日産・L型エンジン
L型エンジンはかつて日産自動車が製造していた直列4気筒及び直列6気筒SOHC型のガソリンエンジンである。 後年、派生形として軽油を燃料とするLD型ディーゼルエンジンが登場している。
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[編集] 概要
日本製乗用車にOHC式動弁機構が導入され始めた初期に開発されたチェーン駆動カムシャフトの、カウンターフロー型(ターンフロー型)の直列エンジンである。基本型式は「L」で数字は排気量を表す。
6気筒シリーズは1965年、当時日産系の130型セドリックのOHV式J20型エンジンに代わり、新開発OHC式L20型をセドリックスペシャル6に搭載した。当初は6気筒ながら4ベアリングというやや旧弊なスペックで、シリンダー中心間距離は95.0-95.0-97.0-95.0-95.0mmとなっており、1969年に投入された改良型[1]では7ベアリング、シリンダー中心間距離を96.5-96.5-98.0-96.5-96.5mmに変更している。初期型と区別するため改良型は『L20A[2]』と呼称し、補修部品出庫の際など誤認のない様にした[3]。しかし、後に初期型の淘汰に伴って改良型のL20Aという呼称も自然消滅し、L20と呼称するようになっている。その後2.4ℓ・2.6ℓ・2.8ℓの排気量のバリエーションを追加。
4気筒シリーズは1967年、従来の「J型」に代わる1.3L~1.6Lクラスの高速型小型4気筒量産エンジンとして、6気筒とコンポーネンツを共用した5ベアリングのL13・16型が登場し、510型ブルーバードに搭載された。その後1.4L・1.8L・2.0L排気量のバリエーションを追加。
1980年代中期まで20年以上生産され、日産製乗用車エンジンの主力となった。
競合メーカーで動弁形式を問わずクロスフロー型エンジンが頻出する中、敢えて一貫してカウンターフロー型のレイアウトを踏襲し続けた[4]。その構造上、本来の性格は高回転向けでなく、決して軽快なエンジンとは言い難かったが、実用エンジンとしては扱いやすい特性であるうえ、鋳鉄製の頑丈なブロックをベースとする構造は堅牢でかつ長寿命なエンジンとして多くのユーザーの信頼を得た。
後継エンジンはRB型(6気筒)となる。
[編集] バリエーション
排気量はバリエーション中の数値が大体の排気量を示している。
- 4気筒モデル
- L13→1,300cc (1.296L 内径×行程:83.0×59.9)
- L14→1,400cc (1.428L 内径×行程:83.0×66.0)
- L16→1,600cc (1.595L 内径×行程:83.0×73.7)
- L18→1,800cc (1.770L 内径×行程:85.0×78.0)
- L20B→2,000cc (1.952L 内径×行程:85.0×86.0)
- LD20→2,000cc (1.952L 内径×行程:85.0×86.0)
- 6気筒モデル
- L20→2,000cc (1.998L 内径×行程:78.0×69.7)
- L24→2,400cc (2.393L 内径×行程:83.0×73.7)
- L26→2,600cc (2.565L 内径×行程:83.0×79.0)
- L28→2,800cc (2.753L 内径×行程:86.0×79.0)
- LD28→2,800cc (2.792L 内径×行程:84.5×83.0)
[編集] 4気筒シリーズ
[編集] L13
1,296cc
72ps/6000rpm 10.5kgm/3600rpm
- 搭載車種
- ブルーバード(510)
[編集] L14
1,428cc
85ps/6000rpm 11.8kgm/3600rpm(シングルキャブ仕様)
95ps/6400rpm 12.4kgm/4000rpm(SUツインキャブ仕様)
[編集] L16
92ps/6000rpm 13.2kgm/3600rpm(シングルキャブ仕様)
100ps/6400rpm 13.5kgm/4000rpm(SUツインキャブレギュラーガソリン仕様)
