013年1月21日
  2. ^ エール大卒イエレン・浜田両氏、恩師の理論を量的緩和に応用Bloomberg 2013年11月1日
  3. ^ a b 浜田宏一・内閣官房参与 核心インタビュー 「アベノミクスがもたらす金融政策の大転換 インフレ目標と日銀法改正で日本経済を取り戻す」 ダイヤモンド・オンライン 2013年1月20日
  4. ^ a b 【書評】浜田宏一、若田部昌澄、勝間和代『伝説の教授に学べ!本当の経済学がわかる本』 片岡剛士SYNODOS JOURNAL(シノドス・ジャーナル) 2010年7月27日
  5. ^ 経済の死角 「安倍バブル」の教祖浜田宏一が大いに語る「1ドル100円、日本は甦る」現代ビジネス 2013年2月6日
  6. ^ a b 日本銀行を後戻りさせてはならないRIETI 2012年6月
  7. ^ a b ハイパーインフレは絶対起こらない -内閣官房参与 浜田宏一氏 PRESIDENT Online - プレジデント 2013年2月22日
  8. ^ 浜田宏一イェール大学教授「経済学の現実を無視する菅内閣と日本銀行が国を滅ぼす」 聞き手:高橋洋一 「経済学の泰斗」が憂国の提言 第1回現代ビジネス 2011年3月4日
  9. ^ 浜田宏一イェール大学教授「日銀の政策は"too little,too late"だ」 憂国のインタビュー第2回 聞き手:高橋洋一現代ビジネス 2011年3月10日
  10. ^ a b 浜田宏一イェール大学教授 憂国のインタビュー第3回 聞き手:高橋洋一 日本の新聞が日銀批判を語らない理由現代ビジネス 2011年3月18日
  11. ^ 浜田宏一(イェール大学教授)×安倍晋三(自民党総裁)「官邸で感じた日銀、財務省への疑問。経済成長なしに財政再建などありえない」現代ビジネス 2012年11月29日
  12. ^ インタビュー:日銀は無制限緩和を、物価目標2─3%が適切=浜田宏一教授Reuters 2012年12月28日
  13. ^ マーケット 為替は1ドル100円くらいがちょうどいい東洋経済オンライン 2013年1月18日
  14. ^ a b c 浜田宏一『アメリカは日本経済の復活を知っている』、講談社、pp138-140。
  15. ^ 5%の消費増税、日本経済へのショック大きい=浜田内閣官房参与Reuters 2013年7月14日
  16. ^ インタビュー:アベノミクス心配ない、法人減税不可欠=浜田参与Reuters 2013年6月7日
  17. ^ インタビュー:増税・株安で経済悪化なら追加緩和を=浜田参与Reuters 2014年5月12日
  18. ^ 浜田参与:日銀は必要なら一段の緩和を-インタビューで語るBloomberg 2013年5月28日
  19. ^ インタビュー:消費増税先送りも選択肢、ドル100円程度は「妥当」=浜田参与Reuters 2013年4月9日
  20. ^ 浜田教授:日銀の長期国債買い入れ倍増は「可能」-追加緩和5月にもBloomberg 2014年3月14日
  21. ^ 「日銀法改正で政府と経済目標共有を」 浜田内閣官房参与 (1/3ページ)SankeiBiz(サンケイビズ) 2013年1月22日
  22. ^ 「白川総裁は誠実だったが、国民を苦しめた」 浜田宏一 イェール大学名誉教授独占インタビュー東洋経済オンライン 2013年2月8日
  23. ^ 黒田日銀の政策発動期待、消費増税に大きな心配ない=浜田内閣官房参与Reuters 2013年11月15日
  24. ^ 増税は消費者に「大きな打撃」=浜田内閣官房参与WSJ 2014年8月14日
  25. ^ 日本経済新聞社編 『マネーの経済学』 日本経済新聞社〈日経文庫〉、2004年、70頁。
  26. ^ “浜田・河合教授らが日中韓関係改善を提言、首相官邸は受け取らず”. ロイター (ロイター通信社). (2014年6月20日). http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPKBN0EV06V20140620 2014年6月20日閲覧。 
  27. ^ a b c 経済の死角 ぶちぬき大特集アベクロでGO! アベクロ・バブルの教祖新たな「お告げ」 浜田宏一登場「株高と円安私にはここまで見えている」現代ビジネス 2013年3月18日
  28. ^ 「日銀が国民を苦しめている」浜田宏一イェール大教授2010年6月17日(2010年8月4日時点のアーカイブ
  29. ^ 勝間和代×浜田宏一×若田部昌澄 「ハーバード大やイェール大にあって東大に足りないものは何か?」@niftyニュース (SAPIO 2010年8月4日号掲載) 2010年8月19日
  30. ^ 浜田宏一「教え子だった白川方明日銀総裁はどこで道を誤ったのか」 『アメリカは日本経済の復活を知っている』より第1回現代ビジネス 2013年1月18日
  31. ^ a b 山崎元「ニュースの深層」 「マイルドなインフレ」を目指す「デフレ対策」の有効性についての論点整理---池田信夫氏、池尾和人氏との座談会を前に現代ビジネス 講談社 2012年11月28日
  32. ^ 経済の死角 全国民必読 安倍を操る「財務省7人のワル」をご存じか 消費税増税のウラで高笑い現代ビジネス 2014年4月30日

外部リンク[編集]