悪魔の飽食

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文学
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悪魔の飽食』(あくまのほうしょく)は、小説家の森村誠一下里正樹の取材に基づいて著した、関東軍731部隊についての著作である。森村は、下里との取材・執筆を「ペアズ・ワーク」と語っており、実質的には下里がその殆どを手がけていた。第1部は1981年に日本共産党機関紙のしんぶん赤旗日刊紙に、第2部は1982年に赤旗日曜版に連載され、いずれも光文社より単行本として刊行された。単行本はベストセラーとなった。

旧満州国731部隊が行っていたという人体実験の実態を詳しく描いたとして、話題を呼んだ。その年の5月に、常石敬一が地味な出版社から『消えた細菌戦部隊』を刊行してはいたが、有名出版社から、高名な推理作家の名前で出た本著は、731部隊を初めて一般に知らしめた著作であり、国内で広く731部隊の存在が認識されるターニングポイントとなった。本著以前においては帝銀事件などの例外を除き、731部隊の存在が語られることは皆無であったとされるが、本著以降、731部隊に関する、賛否さまざまな視点からの著作が発表される事となる。

この作品を元にした、混声合唱組曲(池辺晋一郎作曲)・劇も作られ、劇を元に中国では映画が制作された。しかし、旧日本軍を非人道的として糾弾する一方、後述のように「ノンフィクション作品」としては問題点が多く指摘されており、「プロパガンダ小説」であるという批判がある。

目次

論議

元隊員であったという人物から提供されたとする写真を、新発見のものとして第2部の単行本に収録したところ(初出紙にはその写真は載っていない)、その大半が別の事件(20世紀初頭の「満洲」における感染症流行のときの写真であった)の写真であることが判明した。森村自身も「提供写真への混入」として、写真に偽物が含まれていたことを認めている。この問題により光文社版は続刊を含むすべての版が回収され、絶版となった。その結果、第3部と、第1部・第2部の改訂版が、問題の写真を削除した上で、角川書店より新たに出版されることとなった。

また、初版とそれ以降の版を比べると、矛盾していた証言が整合性を持つように変更されているなどの差異がある。本作は、「ノンフィクション」とされているにも拘らずそれらの変更点、およびその理由は一切明示されていない。

批判

批判派からは、以下の点が問題であり信憑性に疑いがあるとされている。ただし、常石敬一青木冨貴子の著作もある2008年現在の視点からみると、「悪魔の飽食」独自の問題のものと、細菌戦研究そのものを否定しようとする立場からの全面的な否定との区別はさまざまである。

  • 関係者はすべて匿名であり、その証言の裏付けがとれない。
  • 二転三転する証言により、証言者の信頼性に疑問符が付く。
  • 731部隊に関する資料をアメリカが回収し、米国立公文書館が細菌戦研究などに関する米情報機関の対日機密文書10万ページ分を公開したが、裏づけとなる資料はまだ見つかっていない。[1][2]
  • 旧満州国は、米国ではなく旧ソ連及び中国に占領されたが、その方面からの裏づけを欠く。
  • 戦後に関係者から証言を引き出したハバロフスク裁判自体が法学者によって否定されている。
  • 遺骨などの物証に欠ける。

本文中で記述されている内容で信憑性を疑われるもの

  • 人間が入るほどの遠心分離器で体液を搾り出す。→全身骨折で死亡しても、凝血するだけで血液は出てこない。
  • 注射針で体液を吸い出してミイラにする。→血液を他の液体と置換するのではなく、干からびるまで吸い出すのは現在の技術でも不可能である。
  • 真空室にほうり込み、内臓が口、肛門、耳、目などからはみ出し破れる様子を記録映画に撮る。→宇宙開発での実験により、このようなことは起きない事がわかっている。本記述を否定する実例として、ソユーズ11号の事故が存在する。

これらは中華人民共和国による映像化作品『黒い太陽731』において、「本作品中の文章通り」に忠実に再現されている。

シリーズ

以上が初版(絶版になったものもある)である。

脚注

  1. ^ 旧日本軍「細菌戦研究」 米が機密文書公開産経新聞、2007/01/18
  2. ^ Japanese War Crimes, Interagency Working Group (IWG), The U.S. National Archives and Records Administration