オリヅルラン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
折鶴蘭から転送)
オリヅルラン
オリヅルラン  ‘ピクチュラタム’
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
: キジカクシ目 Asparagales
: キジカクシ科 Asparagaceae
亜科 : リュウゼツラン亜科 Agavoideae
: オリヅルラン属 Chlorophytum
: オリヅルラン C. comosum
学名
Chlorophytum comosum
(Thunb.) Jacques[1]
英名
Spider plant

オリヅルラン(折鶴蘭、Chlorophytum comosum (Thunb.) Jacques, 1862)は、キジカクシ科オリヅルラン属に属する常緑多年草観葉植物としてよく栽培される。

オリヅルランは、ある程度成長すると細長い花茎を高くのばし花穂(かすい)をつける。白いがその複数箇所でまばらに咲く。花穂(かすい)の先端にはクローン苗として、不定芽ができ、花柄は栄養繁殖を行うランナー(匍匐茎)になり、新しい株を作る[2]。この株の様子が折り鶴に似ていることからオリヅルランと名付けられた(海外では、蜘蛛の巣を思わせる事からSpider Plantと呼ばれている。)。ランナー及び花は環境さえ整えば周年発生する。

乾燥には非常に強く、太い根の中に水分を蓄えているので葉が全て枯れる程乾燥させても水を与えればまた新芽を出す事ができ、過加湿な環境においても根腐れがおきにくい。ただし、水分が不足すると葉の先端から枯れてくるので見栄えは悪くなる。害虫ではカイガラムシに注意が必要である。ランナーでよく増え、丈夫で栽培が容易なことから観葉植物として、またグラウンドカバーとしても使用される。

オリヅルラン(折鶴蘭、Chlorophytum comosum (Thunb.) Jacques, 1862)は、1984年にNASAが行った実験では、空気中のホルムアルデヒドを葉に吸着する能力が高く、室内の空気清浄効果があることが示された[3]。(他にもキシレン及びトルエンの除去効果が示されている[4]。)

形態・生態[編集]

出典:[5]

は根出状で、細長く大株になると4、50cm程になる。色は緑色で、柔らかく艶がない[6]。この種(しゅ) の自生範囲は、西熱帯アフリカからカメルーン、エチオピア、南アフリカです。 常緑多年草であり、主に季節的に乾燥した熱帯生物群系に自生します。 時に薬用として使用され、造園的用途などに使用されます。原種には基本的に斑が無い、園芸分野においては斑入りのものが主に栽培される。

自然の自生地[編集]

ブルンジ、カメルーン、ケープ州、赤道ギニア、エチオピア、ギニア湾諸島、コートジボワール、ケニア、クワズール・ナタール、リベリア、マラウイ、モザンビーク、ナイジェリア、北部諸州、シエラレオネ、スーダン、スワジランド、タンザニア、ウガンダ、ザンビア 、ジンバブエ[7]

オリヅルランの園芸品種[編集]

[8]

バリエガタ (小型・外斑)[編集]

ソトフオリヅルラン

クロロフィツム・コモスム ‘バリエガタ’

Chlorophytum comosum (Thunb.) Jacques, 1862  ‘Variegata’

江戸東京博物館の資料に依ると、本個体が江戸時代中期に渡来したとされおり、斑(ふ)の入る場所により葉の縁が白い物を外班と呼び、ソトフオリヅルラン(外斑折鶴蘭。葉は中斑のものより固めであり強健[9]。ランナーの色は緑。)と呼びます。これが最初に渡来しました。1862年に学術記載されたのち、南蛮船にて江戸時代に渡来したものはこの個体です。

メディオピクタ (小型・中斑)[編集]

ナカフオリヅルラン

クロロフィツム・コモスム ‘メディオピクタ’

Chlorophytum comosum (Thunb.) Jacques, 1862  ‘Mediopicta’

葉の中央が白い中斑をナカフオリヅルラン(中斑折鶴蘭。ランナーの色は白。)と呼んでいます。この中斑はややくすぼけており、後に輸入された ‘ピクチュラタム’ に押されて昨今ではみかけなくなりました。 ランナーの茎が白い個体はタネを播種しても全て葉緑素を持たない子しか出来ず全て枯死します。

ピクチュラタム (大型・中斑)[編集]

クロロフィツム・コモスム ‘ピクチュラタム’

Chlorophytum comosum (Thunb.) Jacques, 1862  ‘Picturatum’

