技術・家庭

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技術・家庭(ぎじゅつ・かてい)は、日本中学校(相当学校・課程を含む)における必修教科の一つ。1958年昭和33年)告示の中学校学習指導要領で、それまで開設されていた職業家庭科を再編成する形で新設された。

目次

[編集] 名称

一般に「・」(中点)を発音せずに「ぎじゅつかてい」と呼称するために、学校教育関係者や教育学研究者でさえ「技術家庭」と誤記する場合が少なくない。一部の技術科教育研究者の間では、長年にわたる「技術」(いわゆる「技術科」)と「家庭」(いわゆる「家庭科」)との複雑で微妙な諸関係を意識して、特に「ぎじゅつぽつかてい」と呼ぶならわしがある。中学校現場においては、しばしば「ぎか」(技家)という省略形が用いられる。

技術」と「家庭」は、学習指導要領上は単一教科の扱いになっているものの、教育職員免許法上は別教科の扱いになっている。そのため、「家庭」免許しか所持していない教諭が、「技術」の授業を受け持つことはできない。また、「技術」免許しか所持していない教諭が、「家庭」の授業を受け持つことはできない。こうした不整合にも、「技術」と「家庭」をめぐる「複雑で微妙な諸関係」(前述)の一端をみてとることができる。

教科名の英語訳としては、従来は「Industrial Arts and Homemaking」が充てられることが多かったが、近年ではしばしば「Technology and Home Economics」が用いられる傾向にある。

[編集] 目標

  • 技術・家庭科の目標

生活に必要な基礎的・基本的な知識及び技術の習得を通して、生活と技術とのかかわりについて理解を深め、進んで生活を工夫し創造する能力と実践的な態度を育てる。

  • 技術分野の目標

ものづくりなどの実践的・体験的な学習活動を通して、材料と加工、エネルギー変換、生物育成及び情報に関する基礎的・基本的な知識及び技術を習得するとともに、技術と社会や環境とのかかわりについて理解を深め、技術を適切に評価し活用する能力と態度を育てる。

  • 家庭分野の目標

衣食住などに関する実践的・体験的な学習活動を通して、生活の自立に必要な基礎的・基本的な知識及び技術を習得するとともに、家庭の機能について理解を深め、これからの生活を展望して、課題をもって生活をよりよくしようとする能力と態度を育てる。

[編集] 内容

平成20年3月28日に改訂された新学習指導要領では、技術・家庭の内容は下記の通りである[1]

  • 技術分野
    • A 材料と加工に関する技術
      • 生活や産業の中で利用されている技術
      • 材料と加工法
      • 材料と加工に関する技術を利用した製作品の設計・製作
    • B エネルギー変換に関する技術
      • エネルギー変換機器の仕組みと保守点検
      • エネルギー変換に関する技術を利用した製作品の設計・製作
    • C 生物育成に関する技術
      • 生物の生育環境と育成技術
      • 生物育成に関する技術を利用した栽培又は飼育
    • D 情報に関する技術
      • 情報通信ネットワークと情報モラル
      • ディジタル作品の設計・製作
      • プログラムによる計測・制御
  • 家庭分野
    • A 家族・家庭と子どもの成長
      • 自分の成長と家族
      • 家庭と家族関係
      • 幼児の生活と家族
    • B 食生活と自立
      • 中学生の食生活と栄養
      • 日常食の献立と食品の選び方
      • 日常食の調理と地域の食文化
    • C 衣生活・住生活と自立
      • 衣服の選択と手入れ
      • 住居の機能と住まい方
      • 衣生活、住生活などの生活の工夫
    • D 身近な消費生活と環境
      • 家庭生活と消費
      • 家庭生活と環境

[編集] 時間数

学校教育法施行規則によれば、技術・家庭には第1学年と第2学年で各70時間(週2時間)、第3学年で35時間(週1時間)を充てることになっている[2]。しかしながら実際には、配当される時間数を「技術」と「家庭」で折半するため、それぞれの「分野」の授業に充てる時間数は、上記の2分の1になる(第1学年と第2学年は、各35時間(週1時間ずつ)。第3学年は、各17.5時間(週0.5時間))。

[編集] 「技術・家庭」科の成り立ち

[編集] 職業科から技術科/技術・家庭科へ

「技術・家庭」は、昭和33(1958)年告示中学校学習指導要領によって新設された。「技術・家庭」という教科名も本来「技術」とされていたが、直前になって「技術・家庭」に変更された経緯がある。この教科が、1950年代後半の世界的な規模で急速に進展した技術の発達=技術革新に対する科学・技術教育の振興の要請に応えて発足したものであったことはいうまでもない。

