文化依存症候群

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文化依存症候群(ぶんかいそんしょうこうぐん、文化結合症候群とも言う Culture-bound syndrome)は、ある地域民族文化環境において発生しやすい精神疾患の事を指す。例えば、対人恐怖症腎虚などのさほど特別だと一般に考えられていない疾患も文化結合症候群である。

概要[編集]

エミール・クレペリン, Yap, Kievを経て今日に至る概念である。「文化結合症候群」の言葉を用いたのは、香港精神科医Pow Meng Yapが最初である[1]。1967年のことであった。culture-bound reactive syndrome、culture-bound syndrome (CBS) という言葉を用いている。

19世紀後半の西洋社会の植民地主義との関連性を持っている。西方世界 (Western World) からみた、クレペリンらの珍奇な精神疾患(ラタ)の発見から始まった。今日、西洋側の精神医学の疾患概念(たとえば、摂食障害)が、新しい文化結合症候群として捉えられるようになってきている。

また、ある文化圏の精神医学疾患カテゴリー (the category of disease) を、そのほかの文化圏に当てはめている点で、クラインマンのいうカテゴリー錯誤 (category fallacy) ともいうことができよう。

代表的なCBSとして、ラタ(latah)、アモック(amok)といった特異な精神病が西欧諸国に紹介されたのは19世紀末であった。西欧世界の医学者、人類学者によってエキゾチックな病態が幾つも発見されることになった。マレーシアで起きる特異な精神病であるアモックの研究から、特定の文化環境下において発生しうる特殊な精神病の存在が指摘され始めていた。

アメリカ精神科学会の精神障害の診断と統計の手引きにおいては、Culture-bound syndromeの項目をもうけてこれらの症例を載せている。アメリカは多民族国家である。異なる宗教・風習を保ちながら生活している人々も多いため、それぞれの民族・文化に起こりやすい症例に対して、誤った認識や診断を生じさせないようにこのような研究や分類が行われている。

研究の起源が、そもそも西方世界からみた他国であるため、欧州にもあると思われる文化依存症候群に対する研究は、それ以外の地域に対する研究よりも遅れがちである。

文化依存症候群の例[編集]

文化依存症候群とされている病気には、

などがある。

ただし、文化依存症候群は、その文化において多発しているというだけであり、他の文化圏では絶対に起こらないとは言えない。日本人でも拒食症に陥る例もあり、西洋人でも対人恐怖症になる場合がある。

論文[編集]

  1. ^ PM Yap, "Classification of the culture-bound reactive syndromes," AustNZ J Psychiatry, 1967

関連著作[編集]

関連項目[編集]