これは一時期ヒロハオリヅルラン(Chlorophytum capense (L.) Voss, 1895) と混同された園芸品種です。1980年代に東南アジア経由で国内に入ってきました。標準タイプのオリヅルランよりも大柄で、葉の中筋に沿って幅広い中斑がはいり見栄えがするので、現在の主流のオリヅルランとなって流通しています。ランナーの茎は白、ランナーの茎が白い個体はタネを播種しても全て葉緑素を持たない子しか出来ず全て枯死します。

この個体は標準個体よりも大型ですが、中斑が芽状変異(スポートと呼ぶ)個体で斑入りが反転し、外斑になった個体の存在 ‘オーシャン’があります。斑が反転し外斑になるとランナーの茎が緑色になり、タネも稔り播種するとほとんどが緑色一色の葉に戻ってしまいます。これの、緑葉・大型の個体は園芸品種名を持ちません。

ボニー (大型・中斑・巻き葉)[編集]

クロロフィツム・コモスム ‘ボニー’

Chlorophytum comosum (Thunb.) Jacques, 1862  ‘Bonny’

‘ピクチュラタム’ をベースに芽状変異個体を固定された園芸品種です。葉がカールして巻き葉になる個体。ランナーの茎は白。ランナーの茎が白い個体はタネを播種しても全て葉緑素を持たない子しか出来ず全て枯死します。生育環境が悪いと、元の ‘ピクチュラタム’ と見分けがつかなくなりますが、できるだけ日照を確保し、肥培すれば、 ‘ボニー’ の特質を取り戻せます。

 オーシャン (大型・外斑)[編集]

クロロフィツム・コモスム ‘オーシャン’

Chlorophytum comosum (Thunb.) Jacques, 1862  ‘Ocean’

これも一時期 ヒロハオリヅルラン(Chlorophytum capense (L.) Voss, 1895) と混同された園芸品種です。1990年代に東南アジア経由で国内に入ってきました。標準タイプのオリヅルランよりも大柄で、‘ピクチュラタム’ の外斑に転じた個体で発生し、葉のフチに沿って幅広い外斑がはいり見栄えがします。流通量は極めて少ないです。

オリヅルランの学名の変遷[編集]

Homotypic Synonyms:

  • Anthericum comosum Thunb., 1794
  • Hartwegia comosa (Thunb.) Nees, 1831
  • Hollia comosa (Thunb.) Heynh., 1846
  • Phalangium comosum (Thunb.) Poir., 1804
  • Caesia comosa (Thunb.) Spreng., 1825

Heterotypic Synonyms:

  • Anthericum longituberosum Poelln., 1942
  • Anthericum picturatum Dreer, 1887
  • Anthericum sternbergianum Schult. et Schult.f., 1830
  • Anthericum vallis-trappii Poelln., 1942
  • Anthericum vittatum variegatum Hovey, 1882
  • Anthericum williamsii Anon., 1875
  • Chlorophytum brevipes Baker, 1898
  • Chlorophytum bukobense Engl., 1895
  • Chlorophytum bukobense var. kilimandscharicum Engl., 1895
  • Chlorophytum burchellii Baker, 1876
  • Chlorophytum delagoense Baker, 1897
  • Chlorophytum elatulum Poelln., 1947
  • Chlorophytum elgonense Bullock, 1932
  • Chlorophytum gazense Rendle, 1911
  • Chlorophytum glaucidulum Engl. ex Poelln., 1947
  • Chlorophytum glaucidulum var. pauper Poelln., 1947
  • Chlorophytum inopinum Poelln., 1947
  • Chlorophytum kirkii Baker, 1882
  • Chlorophytum limurense Rendle, 1932
  • Chlorophytum longum Poelln., 1947
  • Chlorophytum magnum Peter ex Poelln., 1947
  • Chlorophytum miserum Rendle, 1895
  • Chlorophytum nemorosum Poelln., 1947
  • Chlorophytum paludicola Poelln., 1947
  • Chlorophytum ramiferum Rendle, 1895
  • Chlorophytum rugosum Poelln., 1947
  • Chlorophytum sternbergianum (Schult. et Schult.f.) Steud., 1840
  • Chlorophytum turritum Peter ex Poelln., 1947
  • Chlorophytum usambarense Engl. ex Poelln., 1947
  • Cordyline vivipara Steud., 1840
  • Phalangium viviparum Reinw. ex Kunth, 1843
  • Narthecium sarmentosum Philippar, 1830

オリヅルランとは別種の仲間[編集]

ヒロハオリヅルラン (大型種)[編集]