105ps/6400rpm 13.8kgm/4000rpm(SUツインキャブハイオクガソリン仕様)
[編集] L16E
L16のインジェクション仕様
115ps/6200rpm 14.6kgm/4400rpm
- 搭載車種
- バイオレット(710・A10)
- オースター・スタンザ(A10)
[編集] L16P
L16のLPG仕様
- 搭載車種
- ブルーバード(510)
- バイオレット(710)
[編集] L18
1,770cc
105PS/6000rpm 15.0kgm/3600rpm(シングルキャブ仕様)
110ps/6000rpm 15.5kgm/3600rpm(SUツインキャブ仕様)
[編集] L18E
L18のインジェクション仕様
115ps/6200rpm 16.0kgm/4400rpm
- 搭載車種
- ブルーバード(610・810)
- シルビア(S10)
- スカイライン(C210)
[編集] L18P
L18のLPG仕様
- 搭載車種
- ブルーバード(810)
- バイオレット(710)
[編集] L20B
1,952cc
輸出仕様
- 搭載車種
- ダットサンニュー510(A10)
- ダットサン720(ダットサントラック720型輸出仕様)
- ダットサン910
- ダットサンSX(S10対米仕様)
[編集] LD20
1,952cc 過流室式ディーゼルエンジン
65PS/4600rpm 12.5kgm/2400rpm
67ps/4600rpm 13.0kgm/2400rpm[5]
[編集] LD20T
LD20のターボ仕様
79ps/4400rpm 17.0kgm/2400rpm[6]
[編集] 6気筒シリーズ
[編集] L20
1,998cc
105ps/5200rpm 16.5kgm/4400rpm(初期型シングルキャブ仕様)
115ps/5600rpm 16.5kgm/3600rpm(改良型シングルキャブレギュラーガソリン仕様)
120ps/5600rpm 17.0kgm/3600rpm(改良型シングルキャブハイオクガソリン仕様)
125ps/6000rpm 17.0kgm/4400rpm(SUツインキャブレギュラーガソリン仕様)
130ps/6000rpm 17.5kgm/4400rpm(SUツインキャブハイオクガソリン仕様)
- 搭載車種
[編集] L20E
L20のインジェクション仕様
130ps/6000rpm 17.5kgm/4400rpm
- 搭載車種
- セドリック・グロリア(330・430)
- スカイライン(C110・210・HR30)
- ローレル(C130・230・C31)
- ブルーバード(G610・810)
- フェアレディZ(S30・130)
- レパード(F30)
[編集] L20ET
L20Eのターボ仕様[7]
145ps/5600rpm 21.0kgm/3200rpm
- 搭載車種
- セドリック・グロリア(430)
- スカイライン(C210・R30)
- ローレル(C31)
- レパード(F30)
- フェアレディZ(S130)
[編集] L20P
L20のLPG仕様
95ps/5200rpm 16.0kgm/3200rpm
- 搭載車種
- セドリック・グロリア(330・430・Y30)
[編集] L24
2,393cc
150ps/5000rpm 21.0kgm/4800rpm
- 搭載車種
- フェアレディ240Z(S30)
- ダットサン240K(スカイラインC10・C110・C210輸出仕様)
- ブルーバード・マキシマ(910型ブルーバード北米仕様※L6用ロングボディ)
[編集] L24E
L24のインジェクション仕様
- 搭載車種
- ダットサン810(G810・910)
- ローレル(C32輸出仕様)
- 日産・810マキシマ(G910)
- スカイライン(R30輸出仕様)
[編集] L26
2,565cc
140ps/5200rpm 22.0kgm/4000rpm
- 搭載車種
- ダットサン260Z(S30型フェアレディZ輸出仕様)
- ローレル(C130)
- セドリック・グロリア(230)
[編集] L28
2,753cc
