カジノキ

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カジノキ
カジノキの果実
分類APG
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: バラ目 Rosales
: クワ科 Moraceae
: コウゾ属 Broussonetia
: カジノキ B. papyrifera
学名
Broussonetia papyrifera (L.) L'Hér. ex Vent. (1799)[1]
和名
カジノキ(梶の木)

カジノキ(梶の木[2]学名: Broussonetia papyrifera)は、クワ科コウゾ属の落葉高木。単にカジ(梶)またはコウ(構)ともよばれる。枝の繊維は和紙の原料として用いられる。

名称[編集]

和名「カジノキ」は、コウゾが古くは「カゾ」といい、本種はそれが転訛した名だといわれている[3]中国名は「構樹」[1]

古い時代においてはヒメコウゾとの区別が余り認識されておらず、現在のコウゾはヒメコウゾとカジノキの雑種といわれている。また、江戸時代日本を訪れたフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトもこの両者を混同してヨーロッパに報告したために今日のヒメコウゾの学名が「Broussonetia kazinoki」となってしまっている。

分布・生育地[編集]

原産地は不明であるが[2]日本中国台湾に分布し、日本国内では中部地方南部以西の本州四国九州沖縄に分布する[4][3]。山野に自生するが、日本には古くから栽培されていたものが野生化したものとみられており[4]、野鳥の糞から芽生えた若木がよく目立つ[2]。自然分布以外でも、人の手によって植栽されて庭や公園に植えられているものも見られる[4]

特徴[編集]

落葉広葉樹の高木で[4]、樹高はあまり高くならず、10 - 12メートル (m) ほどになる[3]樹皮は灰褐色で黄褐色の皮目があり、若木には褐色のまだら模様が入り、縦に短く裂けて浅い筋が入る[2]。一年枝はうぶ毛が多く生えるか、まばらに生えている[2]は大きく、楕円形から広卵形で若木では浅く3 - 5裂し、表面に毛が一面に生えてざらつく[4][3]。左右どちらかしか裂けない葉も存在し、同じ株でも葉の変異は多い。葉柄は長く、2 - 10センチメートル (cm) ほどある[4]

開花時期は5 - 6月[4]雌雄異株[3]。雄花序は長さ4 - 8 cmの穂状に下垂し、淡緑色[3]。雌花序は直径2 cmほどの球状につき、紅紫色の花柱がのびている[3]。果期は9月[3]果実は直径2 - 3 cmほどの集合果で、秋に赤く熟して食用になる[4][3]

冬芽は互生し、三角形で毛が多く生え、暗褐色をしている2枚の芽鱗に包まれている[2]。冬芽の下にある葉痕はやや大き目の心形や半円形で、維管束痕は多数輪状に並ぶ[2]。葉痕の肩の部分に托葉痕があり、しばしば托葉が残っていることもある[2]

用途[編集]

古墳時代には栲樹(たくのき)と呼ばれて木皮から木綿を作っており、栲樹が豊富だった豊国大分県)の「柚富」(ゆふ)の地名はこれに由来する[5]

古代からに捧げる神木として尊ばれていた為、神社の境内などに多く植えられ、主として神事に用い供え物の敷物に使われた。

樹皮は繊維が強く、コウゾと同様に和紙繊維原料とされた[4][2]中国の伝統紙である画仙紙(宣紙)は主にカジノキを用いる。

煙などにも強い植物であるため、中国では工場や鉱山の緑化に用いられる。

ブタウシヒツジシカなどの飼料(飼い葉)とする。

文化[編集]

カジノキは神道では神聖な樹木のひとつであり、諏訪神社などの神紋や日本の家紋である梶紋の紋様としても描かれている。また、昔は七夕飾りの短冊の代わりとしても使われた。

脚注[編集]

参考文献[編集]

  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、189頁。ISBN 978-4-416-61438-9 
  • 西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』 5巻、学習研究社〈増補改訂 ベストフィールド図鑑〉、2009年8月4日、98頁。ISBN 978-4-05-403844-8 
  • 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、110頁。ISBN 4-522-21557-6 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]