拳児

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拳児
ジャンル 拳法アクション人間ドラマ
漫画
原作・原案など 松田隆智
作画 藤原芳秀
出版社 小学館
掲載誌 週刊少年サンデー
レーベル 少年サンデーコミックス
発表期間 1988年 - 1992年
巻数 全21巻
(ワイド版は全11巻、文庫本は全12巻)
話数 全193話 + 外伝9話
その他 外伝9話は、李書文の生涯を中心に
描かれている。
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拳児』(けんじ)は、原作:松田隆智、作画:藤原芳秀による日本漫画作品。

週刊少年漫画雑誌『週刊少年サンデー』(小学館)に、1988年2・3号から1992年5号まで連載された。単行本は小学館:少年サンデーコミックスより全21巻(うち外伝1巻)、同ワイド版より全11巻、小学館文庫より全12巻、コンビニコミック版全8巻が刊行されている。

解説[編集]

中国武術をテーマとした作品であり、格闘シーンも頻繁に登場するが、戦闘そのものがメインテーマとなっている一般の格闘漫画とは異なり、主人公・拳児の成長を軸に、中国武術の技術論や思想・哲学などを描いた物語となっている。本作のストーリーそのものはフィクションだが、現実の武術史、実在した過去の武術家に関するエピソードが多数紹介されており、高名な武術家がモデルとなったキャラクターも数多く登場している。なお、連載当時は存命中だった武術家をモデルに作られたキャラクターは別名で、既に死去していた場合は実名で描かれている。

本作において八極拳は、主人公が主として学ぶ武術ということもあり、非常にダイナミックに描写されている。そのため、劇中の八極拳には漫画的な誇張が多く、実際の八極拳の姿とは大きくかけ離れた部分も少なくない。

あらすじ[編集]

父、母と三人で暮らす小学生・剛拳児は、田舎の祖父・侠太郎から八極拳を学んでいた。ある日侠太郎は、日中戦争時代に恩を受けたかつての知人を訪ねるため単身中華人民共和国へ渡り、そのまま消息を絶ってしまう。時が経ち、拳児は中学生、やがて高校生となり拳士としても成長したが、侠太郎の行方は未だ杳として知れない。トニー・譚との抗争事件で学校から無期停学処分を言い渡された拳児は、侠太郎を探すため、台湾香港を経由して中国へと旅立っていった。

登場人物[編集]

メインキャラクター[編集]

剛 拳児(ごう けんじ)
本作の主人公。正義感が強く、激情的で負けず嫌いな一面を持つ。幼少期はわんぱくで向こう見ずな子供だったが、やがて大人しく礼儀正しい少年へと成長した。幼少時より、祖父・侠太郎から八極拳を習っていた。
教育熱心な母親の方針で、進学校の乾清大学付属中学に通っていた。しかし、暴走族とのいさかいに巻き込まれて付属高校に上がれず、不良校である紫竹院学舎高校へ進学。その後、トニー・譚との抗争で無期停学処分を下されたため、その期間を利用し、音信不通となった侠太郎を追って一人中国へと旅立った。
侠太郎が中国に旅立って以降は、独学で八極拳の稽古を続ける傍ら、様々な武術・格闘技を学んでいた。その後、張仁忠に本格的に八極拳を師事し、日本を出国した後は蟷螂拳八卦掌など、数々の中国武術を修行している。
剛 侠太郎(ごう きょうたろう)
拳児の父方の祖父で、八極拳の師匠。田舎に一人で暮らしている。明るく子供っぽい性格だが、義侠心に溢れ曲がったことを許さない。武術家としての技量は非常に高く、暗勁を使いこなすこともできる。
青年時代、日中戦争に従軍した際に滄州で負傷。その時に命を助けられ友人となった中国人農夫の縁で、八極門の拳士・孟修齢に弟子入りした。終戦後、一門の協力を得て日本に帰国。老境に入り、友人との再会の約束を果たすべく中国に旅立ち、消息不明となった。
トニー・譚(たん)
ベトナム出身の華僑洪家拳流星錘の使い手で、愚連隊を率いている。戦争によって家族と離れ離れになり、シンガポール香港を経て横浜へ来訪。異国でたった一人幼少時代を生き抜いてきた過去から、強くなることに執着する粗暴で残忍な性格となった。
張仁忠に何度となく八極拳を師事しようとして、その都度拒否された。そのため、張から直々に技を学び、かつ生い立ちや境遇も正反対の拳児を激しく敵視している。その後の対決で拳児に二度敗れた後、修行のため中国本土に渡り、心意六合拳を学んで拳児に復讐戦を挑んだ。
モデルはアメリカ合衆国在住の南派拳法家、トニー・チェン。チェン自身も本人役で劇中に登場し、譚とは義兄弟の間柄という設定になっているが、本作でのチェンは拳法家ではなく拳法の心得のある実業家となっている。

