森銑三

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森 銑三(もり せんぞう、明治28年(1895年9月11日 - 昭和60年(1985年3月7日)は在野の歴史学者書誌学者

目次

[編集] 人物

森は子供の頃から利発で小学校時代の成績も抜群であったが旧制中学への進学を選択せず高等小学校に学んだ。実家は小さいながら呉服商を営んでおり決して貧家ではなく、少年時代の森にふんだんな書物を与えたのも彼の両親であった。しかし当時は森の地元刈谷に旧制中学が設立されておらず進学を希望するならば近隣の岡崎で下宿する以外になく、小商人の子弟がその選択肢をとることが様々な意味で困難であったという時代的背景があった。惜しんだ小学校の教師が旧制中学への中途編入に奔走したほど森の才能と性質は評価されまた愛されていたのだが、結局叶わず高等教育を受ける機会を逸した。

しかし紆余曲折を経ながらも独学で文学国史に勤しみ、図書館臨時職員、代用教員、雑誌編集など様々な職に就きながら、徐々にその実力が認められるよになり、精力的に執筆活動を続けた。

能力に優れていたのみでなく篤実そのものであった人柄から師にも恵まれ、次第に在野の巨人とまで称される学者へと成長を遂げた。

そして学者として優れていただけではなく、その生涯は公私にかかわらず一貫して華美を嫌い清廉な姿勢で貫かれていた。

作家永井荷風は、「森さんのような人こそ、真の学者である」と評している。 荷風は他人を信用せず他人を誉めることなどほとんどなく先輩作家の中でも認めていたのは森鴎外幸田露伴のみであったが、森の誠実な仕事ぶりを高く評価しての言葉であろう。

今日彼の残した膨大な人物伝典籍の精密な著述は、江戸・明治期の風俗研究、人物研究を行う上での基点となり、いわゆる江戸学の始祖の一人と目されており、江戸風俗研究家・漫画家の杉浦日向子は森を深く敬愛していた。

森の著述は歴史小説家たちにとっても、作品を書く上での必須の資料になっている。このことについて森自身は概ね好意的に受け止めていたが、大げさな表現を用い出典もろくに記さず根本資料から調べ上げたような態度で独善的な史観を展開する、著名歴史小説家の姿勢には批判的であった。

後年は井原西鶴の研究に注力、徹底した考証検討から西鶴自身の作品は唯一『好色一代男』のみであり、他は監修であると唱えたが、未だ学会では正式には認知されていない。

だが近年に至り、井原西鶴の作品について森の主張を裏付ける研究成果が徐々に現れ始めている。 多くの作品においては西鶴が監修のみ行った可能性が出てきているのである。

この面での主な関係著作は、『西鶴本叢考』 (東京美術)、『西鶴一家言』(河出書房新社)、『西鶴三十年』(勉誠社)、『一代男新考』(冨山房)があり、大半は『著作集続編 第4巻 西鶴論集』(中央公論社)に収録している。

[編集] 略歴年譜

  • 1895年、愛知県刈谷市に生まれる。
  • 1910年、刈谷高等小学校卒業後、叔父を頼って上京。工手学校(現工学院大学)に入るもすぐに体調を崩し帰郷。文学に目覚める。
  • 1915年、刈谷市の図書館に雇われ、村上忠順旧蔵書(村上文庫)の整理、古版本古写本などの分類目録を作る仕事に携わる。その後、隣接する刈谷小学校の代用教員として教壇に立つ。
  • 1918年、東京の雑誌社からの誘いを受けて上京し、雑誌記者となり『帝国民』の編集をなすが、すぐのちに高崎市南小学校の代用教員となる。ここで気の合った同僚と童話雑誌『小さな星』を刊行するも問題となり解雇される。
  • 1920年、刈谷に戻り、市立名古屋図書館に勤めるうち、知人の紹介で地元紙『新愛知』に『偉人暦』という記事を一年間連載。
  • 1925年、31歳のとき、上野にある文部省図書館講習所(現在は筑波大学情報学群知識情報・図書館学類)に入学する。一年後同所を卒業、歴史学者辻善之助の紹介を受けて東京帝国大学史料編纂所の図書係となる。ここで松岡於菟から指導を受ける。40歳を記念して『近世文芸史研究』を出版。また『子供の科学』、『赤い鳥』に執筆し、『おらんだ正月』を上梓する。在職13年で編纂所を退職。
  • 1939年、名古屋市立図書館長阪谷俊作と知りあい蓬左文庫目白徳川邸)主任となる。在任する傍ら『渡辺崋山』、『佐藤信淵』を発表。学会の物議を醸す。1942年、蓬左文庫を辞して執筆業に勤しむ。
  • 1943年、50歳の時、随筆集『月夜車』を出版。
  • しばらく、上野図書館に日参し執筆を続けるが、太平洋戦争が始まり、自宅に留まるようになる。
  • 1945年、自宅が空襲に見舞われ膨大な研究資料を焼失。
  • 1947年、反町茂雄と偶然再会し、古書肆弘文荘に勤務することとなり、反町が所有する湘南藤沢鵠沼海岸に転居、終生互いに支えた。仕事の傍ら、精力的に執筆を再開。
  • 1950年より15年間は、早稲田大学講師(書誌学)として、教壇に立ち後進の育成にあたった。
  • 1970年~72年、『森銑三著作集』(全13巻)を、中央公論社から刊行。1972年に読売文学賞を受賞。
  • 尚、終生にわたり『随筆百花苑』(中央公論社)、『日本随筆大成』(吉川弘文館)や『人物逸話辞典』、『随筆辞典5 解題編』(東京堂出版)など多数の編著・編纂を行っている。
  • 1985年、脳軟化症のため死去。愛知県刈谷市正覚寺森家墓地に眠る。後に弟子・知人により神奈川県藤沢市鵠沼神明<万福寺>に、夫妻の墓が建てられ分骨された。
  • 1992年~95年、中央公論社で『森銑三著作集 続編』(全17巻)が刊行。

