歴史法学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
歴史法学(れきしほうがく・de:geschichtliche Rechtsschule/en:historical jurisprudence)とは、19世紀初頭のドイツを中心に起こった歴史主義を採る歴史法学派(れきしほうがくは)と彼らによる法の歴史的研究を重要視する法学を指す。後の法制史研究の源流となった。
先駆者としてフーゴー(en)を挙げることも可能であるが、歴史法学派の祖であり完成者とされるのは、サヴィニーである。彼は法を言語と同じ様に民族共通の確信(民族精神)の発露として捉え、民族の歴史とともに自ずから発展するものであるとして、普遍的な自然法概念を否定した。だが、その主唱者であるサヴィニーの歴史観は、ゲルマン民族の全盛を築き上げたと考える神聖ローマ帝国概念を重視してその法的根拠であるローマ法を純粋なものに還し、そこから近代ドイツに相応しい法体系を導くことにあった。逆にゲルマン民族古来のゲルマン法の価値を認めず、それが混じった中世ローマ法を「文化的に劣った時代の単なる無知と愚鈍の産物」としてこれを排除しようとしたことから、ドイツ民族の根幹にあるゲルマン民族の法であるゲルマン法こそが真の民族精神の発露であり、ローマ法こそ廃棄すべき外来法であるとする意見が台頭し、サヴィニーらのロマニステンとこれに反対するゲルマニステンに分裂することとなった。サヴィニーによって始められた民族精神の強調が偏狭な民族主義と結びつき、後にドイツにおいてはナチズムと結びつくなどの問題点を抱えることとなった。1896年のドイツ民法典制定以後、ドイツ歴史法学派は法学志向と法制史志向に分裂して解体していき、国外においてもイギリスのメイン(en)のように民族精神観念を否定した法制史の確立が図られていった。
[編集] 参考文献
- 世良晃志郎「歴史法学」(『社会科学大事典 19』鹿島研究所出版会、1974年 ISBN 4-306-09170-8)
- 中川徹「歴史法学」(『世界歴史大事典 Encyclopedia Rhetorica 20』教育出版センター、1986年 ISBN 4-7632-4019-6)

