措置入院

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措置入院(そちにゅういん)とは、精神保健福祉法29条に定める、精神障害者の入院形態の1つ。行政行為あるいは強制であることを強調する文脈では「入院措置」と呼ぶこともある。

概要[編集]

精神障害者は、その病状によっては自傷や他害に至ることがあり、しかもこれを認識して医療に自ら頼ることが困難な場合がある。 精神保健福祉法は、精神障害者の入院について幾つかの法形態を定めるが、入院させなければ自傷他害のおそれがある場合について、 これを都道府県知事の権限と責任において強制入院させるのが措置入院であって、 原則公費医療であり、自傷他害のおそれがないと認められるまで無期限に継続する。 緊急性のため手続を簡略化し、その代わりに時間制限を設けたものとして緊急措置入院がある。

以下ではまず基本的な要件・効果等を記述する。 また、措置入院制度について種々提起されてきた問題点等もトピック的に記述する。

要件[編集]

措置診察の開始まで[編集]

  • 22条から26条の3までの規定による通報等があること(27条1項)
22条は一般人からの書面による申請、23条は警察官の通報、24条は検察官の通報、25条は保護観察所長の通報、26条は矯正施設長の通報、26条の2は精神科病院管理者の届出、26条の3は医療観察法の通院処遇者に関する通報である。22条、24条、25条、26条についてはその通報者等において自傷他害のおそれがあるとの判断を要しない。
必ずしもこれらの通報等がなくとも職権で措置診察をなしうる(27条2項)が、自傷他害のおそれが明らかであることを要する。
  • 調査の上措置診察の必要があると認めること(27条1項)
実務上は、上記通報等のうち明らかに自傷他害のおそれがないものや、措置診察を優先させられない場合など(例えば、自殺企図で全身熱傷を負ったため救急治療すべき場合など)に、この要件に基いて、措置診察しないこと(「不実施」と称される。)が正当化される。
  • 診察の通知(28条)
措置診察の実施が決定されたときは、現に本人の保護の任に当たっている者に対してあらかじめ措置診察の日時場所を通知することを要し、この者や後見人、保佐人、親権行使者、配偶者は診察に立ち会うことができる。

措置診察[編集]

  • 指定医2名以上の診察の結果が「精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認める」ことで一致すること(29条2項)
措置入院にあたっては、都道府県知事は2名以上の指定医を指名しなければならない。指定医の属性に制限はなく、要措置となれば入院する予定の病院に所属する者や、本人の主治医であった者でも制度上は構わないことになる。指定医は同時に診察してもよいし順次診察してもよい。この指定医による診察を「措置診察」とか「措置鑑定」と呼ぶことが多い。緊急措置入院に引き続き行うときは「再診察」「再鑑定」と呼ぶこともある。
指定医は28条の2の基準に則り、「精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認める」(このような状態を呈することを「措置症状」と呼ぶことがある。)かどうかを各自判定し、各指定医が一致してこれを肯定することが必要である。
なお、指定医が措置診察した内容は、通常、「精神科病院に入院する時の告知等に係る書面及び入退院の届出等について」(平成12年3月30日障精第22号厚生省大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課長通知)の様式21として規定される「措置入院に関する診断書」(薄赤色のA3用紙であることから「赤紙」と称されることがある。)に記載するよう求められる。このような措置診察に関する診断書作成に法律レベルの根拠はなく(上記通知は様式を定めるのみでこれを作成する根拠規範とはならない)、条例で根拠付けられる(例えば、北海道の「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行細則」4条2項及び同条項において引用する別記第4号様式)。また措置診察の法的性質は鑑定であって医師法上の診療ではないから、診療録記載義務(医師法24条1項)も生じない(精神保健福祉法19条の4の2の対象たる19条の4第1項は29条1項を除外している)。
診察の場所について法令上の定めはなく、自治体が専用の鑑定室を設けている場合、要措置となれば入院する予定の病院を間借りして行う場合等さまざまである。本人の居所に立ち入ることもできる(27条4項)。また、通報を受けてから措置診察実施までの時間、措置診察にかける時間、措置診察後に措置入院を決定し告知するまでの時間についても、法令上の定めはない。これについて、例えば23条通報(警察官からの通報)を受けて措置診察を行う場合に、通常は通報前に警職法3条1項の保護が先行していることから、同条3項の期間内に診察・入院措置を行うことで、比較的速やか、かつ事実上警察官の勢力下で安全を確保する運用がある。また、かつて、通報を受けてから措置診察まで数週に亘り医療保護入院させるという運用をした自治体が批判されたことがある。
  • 都道府県の職員の立会い(27条3項)
この立会職員に、各指定医の診察結果を得て(羈束的に)入院を決定し入院の告知等を行う権限等が授権されていることが多い。
  • 入院の告知(29条3項)
告知の書面は、「精神科病院に入院する時の告知等に係る書面及び入退院の届出等について」(平成12年3月30日障精第22号厚生省大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課長通知)の様式7を利用したものが使用されることが殆どである。