日本[編集]

市村 太一(いちむら たいち)
拳児の友人。小学校、中学校と拳児の同級生で、高校は付属高校に進学。肥満体型で、小学生の時は気の弱いいじめられっ子だったが、侠太郎から形意拳の手ほどきを受け、自ら克服した。
風間 晶(かざま あきら)
拳児と同い年の少女で、テキ屋・関東大和屋一家の元締の娘。小学生の時の縁日で拳児と出会い、以来拳児に対して好意を寄せている。中学生時代は暴走族「鉄羅漢」に入るなど、非行に走っていた。拳児との再会をきっかけに自分の目標を見つけ、名門高校に進学、後にオートバイレーサーとなる。
井上(いのうえ)
暴走族「鉄羅漢」のリーダー。拳児が中学生の時に一対一で戦い、実力を認めて友人となった。対立グループとの乱闘を機に暴走族をやめ、張仁忠の店でコック見習いとして働いている。
堀田 豪士(ほった たけし)
松濤館流空手を学ぶ少年。高山と一緒に侠太郎を訪ねた時に、侠太郎宅に遊びに来ていた拳児と知り合った。後に高校チャンピオンとなり、ニュースでそれを知った拳児と再会、それをきっかけに高山から、空手以外の技の手ほどきも受けるようになる。
高山 双八(たかやま そうはち)
侠太郎と親交のある空手家で、松濤館流の師範。若い時には全国大会を制覇したこともある。空手以外の武道・武術にも精通しており、拳児と堀田に様々な古武術の技を指導した。モデルは國際松濤館空手道連盟最高師範・金澤弘和
張 仁忠(ちょう じんちゅう)
横浜中華街中華料理店を経営する中国人。八極拳の達人で、井上の縁で出会った拳児を弟子に迎え、本格的に八極拳を伝授。拳児が中国へ渡る際には、ユニオンの一員として台湾の劉月侠に引き合わせるなど、様々なバックアップを行った。
モデルは在日華僑の中国武術家・張世忠。張は李書文の孫弟子にあたる八極拳の達人であっただけでなく、銀座で中華料理店「東生園」も経営していた。

台湾[編集]

劉 月侠(りゅう げつきょう)
李書文の最後の弟子。台湾総統府侍衛隊の武術教師をしており、その傍らで自ら見込んだ数人の高弟に八極拳を指導している。後に拳児を直弟子とし、正式な八極門の門人として迎え入れた。八卦掌の達人でもある。
大陸・滄州の出身で、青年時代は中華民国の工作員として活動していた。戦後は台湾に渡り、長年の間武術と関わることなく静かに暮らしていたが、総統府に武術師範として招かれたのをきっかけに、自らの技を後世に伝える作業に乗り出す。モデルは李書文の実在の関門弟子・劉雲樵
蘇 崑崙(そ こんろん)
劉月侠の高弟。台北で診療所を営みながら、学生に蟷螂拳を指導している。生まれ故郷の台南で張徳奎から秘門蟷螂拳を学んだ後、劉に弟子入りし八極拳を学んだ。
小柄な体格の明るいお調子者だが、各種格闘技の心得のある在台アメリカ軍人数人を圧倒するなど、その実力は非常に高い。拳児の台湾滞在中、自宅に拳児を寝泊りさせ、蟷螂拳と八極拳をコーチした。モデルは劉雲樵の直弟子・蘇昱彰
田 英海(でん えいかい)
蘇崑崙の台南時代の兄弟弟子。非常に大柄な体格で、蟷螂拳の他、硬気功ムエタイをはじめ様々な武術を学び、兵役中は陸軍で格闘技教官を務めていた。張徳奎から破門されたことと劉月侠への弟子入りが叶わなかったことを恨み、黄銀山と共に張一門と蘇崑崙に嫌がらせをしている。
蘇の門下に入ったばかりの拳児を一度は試合で圧倒するも、その後蘇と劉の下で修行を積んだ拳児と再戦し惨敗、この敗北を機に自らを改めた様子が見られた。モデルは松田隆智の元教え子で、「フルコンタクトKARATE」誌の編集長だった山田英司
黄 銀山(こう ぎんざん)
蘇崑崙の台南時代の兄弟弟子。台南の有力者の息子で、権力を笠に着て好き放題振舞っている。田英海と同じく、自らを破門した張徳奎と蘇崑崙を恨み、数々の嫌がらせを行っていた。中国から渡来した黒社会の殺し屋を雇って蘇の命を狙おうとしたところを、単身邸宅に踏み込んできた蘇に殺し屋共々叩きのめされる。