教科「技術・家庭」の教育内容を内在する教科目を第二次世界大戦以前の制度上の経過からみれば、この教科はまったく別の教科であった。戦前の系譜を大まかに辿ると、技術分野の教育内容は、小学校手工科、高等小学校手工科、実業科、中学校作業科であり、家庭分野は、家事・裁縫科であった。戦後の職業科、職業・家庭科、技術・家庭科の教育の変遷は、もともと別であった二つの教科(背景となる学問分野もまったく違う)をいかに融合するかという課題の回答を模索する過程であった。言い換えれば、教科内の学習内容の目標をいかに整合性をもって調和させるかという歴史といってもよい。その結果が、昭和33年告示中学校学習指導要領「技術・家庭」にあった「生産」という用語の消失であり、「生活」という"Key word"によってまとめあげていく過程であった。

技術・家庭科の源流となる中央産業教育審議会の第一次建議(昭和 28年)、第二次建議(昭和29年)では、「共働的な労働を重視して技術的・実践的な態度を養うことを理想とし、そのための手段となる基礎的技術や基本的な活動は、国民経済や国民生活の改善の向上に役立つものでなければならないということ」(第一次建議)、「生産と消費のそれぞれの分野における基礎的技術や基本的活動を取り上げ、それらについての理解や技能や態度を育成しよう」(第二次建議)としていたのである。そして、「職業」と「家庭」とは学習系列の違うもので、それぞれを共通に学習するにしても男子に「職業」、女子に「家庭」の系列に重点を於くものであった。男女別学の指向が強まるという時代的制約があるにしても、当時、「技術」の系列(分野)の重要なキーワードが「生産」であったことは、看過することの出来ない点である。

昭和 33(1958)年の中学校学習指導要領の全面改訂によって、技術・家庭科が新設された。この学習指導要領に先立つ教育課程審議会答申(昭和33年3月)では、技術科(技術・家庭科ではない)の創設に関して以下のように述べていた。

  • 現行の職業・家庭科(必修)を改め、これと図画工作科において取り扱われてきた生産的技術に関する部分とを合わせて、技術科を編成すること。
  • 内容に二系列を設け、男子向きには、工的内容を中心とする系列、女子向きには、家庭科的内容を中心とする系列を学習させる。
  • 理科との関連において内容を精選し、系統的学習ができるようにすること。
  • 技術科教育の効果を高めるために、教員養成と現職教育の強化徹底を図り、施設設備の整備に務めること。

  技術・家庭科になって、「男子向き」「女子向き」という性別履修が鮮明になり、この履修の枠組みが約30年間続くことになった。性別履修の記述が学習指導要領の上から実質的になくなるのは、平成元(1989)年改訂からであった。この性別履修の形態は、単に教育の機会均等の問題だけでなく、後に述べるように平成元年改訂学習指導要領において、大幅な時間数の削減問題として、教育内容に重大な影響を及ぼす結果となった。

[編集] 生活技術を重視した内容への変容

 昭和33年告示中学校学習指導要領 技術・家庭の教科目標は、以下の通りであった。

  • 生活に必要な基礎的技術を習得させ、創造し生産する喜びを味わわせ、近代技術に関する理解を与え、生活に処する基本的な態度を養う。
  • 設計・製作などの学習経験を通して、表現・創造の能力を養い、ものごとを合理的に処理する態度を養う。
  • 製作・操作などの学習経験を通して、技術と生活との密接な関連を理解させ、生活の向上と技術の発展に努める態度を養う。
  • 生活に必要な基礎的技術についての学習経験を通して、近代技術に対する自信を与え、協同と責任と安全を重んじる実践的な態度を養う。

この目標は、改訂のたびに少しづつ変容していき、1989(平成元)年改訂中学校学習指導要領「技術・家庭」の目標では、「生活に必要な基礎的な知識と技術の習得を通して、家庭生活や社会生活と技術のかかわりについて理解を深め、進んで工夫し創造する能力と実践的な態度を育てる。」となった。この目標の変化は、技術教育と家庭科教育とを漠然とした「生活」で融和・調和させようとしてきた結果である。しかし、現代社会は、職業と家庭生活が分離して個別に存在しているのであるから、「生活」の概念を子どもの「生活に必要」とする側面からみれば、子どもは消費者以外の何者でもないのであるから、「家庭生活」的意味合いが強くなるのは必然の結果である。しかしながら、現代社会の変容は、これまで家庭内で継承されてきた家庭科の領域であった食物・調理が食品加工、食品製造や食材産業として、また被服の分野は縫製、服飾デザイン産業として、社会的生産活動に移行、展開してきている。このため上記の「生活」概念ではまとめられないことを示してきている。

