有用微生物群

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

有用微生物群(ゆうようびせいぶつぐん、EMEffective Microorganisms)とは、1982年琉球大学農学部教授比嘉照夫が、農業分野での土壌改良用として開発した微生物資材の名称。乳酸菌酵母光合成細菌を主体とする微生物の共生体とされ、農業、畜産水産、環境浄化、土木建築など様々な分野に利用されていると主張される。Effective Microorganismsとは「共存共栄する有用な微生物の集まり」の意味の造語。通称 EM菌

EMとはあくまで比嘉の開発した微生物資材の呼称である。 日本において、乳酸菌などを利用した微生物資材の中には登録農薬として行政から認可を受けている物が多数存在するが、当然それらはEMではない。

例えば、病原菌の予防や特定害虫の防除に用いられる枯草菌の一種や、登録農薬ではないが愛媛県産業技術研究所が開発し浄化槽に使用されている「えひめAI」などはEMではない。これらは行政が効果を確認し、特定用途・用法に限って使用されており、EMのように万能を謳うものではない。

目次

開発者による説明[編集]

自然界にある(乳酸菌群、酵母群、光合成細菌群から嫌気、微好気の複数の有用な微生物を集め培養し、液中に複合共生させた資材。また、悪玉菌や遺伝子組替技術によって作出された微生物は使用していない。商品としてEM1、EMW、EMX-GOLD(飲用)、EMセラミックスなどがある。

微生物環境(微生物相)では、酸素の多い現在の大気中において、酸素を使って有機物を分解する(酸化)微生物の勢力の方が強い。この酸化分解は、ほとんどの場合、腐敗腐蝕という環境悪化を招いている。そこへ抗酸化力の強い有用な微生物群(EM)を投入することで、発酵、蘇生など生分解型の善循環へ変化させることができると主張される。

EMの効果について比嘉は「重力波と想定される波動によるもの」と主張している[1]

EM技術[編集]

「EM技術」とは、有用微生物群(EM)を活用した技術。その有用性から開発当初の土壌改良材という分野を超え、現在では農業、畜産、水産、水処理、リサイクル、土木建築、医療、等々様々な分野で活用が進んでいる、とされている。

植物に病害が発生するから農薬を撒き、動物が病気になるから抗生物質を与え、養殖池でヘドロが発生すると浚渫や池の破棄を行うなどの、従来の対処療法的な問題解決の手法では、多くの地域で環境が破壊されてきた。大半の場合、上記の問題の原因には微生物が関与しており、悪玉菌と呼ばれる微生物の多くがエサ(有機物)を腐敗(酸化)させ、環境を悪化させている。

しかし、そこにEMを投入すると、有機物が腐敗しないばかりか、発酵によって様々な抗酸化物質や養分が作られ、健全な環境を生み出し、植物や動物などに利用されやすい形になると主張されている。これは、EMが有機物を有用発酵させることができる善玉菌の微生物によって構成されているからであると主張されている。

この技術を用いた結果、農業では植物自体が健康に育つことで病害を克服する方向へ向かう、畜産では動物の健康状態が改善される・糞尿の悪臭除去、水産ではヘドロや病害が発生しないといった現象が起こると主張される。

活用例

  • 農業・・・土壌改良
  • 家庭・・・家庭排水の浄化、生ゴミの堆肥化
  • 畜産・・・糞尿の堆肥化、悪臭除去、動物の食料(エサに混ぜる)
  • 環境衛生・・・水質浄化、ゴミ処理、排水処理
  • 医療・・・予防医学、代替医療

批判的意見[編集]

「普通、土の1グラム中には約1〜10億 もの有用な微生物がいるのに対し、EMは数で圧倒する訳ではなく、EMに含まれる微生物が、最初からいる微生物(日和見菌)を連係させて働かせる事ができ、投入した量以上の効果が出る」「EM技術は波動測定器で検証することができる」という現代科学では解明されていない分野の研究報告もあることから[要出典]、批判視されることがままある。

NPO法人EMあいち(事務所は比嘉が代表取締役を務める株式会社EM生活と同じ)[2][3]が主体となり河川にEM菌(米のとぎ汁等を含む)を投入している。[4]。 しかし福島県では2008年3月、EM菌(有用微生物群)などの微生物資材について「高濃度の有機物が含まれる微生物資材を河川や湖沼に投入すれば汚濁源となる」との見解をまとめ発表している[5]

日本土壌肥料学会の1996年の「微生物を利用した農業資材の現状と将来」と題した公開シンポジウムにおいてEMが他の資材に比べて効果が低いと報告されるなど効果を疑問視する人も多く[6]タイの試験研究機関の分析結果として、EM資材中に光合成細菌及び放線菌(Actinomycetes)の存在が確認されなかったとされている。

「科学とニセ科学」レジュメ[7]において、万能を謳うことや他の研究者の批判に対する対応に、疑似科学性が見られると批判されている。

「市民のための環境学ガイド」では「似非科学」の一つとして、EM菌が挙げられている[8]

実験的研究によれば、EM菌にはシアノバクテリアの発生を抑制する効果はない[9]

EMセラミックスについては、800℃以上で高温焼成するためEM菌が殺菌されるはずだが、EM研究機構は「焼成後にEM菌が蘇生する」と主張している。[10]。800℃の環境中では耐熱性の高い細菌芽胞すら完全に死滅してしまう。

脚注[編集]

  1. ^ 朝日新聞デジタル (2012年7月3日). “「水質浄化」EM菌効果 検証せぬまま授業 青森”. 2012年7月5日閲覧。
  2. ^ NPO法人データベースNPOヒロバ. “EMあいちの組織概要”. 2013年1月18日閲覧。
  3. ^ 株式会社EM生活. “会社概要|EMのことならEM・X GOLDの総販売元(株)EM生活”. 2013年1月18日閲覧。
  4. ^ 株式会社EM生活. “「全国一斉EM団子・EM活性液投入」河川浄化イベントin名古屋”. 2013年1月18日閲覧。
  5. ^ 福島民友ニュース (2008年3月8日). “県が初の見解「EM菌投入は河川の汚濁源」”. 2008年3月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年6月8日閲覧。
  6. ^ 日本土壌肥料学会 (1996年8月23日). “1996年 微生物を利用した農業資材の現状と将来 (PDF)”. 2011年6月8日閲覧。
  7. ^ 菊池誠 (2004年7月28日). “「科学とニセ科学」レジュメ(ver.2)”. 2011年6月8日閲覧。
  8. ^ 安井至 (2004年9月19日). “マイナスイオン定点観測”. 市民のための環境学ガイド. 2011年6月8日閲覧。
  9. ^ Lurling, Miquel; Tolman, Yora and van Oosterhout, Frank (2010). “Cyanobacteria blooms cannot be controlled by Effective Microorganisms (EM®) from mud- or Bokashi-balls”. Hydrobiologia 6 (1): 133-143. doi:10.1007/s10750-010-0173-3. http://www.springerlink.com/content/ku342v2820237404/. 
  10. ^ EM研究機構 (2012年8月27日). “Q&A|EM研究機構|EM Research Organization:”. 2013年6月10日閲覧。

外部リンク[編集]

EM概要について[編集]

活用事例[編集]

外部の評価[編集]