水酸化ニッケル(II)

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水酸化ニッケル(II)
識別情報
CAS登録番号
36897-37-7(一水和物) 12054-48-7(無水物)
36897-37-7(一水和物)
RTECS番号 QR6480000
特性
化学式 Ni(OH)2
モル質量 92.7081 g mol−1
外観 緑色結晶または粉末
密度 4.15 g cm−3, 固体
融点

分解

への溶解度 0.0013 g / 100cm3(20℃)
構造
結晶構造 六方晶系
熱化学
標準生成熱 ΔfHo −529.7 kJ mol−1[1]
標準モルエントロピー So 88 J mol−1K−1
危険性
Rフレーズ R49, R61, R20/22, R38, R42/43, R48/23, R68, R50/53
Sフレーズ S53, S45, S60, S61
引火点 不燃性
関連する物質
関連物質 水酸化鉄(II);水酸化コバルト(II)
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

水酸化ニッケル(II)(すいさんかニッケル(II)、Nickel(II) hydroxide)は、化学式 Ni(OH)2 で表される2価のニッケル水酸化物である。

合成[編集]

二酸化炭素を含まない硝酸ニッケルの希薄水溶液に、炭酸塩を含まないやや過剰の水酸化カリウム水溶液を加えると沈殿として得られる[2]

Ni2+(aq) + 2 OH(aq) → Ni(OH)2

あるいは硝酸ニッケルにアンモニア水を加えて錯体としたヘキサアンミンニッケル(II)塩水溶液に水酸化カリウム水溶液を加えるとより良好な沈殿が得られる[3]

[Ni(NH3)6]2+(aq) + 2 OH(aq) → Ni(OH)2 + 6 NH3

原料に塩化ニッケルおよび硫酸ニッケルを直接用いて水酸化カリウムにより沈殿を作成すると、塩基性塩の沈殿が混入するため好ましくない。

水溶液から沈殿させたものはほぼNi(OH)2・1.5H2Oに相当するため、真空中で放置して無水物とする。

性質[編集]

緑色の結晶または粉末で、六方晶系水酸化カドミウム型構造をとり、その格子定数はa = 3.117Å、c = 4.595Åである[3]

水には極僅かにしか溶解せず、希酸およびアンモニウム塩水溶液に容易く溶解する。その溶解度積は以下の通りである[4]

Ni(OH)2  \rightleftarrows\ Ni2+(aq) + 2 OH(aq),  Ksp = 2×10−15

アルカリ水溶液にはほとんど溶解しないが、アンモニア水およびシアン化カリウム水溶液には錯体を生成して溶解する。

Ni(OH)2 + 6 NH3 → [Ni(NH3)6]2+ + 2 OH
Ni(OH)2 + 4 CN → [Ni(CN)4]2− + 2 OH

230℃程度の加熱により分解し、水を失って酸化ニッケルになるが完全に脱水するには赤熱する必要がある。

Ni(OH)2 → NiO + H2O

水酸化鉄(II)とは異なり、空気中および過酸化水素では酸化されず、オゾン塩素水、臭素水、および次亜塩素酸ナトリウムにより酸化され、3価のオキシ水酸化ニッケル(III), NiO(OH)となる。

2 Ni(OH)2 + O3 → 2 NiO(OH) + O2 + H2O

用途[編集]

ニッケル・カドミウム蓄電池およびニッケル・水素蓄電池正極活物質として用いられる。ただし水酸化ニッケル(II)は放電された形態であり、充電によりオキシ水酸化ニッケル(III)となる。

NiO(OH) + H2O + e  \rightleftarrows\ Ni(OH)2 + OH,  E°= 0.48 V

脚注・参考文献[編集]

  1. ^ D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982).
  2. ^ 日本化学会編 『新実験化学講座 無機化合物の合成I』 丸善、1977年
  3. ^ a b 『化学大辞典』 共立出版、1993年
  4. ^ H. Freiser, Q. Fernando共著、藤永太一郎、関戸栄一 共訳 『イオン平衡 -分析化学における-』 化学同人、1989年