技術分野と家庭分野の基本的な違い(「生活」という概念で無理やり結びつけた)
分野 技術 家庭
学問的背景 工学・農学 家政学
キーワード 生産・社会 消費・個人
具体的活動の違い(「技術」に関するもの) 木材建築・家具製造

機械(部品加工を含む)の製造 電気をつくる 電気機器の製造 農業の作物生産

日曜大工

消費材として機械を利用電気を使う 電気機器の修理 家庭園芸

目的とするところ 社会的生産の理解

社会的要請に応える 社会の中で個人を活かす

個人生活の充実

個人の要求を満たす家族の関係・きずな

家庭科は、戦後の教育改革で、戦前の家事、裁縫科を引き継ぐ形で成立した。もともと国民学校高等科の教科編成からみても、職業科は実業科を引き継ぎ、家庭科は芸能科家事を引き継いでおり、教科目の出所が別物であった。戦前の男子に実業科、女子に芸能科家事という男女別学の実態を踏襲して、時間数を合わせるために1つの教科扱いしたのではないかと推察される。

昭和22(1947)年学習指導要領家庭科編(試案)の「まえがき」では、男女の性差による区別なく履修することが可能であることを示唆していた。その後も、職業・家庭科の時期には、履修実態は明らかではないが、男女の区別なく履修する可能性の含みが残されていた。しかし、当時の社会状況のなかでは、女子を対象とした主婦養成教育の色合いが濃い内容であったことは間違いない。これを根拠に当時家庭科関係者の「職業科からの分離・独立」の主張が根強くあった。

技術・家庭科になって、男女別学が固定化したことは、戦後の教育改革の重要な柱であった「男女共学」に逆行する制度であった。「生活の近代化」の名の下に、その主体たる主婦の養成として家庭科が存在し、戦後教育改革の中で謳われた「男女共学」が最後まで行われなかったのが教科「技術・家庭」であった。その裏返しとして、女子差別撤廃条約批准に際して「家庭科の男女共修運動」が展開されたのであるが、この運動では、決して女子の一般技術教育の共修は唱えられなかった。[3]

[編集] 一般技術教育に対する諸外国の動向

[編集] 概要

1974年に、「技術および労働の世界への手ほどきは、これがなければ、普通教育が不完全になるような普通教育の本質的な構成要素になるべきである」としたユネスコによる「技術・職業教育に関する改正勧告[4]は、その15年後の1989年に、「技術教育および職業教育に関する条約」として、ユネスコ第25回総会において採択された。その条約は、第3条2項(a)において、「普通教育として、すべての子どもに対する技術および労働の世界への手ほどき……を提供しなければならない」と規定している。 そこには、こうした国際条約としての規定に結実されたような、また、この国際条約の規定によってさらに加速されることが見込まれるような、現代の普通教育における技術教育の国際的な規模での進展が示唆されていると考えられる。


教育課程の面から国際的な動向をみると、普通教育における技術教育にとって、1970年代から現在に至る過程は、100年前の19世紀後半に、北欧、西欧、北米、日本を中心に、学校教育に技術教育が導入された時期に匹敵する重大な変革期であるといえる。そして、その変化は、歴史や文化等の相違を反映させて多様な側面をもつものの、そこには、いくつかの共通する傾向も認められる。

第1は、実施学年の広がりである。普通教育における技術教育は、その実施形態は異なるものの、初等教育から中等教育(学年の点では第11学年までが平均的といえる)にわたって、教科指導として実施される傾向が広く認められる。今日それは、いわゆる先進国の間では、国際的な水準になっているとみられる。これに対して日本は、普通教育において技術教育を行なう教科の設置および実施という点で、実質上、中学校における教科「技術・家庭」の技術分野のみに限られており、小学校や高等学校では、ごく限られた例外を除いて、行なわれていない。また、2002年度から実施された新しい『中学校学習指導要領』では、「技術・家庭」科への配当授業時間数が一層削減され、家庭分野と単純に二分すれば、技術分野は、第1・2学年で週1時間、第3学年では0.5時間になる。下の表にまとめたように、国際的な水準からみて、日本の普通教育において行なわれる技術教育は、著しく貧弱であるばかりでなく、その隔たりがさらに拡大しようとしている。早急な改善措置が要請されている。

