書評

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書評(しょひょう、Book review)とは、一般的に、刊行された書物を読者に紹介する目的で論評や感想などを記す文芸評論の一形式である。起源的には18世紀中葉から勃興してきた新聞という大衆向けメディアにおける新刊・新作紹介をその淵源とするが、現在では新聞のみに限らず、雑誌テレビラジオインターネットなどさまざまな媒体(メディア)を通してもまた書評が行われている。

通常はいわゆる新刊本について行われることが多く、読者の書籍選びにあたって参考に供する意味を持つ。英語book reviewの翻訳。また前記のような古典的概念に加えて、現在では、正規の文字表現として定めないままに、書評としての内容を持って出される口頭のコメント(主としてテレビ、ラジオなどで行われる)なども、二次的概念としてこれに含む場合が多い。

内容的には、書物の紹介と内容に対する論評とが共存しているところに、特徴がある。したがって、一般の文芸評論のように後者にのみ偏っているものは、通常は書評とは呼ばれない。ただしいわゆる新刊紹介と書評が区別される境界線もまた、この内容に対する論評の部分に存しており、筆者の独自の見解を示しつつ読者を書物の世界に誘いこむ不思議な文学形式であるということができる。優れた書評文はそれ自身が独立して鑑賞するに足る作品であることが多い。

日本の書評[編集]

日本の場合、書評の中心的な舞台である新聞(多くは一般紙の日曜日付け本紙に掲載される)においては、原稿用紙1~2枚が標準的な分量であるが、これは欧米の書評文に比べるとかなり短い。書き手のなかには、これでは委細を尽くしにくいという不満を持つ人も多い。こうした現状は、多くの場合、新聞社側が書評を単なる新刊紹介、場合によっては販売促進の一手段という程度としか考えていないのに対し、書評家には書評そのものをひとつの芸の見せ場として考えている人が少なくないところからきている(「問題点」参照)。

書評の筆者は通常、批評家作家、あるいは新聞社の編集委員などが担当するが、専門の書評家と呼ばれる人々も最近では多くなった(例えば故・向井敏など)。またテレビラジオをはじめ、大衆的効果をねらって、文芸や書評とはあまり関係のない有名人や、芸能人のうちで本好きな人を起用し、「何某がおすすめの本」という観点から販売促進をねらうこともある。このように、現代の書評には、純粋に芸術批評の一形式として行われるものと、商業的な販売促進、新刊紹介の趣旨で行われるものと、両極端の潮流があり、そのことがにぎやかさを増している面がある。

問題点[編集]

日本の書評は欧米のそれを移入したものであるが、以下のような点で、特に新聞での書評の場合、問題点が指摘されることがある。「読者におもしろい本をおもしろく紹介する」という書評の根本的な目的から考えた場合、弊害となっている部分は多い。

  • 書評文の分量が少ない。それゆえに単純にほめるか、問題点を指摘するだけの書評になりがちで、評者の意を尽くした内容になりにくい。
  • 多くの場合、書評委員の複数の推薦がなければその本を取り上げることができない。慎重に選べるという利点もあるが、書評者の独自の観点が生かされない結果に終わることも多い。
  • 発表媒体の干渉が強い。特に対象となる書籍の選択の時点で、自社の刊行物を暗に押すことが多い。また媒体の論調から大きく外れた本が好意的に紹介されることはあまりない。
  • 書評文そのものの芸を尊重しない。「おもしろい本」を推薦するのには熱心であるが、それを「おもしろく紹介すること」には情熱がうすい。ただしこれには分量の問題も大きく影響している。
  • 全体的に紹介のタイミングが遅い。各メディアの書評委員会のもとには発売に先立って献本があるにもかかわらず、発売と同時に書評が掲載されることは決して多くない。
  • いわゆる文芸時評の伝統のせいか、特に小説家文芸評論家が書評者となった場合、推薦する本が文芸書に傾きがちな傾向がある。また一般的風潮として、文芸書以外の書物が軽く扱われる傾向がいまだに強い。
  • ベストセラーばかりを追いがちである。
  • 新刊単行本が中心になりがちで、文庫新書があまり重視されない。
  • いわゆる活字中心で、漫画美術書写真集などが登場する機会が少ない。

インターネットにおける書評[編集]

誰もが情報発信できるインターネットにおいては、これまでにない書評の書き手が、大量に活動することになった。「本を読んでその感想を書く」という行為自体は、学校教育で必ず課される読書感想文と同じであり、個人サイトの主要コンテンツとして多くの人々が取り入れやすいものであった。

日本では、身辺のよしなごとを書くウェブ日記とほとんど重なるものとなったブログの多くも、「読んだ本について書いたもの」が少なくない。

またインターネット書店も、販売している書籍それぞれに、読者が感想を書ける機能を盛り込んだことから、素人によるネット書評は、量的に爆発的に拡大したのみならず、書籍の売れ行きを左右する力をも少なからず持つようになった。

既存の文芸家からは、ネット書評を蔑む発言が少なからずなされたが、ネット書評は上記に述べられた従来の日本の書評の弊害のいくつかを回避している[要出典]。しかし第三者のチェックなしに情報発信できるネット書評の特性から、誹謗・中傷や差別表現や歪曲などもかなり見受けられる。

書評家[編集]

関連文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

日本の新聞書評[編集]

主な書評サイト[編集]