機会平等

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機会均等(きかいきんとう, Equal opportunity)、機会平等(きかいびょうどう)、とは、全ての人々が同様に扱われるべきでるというという理念で、特に「明らかに合理的と見なされているもの」を例外として、人の手による障壁・先入観・嗜好といったものは除外すべきであるという考えである[1]

概要[編集]

思想家はよく機会平等を論じるのにレースを比喩に用いる
米国の公民権運動家キング牧師は、熱烈な機会平等の支持者であった。(ワシントンでのI Have a Dream演説、1963年)

よく「複合的で深慮なコンセプト[2]」とされるこの理念は、重要な仕事は「最も優秀な者」にゆだねられるべきだという考えに基づく。それは、与えられた任務について最も卓越しているとされる人のことであり、生まれた年・生育環境・権力との結びつき[3]・信条・性別[4]・民族性・[4]・人種・身分[5]・非自発的なその個人の要素(障害・年齢・性別など[5][6] )など、非合理的・非専門的とされる、恣意的で関連性のない理由によって人にゆだねるべきではないとする考えである[5][6] 。 昇進のチャンスは、「ゴールとルールの制定という競争の枠組みを設けた、平等な機会[7] 」などという形で、希望する誰にも開かれていなければならないとする[8]

この理念は、選定プロセスから恣意性を排除し、「事前に合意を経た公平性に基づく、個々の専門性に関連した評価過程[3]」を元にした手続き・法的理念を重要視する[5][9]。個人は、その個々の努力に基づいて成功・失敗するべきであり、「外部の資産」(例えば親とのコネクションなど)によって左右されるべきではない[10]とする。 それゆえに縁故主義に反対し[3]、これは社会構造が合理的かを判断する上で重要な役を果たしている[3][3][5][11]

各論[編集]

欧米では機会均等の考えは普及しており、教育雇用医療などあらゆる分野で法律が制定されている。新卒一括採用や高校の指定校推薦など外部の者が不利益を被る仕組みが、日本では黙認されている。これらは欧米では機会均等の原則に反すると考えられる[誰によって?]

様々なタイプ[編集]

機会の形式的平等[編集]

Diagram of equal opportunity formal model.png

機会の形式的平等(Formal equality of opportunity)は[2]、また無差別原則(nondiscrimination principle[12]・直接的差別(direct discrimination[2]、狭義にはアクセス平等(equality of access[2][13]などと呼ばれる。

  • オープンな募集告知(Open call)
ポストの応募は、優秀なアドバンテージを持つ者全てに対して開かれたものでなければならない[14]。求人告知は公的に告知され、応募しようとする優秀な人々に「合理的な機会提供」しなければならない。かつ、全ての応募は受理されなければならない[3]
  • 公平な審査(Fair judging)
応募はそれ自身の長所に基づいて行われ[3]、その過程は最も優秀なものを判定するために設計されていなければならない[14]。応募の評価はそのポストのミッションに沿ったものでなければならない。例えば聖歌隊隊長を選ぶ際には、その評価は髪の色など恣意的な基準よりも、音楽知識によって行われるべきである[3]
  • 適任者として選出(An application is chosen)
他の応募よりも「最も要求事項を満たすもの」を選びだし、その者に対してポストのオファーを行う。この選考過程の結果、ある者が他者が持っていないポストを手にしたという点では不平等ではあるが、だが、この結果は公正な手続きに基づいているのだと合意される。

機会平等においてこの形式的アプローチは、基本的な「原始的(no frills)」「狭義」[5]のアプローチとされ、最低限の基準を述べたものである。これらは公共圏の分野に限定され、家族結婚信条といった私圏には適応されない[5]。一歩進んで、何を持って「フェア」「アンフェア」とみなすべきか[15]ニューヨーク・タイムズではそれに踏み込んだ表現が成されている。

There should be an equal opportunity for all. Each and every person should have as great or as small an opportunity as the next one. There should not be the unfair, unequal, superior opportunity of one individual over another.