140ps/5200rpm 22.5kgm/3600rpm
- 搭載車種
- セドリック・グロリア(330)
- ローレル(C130・230)
[編集] L28E
L28のインジェクション仕様
145ps/5200rpm 23.0kgm/4000rpm
155ps/5200rpm 23.5kgm/4000rpm(S130型フェアレディZ後期型専用)
- 搭載車種
- ダットサン280Z(S30型フェアレディZ輸出仕様)
- フェアレディZ(S130)
- セドリック・グロリア(330・430)
- レパード(F30)
- ローレル(C31)
[編集] L28ET
L28Eのターボ仕様
- 搭載車種
- 280ZX(S130フェアレディZ北米仕様)
[編集] LD28
2,792cc 過流室式ディーゼルエンジン
91ps/4600rpm 17.3kgm/2400rpm
- 搭載車種
- セドリック・グロリア(430・Y30前期型)
- ローレル(C31・C32前期型)
- スカイライン(C210・R30)
- ダットサン910(G910)
[編集] LD28T
LD28のターボ仕様
- 搭載車種
- パトロール(Y60・61 サファリ輸出仕様)
[編集] その他特徴・逸話
- 通常の市販車としては、4・6気筒共にカウンターフローのSOHCエンジンであるが、レーシングオプションとしてクロスフローのLYヘッド[8]、4気筒のみDOHCのLZヘッドが存在する。更に通常のカウンターフロー式のヘッドでありながら冷却水路を変更して加工余地を大幅に与えられている通称「サファリヘッド」と呼ばれているものも存在する。これらは、原則ワークスマシーンのみにパーツ供給されていたが、「大森スポーツコーナー」(現・NISMO)で一部のユーザーにも販売されていた。
- L28型エンジンのチューンでは、KA24型・本田技研工業が製造するオートバイFT400・500・XR400・500のピストンがボア89mmのためこれを流用し、ストロークを79mmとした2,947ccのL30と呼ばれるポピュラーな方法が存在する。
- 上述のボア89mmピストンにLD28型のストローク83mmのクランクを組み合わせ総排気量3,096ccの通称L31とする手法をはじめ、SCM材などを削りだし83mm以上のストロークを確保し排気量を3.2リッターまで拡大するなどチューニングバリエーションは豊富である。
- L14搭載車は、50年排ガス規制(A-)まで対応し消滅。L16・18は、51年排ガス規制(C-)まで対応し、53年排ガス規制(E-)では、L16を搭載していたB110・210型サニー・エクセレントシリーズがベースモデルのサニーがB310型へのモデルチェンジしたのを期にモデル廃止された。他のL16・18はそれぞれツインスパークプラグ急速燃焼方式を採用する直列4気筒OHCのZ16・18型エンジン[9]に変更された。
- 4・6気筒共に完全モジュール設計方式を採用し、大量生産を考えたエンジンで、日産特有の部品共用が多く[10]、1960年代 - 1980年代と長期に渡り製造されていたことによる個体数の多さも手伝って、現代でもチューニングパーツが豊富に流通している。また、エンジンブロックが頑丈であるために6気筒は最大3 - 3.2リッター程度までの排気量アップが可能と言われており、そのためのチューニングキットも多く、L型エンジン搭載のスカイラインやフェアレディZをレストアする際に構造変更を同時に行い排気量アップ(3ナンバー化)でチューンドカーにしているユーザーも多数見受けられる。
- 燃料供給方法は、2バレルのシングルキャブレターが基本となる。スポーツ仕様車にはSUツインキャブで対応していたが、昭和51年排出ガス規制に適合できず、その後は電子制御インジェクション(EGI)へ移行した。パワーアップのための手法として、ソレックスやウェーバーのツインチョーク型キャブレターを4気筒ではツイン化、6気筒ではトリプル化することが広く知られており、現代でもこの手法は不変である。
