水俣条約

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水俣条約
水銀に関する水俣条約
種類 国際連合条約
署名 2013年10月10日 (2013-10-10)
署名場所 日本の旗 熊本市
現況 50カ国・地域が批准してから90日後に発効予定
締約国 92
寄託者 国際連合事務総長
言語 アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語
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水銀に関する水俣条約(すいぎんにかんするみなまたじょうやく)は、水銀および水銀を使用した製品の製造と輸出入を規制する国際条約。正式名称は「水銀に関する水俣条約」(the Minamata Convention on Mercury)で、「水銀条約」「水俣条約」とも呼ばれる。

地球規模の水銀および水銀化合物による汚染や、それによって引き起こされる健康、および環境被害を防ぐため、国際的に水銀を管理することを目指すものである。

水俣病と同じような被害を繰り返してはならないという、決意を込めて名づけられ、2013年1月19日ジュネーブで開かれた国際連合環境計画(UNEP)の政府間交渉委員会にて、名称を「水銀に関する水俣条約」とすることを日本国政府代表が提案し、全会一致で名称案を可決した。

条約は熊本で2013年10月7-8からの準備会合を経て、2013年10月19日に採択・署名(熊本市)された。

発効は50ヶ国が批准してから90日後とされており、その時期は2016年ごろと予想されている。

経緯[編集]

  • 2010年6月7日-11日:第1回会合(INC1)が、ストックホルムで開催
  • 2011年1月24日-28日:第2回会合(INC2)が、千葉で開催
  • 2011年10月24日-11月4日:第3回会合(INC3)が、ナイロビで開催
  • 2012年6月27日-7月2日:第4回会合(INC4)が、プンタ・デル・エステで開催
  • 2013年1月13日-19日:第5回会合(INC5)が、ジュネーブで開催
  • 2013年10月9日-11日:全権代表外交会合が、熊本県水俣市及び熊本市で開催(9日:開会式典及び公害現地視察(水俣市)、10・11日:外交会議(熊本市))

内容[編集]

この条約の主な内容

前文[編集]

この条約の締約国は、水銀が、その長距離にわたる大気中の移動、人為的に環境にもたらされた場合の残留性、生態系における生物蓄積能力並びに人の健康及び環境への重大な悪影響を理由として、世界的に懸念のある化学物質であることを認識し、効率的かつ効果的な一貫した方法で水銀を管理するための国際的行動を開始する。

序論[編集]

第一条 目的 この条約は、水銀及び水銀化合物の人為的な排出及び放出から人の健康及び環境を保護することを目的とする。

第二条 定義

供給及び貿易:水銀の供給源および貿易[編集]

第三条 水銀の供給源及び貿易   鉱山からの水銀産出の禁止、水銀の貿易に関しては条約で認められた用途以外の禁止

製品と製造プロセス:水銀添加製品、水銀使用製造プロセス、締結国の要請による除外[編集]

第四条 水銀添加製品

第五条 水銀又は水銀化合物を使用する製造工程

第六条 要請により締約国が利用可能な適用除外

人力小規模金採掘[編集]

第七条 零細及び小規模の金の採掘   水銀が不法に使用されないようにする

大気への排出、水及び土壌への放出[編集]

第八条 排出 附属書Dに掲げる発生源の分類に該当する発生源からの排出を規制するための措置を通じ、水銀の大気への排出を規制し削減する。

第九条 放出 この条約の他の規定の対象となっていない発生源からの水銀の土壌及び水への放出を規制しは削減する。

  石炭・石油等を燃焼させた排ガスの規制・排水の規制

保管、廃棄等[編集]

第十条 水銀廃棄物以外の水銀の環境上適正な暫定的保管   環境上適正な保管

第十一条 水銀廃棄物 有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約の関連する定義は、バーゼル条約の締約国に関し、この条約の対象となる廃棄物について適用する。

第十二条 汚染された場所

  • 水銀汚染された場所を特定し評価するための戦略を策定する。
  • 汚染された場所がもたらす危険を減少させるための措置は、水銀による人の健康及び環境に対する危険性の評価を取り入れ、環境上適正な方法で行われる。
  • 締約国会議は、汚染された場所の管理に関する手引であって、次の事項に関する方法及び取組方法を含むものを採択する。
    • 場所の特定及び特性の評価
    • 公衆の関与
    • 人の健康及び環境に対する危険性の評価
    • 汚染された場所がもたらす危険の管理に係る選択肢
    • 効果及び費用の評価
    • 成果の検証

資金・技術支援[編集]

第十三条 資金及び資金供与の制度 自国の政策、優先度及び計画に従い、この条約の実施を意図する各国の活動に関する資金を提供することを約束する。

第十四条 能力形成、技術援助及び技術移転

普及啓発、研究等[編集]

第十五条 実施及び遵守に関する委員会

第十六条 健康に関する側面 危険にさらされている人々や被害を受けやすい人々を特定し、保護するための戦略及び計画の作成及び実施を促進する。

第十七条 情報の交換

第十八条 公衆のための情報、啓発及び教育

第十九条 研究、開発及び監視

第二十条 実施計画 この条約の義務を履行するために実施計画を作成し提出する。

第二十一条 報告 この条約を実施するためにとった措置や効果について報告する。

第二十二条 有効性の評価 締約国会議は、定期的にこの条約の有効性を評価する。

第二十三条 締約国会議、第二十四条 事務局、第二十五条 紛争の解決、第二十六条 この条約の改正、第二十七条 附属書の採択及び改正、第二十八条 投票権、第二十九条 署名、第三十条 批准、受諾、承認又は加入