効果[編集]

措置入院の成立[編集]

条文上は入院させる「ことができる」であるが、覊束裁量と解されている。措置入院は国等の設置した精神科病院又は指定病院(19条の8)において行う。前者は全病床数から、後者は指定病床数から、それぞれ既存の措置入院者・緊急措置入院者数を除いた限りで、措置入院者を優先して入院させなければならない(措置入院優先主義、29条4項)。
ひとたび措置入院が成立すると、入院措置の解除があるまで退院できない。解除は入院を継続しなくても自傷他害のおそれがないと認められる必要があり、都道府県知事が指定する指定医をしてこれを判断させる場合(29条の4)、病院管理者が指定医に判断させる場合(29条の5)、定期病状報告(38条の3)又は退院請求(38条の5)について精神医療審査会の意見を受けた場合、職権による場合(38条の7)があるが、いずれにしろ解除も入院と同様、都道府県知事(職権の場合は厚生労働大臣も)の権限と責任において行われる。解除があるまでは、無断退去者の通知規定(39条)が適用されるが、例外的に病院外に出られる制度として仮退院(40条)がある。
措置入院中は、入院後3か月、以降6か月毎に定期病状報告をしなければならない(38条の2、精神保健福祉法施行規則19条3項)。

措置入院者の救済[編集]

措置入院の継続または処遇への不服申立は法38条の4の退院請求または処遇改善請求により行う。
措置入院(の開始)自体は第1号法定受託事務である(51条の13第1項)から、行政不服審査法に基づく審査請求や行政事件訴訟法に基づく取消訴訟による不服申立てが可能である。
措置入院中の医療過誤、あるいは入院中に他患を暴行した場合等について、病院や主治医その他病院職員等の個人が損害賠償責任を負うことはない。措置入院中の医療行為等は国家賠償法1条1項の「公権力の行使」、治療に当たる医師等は「公務員」に該当するとの通説による(国家賠償法の対象であるときは、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求はできない)。このように判断した裁判例も存在する[1]。この判例は、入院診療計画書等の存在によっても措置入院関係と別に診療契約が成立したということはできないと判示している。

公費医療原則(30条)[編集]

措置入院の費用は、医療法上の療養担当規則、いわゆる診療報酬制度によって定まり(29条の6)、原則は都道府県が4分の1、国が4分の3を支払う(30条)が、高額所得者など、一部本人負担のこともある(31条。例えば、東京都の「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行細則」2条)。

措置入院に付随する制度等[編集]

移送(29条の2の2)[編集]

診察の開始から入院決定まで強制手続であることから、必要最低限度の有形力行使は当然に認められていたものの、医療保護入院に係る移送(34条)が整備されたことに伴い、措置入院に係る移送についても根拠及び身体的拘束を含め行動制限ができる旨が規定されたものである。

問題点等[編集]

触法事例における治療責任の所在、刑事手続との関係及び医療観察法の成立[編集]

いわゆる「経済措置」[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  1. ^ 大分地判平成24.11.1