有用微生物群

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

EMEffective Microorganisms、有用微生物群)とは、1994年琉球大学農学部教授比嘉照夫が命名した微生物資材およびその関連商品の商標である[1][2]Effective Microorganismsとは比嘉による造語である。通称 EM菌

概要[編集]

1986年頃、サン興産業が同社の農業用微生物資材である『サイオン』の効果確認・使用方法の確立を琉球大学の比嘉照夫に依頼。1994年、比嘉はEM(有用微生物群)なる概念を発表した[1]。 EMは、光合成細菌乳酸菌酵母を中心とした様々な抗酸化物質を産生する微生物の複合体である。EMは誰でも簡単に増やすことができるため、増やした液を農業や環境浄化のみならず、生活のあらゆる場面(掃除、洗濯、トイレ、お風呂等)で使用することにより居住環境や衣服も抗酸化的になり、病気にならない場を作ることができる。EMを水や空気のように使う生活を徹底すれば、健康や環境問題の多くは自然に解決されていくと説明している。[3]

2012年日経サイエンス10月号「“特集”マイクロバイオーム─細菌に満ちた私」の中で、人間の身体は微生物に支配されている旨の記載があるように、人も自然もすべて微生物の海の中に生きていて、その微生物のあり方次第ですべてが決まると述べている。[4]

現在、比嘉教授の指導をうけてEMの製造を行っているのは、EM研究機構とEM研究所である[5]

EM研究機構の発表によると、EMは朝鮮民主主義人民共和国、ベトナム、ラオス、ミャンマー、ブータン、エジプト、シリアの7カ国の政府機関と提携し、事業を推進している他、世界55カ国[6]もしくは57カ国[7]で製造が行われている。

原理[編集]

「常識的な概念では説明が困難であり、理解することは不可能な、エントロピー法則に従わない波動」である「重力波と想定される縦波」が「低レベルのエネルギーを集約」し「エネルギーの物質化を促進」する、この「魔法オカルトの法則に類似する、物質に対する反物質的な存在」である「蘇生の法則」ことシントロピー[8]現象がEMの本質的な効果であると比嘉は推定している[9]

また、EMに結界(聖なるものを守るためのバリア)を作る性質があることはEM関係者の間では広く知られていると比嘉は語る[10]

比嘉照夫が主張する用途[編集]

  • 農業…土壌改良、有機農業、減・無農薬栽培[11][12]
  • 家庭…清掃、家庭排水の浄化、生ゴミの堆肥化、ペット等の臭い除去[13]
  • 畜産…糞尿の堆肥化、悪臭除去、動物の食料(エサに混ぜる)[14]
  • 水産…水質の改善やヘドロの減少、臭気の抑制、養殖水槽内の衛生環境の保全。[15]
  • 環境衛生…水質浄化、ゴミ処理、排水処理(これらの宣伝にもかかわらず、EMは水質汚染源である[16]
  • セラミックス…EMを混入させ800℃以上で焼成する[17]。製造過程の高温で滅菌され微生物は死滅するが、「EMの情報は残留している[18]EMは蘇生する[19]
  • 結界…聖なるものを守るためのバリアをつくり、カラス、ヒヨドリ、口蹄疫、鳥インフルエンザを退ける[10]
  • 放射能対策…滅亡の法則エントロピーの極限である放射性物質を、その対極にある蘇生の法則シントロピーの力を備えたEMによって消滅させる[20]
  • 交通安全[21]
  • 地震被害をなくす[21]
  • 電磁波障害の低減[21]
  • 電気代削減[21]
  • 電気製品の機能向上、寿命延長[21]
  • 雷除け[21]
  • 天災がおこらなくなる[21]
  • 健康になる[21]
  • 人間関係が改善する[21]
  • イジメがなくなる[21]
  • 動物が仲良くなる[21]
  • 生命の息吹が感じられるようになる[21]
  • 病人がいなくなる[21]
  • 体調が良くなり、頭も良くなる[21]
  • 人類の抱えるほとんどの難問をすべて解決する[21]

使用事例[編集]

  • 松本市は、松本城のお堀の浄化について、定期清掃の実施、地下水の注水、EM菌の定期散布等を行ったと発表した。[22]
  • 2011年に発生したタイの大洪水では汚水浄化対策に、国策としてEMが使用された。国防省と天然資源・環境省や陸軍が連携してEMを散布するなどした。[23][24]

検証された効果・研究・論文[編集]

  • EM及びEM資材の有効性を評価するためのタイ国内共同研究、その実用性試験と施用の農業及び環境に与える影響[25]

