高麗棒子

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高麗棒子
各種表記
繁体字 高麗棒子
簡体字 高丽棒子
拼音 Gāolí bàngzi
発音: ガオリーバンズ
日本語読み: こうらいぼうし
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高麗棒子(こうらいぼうし、ガオリーバンズ、: 高麗棒子拼音: Gāolí bàngzi: 고려봉자)、あるいは韓国棒子한국봉자)、朝鮮棒子조선봉자)は、主に中国人が使う韓国・朝鮮人の蔑称。省略して棒子とも言う。

台湾コンビニエンスストアなどでは高麗棒子の商品名で韓国風海苔巻きが販売されている。中華圏では認知度の高い語彙で多用されるが、侮蔑語であるため現在でも中華人民共和国に住む朝鮮族は、この言葉を嫌っている。ほぼ同義の言葉に『二鬼子』がある。

用法[編集]

戦前・戦中[編集]

高麗棒子の語源について、中国の歴史学者羅継祖は著書『楓窗脞語』でこう述べている。

「解放前から、朝鮮人・韓国人のことを高麗棒子と呼んでいたが、その意味が判然としなかった。解放後で禁止用語になったので、美称ではないことを知った。だがその意義が曖昧なままだった。後に王一元の『遼左見聞録』を拝読し、その記載によると『朝鮮朝貢使と従者以外にも、使い走りの者で棒子と呼ばれる者が居る。その国では婦女が淫行罪を犯したら、刑罰として公営の売春宿で働かせ、そこで生まれた子が棒子と呼ばれ、一般人に蔑視されている。頭巾の使用が禁止されるので頭髪とヒゲが常に散乱し、馬や車両に乗るのも禁止されるので萬里の道でも徒歩で歩く、火炕や布団の使用も禁止されるので藁や乾草で床で寝る。つまりその国の賎民で下級労働者なり。』それでやっと棒子は元々私生児を指すことを知った、そしてそれは世代沿襲の身分でもあり、遂に自ら社会階層の一つと成った。」 — 羅継祖楓窗脞語(中華書局、1984)
万宝山事件後の朝鮮人報復事件に際して中国で発行された排日ポスター。「倭奴嗾使(そそのかす)鮮人惨殺我同胞之血痕」と書いてあり、当時の中国人の朝鮮人観が表現されている。

満州国では警察官に朝鮮人も採用していた。朝鮮人警察官は、主に朝鮮で洗濯に使う棒を武器として警備をし、事実上の支配国であった日本の威を借りて横暴な態度を取っていたため、現地の中国人達は警官の携帯する武器の棒より「高麗棒子」と蔑称した[1][2]。鄭判龍によると奪った土地が入植者である朝鮮人(日本国籍)に貸されていたため、満州での土地を奪われた中国農民の朝鮮人への憎悪は強く、東北地方の匪賊は「高麗棒子は全部殺す」と宣言していたという[3]

早稲田大学が所蔵する、清朝の乾隆十六年版『皇清職貢圖』第一冊の中に、「朝鮮国民婦」図の後ろのページに「朝鮮国民人,俗呼を高麗棒子と為す。」と記載されている(中国語版を参照)。

また、中国では昔から人を「棒槌」と罵る習慣がある。棒槌とは洗濯用のずっしりとした棒で、人を罵る際の意味は日本語の「頭でっかち」と似ている。

現在[編集]

高麗棒子(棒子)は現在でも中華圏で用いられている。

2008年北京オリンピック野球準決勝の日本対韓国戦で中国のネチズンは日本を応援し、中国の最大インターネット検索サイト「百度」の野球フォーラムには「韓国人を高麗棒子と侮蔑」し、「棒子を殺してしまえ!」といった内容が書き込まれた。中国の主要コミュニティに載せられるコメントの90%以上は「韓国人は破廉恥な民族であり、中国が打倒すべき対象」といった内容だった[4]。これらに対して韓国側は「中国ネチズンは韓国人を高麗棒子と呼ぶ。その語源は明確でない。はっきりとしているのは中国人が韓国人を侮蔑する表現である点だ」として、「歴史的に自国の属国に値すると考えてきた韓国の速い経済成長に対する嫉妬心があり、一方では中国人の根深い被害意識のために表れている反応のようだ」と分析している[5]

2012年6月18日に、台湾の鴻海精密工業会長郭台銘が、シャープとの技術提携を発表するに当たって「私は日本人を尊重している。日本人は決して後ろから刺したりしない。しかし、高麗棒子は違う」と発言している[6][7]。これに対して『朝鮮日報』は、韓国人を蔑視するものであると批難した[6][7]

2017年、中華人民共和国は、韓国が終末高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備を決めたことに対して官民挙げての報復を行ったが、『中央日報』によると、3月14日、あるオンライン・コミュニティには、中国のあるホテルの入り口を撮影したという説明とともに写真2枚が掲載され、ホテルの入り口と見られる場所に大韓民国の国旗が敷かれて、国旗を踏まないことにはホテル内に入ることができないようになっており、旗には中国語で「踩死韓国棒子(韓国の奴らを踏み殺そう)」と記されていた。別の写真では、建物入り口の横に掲げてある営業中という案内とともに「棒子与狗不得入内!(犬と韓国人は無断出入を禁ず)」という内容の案内も添えられていた[8]

脚注[編集]

  1. ^ 「韓国・朝鮮と日本人」若槻泰雄
  2. ^ “【噴水台】高麗棒”. 中央日報. (2008年8月28日). http://japanese.joins.com/article/975/103975.html 
  3. ^ 李海燕『戦後の「満州」と朝鮮人社会 : 越境・周縁・アイデンティティ』御茶の水書房、2009年。ISBN 9784275008428 
  4. ^ “中国ネチズン、野球・韓日戦で日本を応援(1)”. 中央日報. (2008年8月25日). オリジナルの2013年2月26日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130226162314/http://japanese.joins.com/article/842/103842.html 
  5. ^ “中国ネチズン、野球・韓日戦で日本を応援(2)”. 中央日報. (2008年8月25日). オリジナルの2021年8月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210824003941/https://japanese.joins.com/JArticle/103843 
  6. ^ a b “"샤프의 첨단 기술 삼성보다 우수… 日·대만 협력해 삼성 LCD 이길 것"” (朝鮮語). 朝鮮日報. (2012年6月20日). オリジナルの2012年6月23日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120623215403/https://biz.chosun.com/site/data/html_dir/2012/06/19/2012061902760.html 
  7. ^ a b “「日台協力でサムスンに勝つ」 鴻海会長が宣言”. 朝鮮日報. (2012年6月20日). オリジナルの2012年6月22日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120622181210/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/06/20/2012062000483.html 
  8. ^ “中国ホテル、入口に太極旗 「踏み殺そう」”. 中央日報. (2017年3月15日). オリジナルの2020年11月12日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20201112032653/https://japanese.joins.com/JArticle/226872 

関連項目[編集]