マスメディア集中排除原則

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

マスメディア集中排除原則(マスメディアしゅうちゅうはいじょげんそく、the principle of excluding multiple ownership of the media)とは、放送法(昭和25年法律第132号)第93条第1項第4号及び第2項の規定により、総務省令で定められている「基幹放送の業務に係る表現の自由享有基準」の通称である。

かつては電波法(昭和25年法律第131号)第7条第2項第4号にあった規定により、同省令で定めていた「放送局に係る表現の自由享有基準」(1988年制定、最近制定2008年)であったが、放送の定義の変更によって根拠法を放送法へ変更している。

目次

概要 [編集]

基幹放送事業者に対する出資に関する規制であり、少数の者により複数の基幹放送事業者が支配されることを防ぎ、多くの者が表現の自由を享受できるようにするため、複数の基幹放送事業者に対する出資を制限している。

具体的には「基幹放送の業務に係る表現の自由享有基準に関する省令」(平成23年総務省令第82号)において定められている。ただし、認定放送持株会社子会社が行う基幹放送に関しては「基幹放送の業務に係る表現の自由享有基準の認定放送持株会社の子会社に関する特例を定める省令」(平成23年総務省令第83号)において特例が定められている。

原則 [編集]

同一の者が複数の基幹放送事業者に対し次に掲げる議決権を有することを「支配」とし(第3条第1項)、地上基幹放送の場合は複数波の使用、衛星基幹放送の場合は同一の者による一定の中継器(トランスポンダ)相当の伝送容量を超える使用を規制(第4条第1項)している。

地上基幹放送 [編集]

  • 放送対象地域が重複する場合 - 10分の1を超える議決権
  • 放送対象地域が重複しない場合 - 5分の1以上の議決権
  • 連続放送対象地域(当該連続放送対象地域の各放送対象地域が関東広域圏である場合を除く)で放送対象地域の数が7を超えない場合 - 3分の1以上の議決権

特例 [編集]

次のいずれかの場合は、特例が適用される。

第3条第1項第1号
中波放送(以下「AM」)、短波放送(以下「SW」)、またはコミュニティ放送以外の超短波放送(以下「FM」)の基幹放送局の開設、支配及び被支配となる場合。
第3条第1項第2号
同一の放送対象地域におけるAM、SW、FM及びテレビジョン放送(以下「TV」)の基幹放送局の開設、支配及び被支配となる場合。
第3条第1項第3号
連続放送対象地域のうちの一の放送対象地域にTV(県域放送に限る。)を行う基幹放送事業を開設しようとする場合であって、連続放送対象地域のうちの一の放送対象地域に当該連続放送対象地域の他のすべての放送対象地域が隣接する位置関係にある場合または当該位置関係と同程度に地域的関連性が密接であるものとして総務大臣告示する地域に該当する場合
第3条第2項
前項第2号の規定は、AM、SW又はFMを開設または支配する者、TVを開設または支配する者が新聞社を経営し、または支配する者となる場合は不可能。ただし、当該放送対象地域においてニュースまたは情報の独占的頒布を行うこととなるおそれがないときは可能。

衛星基幹放送 [編集]

第3条第1項第6号イ
国際電気通信連合憲章に規定する無線通信規則」付録第30号の規定に基づき日本に割り当てられた11.7GHzから12.2GHzまでの放送衛星業務に使用される周波数を使用する衛星基幹放送(以下「BSデジタル放送」)に関しては、一の者が3分の1以上の議決権(放送局を開設する者又はこれを支配する者の場合は、2分の1を超える議決権)を有する場合が支配となる。ただし、認定放送持株会社は、これを子会社とすることができる。
第3条第1項第6号ロ
放送衛星業務用の周波数以外の周波数を使用する衛星基幹放送(以下「東経110度CSデジタル放送」)に関しては、一の者が2分の1以上の議決権を有する場合が支配となる。ただし、使用する伝送容量のトランスポンダ換算数が4(データ放送場合の使用する伝送容量のトランスポンダ換算数は1)を超えない場合は、特定地上基幹放送を兼業できる。

除外 [編集]

一般放送業務に対する規制 [編集]

基幹放送以外の放送、即ち一般放送に関しては、他の総務省令等において支配規制を行っている。

  • 衛星一般放送の場合 - 放送法施行規則に規定されており、一定の中継器(トランスポンダ)相当の伝送容量を超える使用を規制している。
  • 有線一般放送の場合 - 有線テレビジョン放送においては、審査基準で基幹放送事業者による有線一般放送事業者の支配を規制している。