- L20B型は1978年 - 1980年のWRCにA10型バイオレットで挑戦してグループ2カテゴリーで輝かしい成績を残している。さらに1981年 - 1982年のシーズンは16バルブDOHC化と排気量を2,083ccにアップした『LZ20B[11]』搭載のPA10型バイオレットでグループ4カテゴリーにエントリーし、1979年 - 1982年のサファリラリーで当時日産ワークスに所属した故シェカー・メッタ(Shekhar Mehta)が4大会連続総合優勝という快挙を成し遂げ、WRC史上初の同一ドライバーで同一イベント4連覇という記録を打ち立てた。LZ20B型はその後、2400ccの『LZ24B』(グリーンヘッド)へと進化を遂げ、S110型シルビアのグループ4マシンに搭載されて数戦のWRCに実戦投入された。その後、グループBマシンの240RSに進化さた際に『FJ24』が搭載されたために競技用エンジンとしては第一線からは姿を消した。
- 一方、ラリーのみならず当時流行したシルエットフォーミュラ(グループ5)でもLZ20B型は日産系マシーンの主力エンジンとして使用される。こちらには、エアリサーチ製T05Bターボチャージャー、およびルーカス製メカニカルインジェクションシステムで武装し570ps/7600rpm 55kgm/6400rpmのスペックを叩き出すまでチューニングされていた。
- シリーズの中心であるL20型と後継機のRB20型とはボア×ストロークが同一である。これはRB開発着手当時、日産はV型6気筒のVG型開発に多額の資金を投じており、L型の生産ラインを活かしつつ新たな直列6気筒エンジンを開発しなければならない懐事情があったためと言われる。しかしながら、VG20系とボア×ストロークは同一である事から、コスト面や生産面での妥協もあると思われる。
- LD20・28型では、当時ディーゼルエンジンを搭載する乗用車の多くは貨物車用のOHV型を流用するケースが主流であった中、基本構造をガソリンエンジンと共有しOHCを採用したために「高速ディーゼル」と銘打たれ、ディーゼルエンジン車の鈍足なイメージを払拭した。また噴射ポンプの駆動に当時としては珍しいタイミングベルトを採用している。
[編集] 脚注
- ^ プリンス自動車合併直後の1967年に登場したA30型グロリアには、当初プリンス直系の直列6気筒OHC式G7型が搭載されていたが、1969年のマイナーチェンジで改良型L20に換装された。
- ^ 運輸省(現・国土交通省)届出原動機型式は「L20」のままで車検証上の記載の変更はない。
- ^ また外見上にも違いが見られ、初期型はプリンス自動車製G7型エンジンに似た「かまぼこ形ヘッド(カム)カバー」と呼ばれる形状で、カバーの固定方法が初期型ではヘッドから突き出た6本のスタッドボルトに袋ナットで固定していたが、改良型ではカバー形状が異なり外周の耳に8本のボルトで固定される。現在目にする多くのL型はこの形状。なお、この初期型は前述の130型セドリックとGC10型スカイラインの初期製造車に搭載された。
- ^ 6気筒モデル最大の競合エンジンは、同時期に登場したトヨタ・M型エンジン。こちらはクロスフローOHCが基本で、途中DOHCも追加されている。
- ^ 1986年に燃焼室形状を変更した改良型でLD20 II と呼ばれるタイプ。
- ^ LD20 II をベースにターボ化したLD20T II と呼ばれるタイプ。
- ^ 日本初の乗用車用ターボエンジンである。
- ^ ボルトオンの改造キットではなく、クランク・フライホイール・カムチェーンのコマ数や動弁機構も異なるために改造は大掛かりなものとなる。また、燃料供給がミクニ・ソレックスPHH50φが指定となっているために燃料ポンプの交換も必要となる。マニュアル指定の組み込みを行った場合、SOHC2バルブのままLY28型で300ps/7600rpm 32.0kgm/6400rpmのスペックとなる。
- ^ 基本設計はL型を踏襲しており、ボア×ストロークはZ16・18型はL16・18型と、後に追加されたZ20型はL20Bとそれぞれ同一となる。
- ^ L24はL16に2気筒プラスという考え方でボア×ストロークは一致する。
- ^ ボア×ストローク:87.8×76.0。