日本と比較した8か国における一般技術教育教科の実施状況
学年 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 教科名等
イギリス テクノロジー科
フランス テクノロジー科他
スウェーデン スロイド科と技術科
アメリカ 州ごとに多様
ドイツ 州ごとに多様
ロシア テクノロジー科
台湾 生活テクノロジー科
韓国 実科、技術・産業科
日本 技術・家庭科
凡例 ■必修、□選択必修、●選択、○他教科と統合して実施

第2は、教育課程の準拠枠である。普通教育における技術教育の教育課程を編成する際に、個々の教育内容の加除や位置づけの変更等をこえて、教育課程編成の準拠枠それ自体が、従来の「製図」、「加工」、「機械」、「電気」といったいわば伝統的なものから、新しいものへと移行する傾向が認められる。

1つには、技術教育の基本構成として、表現の仕方は異なるものの、(1)物質的財貨としてのモノをつくる技術的過程と社会的編成を対象にした「製造」の単元、(2)エネルギの供給・変換・制御・消費を対象にした「エネルギ/動力/輸送」の単元、(3)人が生活する環境の設計・構築・管理を対象にした「建築/建設」の単元、(4)コンピュータ制御や遠隔通信技術を対象にした「情報と通信」の単元は共通に認められる点である。そして従来の製図、材料、加工法、道具、機械等の内容は削除された訳ではなく、こうした枠組みの中で、テクノロジーの要素や側面として再編されて位置づいている場合が多い。他方、日本の普通教育における技術教育の教育課程も、1998年学習指導要領改訂によって、「技術とものづくり」および「情報とコンピュータ」に再編された。これと比較するならば、内容の多少や基調の違いはともかくとして、「製造」の単元と「情報と通信」の単元は共通しているものの、「エネルギ/動力/輸送」の単元と「建築/建設」の単元が日本の場合にはない。日本の普通教育における技術教育の内容は範囲が狭く偏っている。

2つには、技術教育の教育課程を編成する際の基調として、環境の問題が重く位置づけられている点である。そしてこの点は、日本でも、1998年学習指導要領改訂で、「技術と環境・エネルギー・資源との関係について知ること」等により配慮されたといえる。

3つには、技術教育の教育課程を編成する上で、前述の「製造」、「エネルギ/動力/輸送」、「建築/建設」、「情報と通信」等の単元に関係する各産業分野のそれぞれで働く人間の問題が重く位置づけられている点である。技術に関わる労働の世界を子どもたちに広く俯瞰させる教育課程の編成に各国が努力を傾けている。 これに対して、日本の普通教育における技術教育の教育課程では、1998年学習指導要領改訂によっても、従来通り、この側面はまったく位置づけられていない。技術教育の教育課程のあり方をめぐる根本的な問題として再考されるべきであると考えられる。

[編集] 実施状況と準拠枠

一般技術教育の実施状況と準拠枠[5]
国名 実施状況 準拠枠 実施学年
イギリス イギリスでは、1988年の教育改革法に基づき、第1階梯(1~2学年)、第2階梯(第3~6学年)、第3階梯(第7~9学年)、第4階悌(第10~11学年)通して、必修教科として「テクノロジー」がおかれている。

第1~3階梯までは共通の内容を履修させ、第4階梯で3つに分化する内容構成がとられている。この3分化は、ナショナル・カリキュラムにはないけれども、一般中等教育修了資格試験国家基準の「シラバス」に準じたものであるとみられる。それらは、「テクノロジー」、「設計と実現」、「設計と伝達」という名称であり、教科書も、これらの名称で編集・発行されている。 配当時間に関しては、第1~3階梯では総授業時間数の10%、第4階梯では5~10%を配当するとされている。

イギリスでの教科「テクノロジー」の教育課程編成の準拠枠は、設計分野と設計プロセスからの2つからなり、とくに設計プロセスが教育課程を編成する際の基軸になっている点が、イギリスの普通教育における技術教育の内容上の顕著な特質であるといえる。