ナパバーン・ノパラットナラポーン、イエンチャイ・ヴァスバート

カセットサート大学研究開発研究所、カセットサート大学農業部、タイ国農務省(バンコク・タイ)

39のプロジェクト、100人近い研究者や職員を総動員して行われた試験。どのEM試料にも光合成細菌やactinomycetes(いわゆる放線菌)が含まれていなかった。「スーパーEM」にて抗微生物活性が認められないことを確認した。さらに植物への病原性のある細菌やカビに対しての効果はなく、蛾やハダニなどの害虫に対しても効果が認められなかった。イネ、トウモロコシ、ソルガム、トマト、ヤードロングビーンに対する試験では成長促進効果は認められなかった。酵素活性については、EMではなくとも、化学肥料で十分な微生物活性が与えられると結論付けられた。藍藻に対する試験では、適切なEM濃度を維持すれば窒素固定率が増加するが、それより高濃度では逆に減少した。また、EM処理によって、植物の生長に寄与するVA菌根の量が減少する事が確認された。

豚やナマズの飼料として与える実験では何の効果も見られなかった。豚の汚水をEM処理して植物への肥料とする実験では、マリーゴールドを除き、化学肥料と比較して著しく収穫量が減少した。

EMと化学物質で処理された水の比較では、平均して農業目的や環境への影響の調査ではそれほどの違いがないことが判明した。EMにはメチルパラチオンやカーボフランといった土壌中に残存する毒性物質を分解する能力は認められなかった。

  • 微生物資材に関する試験の現状と評価[26]

丸本卓哉(山口大学農学部)1995. 7-12 救世EM-1を使用した実験では、ホウレンソウの生育や収穫量に変化は見られなかった。

  • 有用微生物群(EM)の農工水畜産業への利用と環境保全に関する総合的調査

鹿児島大学、宮崎大学、九州大学、琉球大学(開発者比嘉氏が参加)の多くの分野の研究者が参加したこの研究では、EMが土壌改良剤として効果が顕著で、さらに稲作では品質・収量が慣行法より増加する。また、畜産への応用では、悪臭防除と病気予防の効果が確認されるなどの様々な有用性が確認されたと報告している。[27]

  • Use of Effective Microorganisms for Treatment of Domestic Sewage by the Activated Sludge Process

世界救世教が研究に参加している。家庭排水の浄化槽にEMを活用。結果、臭気、汚泥量が減少し、COD等に見られる水質の改善が確認された[28]

  • Long-term effective microorganisms application promote growth and increase yields and nutrition of wheat in ChinaCheng Hua, Yingchun Qi

中国で行われた長期間のフィールド実験では、従来の堆肥と比較して穀物の収量、栄養が増加した。この研究でEMの利用によって有機栄養源の著しい効率的な増加が示されたと報告している。[29]

  • IMPACT OF EFFECTIVE MICROORGANISMS COMPOST ON SOIL FERTILITY AND RICE PRODUCTIVITY AND QUALITY

EM堆肥の効果が米の品質にどう影響するかを調べたこの研究では、EM堆肥の使用により土壌が肥沃化し、米の品質、収量が増加した。また、化学肥料に比べ環境に安全で最適である可能性があると報告している。[30]

  • Laboratory Scale Bioremediation of the Yamuna Water with Effective Microbes (EM) Technology and Nanotechnology

水質汚染が深刻なインドのヤムナ川の水を、EMで処理した実験では、COD、BODの急激な減少を確認。ナノテクノロジーでの処理よりも、EMが化学物質汚染に有効であると発表した。[31]

批判的意見[編集]

非営利団体EMあいち(事務所は比嘉が代表取締役を務める株式会社EM生活と同じ)[32][33]が主体となり河川にEM菌(米のとぎ汁等を含む)を投入している。[34]。 しかし福島県では2008年3月、EM菌(有用微生物群)などの微生物資材について「高濃度の有機物が含まれる微生物資材を河川や湖沼に投入すれば汚濁源となる」との見解をまとめ発表している[35]

日本土壌肥料学会の1996年の「微生物を利用した農業資材の現状と将来」と題した公開シンポジウムにおいてEMが他の資材に比べて効果が低いと報告されるなど効果を疑問視する人も多く[36]タイの試験研究機関の分析結果として、EM資材中に光合成細菌及び放線菌(Actinomycetes)の存在が確認されなかったとされている。

「科学とニセ科学」レジュメ[37]において、万能を謳うことや他の研究者の批判に対する対応に、疑似科学性が見られると批判されている。

「市民のための環境学ガイド」では「似非科学」の一つとして、EM菌が挙げられている[38]