香港[編集]

閻 大旺(えん だいおう)
香港・九龍城の実力者で、羅漢銭等の暗器の名手。ユニオンの幹部でもある。横浜にて拳児と邂逅した後、台湾から香港に渡ってきた拳児にユニオンの様々なしきたりを教育した。通称・閻魔大王
閻 勇花(えん ゆうか)
閻大旺の姪。大旺から羅漢銭、劉月侠から剣術(崑吾剣)を習っており、その強さから小説の主人公にちなんで「十三妹」と呼ばれている。
ボビー
九龍城の住人で、閻大旺の身内の一人。大陸出身。勇花とよく行動を共にしており、映画スターになることを夢見て日夜蟷螂拳の修行に励んでいる。トニー・譚の香港時代の舎弟で、トニーのことを慕っている。
ジョニー・王(ウォン)
香港の愚連隊「天友楽」のリーダー。蛇拳の使い手で、トニー・譚の香港時代のライバルだった。黒社会とも繋がりがあり、閻大旺の失脚を目論んでいる。

中国[編集]

朱 勇徳(しゅ ゆうとく)
ユニオンの一員。強氏八極拳の使い手で、八極拳の腕は滄州一と称されている。気性が激しく、初めは日本人ながら八極拳を学んでいる拳児を敵視していたが、やがてその実力を認め侠太郎探しに協力、別れ際には強氏八極拳の歩法(活歩)を伝授した。モデルは強氏八極拳の名手・朱宝徳
尹 東侠(いん とんきょう)
侠太郎の恩人・尹春樹の孫。腕力はあるが肥満体で動きが鈍く、周りからは大牛というあだ名で呼ばれている。 鄭州で決闘を強要され命を落とした父親の仇を討つため、丁清真に八極拳を師事、その後嵩山少林寺に入門した。拳児を兄と慕っている。
李 長典(り ちょうてん)
趙堡鎮で農業を営む老人。拳児の使う太極拳忽雷架を創始した李景炎の子孫。飢えて行き倒れになっていた拳児を介抱し、陳家溝の陳諸才を紹介した。気功の達人で並外れた太極拳の技量を持っているが、その拳法の実力は誰も知らない。
張 猛炎(ちょう もうえん)
趙堡鎮出身の太極拳の達人。文化大革命の際に父を殺されたショックで人間性が歪み、以来、張狠子のあだ名で呼ばれる暴れ者となった。趙堡鎮の外れにある、かつて李景炎が修行した場所を聖地と見なしており、無断で立ち入った拳児に重傷を負わせる。その後、陳諸才のもとで本格的に太極拳を学んだ拳児と再戦し敗北、改心してひとり村を後にした。
悟空(ごくう)
強盗団「夜叉王」のリーダー。かつては少林寺の拳士だったが、文化大革命の際に紅衛兵と乱闘を起こして少林寺を去り、夜叉王を結成して少林拳の心意把をメンバーに伝授、紅衛兵襲撃を繰り返していた。文化大革命が終わった後も夜叉王の活動を続け、老君山に篭もっている。
夜叉五(やしゃご)
夜叉王五番目の幹部。元は鄭州のゴロツキで、滄州を始めとする河北省の武術家を敵視している。少林寺へ向かう拳児を騙して紹介状を奪ったが、夜叉王幹部の証である短剣を取られ、拳児を執拗につけ狙う。
呂瑞法
心意六合拳を体得したというトニー譚を追って、河南省にたどり着いた拳児が訪ねた老人。実は心意六合拳の大家であった。トニーと決着をつけたい拳児に心意六合拳を習うことを許可し、四把推、十大形などを伝授した。モデルは河南省の呂瑞芳。
李 書文(り しょぶん)
清朝末期から中華民国時代に実在した、伝説的な強さを誇った八極拳の拳士。拳児の使う李氏八極拳の祖でもある。劇中に本人が登場することはないが、侠太郎の訓話や劉月侠の昔話といった形で、その強さや人物像に関するエピソードが度々紹介されている。また『外伝』には、李を主人公とした短編が6編収録されている。
実在の李書文については、李書文を参照。