設計分野は、「製図」、「材料と加工法」、「エネルギ」、「機構」、「構造」、「電気・電子」、「空気力・水力」、「制御」、「技術と社会」の9領域を基本に、各階梯に応じて配置される。 設計プロセスは、第1~2階梯前半までは「目的→構想→実行→評価」の4工程、第2階梯後半は「目的→構想→作業計画→製作→評価」の5工程、第3階梯では「設計の機会→研究する→設計をおこす→作業計画→製作→評価」の6工程、第4階梯では「設計素案→研究→構想→中間評価→展開→作業計画→実現→試験→評価」の9工程からなる。各階梯の課題に応じて、分化・展開させる系統がとられている。

第1学年~11学年
フランス フランスでは、1985年のシュヴェーヌマンによる教育改革以来、初等学校では教科「科学・テクノロジー」がおかれ、第1~2学年は週2時間、第3~5学年は週3時間配当されてきた。

なお、この場合の時間とは、フランスでは自然時間(60分、以下同様)であり、初等学校は週27時間、年間36週が基準である。日本の小学校の標準授業時間は1時間が45分とされるので、これに換算すると、フランスの初等学校の授業時間数は、学校週5日制であるけれども、年間1,296時間、修業年限5年間の総授業時間数は6,480時間となり、日本の小学校6年間の授業時間数より695時間も多い。 1995年に改訂された新しい教育課程基準では、教科「科学・テクノロジー」は第3~5学年におかれ、第1~2学年は、日本の「生活」科に類似した新設の総合的な教科である「世界の発見」科に統合されている。また、週当たりの授業時間数が26時間に削減され、学校週4日制を採用する初等学校もでている。しかし、それでもなお、フランスの初等学校5年間の授業時間数の方が、日本の小学校6年間の授業時間数より、455時間も多い。 修業年限4ヵ年の中学校であるコレージュでは、必修教科として「テクノロジー」がおかれ、第1~2学年では週2時間、第3~4学年では週1.5時間が配当されている。同時に、選択教科の一つとして「産業テクノロジー」が第3~4学年におかれ、週3時間配当されている。 なお、フランスの中学校では、週28時間、年間36週が基準とされている。日本の中学校の標準授業時間は1時間が50分とされるので、これに換算すると、フランスの中学校の総授業時間数は約4,834時間となり、日本の中学校の現行総授業時間数よりも1,684時間も多いことになる。日本の義務教育学校の授業時間数の少なさは際立っている。義務教育年限は9年間で同じだが、フランスに比べ、日本は 2,139時間も少ない。 さらに、上級学校進学者向き普通高等学校であるリセでも、選択必修教科として「テクノロジー」や「産業テクノロジー」(8単位以上)、選択教科として「テクノロジー」(1.5単位以上)がおかれている。

フランスの教科「テクノロジー」の教育課程は、工業関係の企業の経営活動をたどることを基調(イギリスの上記のコンテキストに相当)にしている。工業の経営活動を、「材料」、「言語とコード」、「技術構成物」(道具、機械、装置類のこと)、「電気・電子回路と自動化システム」、「製造および組立」、「情報学」、「技術の経営管理」、「企業と労働現場」、「社会的経営活動と技術的活動」という9つの「テクノロジーの側面」からとらえて、教育課程が編成されている。 第1学年~12学年
スウェーデン スウエーデンでは、1980年版『学習指導要領』においては、基礎学校(第1~9学年で義務教育)の技術教育は、工作・加工学習を行なう教科「スロイド」(第1~9学年)と教科「科学」の中の科目「技術」(第6~9学年)として実施されていた。

1992年の改訂案は、「スロイド」を維持しながら、科目「技術」を「科学」から独立・再編して、「技術・環境」科という教科を新設しようとした。しかし結局、1994年版『学習指導要領』では、もとの形にもどった。 配当授業時間数の基準は、「スロイド」が総計282時間、「科学」が総計800時間とされている。しかし、「科学」の800時間のうち科目「技術」にどの程度配分されているかは不明である。 なお、3年制を基本とする高等学校でも、教科「科学」の諸科目や多様な選択科目によって、技術教育が実施されている。

スウエーデンの教科「スロイド」の教育課程は、「木材加工」、「金属加工」、「布加工」の3分野からなる。「スロイド」と並行して第6学年から実施される教科「科学」の科目「技術」の教育課程は急速に変化しつつある。1981年版の教科書では、「住居と建築」、「電気と電子」、「輸送と交通手段」という章立てであった。これが、1985年初版の教科書では、「基本技術」、「住居と建築」、「日常利用する電気」、「電子」、「輸送と通信」という章立てになった。「通信」が新設されるとともに、それが「遠隔通信(telecommunication)」と「コンピュータ」の2領域で構成されている点が注目される。