実験的研究によれば、EM菌にはシアノバクテリアの発生を抑制する効果はない[39]

EMセラミックスについては、800℃以上で高温焼成するためEM菌が殺菌されるはずだが、EM研究機構は「焼成後にEM菌が蘇生する」と主張している[19]。しかし800℃の環境中では耐熱性の高い細菌芽胞すら完全に死滅してしまう。

物理学者の大槻義彦はこれらを『新興宗教をベースとしたEM菌詐欺まがいの集団』と呼び『インチキ』『アホ』と評した[40]

批判に対するEM関係者の姿勢[編集]

効果のないニセ科学であるとの批判に対し比嘉は、EMは(批判的な)科学的検証の対象ではないのでEM研究機構の同意なしに検証してはならないと言明している[41]。「EMは効くまで使え空気や水の如く使え必ず効果は表れる」が比嘉の言であり[42]EMは神様」「いいことはすべてEMのおかげ、悪いことが起きたのはEMの極め方が足りないから」と考えることを使用者に要求している[21]。比嘉はEMの効果は「EMは、再現性と普遍性を具備しており、特定な人にしかできないオカルトやマジカルではありません」と主張している。[43]だと主張し、これを非科学的だと批判する「エントロピーの法則に従った科学教の狂信者」に対する「独自の活動の展開」を宣言している[44]。 「エントロピーの法則に従った科学教の狂信者」に対する「独自の活動の展開」を宣言している比嘉は。「比嘉の言うことをすべて信じる」EMの万能性の賛同者の増加をもってEM技術の証明としている[45]反知性主義を参照)。 EM研究所のマニュアルによれば微生物土壌改良資材としての「EM・1」は有機JAS適合資材である[46]。有機JASは有機農畜産物、いわゆる「天然由来」を規格化したものであり、効果を保証したものではない。この手の非科学的な資材は、農林水産省が効果を確認する「登録農薬」の申請にまず通らないため、区分は「肥料」が限度である。

農業用資材としてのEMの開発に関わった、EM製造メーカーの一つであるサン興産業は、EMに効果が無いと周知されるに至った原因は、同社以外(比嘉のEM研究機構、世界救世教のEM研究所)が販売する劣悪な製品[47]の流通にあるとしている[5]。 同社はまた、証明のない効能を吹聴する比嘉の姿勢を、無責任で品位を疑うと、遠回しに批難している[48]

EM研究機構では、1996年頃からの北朝鮮を、EM技術の国家的普及モデルとしている[7]。。しかし、金正日総書記の命令で食料用トウモロコシまで投入した大々的な複合微生物の工場生産を行った北朝鮮は、実際の効果がないとして1999年までに生産を中止している。[49]