制度改正とその動き [編集]

2006年1月20日から開催されている「通信・放送の在り方に関する懇談会」では、通信と放送の融合時代におけるマスメディア集中排除原則のあるべき姿について、議論が行われている。特に民放BSデジタル放送は各局共に赤字経営が続いている事や、地方では厳しい経済環境から地上民放テレビ局の新規開局が困難な状況であり、情報格差の縮小も狙って、次のようなことの解禁が検討されている。

  • テレビ局が1社で複数の放送区域の放送免許を持つことを認める。
  • テレビ局が1社で複数の放送波の放送免許を持つことを認める(例として、琉球朝日放送テレビ朝日系列)の場合、一部を除く放送業務を琉球朝日放送と社屋を併設している琉球放送TBS系列)に委託していることから、現在事実上の1局2波体制である)。
    • 1局2波の場合、既存の社屋・送信所をそのまま使用するため、設備投資は放送設備の設置程度で済む。また、放送業務に必要な社員も大半は既存局の社員を出向扱いさせることで大幅なコスト削減にもつながる。

また、近年のラジオ離れの影響で民放ラジオ局の経営が困難になりつつあるため、日本民間放送連盟(民放連)では2010年2月に総務省に対しラジオ局に対するマスメディア集中排除原則の大幅な緩和を求めた[1]。実際民放ラジオ局の経営悪化に伴い、2010年4月には関西の第3FM局である関西インターメディア(FM COCOLO)が番組制作のほとんどを同じ大阪のFM802の関連会社に委託、実質的にFM802傘下となるといった事象も発生しており、ラジオ局に関する同原則の見直しは急務とも言えた。

これらを受け、2011年3月に総務省は「ラジオ局については、エリアの重複の有無を問わず4局まで100%株式保有を認める」「それ以外の放送局(テレビ局、5局目以降のラジオ局等)についても、エリアが重複しない場合1/3まで株式の保有を認める(従来は20%未満)」という緩和案を発表[2]。これにより、従来は不可能だった「AM・FMラジオ局の同時保有」「同一エリアのラジオ局同士の合併」などが可能になった。これを受けて2012年4月には実際にFM802がFM COCOLOの免許を継承し、1局2波体制での経営をスタートさせている。

なお認定放送持株会社に対しては、当初より子会社化できる局数が「最大12局」となっている。ただし局数のカウント方法として「サービスエリアの都道府県1つにつき1局」とカウントするため、例えば東京のキー局(7局に換算)と大阪の準キー局(6局に換算)を同時に保有することはできない[3]

行政指導等 [編集]

2004年11月、読売新聞の第三者名義による日本テレビの保有問題を受けて、他社も調査した結果、第三者名義によりマスメディア集中排除の制限を超えて出資を行なう行為は広く行なわれていたことが発覚した。2005年2月総務省は調査結果を公表、71社に対して厳重に注意する旨の行政指導を行い[4]、放送局に株主の報告を強化させるなど対策を行なった[5]。この内、2社以上に出資し複数の違反事例があった東海テレビ放送鹿児島テレビ放送、他社からの出資を受けながら自らも出資を行っていたテレビ大分の3社については総務大臣名による警告処分が言い渡された。

括弧内の数字は左側が当時の出資上限、右側の数字が超過分。

読売新聞東京本社
読売新聞大阪本社
朝日新聞社
東京放送(現・東京放送ホールディングス
北海道新聞社
北海道テレビ放送
  • エフエム北海道(10+3.34%)
山形新聞社
青森テレビ
河北新報社
秋田テレビ
ラジオ福島
  • エフエム福島(10+12.5%)
中日新聞社
東海テレビ放送
信濃毎日新聞社
信越放送
北日本新聞社
北國新聞社
  • エフエム石川(10+7%)
名古屋鉄道
  • ZIP-FM(10+0.15%)
静岡放送
テレビ山梨
岐阜新聞社
  • 岐阜エフエム放送(10+9.25%)
日本経済新聞社
前田富夫
山陰中央テレビジョン放送
日本海テレビジョン放送
  • エフエム山陰(10+3.06%)
中国新聞社
香川テレビ放送網
高知新聞社
サガテレビ
熊本日日新聞社
大分放送
テレビ大分
  • エフエム大分(10+1%)
テレビ宮崎
鹿児島放送
鹿児島テレビ放送
琉球放送

関連項目 [編集]

脚注 [編集]

[ヘルプ]

外部リンク [編集]