Dr. Leonard Hirshberg,The New York Times,1917[16]

この問いかけは経済学者ミルトン・フリードマンローズ・フリードマンらによる1980年の図書『選択の自由(Free To Choose)』でもなされている[17]

機会の実質的平等[編集]

分野[編集]

米国の雇用機会均等法[編集]

アメリカには雇用機会均等委員会(en:Equal Employment Opportunity Commission)があり、面接時に性別・年齢・国籍・家族・身体障害等に関する質問をしてはいけないことになっている。従って、それらの情報を履歴書に書くということもない。アメリカの雇用機会均等法は次の8つの事項により成り立っている。

  1. 公民権法第7条 雇用上の人種・性別・宗教・肌の色・出身国等の理由による差別の禁止
  2. 均等賃金法 性を理由に賃金に差をつけることの禁止
  3. 年齢差別禁止法 40歳から70歳までの人に対する差別的取扱の禁止
  4. 大統領命令11246号 積極的是正策の義務づけ
  5. リハビリテーション法 ハンディキャップによる差別の禁止
  6. ベトナム戦争参加兵士保護法 ベトナム戦争復員兵の差別禁止
  7. 妊婦保護法 妊婦の差別禁止
  8. 移民局改正法 国籍による差別の禁止

脚注[編集]

  1. ^ Paul de Vries (2011-09-12), equal opportunity, Blackwell Reference, http://www.blackwellreference.com/public/tocnode?id=g9780631233176_chunk_g97814051001378_ss1-15 2011年9月12日閲覧。 
  2. ^ a b c d Laura, Laubeová (2000), Encyclopedia of The World’s Minorities, Fitzroy Dearborn Publishers, http://instituty.fsv.cuni.cz/~laubeova/anglicky/research/encyclopedia/equal.htm 2011年9月12日閲覧, "This complex and contested concept..." 
  3. ^ a b c d e f g h Richard Arneson (Aug 29, 2008), Equality of Opportunity, Stanford Encyclopedia of Philosophy, http://plato.stanford.edu/entries/equal-opportunity/ 2011年9月8日閲覧, "(Fall 2008 Edition)" 
  4. ^ a b Yo Jackson, ed. (2006), Encyclopedia of multicultural psychology, Sage Publications, ISBN 1-4129-0948-1 
  5. ^ a b c d e f g Nicole Richardt, Torrey Shanks (2008), Equal Opportunity, International Encyclopedia of the Social Sciences, http://www.encyclopedia.com/topic/Equal_Opportunity.aspx 2011年9月12日閲覧, "via Encyclopedia.com" 
  6. ^ a b equal opportunity, Princeton University, (2008), http://www.thefreedictionary.com/equal+opportunity 2011年9月12日閲覧。 
  7. ^ John W. Gardner (1984), Excellence: Can we be equal and excellent too?, Norton, p. 47, ISBN 0-393-31287-9 
  8. ^ equal opportunity, Collins English Dictionary, (2003), http://www.thefreedictionary.com/equal+opportunity 2011年9月12日閲覧。 
  9. ^ equal opportunity, jrank.org, (2011-09-12), http://www.jrank.org/business/pages/508/equal-opportunity.html 2011年9月12日閲覧。 
  10. ^ Valentino Dardanoni, University of Palermo, Gary S. Fields, Cornell University, John E. Roemer, Yale University, Maria Laura Sánchez Puerta, The World Bank (2006), “How Demanding Should Equality of Opportunity Be, and How Much Have We Achieved?”, Cornell University -- Digital Commons ILR, http://digitalcommons.ilr.cornell.edu/articles/270/ 2012年7月24日閲覧, "(from the abstract:) ...Agreement is widespread that equality of opportunity holds in a society if the chances that individuals have to succeed depend only on their own efforts and not on extraneous circumstances..." 
  11. ^ Marjorie Conley (Sept. 9, 2003), Sciences Po ― an elite institution′s introspection on its power, position and worth in French society, portfolio, http://journalism.nyu.edu/publishing/archives/portfolio/conley/sciencespo.html 2011年9月12日閲覧, "... created new entrance criteria for students coming from less economically favored social strata. ..." 
  12. ^ John E. Roemer (1998), Equality of Opportunity (book title), Harvard College, ISBN 0-674-25991-2, "(see pages 1, 2," 
  13. ^ Cashmore, Ellis, Dictionary of Race and Ethnic Relations, London: Routledge, 1996
  14. ^ a b Mark Bevir (editor) (2010), Encyclopedia of Political Theory, SAGE Publications, "(see pages 452–453)..." 
  15. ^ Research Machines (2009年). “equal-opportunity policy”. Farlex. http://encyclopedia.farlex.com/equal-opportunity+policy 2011年9月12日閲覧。 
  16. ^ Dr. LEONARD K. HIRSHBERG (1917年12月30日). “What "Equal Opportunity to All" Really Means”. The New York Times. http://query.nytimes.com/gst/abstract.html?res=F10710F6355E11738DDDA90B94DA415B878DF1D3 2011年9月8日閲覧。 
  17. ^ Milton Friedman, Rose D. Friedman (1980), Free to choose: a personal statement, Harcourt 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]