クロロフィツム・ケーペンセ

Chlorophytum capense (L.) Voss, 1895

これは南アフリカ原産の常緑多年草です。明治初期に導入された種(しゅ)であり、花穂の先端にクローン苗を発生させない為、ランナーはできないもので、株分けで増やします。緑一色の原種の他に、中斑個体と外斑個体3個体が国内に生き残っています。東京の小石川植物園では第二次世界大戦時に生き残った個体が残っており、確認できます。

ヒロハオリヅルランの学名の変遷[編集]

Heterotypic Synonyms:

  • Anthericum elatum Aiton, 1789
  • Anthericum fastigiatum (Poir.) F.Dietr., 1815
  • Anthericum rouwenortii Gorter, 1783
  • Anthericum variegatum W.G.Sm., 1875
  • Chlorophytum elatum (Aiton) R.Br. ex Ker Gawl., 1816
  • Phalangium elatum (Aiton) Poir., 1804
  • Phalangium fasciculatum Baker, 1876
  • Phalangium fastigiatum Poir., 1804
  • Phalangium variegatum Baker, 1882

シャムオリヅルラン (小型種)[編集]

クロロフィツム・ラクスム

Chlorophytum laxum R.Br., 1810

この種の自生範囲はバングラデシュ、ボルネオ、チャド、中国南東部、エチオピア、海南、インド、ジャワ、マラヤ、ミャンマー、ノーザンテリトリー、オマーン、クイーンズランド、スリランカ、スマトラ、タイ、ベトナム、西オーストラリア、イエメンまで。小型の常緑多年草であり、主に季節的に乾燥した熱帯生物群系に自生します。本種も花穂の先端にクローン苗を作らないのでランナーにはなりません。園芸的には株分けでふやします。普及種の中では最も寒さに弱い物です。園芸個体として葉に外斑が入る物が一般的に流通しています。

シャムオリヅルランの学名の変遷[編集]

Heterotypic Synonyms:

  • Nolina javanica Hassk., 1843
  • Chlorophytum parviflorum Dalzell, 1850
  • Phalangium parviflorum Wight, 1853
  • Chlorophytum xerotinum F.Muell., 1858
  • Anthericum parviflorum (Wight) Benth., 1861
  • Chlorophytum abyssinicum Kotschy et Peyr., 1867
  • Chlorophytum falcatum Baker, 1873
  • Chlorophytum acaule Baker, 1876
  • Anthericum bichetii Backer, 1924
  • Chlorophytum bichetii Backer, 1924
  • Chlorophytum laxum forma javanicum (Hassk.) Backer, 1924
  • Chlorophytum javanicum (Hassk.) M.R.Almeida, 2009

注と出典[編集]

  1. ^ C. comosum”. GRIN Taxonomy for Plants. 2012年8月13日閲覧。
  2. ^ 基本的には花の咲いた所に子株が出来る。よって、子株が成長してきた際にランナーの根元から切らず、先端の子株の近くで切ってやると、一つのランナーから複数の子株を順々に取る事が出来る(なお、子株がある程度成長すると、ランナーを切らずに子株部分のみをもぎ取る事が出来る。この場合、先端の子株を残して途中の子株を取るというような事が出来る。)。なお、ランナーは、株が成長し栄養状態が良いと、枝分かれをしていく事もあり、またランナーに付いた子株から更にランナーと子株が生じる事もある。また、ランナーに子株が生じてから子株が成長すると、ランナーに付いたまま出根する(空中で生じたこの根には表面に細かい毛が生えており、ある程度の乾燥にも耐えられる。また水が根の一部に接していると毛によって濡れが根に広がっていく性質がある。)。
  3. ^ B. C. Wolverton, Rebecca C. McDonald and E. A. Watkins, Jr.. “Foliage Plants for Removing Indoor Air Pollutants from Energy-Efficient Homes”. Economic Botany. http://www.greenenergyhelps.com/wp-content/uploads/2013/04/Wolverton-et-al-1984.pdf. 
  4. ^ NASA空気清浄研究
  5. ^ Plants of the World Online 08/06, 2023. 閲覧
  6. ^ ただし、他観葉植物一般と同様に、鉢物にしてケイ素肥料(シリカゲル等)を多めに用いると、葉がやや固くなり、また葉がよく立つようになり、また葉に光沢が出る。
  7. ^ Plants of the World Online 08/06, 2023. 閲覧
  8. ^ Plants of the World Online 08/06, 2023. 閲覧
  9. ^ 葉の中央脈周辺で光合成が行われるため、その周辺へのホウ素、ケイ素、カルシウム等の蓄積及び固定化が発生して当該部分の組織が強固になるため(細胞壁の強化、クチクラ層周辺でのケイ化細胞層の発生等による。)。

関連項目[編集]