ビブリオフィリア

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愛書家から転送)
『本の虫』
カール・シュピッツヴェーク画、1850年。

ビブリオフィリア (bibliophilia) は、書籍)に対するのこと。日本では慣用的に、ビブロフィリアとも表記される。

本に対する愛を発露する人のことは、ビブリオフィル(: bibliophile: bibliophilie)という[1][2]愛書家とも呼ばれる[3]

「読書家は本の内容あるいは本を読むという行為が好きな者である。一方、愛書家は“書籍”という物体を愛する者である。」と定義的に言及されることもある。

書籍を愛好する性癖および書籍を収集する習慣は、ビブリオフィリズム(bibliophilism、書籍愛好)と呼ばれる(形容詞形は、bibliophilic)。

側面[編集]

古典的な愛書家は書籍を読み、それを賞賛し、収集することが好きである。そしてしばしば、大量かつ特殊化されたコレクションを所有する。

愛書家が、必ずしも愛する書籍を所有したいと望んでいる訳ではなく、図書館の古い蔵書を愛でるという選択肢もある。

しかし通常、愛書家は熱心な蔵書家でもある。より古く希少な本や珍しい本、初版本、特殊な装丁の本、作家の自筆原稿などにより高い価値を見出し、コレクションに大金をつぎ込むこともある。

ビブリオマニア[編集]

愛書家はビブリオマニア(bibliomania、フランス語:Bibliomanie、ビブリオマーヌ、愛書狂[3]猟書家)と混同されてはいけない。ビブリオマニアは強迫性障害の一種で、社会生活もしくは当人の健康に悪影響を及ぼすもので、書物に対する姿勢が「集め、愛でる対象」というよりも「収集する(狩り集める)対象」であるとする違いがある。

このビブリオマニアという語はビブリオフィリー (bibliophily) という語に置き換えられていることもある。だが米国議会図書館 (the Library of Congress) ではビブリオフィリーという語を使用しておらず、むしろ読み手側に“書籍の収集趣味”と“猟書癖”のどちらに解釈するのかを任せている。ニューヨーク公立図書館 (The New York Public Library) でも同様である。

歴史[編集]

Arthur H. Mintersは、「書籍の個人的な収集は、キケロアッティクスを含む多くのローマ人がふけった道楽である。」と述べている。またウィリアム・グラッドストン英国首相が、愛書家であったこともよく知られている。

この語は、1824年に英語の語彙に加えられた。

1583年には、「書籍そのもの(特に読書すること)を愛するもの」を意味する語として、執筆、出版、販売に従事する者の総称としてより一般的な用語である bookman の概念から区別された。

脚注[編集]

  1. ^ 「ビブリオフィル」精選版日本国語大辞典、 デジタル大辞泉、コトバンク
  2. ^ 斎藤精輔「辞書生活五十年史」(ビブリオフィル叢書)図書出版社 (1991)
  3. ^ a b 辰野隆「愛書癖」青空文庫、底本「辰野隆随想全集2 え・びやん」福武書店、1983年

参考文献[編集]

  • Merriam-Webster's Collegiate Dictionary 10th edition (1996) ISBN 0-87779-709-9.
  • 辰野隆「愛書癖」青空文庫、底本「辰野隆随想全集2 え・びやん」福武書店、1983年

関連項目[編集]