[編集] 主要な著書

[編集] 単行本

  • 『近世文芸史研究』(弘文荘, 1934年)-処女作、反町茂雄の元で刊行。
  • 『おらんだ正月』(冨山房, 1938年)-戦後角川文庫等で再刊
※新版は、冨山房百科文庫 1978年、岩波文庫、2003年
  • 『大雅』(アトリエ社, 1939年)
  • 宮本武蔵言行録』(三省堂, 1940年)
  • 『伝記文学 初雁』(三省堂, 1941年) 講談社学術文庫、1989年
  • 『書物と江戸文化』 (大東出版社[大東名著選], 1941年) 
  • 渡辺崋山』(創元選書, 1941年、改訂版1961年) 中公文庫、1978年・1988年
  • 『新橋の狸先生 私の近世畸人伝』(二見書房, 1942年)  
※新版は、小出昌洋編・解説.岩波文庫、1999年
  • 佐藤信淵 疑問の人物』(今日の問題社, 1942年)
  • 塙保己一』 (三国書房, 1942年)
  • 『近世高士伝』 (黄河書院, 1942年)
  • 『典籍叢話』 (全国書房, 1942年)
  • 『江戸時代の人々』 (大東出版社, 1942年)
  • 『近世の画家』 (大東出版社[大東名著選], 1942年)
  • 『古酒新酒』 (柴田宵曲と共著、成史書院,1942年)-※柴田は終生の友人
  • 『日本人の笑』 (柴田等と共著、三省堂,1942年) 講談社学術文庫、1990年
  • 宮本武蔵の生涯』 (三国書房,1942年) 三樹書房〈やまと文庫11〉、1989年
  • 『月夜車』 (七丈書院,1943年)  
  • 『書物と人物』 (熊谷書房, 1943年)
  • 『学芸史上の人々』 (二見書房, 1943年)
※復刻版.紀田順一郎監修・解説、〈日本人物誌選集13〉クレス出版、2008年
  • 『近世人物叢談』 (大道書房, 1943年)
  • 松本奎堂 天誅組の総裁』 (電通出版部, 1943年) 中公文庫、1978年
  • 『古書新説』 (七丈書院, 1944年)
  • 『書物』 (柴田宵曲と共著、現代生活群書・白揚社, 1944年)
中村真一郎解説で、岩波文庫1997年、ワイド版岩波文庫、2001年
  • 『星取棹 我が国の笑話』(積善館, 1946年) 筑摩叢書、1989年
  • 中納言の笛』(青雲書院, 1948年)
  • 西鶴研究 第1-10集』(古典文庫,1948-57年)-私家版
  • 『古い雑誌から』 (文藝春秋新社、1955年)
  • 『西鶴と西鶴本』(元々社〈民族教養新書〉、1955年)
  • 『伝記走馬燈 近世の人物』(青蛙房、1956年)
  • 井原西鶴 人物叢書』(吉川弘文館、1958年、新装版1985年) 
  • 『近世人物夜話』(東京美術、1968年) 講談社学術文庫、1989年
  • 『明治人物夜話』(東京美術、1969年) 小出昌洋編・解説で岩波文庫、2001年
※上記2冊は講談社文庫で再刊、初版1973年。
  • 『明治東京逸聞史』 (全2巻、平凡社東洋文庫, 1969年、ワイド版2004年)
  • 『西鶴本叢考』(東京美術,1971年)
  • 黄表紙解題』 (正.続、中央公論社, 1972-74年)   
  • 『西鶴一家言』(河出書房新社,1975年)
  • 『思ひ出すことども』(中央公論社,1975年、中公文庫 1990年)
  • 『西鶴三十年』(勉誠社,1977年)
  • 『一代男新考』(冨山房,1978年)
  • 『読書日記』(出版科学総合研究所,1981年)-戦前に掲載された公開日誌
  • 『明治写真鏡』 (日本古書通信社,1982年) ※文庫版・限定500部
  • 『瑠璃の壷  森銑三童話集』 (三樹書房, 1982年)-大著
  • 『明治人物閑話』(中央公論社,1982年、中公文庫、1988年、同改版2007年)
  • 斎藤月岑日記鈔』 (汲古書院, 1983年)
  • 『瓢箪から駒 近世人物百話』 (弥生書房, 1983年)
  • 『武玉川選釈』 (弥生書房, 1984年)
  • 『新版 月夜車』 (弥生書房, 1984年)
〔没後刊行〕
  • 『史伝閑歩』 (中央公論社、1985年、中公文庫、1989年)
  • 『木菟 随筆集』 (六興出版, 1986年)
  • 『砧  随筆集』 (六興出版, 1986年)
  • 『人物くさぐさ』 (小澤書店, 1988年)
  • 『びいどろ障子』 (小澤書店, 1988年)
  • 『書物の周囲』 (研文社,1988年)-※「書物」の新編本
  • 『物いふ小箱』 (筑摩書房, 1988年/新編.講談社文芸文庫, 2005年)
  • 徳川家康』 (森銑三紀念文庫:個人社, 1991年)
  • 『森銑三遺珠』 全2巻 (研文社, 1996年)
  • 『偉人暦』 上下巻 (中公文庫、1996年)-※以下各.小出昌洋編・解説
  • 『偉人暦 続編』 上下巻 (中公文庫、1997年)
  • 『古人往来』(中公文庫、2007年) 
  • 『風俗往来』(中公文庫、2008年) 
  • 『落葉籠』 上下巻 (中公文庫、2009年) 