そして1994年版の新しい『学習指導要領』では「技術」科は、「1.技術の展望、2.人間 − 技術 − 技術の課題、3.技術の要素とシステム」の3分野で構成されている。

第1学年~12学年
ドイツ ドイツでは、基礎学校(第1~4学年、ベルリンなどいくつかの地域は第1~6学年の初等学校)で、教科「工作」が週1~2時間程度と「事実教授」(Sachunterricht)の中で技術教育が実施されている。

基幹学校等の中等学校(第7または第7~10学年)では、教科「工作」やそれに接続する教科「技術」(Technik)あるいは「労働科」(Arbeitslehre)の構成部分「技術」等、いくつかの形をとって、週2~3時間程度、技術教育の教科指導が実施されている。

ドイツの基礎学校での「工作」科の教育課程は共通した面を多くもつのに対して、基幹学校等での教科や科目等としての「技術」の教育課程は、16州それぞれで、かなり異なる準拠枠に基づいている。ただし、それらはいくつかの類型にまとめられる。

第1は、独立教科として「技術」を設けているバイエルン州に代表されるものである。「製図」、「加工(木材加工・金属加工・プラスティック加工)」、「機械」、「電気」を基本にしたいわば伝統的な準拠枠に基づくものである。 第2は、「労働」科の中の科目等として「技術」をおくノルトライン・ヴェストファーレン州に代表されるものである。「情報と通信」、「生産の自動化」、「労働と人間と環境」の分野で構成する等、従来とはかなり異なる新たな準拠枠に基づくものである。 また、バイエルン州と同様に独立教科「技術」をおくシュレスビッヒ・ホルシュタイン州の教育課程も、「労働と生産」、「輸送と交通」、「建築と建築環境」、「エネルギ供給と消費」、「情報と通信」の分野からなり、この類型に含めることができる。 第3は、「労働」科の中の科目等として「技術」をおくバーデン・ヴュルテンベルク州に代表されるもので、伝統的な「製図」と「加工」に「複合生産(Mehrfachfertigung)」「コンピュータ制御」、「建築」、「環境」等の新たな分野を付加して教育課程を編成する準拠枠に基づくものである。いわば前の二つの類型の中間に位置づくといえる。

第1学年~10学年
ロシア ロシアでは、1993年の「ロシア連邦初等中等普通教育学校基本教科課程」によれば、必修教科として「テクノロジー」(Технология)が、第1~11学年を通しておかれている。教科「テクノロジー」への配当授業時間数の基準は、第1~7学年は週2時間、第8~9学年は週3時間、第10~11学年は週2時間とされている。 第1学年~11学年 
アメリカ アメリカでは1980年代に、普通教育における技術教育の名称が「産業科」(IndustrialArts)から「テクノロジー」へと移行し、社会的に認知されて今日に至っている。初等学校(第1~5学年の5年制が主)の「テクノロジー」は、独立教科として実施される場合もあるが、「社会科」や「科学」等の教科に統合されていることが少なくない。

中学校(第6~8学年の3年制が主)では、一般に必修教科として「テクノロジー」がおかれ、高等学校(第9~ 12学年の4年制が主)では、必修教科の場合もあるが、選択や選択必修教科として「テクノロジー」や「産業テクノロジー」がおかれることが多い。配当授業時間数は多様であるが、全般に増加される傾向にある。

アメリカの教科「テクノロジー」は、1950年代末からの多様な教育課程開発の成果と実践の蓄積の結果、1980年代において、「産業科」から「テクノロジー」への転換がなされた。このことを反映して、その教育課程は、(1)工業関係の企業の経営活動を基調とする系譜、(2)コンピュータが組み込まれた新しい技術体系を基調とする系譜、(3)労働観や職業観の形成を重視したキャリア教育(career education)を基調とする系譜の3つの準拠枠が混成されて編成されているとみることができる。

すなわち、(1)産業分類に準じて、「通信」、「製造」、「エネルギ/動力/輸送」、「建設」の4分野で構成すること(ただし近年は、これらにバイオテクノロジーの分野を加える傾向が認められる)を基本に、(2)各分野それぞれで、入力→工程→出力というプロセスをふまえながら、(3)職業(キャリア)探索の視点からの内容を付加して、「テクノロジー」の教育課程が編成される場合が多い。 そして、初等教育段階では、工作活動を中心に多様な学習が仕組まれ、それを基礎に、中学校段階で上記の4分野すべて、高等学校の前半で4分野のうちの一つないしその発展的な内容を選択して履修、後半および中等後段階で、それらの分野のうちのさらに一定部分を職業教育として深く学ぶという系統が設定されている。

