楽興の時 (シューベルト)

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楽興の時』(がっきょうのとき、Moments MusicauxD780は、シューベルトが作曲した6曲構成のピアノ曲集。1823年から1828年にかけて作曲された。日本では多くのCMで採用され、広く知られている。特に第3番ヘ短調が名高い。

第1番ハ長調[編集]

三連符が中心となる三部形式。変化に富む曲調であり、装飾音が多く、演奏には技術が必要である。両手三連符によるト長調の穏やかな中間部が、落ち着きのない主部との素晴らしい好対照を成す。

第2番変イ長調[編集]

8分の6拍子。シチリアーノのリズムを基本としている。ロンド形式をとり、変イ長調の穏やかな主部に、嬰ヘ短調のエピソードが2度挿入されるが、2度目は突発的な激情の爆発に始まり、非常に印象深い。シューベルトは穏やかな曲にこうした激情的な部分を挿入する事が多い。

第3番ヘ短調[編集]

4分の2拍子。6曲中最も知られている。シューベルトの存命中から愛好され「エール・リュス」(ロシア風歌曲)として有名であった。三部形式で左手の単調な伴奏を背景に右手が重厚な和音を歌う。NHKラジオ放送「音楽の泉」の主題曲としてもおなじみ。編曲次第では野卑な感じを与える。映画「カルメン故郷に帰る」でも用いられた。レオポルド・ゴドフスキーがこの曲をより複雑にした編曲を残している。また、常磐線いわき駅の発車メロディに採用されている。

第4番嬰ハ短調[編集]

4分の2拍子。右手の無窮動風の旋律を左手の単調な伴奏が支える構図である。しかしスタッカート奏法で右側ペダルを使わない個所が多く、演奏には訓練が必要である。中間部は変ニ長調の伸びやかな部分。エンハーモニックな転調が多い。

第5番ヘ短調[編集]

4分の2拍子。行進曲風の進撃的な主題。途中は転調が激しく扇情的に進行する。

第6番変イ長調[編集]

4分の3拍子。落ち着いた間奏曲。エンハーモニックな転調が多い。中間部は変ニ長調ユニゾン。速度指定はアレグレットであり、通常は5~6分の演奏時間であるが、内田光子リヒテルはたいへん遅いテンポで10分以上かけ、瞑想的に演奏している。