枕投げ
枕投げ(まくらなげ)は、複数人で枕を投げ合う遊戯である。複数の参加者と、適当な広さの場所、十分な数の枕があれば実行できる。また、チームを組んで行うこともある。移動教室や修学旅行などの学校の宿泊行事で、しばしば教師の目を盗んで行われる。枕合戦とも呼ぶが、これはピローファイト(枕叩き)を意味する場合もある。 また、近年ではマット・フェンシングが類似の遊戯として注目を集めている。[要出典]
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[編集] 歴史
枕投げの歴史は、現在のところ、ほとんど分かっていない。「枕投げ」という言葉そのものも、多くの国語辞典には未記載の語であり[1]、文献上の初出例も明らかでない。
物を投げ合う習俗そのものは古くから存在した。中世の「飛礫(つぶて)打ち」もそのひとつで、祭礼などのハレの行事や、一揆や打ち壊しにあたっての「石打(いしうち)」などが記録に残る。遊戯的なものとして、2組に分かれて石を投げあう「石合戦」もあった[2]。
また、雪玉を投げ合う「雪打ち」と称する習俗も、すでに中世の資料に見られる(『御湯殿上日記』の文明年間の記事など)。これが、明治時代以降の資料では「雪投げ」「雪合戦」と称され、今日でも子どもの遊びとして盛んに行われている。
しかしながら、投げる道具として枕が選ばれたのは、それほど古いことではないと考えられる[誰?]。近代になって輸入・生産された西洋型の枕であれば、これを投げ合うことが可能である。
枕投げが修学旅行と関係が深いことを考えても、その起源は、修学旅行の実施された明治時代よりは新しい風俗と推定されるが[誰?]、それがいつ頃かは、決定的な資料がない。旧制高校の慣習には、きわめて乱暴なものが多かったことから、合宿時などには枕投げが行われたとしてもおかしくはない[要検証]。しかし、実際に枕投げがなされたかどうかを語る資料は現れていない。
第二次世界大戦後は、そもそも修学旅行の余裕すらない時期が続いたが、団塊の世代が修学旅行の時期を迎える1950年代末から1960年代には、すでに枕投げが人気を博していた模様である。西鉄観光バス(福岡県)が2004年、現在の団塊世代向けに修学旅行を再現する旅行を企画したところ、再現の要望が一番強かったのが旅館での枕投げだったという[3]。
1960年代から1970年代には、枕投げは、修学旅行中に行う遊戯として定着をみていたものらしい[要検証]。戦後教育が定着し、行事の場で児童・生徒の自由度が広がるとともに、枕投げの習慣が全国に広がったことは十分考え得る。しかし、普及の要因などについて確定的なことは明らかでない。
1980年代以降、漫画やテレビアニメーション(とりわけ「学園もの」の分野)で、学校生活の風物詩の描写としてしばしば枕投げが現れるようになる。このころにはすでに、子供の間だけで流行するサブカルチャーの地位を脱して、一般に認知される風俗となっていたと考えられる。
[編集] ルール
修学旅行等で児童・生徒が行う枕投げは、ごく簡単なルールから成り立っている。基本的には、2人以上が複数のチームに分かれて枕を投げ合うことがすべてである。参加者が相手方のメンバーを目がけて枕を投げ、かつまた、相手方から飛んできた枕をかわしたり、受け止めたり、投げ返したりすることで遊戯が成立する。当然ながら、単に枕を相手に投げても、それが投げ返されなければ、枕投げが成立したことにはならない。
比較的大規模なイベント等で行われる枕投げでは、独自のルールが設定されることもある。たとえば、2001年に兵庫県有馬温泉・岡山県湯原温泉・広島県宮浜温泉で順次開催された「温泉旅館まくら投げ世界選手権」[4]においては、あたかも砲丸投げのように、投擲エリアから着地エリアに向けて枕を投げ、飛距離を競うことを目的とした。しかしながら、これは遊戯というよりは競技であり、一般にいわゆる枕投げの概念とは必ずしも相容れない。
また、米ニューヨークやサンフランシスコなどの「ピローファイト」[5][6]の催しが「枕投げ」として紹介されることがあるが、これは、枕で互いに相手を打擲する遊戯ないし一種の格闘であり、一般的に考えられている枕投げとは異質である。中国湖南省長沙市での「枕頭大戦」は、相手に枕を投げたり、相手を枕で打ったりするもので、日本の修学旅行での枕投げと似る部分もあるが、イベントとして戸外で盛大に行われる点が異なっている。
修学旅行等で行われる一般的な形式の枕投げに関しては、公式大会が開催された実績もなく、また、遊戯を普及発展させようとする全国的な統括団体も存在しない。したがって、これまでに公式なルールが制定されたことはない。
一般の球技では、得点を入れるための条件をルールとして設定し、その得点の多少によって勝敗を決する。ところが、枕投げにおいては、得点・勝敗といった、スポーツならば基本的な概念すら曖昧である。スポーツマンシップに則るといった基本姿勢もなく、たまに卑怯な行為があったとしても、それに関する罵詈雑言が応酬されるのみで、遊戯自体は続行されることが多い。
遊戯の開始・終了時間についても、ルールとして定められることはほとんどない。参加者に継続意思があり、かつ外的環境が許せば、原理的には何時間でも継続することが可能である(「展開」の「終了」を参照)。
このような曖昧なルールによって進行する遊戯であるため、投げ合いを開始してしばらくすると、もはや枕投げとは別種の騒乱と呼ぶべき状況になることも往々にしてある。それだけに、参加者個人に応分の自制が求められる遊戯であるといえる。
[編集] 脚注
- ^ 『三省堂国語辞典』では、第6版(2008年)に初めて記載された。これが国語辞典としては初出とみられる。
- ^ 網野善彦 「中世の飛礫について」『異形の王権』 平凡社、1986年8月、pp.124-157。ISBN 4-582-28454-X。初出「中世の飛礫について」、『民衆史研究』第23巻、1982年11月。
- ^ 『読売新聞』西部夕刊 2004年1月22日付「懐かしの修学旅行再現 ガイドは濃紺・白襟 食事はカレー・給食/西鉄観光バス」。なお、枕投げの要望についてバス会社社長は「こればかりはねぇ」とコメントしている。
- ^ ウェブサイト「温泉旅館まくら投げ世界選手権」を参照。
- ^ 「エキサイトニュース」2006年2月21日「NYで枕投げ大会が人気急上昇中!」。
- ^ 「AFPBB News」2009年3月11日「外で枕投げ大会、米サンフランシスコ市当局が「マナー守って」」。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 温泉旅館まくら投げ世界選手権 - 飛距離競争