韓国 韓国では、1992年に、第6次教育課程改訂がなされた。小学校第3~6学年に教科「実科」がおかれ、週1時間が配当されている。中学校(第7~9学年)では、必修教科として「技術・産業」科がおかれ、第1学年は週1時間、第2~3学年は週2時間が配当されている。

高等学校(第10~12学年)では、教科「実業・家政」科の中の科目として、「技術」、「家政」、「工業」等がおかれ、普通科や職業科の学科に関わらず、すべての子どもが、「技術」か「家政」のどちらか1科目を4単位履修することになっている。この選択必修科目「技術」が、高等学校での普通教育における技術教育を担っている。

韓国における中学校の必修教科「技術・産業」と高等学校の選択必修科目「技術」の教育課程、ならびに、台湾の中学校および高等学校における新しい必修教科「生活テクノロジー」の教育課程の準拠枠も、アメリカのものと重なる部分が大きいと考えられる。

韓国の「技術・産業」科は、「人間と職業」、「技術」、「産業」、「コンピュータ」の4分野で構成され、これに接続する「技術」は、「技術と産業」、「エネルギと輸送技術」、「情報通信技術」、「製造技術」、「建設技術」、「職業と進路」からなる。

第3学年~12学年
台湾 台湾では、1984年の『教育課程標準』のもとで、小学校(6年制)では「工作」が、第1~2学年において週2時間、第3~6学年において週3時間実施された。中学校(3年制)では、「産業技術」科がおかれ、「産業技術」か「家政」のどちらか一方を選択必修教科として選択し、第1~3学年にわたり週2時間かまたは3年間で 216時間履修した。高等学校(3年制)でも、「産業技術」か「家政」を選択必修教科として選択し、第1~2学年にわたり週2時間かまたは2年間で144時間履修した。

これに対して、1996年に改訂された新『教育課程標準』では、小学校は実質上変化はないが、中学校と高等学校の教科名が「産業技術」から「生活科技」(英訳はLiving Technologyであり、以下「生活テクノロジー」と和訳する)に変わり、「生活テクノロジー」は「家政」とともに必修教科とする措置がとられた。しかし、これに伴い、「生活テクノロジー」への配当授業時間数は、従前の半分の週1時間となり、中学校では3年間で108時間、高等学校では2年間で72時間になった。

台湾の新教科「生活テクノロジー」の教育課程も、中学校および高等学校を通じて、「テクノロジーと生活」、「エネルギと輸送」、「情報と通信」、「製造と建設」の4分野構成となっている。 第1学年~11学年

[編集] 技術・家庭をめぐる諸問題

[編集] 学習内容の大幅な削減

技術分野の履修時間数の変遷
領域 1958年 1969年 1977年 1989年 1998年
製図 55 45 - - -
木材加工 65 58 約58 35 木材・金属
金属加工 50 58 約46 約12 合わせて35
機械 45 59 約38 約12 若干(選択)
電気 45 59 約64 約20 若干(選択)
栽培 20 35 約38 約12 若干(選択)
情報基礎 - - - 約12 35
合計 315 315 245 105 88

技術・家庭の履修時間の削減と男女共習化により、技術分野および家庭分野それぞれの学習内容は大幅に削減・簡素化された。これにより、「技術・家庭」科設置当初の科学・技術の振興という目的は大きく損なわれることとなった(詳細な経緯については、男女共同参画社会を参照)。

たとえば、自動車の心臓部であるエンジンの仕組みに関する記述が、2002年の中学技術家庭・技術分野の教科書から姿を消している。1970年代の教科書には、2/4サイクルエンジンロータリーエンジンなどの基本的な仕組みが記述されており、実機演習も行われていた。[6]

また、技術分野の時間数は、1958年には中学1年生から3年生まで合わせて、315時間であったが、現在は88時間にまで減少している。「機械」や「電気」は合わせて100時間前後あったが、現在は選択となり非常にわずかになっている。このことが現在の子どもたちのエネルギー教育やロボコンや各種の制御などの技術的な素養の欠如につながっていることが伺える。[7]