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ a b EMって何?”. 2014年4月15日閲覧。
  2. ^ EM研究機構. “EMとは?”. 2014年1月20日閲覧。
  3. ^ 自然に即した生き方の重要性”. 2014年5月23日閲覧。
  4. ^ 特集:マイクロバイオーム”. 2014年5月23日閲覧。
  5. ^ a b なぜEMが効かないのか?”. 2014年4月15日閲覧。
  6. ^ EMとは? EM研究機構”. 2014年3月16日閲覧。
  7. ^ a b 海外展開 EM研究機構”. 2014年4月18日閲覧。
  8. ^ 比嘉の造語である。
  9. ^ 比嘉照夫 (2007年10月1日). “EM情報室 WEBマガジン エコ・ピュア 連載 新・夢に生きる(5)”. 2014年5月23日閲覧。
  10. ^ a b 比嘉照夫 (2010年10月4日). “EM情報室 WEBマガジン エコピュア 連載 新・夢に生きる [40]”. 2014年1月21日閲覧。
  11. ^ EM研究機構 農業利用”. 2014年4月16日閲覧。
  12. ^ Effect of Organic Fertilizer and Effective Microorganisms on Growth, Yield and Quality of Paddy-Rice Varieties”. 2014年4月18日閲覧。
  13. ^ EM研究所 EMWの使い方”. 2014年4月16日閲覧。
  14. ^ EM研究機構 畜産利用”. 2014年4月16日閲覧。
  15. ^ EM研究機構 水産利用”. 2014年4月16日閲覧。
  16. ^ EM研究所 EMWの使い方”. 2014年4月16日閲覧。
  17. ^ Q&A”. 2014年3月16日閲覧。
  18. ^ イーエムジャパン EMセラミックスとは?”. 2014年3月16日閲覧。
  19. ^ a b EM研究機構 (2012年8月27日). “Q&A”. 2013年6月10日閲覧。
  20. ^ 比嘉照夫 (2010年10月4日). “EM情報室 WEBマガジン エコピュア 連載 新・夢に生きる [55]”. 2014年1月25日閲覧。
  21. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 比嘉照夫 (2013年8月9日). “EM情報室 WEBマガジン エコ・ピュア 連載 新・夢に生きる [74]”. 2014年1月25日閲覧。
  22. ^ 松本市公式ホームページ くるくるねっとまつもと”. 2014年5月19日閲覧。
  23. ^ バンコク経済新聞 汚水浄化対策のEM団子、洪水のタイで活躍-各地で無料配布”. 2014年5月19日閲覧。
  24. ^ webecopure 新夢に生きる”. 2014年5月19日閲覧。
  25. ^ 一般社団法人 日本土壌肥料学会”. 2014年6月17日閲覧。
  26. ^ 一般社団法人 日本土壌肥料学会”. 2014年6月17日閲覧。
  27. ^ 科学研究費助成データベース”. 2014年5月19日閲覧。
  28. ^ Use of Effective Microorganisms for Treatment of Domestic Sewage by the Activated Sludge Process”. 2014年5月20日閲覧。
  29. ^ tion of wheat in China”. 2014年5月22日閲覧。
  30. ^ “[http://www.mjae.eg.net/pdf/2008/july/26.pdf IMPACT OF EFFECTIVE MICROORGANISMS COMPOST ON SOIL FERTILITY AND RICE PRODUCTIVITY AND QUALITY]”. 2014年5月22日閲覧。
  31. ^ Laboratory Scale Bioremediation of the Yamuna Water with Effective Microbes (EM) Technology and Nanotechnology”. 2014年5月23日閲覧。
  32. ^ NPO法人データベースNPOヒロバ. “EMあいちの組織概要”. 2013年1月18日閲覧。
  33. ^ 株式会社EM生活. “会社概要”. 2013年1月18日閲覧。
  34. ^ 株式会社EM生活. “「全国一斉EM団子・EM活性液投入」河川浄化イベントin名古屋”. 2013年1月18日閲覧。
  35. ^ 福島民友ニュース (2008年3月8日). “県が初の見解「EM菌投入は河川の汚濁源」”. 2008年3月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年6月8日閲覧。
  36. ^ 日本土壌肥料学会 (1996年8月23日). “1996年 微生物を利用した農業資材の現状と将来 (PDF)”. 2011年6月8日閲覧。
  37. ^ 菊池誠 (2004年7月28日). “「科学とニセ科学」レジュメ(ver.2)”. 2011年6月8日閲覧。
  38. ^ 安井至 (2004年9月19日). “マイナスイオン定点観測”. 市民のための環境学ガイド. 2011年6月8日閲覧。
  39. ^ Lurling, Miquel; Tolman, Yora and van Oosterhout, Frank (2010). “Cyanobacteria blooms cannot be controlled by Effective Microorganisms (EM®) from mud- or Bokashi-balls”. Hydrobiologia 6 (1): 133-143. doi:10.1007/s10750-010-0173-3. http://www.springerlink.com/content/ku342v2820237404/. 
  40. ^ 大槻義彦 (2012年10月21日). “EM菌アホ、インチキは失礼”. webアーカイブ. 2014年1月25日閲覧。
  41. ^ 比嘉照夫 (2012年8月3日). “EM情報室 WEBマガジン エコピュア 連載 新・夢に生きる [62]”. 2014年1月21日閲覧。
  42. ^ 第78回 EMの波動作用”. 甦れ!食と健康と地球環境. 2014年1月21日閲覧。
  43. ^ 比嘉照夫 (2007年10月1日). “EM情報室 WEBマガジン エコ・ピュア 連載 新・夢に生きる(5)”. 2014年5月23日閲覧。
  44. ^ 第25回 EM技術の立脚点”. 2014年5月13日閲覧。
  45. ^ 第25回 EM技術の立脚点”. 2014年5月13日閲覧。
  46. ^ EM1使用説明書”. 2014年4月16日閲覧。
  47. ^ サン興産業製の『サイオンEM1号』と比較して、EM研究所製の『EM1』は200分の1、EM研究機構製の『EM1』にいたっては150万分の1の乳酸菌数である[1][2]
  48. ^ EMと放射能(除染)”. 2014年4月15日閲覧。
  49. ^ “北 複合微生物工場の大部分が稼動を中断””. 2014年4月18日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

EM支持団体[編集]

外部の評価[編集]