棒鱈 (落語)
棒鱈(ぼうだら)は、古典落語の演目のひとつ。原話は不明だが、かなり古くからある話であることは間違いないだろう。
主な演者には8代目春風亭柳枝や10代目柳家小三治 、8代目橘家圓太郎などがいる。
注意:以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。免責事項もお読みください。
目次 |
[編集] あらすじ
寅さんと熊さんの江戸っ子二人連れが、とある料理屋でお酒を飲んでいると、突然隣室からすさまじい声。
「琉球へおじゃるなら 草履はいて おじゃれ 琉球は 石原 小石原♪」
言葉遣いから察すると、どうも相手は薩摩あたりの侍らしい。静かになったと思ったら、どうも芸者が来た様子。
壁が薄いせいか隣の会話がそっくりそのまま聞こえてくる。
寅さんのほうは冷静に聞き流しているが、熊さんのほうはもうイライラしっ放しだ。
[編集] 田舎侍の部屋
「あなたのお好きなものは?」
「おいどんの好きなのは、エボエボ坊主のそっぱ漬、赤ベロベロの醤油漬けじゃ」
[編集] 江戸っ子の部屋
「『エボエボ坊主』がタコの三杯酢で、『赤ベロベロ』がマグロの刺し身だと? おい、聞いたかい。あの野郎の言いぐさをよ!!」
「よせ。相手に聞こえるぞ」
「なに、聞こえたかってかまうもんか。馬鹿!!」
[編集] 田舎侍の部屋
「いま、隣でみどもの事を『バカ』と呼んだな」
「隣は隣でございますよ。それより、三味線を弾きますから何か聞かせてくださいな」
「うむ。では、【百舌の嘴】というのはどうだ?」
「マァ、面白そうでございますね」
「モーズがクーツバシ、サーブロヒョーエノナーギナタ、サーセヤ、カーラカサ、タヌキノハラツヅミ、ヤッポコポンノポン」
[編集] 江戸っ子の部屋
「おい、あれが日本の歌かい? 何かが絞め殺されたのかと思ったぜ!」
「聞こえるぞ」
「構うものか。どうせ歌うんなら、もっと色っぽいものを歌えってんだ。例えば都都逸なんかどうだ?」
「フーン…」
「明けの鐘 ゴント鳴るころ 三日月形の 櫛が落ちてる 四畳半」
[編集] 田舎侍の部屋
「マァ、お隣の方、負けない気でございますよ」
「負けるわけにはいかん。別なのを歌うから、お前らも手拍子取れよ」
「はいはい」
「おしょうがちいが、松飾り、にがちいが、テンテコテン♪」
[編集] 江戸っ子の部屋
「頭が変になりそうだ! もう勘弁できねぇ!!」
とうとう熊の堪忍袋の緒が切れ、『隣座敷のテンテコテンが、どんなツラをしてるか見てくる』と息巻き、寅さんが止めるのも聞かずに出かけていく。
廊下に出て、隣室の襖を細めに開けた…つもりが、酔っているせいか勢いあまり、襖ごと侍と芸者の間にドターン!!
[編集] 田舎侍の部屋
「何だぁ? 今日は、人間が降ってくる天気じゃあるまいし」
侍が頓珍漢な事を言ったので、江戸っ子の怒りは大爆発!
「何ォ言ってやがるんでえ。てめえだな。さっきからパアパアいってやがんのは。酒がまずくならあ。マグーロのサスム、おしょうがちいがテンテコテンってやがら。ばかァ」
侍もカチンとなり、「真っ二つにする」と喚くのを芸者が必死に抑えて大騒ぎ。
「斬れるものなら斬ってみろ! 斬って赤くなかったら、銭はとらねえ、西瓜野郎ってんだ。さあ、斬りゃあがれッ」
丁度そのころ、階下の厨房では料理人が『タラもどき』なる料理を作っていた。
仕上げに胡椒を振りかけている所で、上から「喧嘩だ!」という大声聞こえてきたものだから、あわてて胡椒を持ったまま二階に上がってきてしまった。
「まあ、だんな、どうかお静かに。ま、ま、親方。後でお話いたしますから」
料理人が手を振るのにあわせて、持っていた胡椒が部屋中にふわふわ…。
「ベラボウめ、テンテコテンが、ハックション」
「ま、けがをしてはいけませんから、ハックション」
「無礼なやつめ。真っ二つにいたしてくれる。それへ、ハックション」
「まあまあ、みなさん、ハックション」
なんだか静かになったようなので、気になった階下の客が「二階の喧嘩、どうなりました?」。
「あー、いま丁度、胡椒(故障=邪魔)が入ったところです」
[編集] 演題の由来
「棒鱈」そのものはこちらを参照。
俗語で『酔っぱらい』、転じて「阿保」・「野暮天」を指す言葉で、侍のあつらえた料理とひっかけた題名になっている。