科学技術立国を標榜しながら小学校と普通高等学校には技術科がなく、中学校の技術科はIT教育のためにさらに半減され、技術教育は実質的に普通教育から閉め出されつつある。英語や数学の教育で一旦授業について行けなくなるとその回復は極めて困難といわれているが、技術については大部分の生徒がこの状態におかれており、しかもその事実が国民一般はもとより識者にも認識されていない状態である。勿論IT教育は極めて重要であるが、これを技術教育の一部と規定するところに本質的な認識の誤りがある。ITの教育現場での使用は新しい教育技術の利用であり、図書館の使い方の教育、発表の仕方の教育、手紙の書き方、電話のかけ方の指導等と本質的に異なるものでなく、技術の教育とは異質のものであろう。[8]

[編集] 技術教育に対する要望

科学技術教育の充実を求める産業界からの声は根強い。これに対し、技術教育に携わる者で構成されている日本産業技術教育学会は、「わが国に求められている技術教育のあり方」として、次のような考えを表明している。

---引用--- 第二次世界大戦後の我が国の奇跡の復興は、産業教育をはじめとした教育行政、勤勉な国民性、国際情勢等によって得られた成果ですが、それとともに、当時の国民全体に技術的素養があったことも重要な要因になっています。それは、あらゆる材料や製品を創意・工夫して使っていたという生活環境によって身に付いたものとも考えられます。

一方、中学校における技術教育は、普通教育であったこと、基礎的な内容であったことなどが理由となって目立つことは多くありませんでしたが、最近まで我が国の技術教育の一翼を担ってきました。 しかし、製品の過供給、ものづくり体験の激減、技術教育の時間の大幅な削減という社会情勢にあって、子ども達の技術的素養は急激に低下しています。この状況に対しては、一度衰退したものの復元は至難の業という多くの例から、産業界においても危機感がもたれています。

また、バランスのとれた人間形成という普通教育の意義からも、技術教育の充実が強く望まれています。 したがって、技術立国を支える国民に求められる素養や、創造・工夫する能力という立場から21世紀を見通した場合、技術に関する教育課程を体系的に構築することは、急務の課題と言えます。 その場合に基盤となるべきものは、幅広い技術的活動を含んでいる生産、すなわち、ものづくりを通した教育ということになり、それは次にあげる4項目を柱として構成されることが適当と考えられます。

  • 材料加工リサイクルの技術
  • エネルギーの利用・変換の技術(機械・電気の利用)
  • 情報を処理し活用する技術
  • 生物生産の技術(環境の制御と育成)

これらは、いずれも平易なものから順次学習しなければ理解・習得できないものです。すなわち、それは小学校から高等学校までの一貫した教育課程によってこそ十分な成果が得られるということになります。 また、創造的活動、共同的活動、自己実現を目指した実践的活動を伴うことによって効果的となります。 これらの教育が、先端技術の開発や、職場が求める技術にすぐさま貢献することはないでしょうが、広いすそ野があってこそ高いレベルの能力も自然に育つと言われています。本来、児童・生徒は、ものづくりが好きであるという貴重な資質を最も重要な成長段階で健全に伸ばし、基礎的能力を育成することは、技術立国としての義務であることを忘れてはならないでしょう。

---引用終わり---

[編集] 高校入試における取扱い

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[編集] 関連項目

[編集] 出典

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  1. ^ 中学校学習指導要領−第2章:各教科−第8節:技術・家庭、1998年12月14日、文部省(当時)
  2. ^ 学校教育法施行規則、2006年3月31日、文部科学省
  3. ^ 『技術教育のカリキュラムの改善に関する研究』(2001年3月、国立教育政策研究所)
  4. ^ 技術・職業教育に関する改正勧告(仮訳)
  5. ^ 『技術教育のカリキュラムの改善に関する研究』(2001年3月、国立教育政策研究所)
  6. ^ 2007年11月22日、朝日新聞、「中学校の技術 消えたエンジンの仕組み」
  7. ^ 日本機械学会ニュースレター
  8. ^ 技術リテラシーと市民教育 - 社団法人 日本工学アカデミー

[編集] 参考文献

  • 桜井宏著『社会教養のための技術リテラシー』東海大学出版会 (2006年7月)
  • 国際技術教育学会著『国際競争力を高めるアメリカの教育戦略―技術教育からの改革』(2002年7月)
  • 「経営の情識:「技術とは何か」、学校で習いましたか? 」(日経BP、ITPro、2008年5月)
  • 社団法人 日本工学アカデミー「技術リテラシーと市民教育」(2005年5月)
  • 文系女子の「ETロボコンで組み込みデビュー」(2011年6月~12月)

[編集] 外部リンク

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