第三十一条 効力発生 この条約は、五十番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の日の後九十日目の日に効力を生ずる。

第三十二条 留保 この条約には、いかなる留保も付することができない。

第三十三条 脱退、第三十四条 寄託者、第三十五条 正文

以上は仮訳より

実生活への影響[編集]

日本国内において、生活するうえで影響があるのは【E】水銀が使われた製品(蛍光灯や乾電池)である。

《蛍光灯・CCFLについて》

規制対象となるのは以下の蛍光ランプである。[1]

  • 30W以下の一般照明用コンパクト蛍光ランプ(CFL)で、水銀封入量が5mgを超えるもの
  • 一般照明用直管蛍光ランプ(LFL)で、
(a) 60W未満の3波長蛍光体を使用したもので、水銀封入量が5mgを超えるもの
(b) 40W以下のカルシウムハロ蛍光体を使用したもので、水銀封入量が10mgを超えるもの
  • 一般照明用の高圧水銀ランプ(HPMV)
  • 電子ディスプレイ用冷陰極蛍光ランプ(CCFL及びEEFL)で、
(a) 長さが500mm以下の小サイズのもので、水銀封入量が3.5mgを超えるもの
(b) 長さが500mmを超え1500mm以下の中サイズのもので、水銀封入量が5mgを超えるもの
(c) 長さが1500mmを超える大サイズのもので、水銀封入量が13mgを超えるもの

《乾電池について》

乾電池は水銀0使用(水銀を原材料としては使っていないという意味、水銀がまったく含まれていないという意味ではない)がほとんどであるが、アルカリボタン電池、輸入された電池、家庭などで出てくる昔の電池には水銀が使われている可能性がある。そのため地元の最終処分場の環境や清掃工場の焼却炉を守るため注意が必要である。

押し入れに眠っていた数十年前の子供の(もしくは自分自身の)おもちゃにの中に乾電池が入っていたりすることがあるので注意が必要である。 ※東京23区では排気ガスに含まれる水銀量が自主規制値を超えそうになったため運転を停止することが数回起きており、そのたびに貴重な税金を投入して焼却炉のメンテナンスがおこなわれている

都市部では清掃工場や最終処分場近まで住宅地が広がっているので他人ごとではない。しかし23区内の清掃工場はしっかりと自主規制をしているのでそういった事件があっても公表し、対策を施しているので安心していいと思われる。

注意…各新聞社の記事(2013/10/10現在)などで「体温計や血圧計、電池や蛍光灯など9種類の水銀含有製品も2020年までに製造や輸出入を禁止する。」と記載されていることがあるが、すべて水銀含有製品にあてはまるわけではないので注意が必要である。このようなあいまいな記事を使った詐欺・悪質商法(悪徳商法)にあわないように注意が必要である。(地デジカの地デジ詐欺などを参照)

【産業廃棄物にかかわる人への影響】

現在日本では水銀及び水銀を含む製品を適法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律を順守)かつ適正処理(不溶化・埋め立てではなく、水銀を水銀と回収)する企業が存在している。

しかし、この条約にある保管という言葉を使ってあたかも水銀を適正に処理処分できるかのような言い方で廃棄物の処理を請け負うという話を聞くことがあるが、国内法の整備はこれからおこなわれるため保管するから大丈夫という処理業者は要注意である。また条約の精神に照らし合わせて水銀を不溶化(コンクリート固化)して最終処分場に埋め立てるという流れにはならない可能性が非常に高いので産業廃棄物の担当者は注意が必要である。

【水銀の保管に関して】

水銀はアメリカ合衆国のように国家が保管するのかそれとも別の枠組みで保管するのか

またその保管方法が水銀(液体、毒物)として保管するのか、硫化水銀(固体、水銀の化合物としては唯一毒物でも劇物でもない)として保管するかなどいろいろな方法が考えられる。 どちらも一長一短があり、国の方針がどのようになるかは全く持って不明である。

【さまざまな問題点を抱えた条約】

理想を追求した条約とした場合どれだけの国が批准できるかという問題。

ASGM(人力小規模金採掘)における水銀の使用が問題視されているが、なぜAGSMを行うのかといった根本的な問題(貧困問題)。

今日(2013年10月現在)においても水俣病は解決されておらず、水銀を含んだヘドロで水俣湾の一部を埋め立て、それによってできた水俣エコパークの水銀未処理及び維持管理問題。

いろいろな方が意見を出されているが、この水銀に関する水俣条約はあくまで通過点に過ぎず、これからも不断の努力が必要ということを忘れてはならない。

出典[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 一般社団法人日本電球工業会「水銀に関する条約の制定について」

関連項目[編集]

水銀分析マニュアル 赤木法

水銀

水俣病

チッソ

足尾鉱毒事件: 日本の公害の原点。今なお基準値を超える鉛が検出されることもあり、公害の解決の難しさを物語っている。

硫化水銀