水からの伝言

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水からの伝言』(みずからのでんごん)、略称『水伝』とは、結晶(つまりは)の写真集[1]で、江本勝の著作。著者らが開発した方法で撮影した「雪花状の氷[2]」の写真を収録する。[3]続編や関連書も多くある日本内外でも出版されている。「水に言葉をかけると、結晶の形がその言葉に影響される」という物語が写真と並行して語られており、一般にはオカルト的と見做されるにもかかわらず道徳教育に使われるなど、社会的影響が大きく、問題となっている。

目次

[編集] 物語の内容

本書やその続編で江本らは結晶を作る際に「ありがとう」や「平和」など「よい言葉」をかけると美しい雪花状の結晶ができて、「ばかやろう」や「戦争」など「悪い言葉」をかけると汚い結晶ができるという物語を好んで取り上げている。言葉のかけ方は「に言葉を書いて、水をいれたに貼る(この際に、水から「見える」ように文字の書かれた面を内側にして貼る)」あるいは「水の入った瓶に向かって声をかける」などである。また、水を入れた瓶に「音楽を聴かせる」と音楽の種類によって結晶形が変わるといったお話である。ただし、本書の写真はその物語に沿う結果の結晶を選んで撮影したことを著者が公言している。

[編集] 科学的な注釈

彼らが写真に撮っている雪花状の氷はと同様に「気相成長」でできたもの、つまり種となる氷に周辺の水蒸気がくっついてできたものである。一言で言えば「小さな霜」である。したがって、結晶の形は中谷宇吉郎が研究した雪の結晶形の成長条件に従って、雪花状に成長するかどうかは温度と水蒸気量で決まる。形こそ雪花状であるが、雪や霜がそうであるのと同様、分子構造は普通の氷と同じである。

また、藤倉珊は『トンデモ本の世界T』において、同じく中谷宇吉郎の研究を取り上げチンダル像による負結晶(逆結晶)別名「ウォーター・フラワー (Water Flower)」とする異説を唱えている。水の結晶と称される写真に、チンダル像ができる際、水蒸気によってできる穴と同じようなものが見える。「シャーレに水を分け、氷点下で凍結し、顕微鏡で視る」という撮影過程の中で、顕微鏡の落射照明により氷が融解するなどと指摘し、結晶の写真の美しさは、氷の融解する過程においてタイミング良く負結晶ができる瞬間の写真が撮影できるかどうか、つまりシャッターチャンスの妙味だとしている。

ただし、藤倉珊と同じと学会の会員で物理学者菊池誠は、写真に写っているのは気相成長でできた普通の結晶であり、チンダル像だとする藤倉の説は誤りであると指摘している[4]

一方、江本らは、人間の意志が遠隔的に水の結晶の形状に影響することを二重盲検法により確認し、統計的に有意だったと主張している[5][6]。この研究は超心理学者ディーン・ラディンDean Radin)らと共同で行われ、"Explore: The Journal of Science and Healing"(「Explore:科学と癒しのジャーナル」の意)に掲載された[7]。しかし、これはそのメカニズムなどについても何の記述もなく、科学的に説明されているわけではない[8]

[編集] 本への批判

水が、江本らの語る物語のように音楽や言葉の内容に反応することは、科学的にはありえない。物語ではこれは「波動」として説明されるが、物理学で言う波動ではない「波動」がそもそも代表的なオカルトで空想上の産物である。なお時として誤解されるが、言葉や音楽を見せたり聴かせたりするのはあくまでも凍らせる前の水に対してであり、結晶成長時ではない。したがって、音波が氷の結晶の成長に影響する可能性を考慮する必要はない。

[編集] 社会的影響

本書を始めとする江本勝の著作の愛読者の中には、これらの物語をオカルトではなく科学的主張であるかのように扱って、自分の都合の良いように利用する人達が現われ、その中には問題行動を起こす人もいる(例えば、学会で発表したり、「物語」に対し科学的に反証するようにと要求する人がいた。しかし、科学として理科教育で取り上げられた事例は現在までのところ、ほとんど報告がないようである)[要出典]

教育現場
  • この書籍が小学校などの道徳教材に使われ問題となった。道徳授業の実践例がTOSS(教育技術法則化運動)で紹介され、授業案のリンク集である「TOSSインターネットランド」に収録されたのが広まる要因になったと見られている。これに対して教育関係者や科学者からは本書とTOSSへの激しい批判が起きた。道徳授業で疑似科学以前のオカルトを教えることが単に批判されているだけではなく、「言葉のしを水に教わる」という内容自体がそもそも道徳教材としては不適切であるとの考えもあり、論争は道徳授業にオカルトを取り上げることに対する批判にとどまらない。また「画一的美的感覚の押しつけ」であるとの指摘もある。
政治
タレント

