肉食動物

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肉食動物(にくしょくどうぶつ、: Carnivore)は、動物の体に起源する食物を主に摂取する動物である。類義語に捕食者: Predator)がある。

食物[編集]

「肉食動物」という語は誤解されやすいが、「肉食動物」とは、特に他の恒温動物哺乳類鳥類)を捕殺してその「」を摂食する動物ということではない。動物体あるいはそれに由来するものを食べる動物食性(zoophagous)のうち、生きている動物を食べる(carnivorous)動物のことを言う。より狭義には生きている動物を殺して食べる(predatory)動物(捕食者)をさす。 例えばモグラアリクイカワウソペリカンも肉食動物に分類される。

食物連鎖では二次消費者以上の高次消費者となる。

草食動物の食べる植物質と比較して消化吸収の容易な内臓などを摂食するため、等の消化器官自体の構造は単純であるが、食物に脂肪が多く含まれるので、胆汁の分泌などの脂肪の利用に必要な形質は発達している。栄養素の面からも、自分自身とよく似た生物を食べるのだから、比較的不足なく摂取できる。

肉食に偏っている場合、摂取栄養がタンパク質脂肪に偏り、同じく三大栄養素のひとつである糖分の摂取が不足することになる。のような肉食動物は、糖新生の酵素活性が高く、タンパク質から分解されて得られた糖原性アミノ酸から糖新生を行って体内で必要な糖分を生成している[1]

食物の獲得[編集]

肉食動物が苦労しなければならないのは、むしろ餌の入手である。相手が動物であれば、なにがしかの運動性をもち、逃走や待避、防御といった行動を取るものがほとんどである。肉食動物は、それらを越える探索能力や捕獲能力を発達させなければならない。当然食われる方も逃走や防御の能力を発達させるので、一種のいたちごっこ状態が生じる可能性がある。そこに赤の女王仮説が成立する土台がある。

餌のとらえ方は、大きくは探索-捕獲と進む追跡型と、待ち伏せ型とがある。もちろん両方の間にはさまざまな中間がある。

また、自ら獲物となる動物を狩猟の形で殺害捕獲のではなく、他の動物が捕食した・あるいは寿命や疾病・負傷などで死亡した動物を食べる動物もいる。これらは「スカベンジャー」(→腐肉食)と呼ばれる。スカベンジャーは自ら動物を追い回し捕らえる苦労が無い代わりに、広い範囲を行動して狩りをする動物の食べ残しや傷病死した動物の死骸を探さなければならない。

医学生物学的な定義[編集]

セルロース分解酵素を持たない動物。 ただし、これに従えば、通常は典型的な草食動物とされるモンシロチョウの幼虫もウシも肉食動物に含まれてしまう。一方、肉食イメージの強いアメリカザリガニモクズガニ(実際は双方、動物食の選好性は強いが生態的には植物食性の強い雑食動物)などは含まれない。医学生物学的な文脈以外では通常使われない。

生物濃縮[編集]

これら動物は、他の動物を捕食することで、その捕食された動物が摂取した栄養素を二次的に利用する。この場合、骨や内臓も食べることになるため、それらに蓄積された栄養素も消化・吸収する。しかしその一方で、尿によって体外に排泄されにくいために、これら被捕食動物の体に蓄積された脂溶性の汚染物質も吸収することになる。したがって、有害物質などが被捕食動物よりも高濃度で蓄積し、より大きな被害が出る場合もある(生物濃縮)。近年では一部地域で、これら食物連鎖による高濃度な公害による汚染によって、野生肉食動物の絶滅が危惧されている所もある。

食うことでその餌動物から特殊能力を受け取る例もある。ウミウシの仲間には餌にする海綿動物などの動物の持つ毒物を体内に取り込んで、自分が魚などに食べられないための防御に用いるものが多いが、なかでもミノウミウシ類は刺胞動物クラゲイソギンチャク)を餌として、その時に餌のもつ刺胞を壊さずに取り込み、自分の背面などに保持して、自己防衛に使う。また嚢舌類と呼ばれるウミウシの仲間は緑藻類に属する海藻の細胞の中身を吸引して餌にしているが、そのとき葉緑体は消化せずに生きたまま背面にある細胞に取り込み、光合成をさせて活動に必要な栄養素を獲得している。餌に含まれる毒素の利用は昆虫でもよく知られており、マダラチョウ科のチョウの多くは幼虫時代に食草から取り込んだ毒物によって鳥に食べられにくくなっている。

人間の食料として[編集]

牧畜狩猟があまり盛んでない地域の人間は、その食習慣において、内臓をあまり好んで食べないので、これらの濃縮された汚染にさらされずに済んではいるが、食文化により内臓を調理して食べる場合には、注意が必要とされている。哺乳類の内臓の食習慣が余り一般的ではない日本でも、魚の内臓、特に高次消費者であるマグロなどの利用は同様の意味で注意が喚起されている。また肉食動物の肝臓には、高濃度のビタミンAが含まれるが、雑食動物である人間が肉食動物の肝臓を食べると、少量でビタミンA過剰摂取の危険もあるため、一般的には肉食動物の肝臓は食用に適さないとされている。実例として、ホッキョクグマの肝臓を多く摂取すると、ビタミンAの過剰症を起こすことが知られている。

肉食動物は活発に活動する関係から、スジが多く肉が臭いと言われているが、きちんと調理することで臭みが抑えられる。また鳥類や爬虫類の肉食動物では、味が淡白とされる。しかし寄生虫をもっていることも多いため、よく加熱調理しなければならない。

よく知られている肉食動物[編集]

ただしこれらの中には例外もある。ジャイアントパンダ(クマ科)はよく知られているとおり植物食であり、他のクマ科の種も多くは雑食性である。またタヌキハクビシン家畜化されたイヌネコなども、雑食傾向にある。なお、イヌ科はネコ科に比べて雑食傾向にある。

関連項目[編集]

脚注[編集]

参考文献[編集]