接触分解

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シューホフの接触分解装置(バクー、1934年)

接触分解(せっしょくぶんかい、catalytic cracking)とは、一般的には触媒の作用によって生ずる分解化学反応のことである。クラッキングとも呼ばれる。ここでは石油精製においてを重油留分を触媒の作用によって分解し、低沸点の炭化水素に変換するプロセスについて述べる。粉末状の固体触媒を流動層状態で使用することから流動接触分解FCC(Fluid Catalytic Cracking)とも呼ばれている。

概要[編集]

原油蒸留によって得られる各留分の収率は原油の組成によって決まり、需要の比率とは必ずしも一致しない。とりわけ重油の過剰とガソリンの不足が問題となりがちであるので、重油を原料としてガソリンを50%前後の収率で得られる接触分解装置は石油精製工場において重要な位置を占める。

使用される触媒は粒径数十µm程度のゼオライト系固体触媒である。触媒は流動層状態で装置内を循環するので、反応活性に加えて良好な流動性や耐摩耗性が求められる。

機構[編集]

分解反応は500℃程度で原料油と触媒が接触することによって起こり、以下のような機構で進行していると考えられている。

  1. 高温によって軽油や重油を構成する直鎖のアルカン熱分解を起こし、ラジカル的にC-C結合やC-H結合が切断される。
  2. こうして生成したラジカルのうち一部はさらにC-C結合が切断されてアルケンを生成する。
  3. 生成したアルケンに触媒からプロトンが供与されることでカルボカチオンが生成する。
  4. カルボカチオンは水素原子やアルキル基の転位を起こしたり、切断されたりしていく。この転位反応では安定性の高いアルキル基の置換の多いカルボカチオンが生成しやすいため、主に分岐の多い低沸点アルケンが得られる。

分解反応の反応時間は数秒程度ときわめて早く、反応生成物と触媒はサイクロンによって分離される。分離された触媒は、分解反応によって生成した炭素質のコークの付着によって失活している。失活触媒は再生塔に送られコークを燃焼除去して活性を取り戻した後に、再び分解反応へと循環する。また、再生塔は触媒を燃焼熱によって700℃程度まで加熱して吸熱反応である分解反応のための反応熱を与える役割も持つ。

反応生成物は原油と同様に広い沸点範囲を持つ混合物であるので、原油の常圧蒸留装置と類似した蒸留系によってLPG、ガソリン、軽油、重油などの留分に分離される。

接触分解によって得られるガソリンはオレフィン分に富み、レギュラーガソリン相当のオクタン価を持っている。一方、軽油留分は不飽和成分があるためセタン価が低くディーゼルエンジンの燃料には適さない。接触分解によるLPGには、原油蒸留によって得られるものと違ってプロピレンブテンなどの不飽和成分を含んでいる。特にプロピレンは、10%程度の対原料収率も実現可能であるので、接触分解は有力な石油化学原料製造プロセスと位置づけられるようになってきた[要出典]

原油とその化学的生成物の差也を対象にした先物取引をクラックスレッドと呼ぶ。