支配人

提供: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

支配人(しはいにん)とは、日本法において、商人会社を含む)が選任した特定の営業所商法)・本店又は支店会社法)の責任者たる商業使用人のこと。

  • 商法について以下では、条数のみ記載する。

目次

[編集] 法律上の定義

支配人の定義には争いがあるが、通説的にはその権限に着目して、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する商業使用人とされる(実質説)。

商人は、支配人を選任し、ある営業所の営業を任せることができる(20条)。一般的には、支店長クラスが商法上の支配人に該当する。

[編集] 役職としての支配人

日本においては、支店支社)など、本店本社)以外の業務拠点の責任者の役職名として「支配人」と言う言葉はあまり使われず、支店長(支社長)など「拠点単位+長」を使うことが多い。 ただし、支配人には法律上大きな権限が与えられることから、取締役執行役に次ぐ権限をもつ地位として、役職名と同時に使用されることは多い。例えば、「支配人 ○○支店長」や「支配人 ○○部長」など。また、取締役が支配人を兼務することもある。

営業主が所有する不動産の運用先として運営されることの多いゴルフ場ホテル劇場などの業界では、営業主(オーナー)が業務に精通した使用人や業者に事業運営を任せる場合があり、この場合は本店・支店を問わず「支配人」が置かれる。また、複数の営業所を統括する役職として「総支配人」や「統括支配人」が置かれることもある。ホテルの場合ホテル全体を「総支配人」が統括し、ホテル内の客室・レストラン・会議場・宴会場等の各部門にそれぞれ「副総支配人」が配置されることもある。

商社航空会社の海外の一定地域の責任者(多くは複数の現地法人、支店、営業所等の拠点を管理する立場)のことを「支配人」と称するケースもある。

レストランの営業主が料理人(オーナー・シェフ)である場合、支配人に接客業務を任せることがある。

スーパーマーケットの店舗営業責任者の役職は店長である場合が多いが、仕入れ、値付け、パート従業員の採用・解雇などの広範な権限を与えられており、支配人として登記されることは稀ではない。

[編集] 資格・選任

監査役は、株式会社若しくはその子会社の支配人を兼ねることができない(会社法335条)。

取締役会設置会社以外の株式会社では、定款に定めがある場合以外には、取締役が支配人の選任及び解任を行う(会社法348条)。

取締役会設置会社では取締役会又は委任された執行役が、支配人の選任及び解任を行う(会社法362条)。

[編集] 権限・義務

支配人の権限は、裁判上の行為も含めその営業所(会社法上は「本店又は支店」)における営業(会社法上は「事業」)に関する一切に及ぶ(21条1項、会社法11条1項)。対外的には、商人(会社)を代表する包括的な代理権(代表権)を有することになる。また、他の使用人の選解任権を有する(会社法11条2項)。

支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することはできない(21条3項、会社法11条3項)。そのため、例えば1億円以上の取引は本社の決済を必要とすると会社内部の規則で定めていたとしても、取引の相手方が内部規則を知らなかった場合は取引の効果は会社に帰属することになる。

支配人は、商人(会社法上は「会社」)に対して競業避止義務を負い、商人又は会社の許可がない限り、自ら営業を行うこと、自己又は第三者のために商人又は会社の事業の部類に属する取引をすること、又精力分散防止義務を負い、他の会社又は商人の使用人になること、他の会社の取締役執行役業務執行社員になることが、禁止されている(23条1項、会社法12条1項)。


[編集] 表見支配人

商人が、営業所の営業の主任者であるかのような名称を付した商業使用人のことを、表見支配人(ひょうけんしはいにん)という。この場合、取引の安全を考慮して、善意の第三者に対しては支配人とみなされ、表見支配人の行った行為は、商人に帰属する(24条)。これは、権利外観理論表見法理)の現れである。

[編集] 名目的支配人

過払金返還請求訴訟などにおいて、貸金業者側が、支配人登記をした者を訴訟代理人として法廷に出廷させることがしばしばある。

簡易裁判所以外の裁判所においては、代表者本人又は弁護士たる訴訟代理人が出廷するのが原則であるが、支配人を選任した場合は、支配人も裁判上の行為をする権限を有するので、訴訟代理人出廷することができる(商法21条1項、会社法11条1項)。そして、貸金業者は大量に訴訟を抱えており弁護士に依頼すると費用が掛かるため、あるいは弁護士倫理に拘束される弁護士より支配人の方が、偽造書証の提出等不当な訴訟活動を自由に展開できるという理由で、自社の従業員に対し支配人登記をし、支配人を訴訟代理人として出廷させることが多い。

しかし、実際に貸金業者が出廷させる支配人は、たいてい訴訟専属の法務部職員であり、同一の事業所に複数の支配人が登記されていたり、実質的には支店の営業について何らの裁量権を有していないなど、およそ支配人としての権限を有しておらず、このような者は民事訴訟法に定める「支配人」ではない(単なる脱法行為である。)という理由で、法廷から排除されることになっている。この場合、貸金業者側が新たに代理人弁護士あるいは代表者を出廷させて追認するなどしない限り、「支配人」が行った訴訟活動は効力を有しないことになる。

[編集] 関連項目

他の言語