[編集] 著作集

  • 『森銑三著作集』 全12巻別巻1 (中央公論社、1970-72年)
     ※中村幸彦等の編集。第23回読売文学賞受賞(研究・翻訳部門)
    初版は函入、カバー装で普及版と新装愛蔵版を刊行。別巻は、人名・書名の索引・著作目録ほか。
  • 『森銑三著作集 続編』 全16巻別巻1 (中央公論社、1992-95年)
     ※小出昌洋等の編集。カバー装、正編以降の著書、未収録の著作等を集大成。別巻は、初期文集・総索引ほか。

[編集] 訳書

  • 『古典日本文学全集 第35.江戸随想集』 筑摩書房, 1961年、普及版1967年-解説「江戸時代の随筆」
     「室鳩巣 駿台雑話」、「同 飛騨山」、「岡村良通 寓意草」、「建部綾足 折々草」
     「清田タン叟 孔雀楼筆記」 「橘南谿 北窓瑣談」、「伴蒿蹊、閑田耕筆」、「石原正明 年々随想」
     「菅茶山 筆のすさび」、「松平定信 退閑雑記」、「林述斎 述斎偶筆」を訳す。  
  • 『十六桜  小泉八雲怪談集』  森銑三・萩原恭平訳 (研文社, 1990年)

[編集] 校訂書

以上すべて岩波文庫。

[編集] 編著

  • 『人物逸話辞典』 上下巻 東京堂出版
  • 『明治人物逸話辞典』 上下巻 東京堂出版 
  • 『大正人物逸話辞典』 東京堂出版
  • 『随筆辞典.第5巻 解題編』 東京堂出版  
  • 『続・日本随筆大成』(北川博邦と共編、全12巻、別巻12) 吉川弘文館
  • 『近世人名録集成』(全5巻) 勉誠出版

[編集] 伝記資料

  • 勝尾金弥『森銑三と児童文学』(大日本図書、1987年)
  • 柳田守『森銑三 書を読む野武士』(リブロポート、1994年)
  • 森田誠吾『明治人ものがたり』(岩波新書、1998年)
  • 雑誌『ももんが』昭和61年4月號「森銑三氏追悼特輯」(乙骨書店、1986年)
  • 『森銑三生誕百年 没後十年記念展』(藤沢市辻堂市民図書館、1995年)
  • ビデオ『学問と情熱8 森銑三』(紀田順一郎監修、紀伊國屋書店、1998年)
※ナレータ野際陽子、のちDVDが廉価再版された。   
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