洪水調節

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洪水調節(こうずいちょうせつ)とは、ダムにおいて洪水(ダム管理用語としては一定量以上の流入を指す。)の下流への放流量を調節(抑制)する放流操作のことで、下流部における洪水被害を防ぐ手法である。治水ダム多目的ダムにおける重要な操作の一つとされている。なお、放流量の抑制(洪水時に限らない)を流量調節(りゅうりょうちょうせつ)と言うことがある。

基本的な考え方[編集]

通常、ダムにおいては、ダム地点における河川の流入量と同量の、あるいは灌漑河川環境の維持を目的として流入量以上の放流を行っている。しかし、豪雨などにより河川の流入量が著しく増大した場合においては、流入量と同量の放流を行うと下流部において河川流量が増大するために水位が上昇し、洪水の危険性が増すことになる。

そこで、ダム地点において流入量が一定量を上回った時点で、ダムからの放流量をそれ以上に増やさず、流入量と放流量の差分をダム湖内に貯留することができれば、下流においては河川流量は一定以下となり、それ以上の水位上昇を防ぐことができる。この考え方に基づく手法が洪水調節である。

洪水調節の方法[編集]

洪水調節は、その手法によっていくつかの方式に分類される。

自然調節方式
ゲートなどの操作を行わず流入量の調節を行う方式。穴あきダムなど、機械的に洪水調節が不可能なダムで行われることが多い。
全量調節方式
流入量の全部をダムに貯める方式。通常の放流(河川維持放流など)を行わないダムで採用されることがある。
一定量放流方式
流入量のうち一定の量を放流することで調節を行う方式。もっとも単純な方式でもある。
不定率調節方式
洪水による流入の一番多いところを貯める方式。流入量に比して洪水調節容量の大きいダムで用いられることが多い。
一定率一定量調節方式
ダムへの流入量のうち一定の割合で調節を行う量を決める方式。自然調節方式と一定量放流方式の中間の方式。

もっとも単純な方式である一定量放流方式では、洪水調節とそれに関連する一連のダム放流操作は次の方法で行われる。

  1. 通常の降水時はダムの水位上昇量から河川流入量を計算し、流入量と同量となる(ダムの水位変動がない)ように放流量を制御する(貯水位維持のための放流)。
  2. 雨量とダム水位変動および放流量を記したグラフなどにより、ダムに一定量以上の流入が見込まれる状態になったとき、関係機関(自治体水防組織など)および住民に洪水調節を行う旨を通知する。
  3. ゲート操作などにより放流量を一定量以内に調節し、洪水調節容量内に水を貯留する(洪水調節の開始)。
  4. 雨が止むなどして流入量が減り、流入量が放流量を下回った時点で洪水調節の終了となるが、その後もダム水位が低下し、洪水調節容量内に貯留した水の量が0になる(常時水位までダム水位が低下する)まではそのままの放流量を保つ(洪水調節後におけるダム水位の低下のための放流)。
  5. 洪水調節容量内に貯留した水の量が0になったら、放流量を流入量と同量まで減らす(一連の操作の終了)。

関係機関および住民に洪水調節の開始を告知するのは、洪水に対する当面の不安を取り除くと共に、川に入らないように周知するなど水防の要素も含まれている。なお、洪水調節容量すべてに貯留する状態(大規模な洪水調節専用ダムでは滅多にないが、その他の小規模や多目的ダムなどでは多くある)となり洪水調節が不可能になると、ダム管理者(都道府県営ダムであれば都道府県知事など)の承認を得た上で流入量と同量の放流を行う場合がある。これは各ダムの操作規則の中の記述からただし書き操作と呼ばれる。ただし書き操作により流入量と放流量が一致すれば、差し引きダムに貯留される洪水はゼロとなるため、ダム水位の上昇は止まり、ダムからの越水という最悪の事態(オーバートッピング)は避けられる。また、流入量が一定量未満の場合にも洪水調節と同様のダム放流操作を行うことがあり、これは操作規則で「洪水に達しない流水の調節」と呼んで洪水調節と区別している。

このように、洪水調節は下流河川の水位上昇をなだらかにしたり最大流量を抑制したり、あまりに流入量が多い場合でもそのまま流すため洪水被害を悪化させることはない訳で、また調節容量には限りがあり自然の暴威の前にはそれを多少緩和する程度にしかならないのだが、これらのことをあまり理解していない、あるいはダムに過大な期待をする流域住民などから「ダムの影響で洪水被害が拡大した」などと誤解されたり訴えられたりすることもある。 しかし調節をせず水を溜め込み続ければダムは限界を超えて決壊し、莫大な量の水が一気に下流に押し寄せて大きな被害を出す事に繋がるため、ダムは水を全て止める事ができるものではなくあくまで被害の軽減しか出来ない事を理解しておく必要がある。

関連項目[編集]