担保物権

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

担保物権(たんぽぶっけん)とは、大陸法系の私法において、担保(債務の履行の確保)のための物権である。用益物権と並んで制限物権の一種である。

以下、日本法における担保物権について解説する。

  • 民法は、以下で条数のみ記載する。

種類[編集]

典型担保・非典型担保[編集]

典型担保とは、民法典の定める物的担保のことをいい、以下のようなものがある。

なお、特別法の定める質権、抵当権、留置権及び先取特権は、典型担保として扱われる。

典型担保の反対概念として非典型担保(変則担保ともいう)があり、民法典に定められていない担保である。非典型担保は、もともと権利移転に関する法原則に信用事由などの条件などを付すことで実質的に担保としての機能を果たすように設計されたものである。一部はその後根拠法を有するに至っている。

非典型担保が発生した理由としては、次のような要因がある。

  1. 民法が質権に代理占有を禁じたため(345条)。
  2. 典型担保の設定・実行には手間がかかるため。
  3. 動産には、抵当権における登記のような公示方法がないため。ただし、今日では動産譲渡登記によって可能になっている。
  4. 後に仮登記担保法として結実する代物弁済予約について、清算義務が判例法上認められるまでは、例えば、300万円の貸金の担保として、3,000万円の自宅を譲渡担保に供するなど、債務者の困窮につけ込み、債権者が被担保債権より高額な担保を、所有権移転の方式により取得するといううまみがあったため。

非典型担保には以下のようなものがある。このうち、譲渡担保については一種の担保物権として理解する学説も有力であるが、判例上は(担保を目的として移転されたために一定の制約に服する)所有権であるとされている。

債権者が債権を担保するため第三債務者に対して債権者から債権の受領を委任してもらい第三債務者から直接に弁済を受領し、弁済にあてること。

なお、民法典に定められているかどうかにより典型、非典型と分類するものには、他に典型契約非典型契約がある。

法定担保物権・約定担保物権[編集]

  • 法定担保物権
法律に定められた要件を満たせば当事者の契約を待たずに生ずる担保物権で留置権・先取特権が該当する。
  • 約定担保物権
当事者の契約によって生ずる担保物権で、質権・抵当権が該当する。

担保物権の通有性[編集]

担保物権に一般的に認められる性質(担保物権の通有性)には次のような性質があげられる(ただし、すべての担保物権に必ず認められる性質というわけではない)。

債権があってはじめて存在し、成立・内容・消滅等において運命を共にすること。消費貸借契約、根抵当権では、緩和されている。
担保権者は、債権全額の弁済を受けるまで担保物の全てについて権利があること。
債権が譲渡・質入されたときには担保物権はこれに伴い移転し、または質権に服すること。
担保の目的物の滅失等により、設定者が受けた金銭等に対して払渡し又は引渡しの前に差押えれば、担保権の実行が行えること(304条)。
先取特権・質権・抵当権にはあるが、留置権にはない。

担保物権の効力[編集]

次のような効力があげられる。ただし、例外もあり、すべての担保物権に共通する効力というわけではない。

  • 留置的効力
担保物権の対象となる物の占有を保持することで相手方の債権の弁済を事実上強制する効力のこと。留置権、質権に存在する。
  • 換価効力
担保物権の対象となっている物または権利を換価し、債権の弁済に充てる効力のこと。
  • 優先弁済効力
担保物権を換価して発生した経済的価値について、他の一般債権者に優先して弁済を受けられる効力のこと。留置権以外の担保物権に存在する。
担保権の対象となっている物または権利が消滅した後、その変形物の価値を握持することにより債権を充足させることができる効力のこと。先取特権、質権、抵当権に存在する。

特別法の定める典型担保[編集]

特別法の定める留置権[編集]

  • 商人間の留置権(商法521条) - 商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者の別段の意思表示があるときは、この限りでない。
  • 代理商の留置権(会社法20条(旧商法51条)) - 代理商は、取引の代理又は媒介をしたことによって生じた債権の弁済期が到来しているときは、その弁済を受けるまでは、会社のために当該代理商が占有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者が別段の意思表示をしたときは、この限りでない。
  • 代理商の留置権(商法31条) - 代理商は、取引の代理又は媒介をしたことによって生じた債権の弁済期が到来しているときは、その弁済を受けるまでは、商人のために当該代理商が占有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者が別段の意思表示をしたときは、この限りでない。
  • 問屋の留置権(商法557条) - 第27条及ビ第31条ノ規定ハ問屋ニ之ヲ準用ス

特別法の定める先取特権[編集]

特別法の定める質権[編集]

  • 商事質権(商法515条) - (契約による質物の処分の禁止の適用除外) 349条の規定は、商行為によって生じた債権を担保するために設定した質権については、適用しない。
  • 質屋における流質物の取得及び処分(質屋営業法19条1項) - 質屋は、流質期限を経過した時において、その質物の所有権を取得する。但し、質屋は、当該流質物を処分するまでは、質置主が元金及び流質期限までの利子並びに流質期限経過の時に質契約を更新したとすれば支払うことを要する利子に相当する金額を支払つたときは、これを返還するように努めるものとする。
  • 質屋の流質物の売却(質屋営業法19条2項) - 質屋は、古物営業法第14条第2項の規定にかかわらず、同法第2条第2項第2号の古物市場において、流質物の売却をすることができる。

特別法の定める抵当権[編集]

特別法の定めるその他の担保物権[編集]

関連項目[編集]