[編集] 学会での発表

[編集] 日本物理学会

2006年9月23日、奈良女子大学で開催された日本物理学会秋季大会において、高尾征治(当時九州大学大学院工学研究科化学工学部門助手、現在「ししゃ科も研究所」代表、ディプロマミルであるイオンド大学より哲学名誉博士[11])が「言葉が水の氷結状態と水中元素濃度に及ぼす影響」と称して本書と同様の物語を語った[12]。この発表は江本も共同発表者として名を連ね、引用文献として本書が挙げられていた。科学でない物語を学会で発表したことについて、聴衆からは疑問の声が上がり「それは科学でない」というごく当たり前のコメントをする者もいた[13]。また「再現実験じみたこと」はやっていないことなども明らかにされた[14]

なお九州大学のウェブサイトで、一時期「似非科学問題について」と題するトピックスが載っていた。

2006年春には『「ニセ科学」とどう向き合っていくか?』というシンポジウムが行われている[15]

[編集] 日本化学会

上述の発表に先立ち、日本化学会の会誌『化学と工業』2006年9月号の論説欄で本書が取り上げられた[16]。この筆者は論説で取り上げた理由として「(「社会的影響」で述べている事象が起きていることから)学会として無視するといった対応では不十分、すなわち、ある許容できる一線をすでに超した事例ではないか」としている[17]

この論説は多くの関心を呼ぶとともに、読者からの多数の意見が寄せられ、その一部は同誌の同年12月号で紹介された[17]。読者の意見に本書が疑似科学以前のオカルト本であることを否定するものはなかったが、「物語」に対し科学的に反証すべきと要求する人もいた。

[編集] 著者の釈明

江本は「水からの伝言」を「ファンタジー」「ポエム」である、即ち科学ではなく物語であるとしている[18]。しかし物語のリアリティーへの配慮からか、いずれは証明されるものとして語られており、事実でないことには触れられない(物語であるので、証明要素はない)。また、江本は『水からの伝言』の絵本版を2006年 - 2015年にかけて約500億円の予算で6億5000万部を印刷し世界中の子供たちに配布する計画を発表している [18][19]

[編集] 関連図書・資料

  • 江本勝の著書
    • 江本勝『水は答えを知っている - その結晶にこめられたメッセージ』サンマーク出版、2001年
    • 江本勝編著『水からの伝言 - 世界初!!水の氷結結晶写真集(Vol.2)』波動教育社、2001年
    • 江本勝『自分を愛するということ - 水からの伝言 Vol.3』波動教育社、2004年
  • 批判・反論書籍
    • と学会『トンデモ本の世界T』太田出版、2004年 - 藤倉珊が一連の『水からの伝言』シリーズを取り上げ、間違いや問題点を指摘している
    • と学会『トンデモ本白書2005』、2005年(と学会名義で発行の同人誌) - 菊池誠が前掲書における藤倉の説明の誤りを訂正している
    • 左巻健男『水はなんにも知らないよ』ディスカヴァー・トゥエンティワン〈ディスカヴァー携書〉、2007年 - 著者は同志社女子大学教授(該当書出版当時・現法政大学生命科学部環境応用化学科教授)。『水からの伝言』シリーズの間違いや問題点を指摘している他、マイナスイオン水や波動水など水が関係した疑似科学全般の間違いや問題点について言及している。
    • 松永和紀『メディア・バイアス - あやしい健康情報とニセ科学』光文社〈光文社新書〉、2007年

[編集] 脚注

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  1. ^ 本書は、国立国会図書館分類ではSB391の超心理学に分類されている。
  2. ^ 6方向に枝分かれした氷で、本質的にと同じ
  3. ^ 2009年現在までに45ヶ国語に翻訳、世界75カ国で出版されシリーズで250万部以上が発行された。
  4. ^ 『トンデモ本白書2005』40-42ページ参照
  5. ^ 水の結晶の形に遠隔地からの想いが与える影響についてのダブルブラインドテストOFFICE MASARU EMOTO
  6. ^ 江本氏のブログ内で自分たちのやっていることは科学的に証明することが自分には出来ないと明言している。2007年10月23日(火) 読者からの質問6
  7. ^ doi:10.1016/j.explore.2006.06.004 http://www.explorejournal.com/article/PIIS1550830706003272/abstract
  8. ^ 掲載された"Explore"は霊気や気功なども扱う雑誌である
  9. ^ 2006年6月2日放送
  10. ^まんとら〜マンガ虎の穴〜』まんとら製作委員会 2007年5月4日
  11. ^ 研究所長プロフィール
  12. ^ ししゃかもグループ
  13. ^ 学問の黒板 9/23 日本物理学会 言葉が水の氷結状態と水中元素濃度に及ぼす影響
  14. ^ 水からの伝言にもともと実験はなく「実験じみたこと」があるだけなので、それに対応するのは正確には、再現実験でなく「再現実験じみたこと」となる。Science Walk「ニセ科学の横行を防げ」 読売新聞2006年10月2日夕刊
  15. ^ 物理と社会シンポジウム
  16. ^ 「水からの伝言」と科学立国『化学と工業』2006年9月号、日本化学会(PDF
  17. ^ a b 論説『「水からの伝言」と科学立国』に対する読者からの意見『化学と工業』2006年12月号、日本化学会(PDF)
  18. ^ a b 「江本勝氏に直撃インタビュー」『AERA』2005年12月5日号
  19. ^ 第2回 ウォーター・フォー・ライフ・フェスティバル チラシ(PDF)

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク