恐怖指数

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VIX Index from inception to Oct. 2008

恐怖指数(きょうふしすう、: volatility index, VIX)とは、シカゴ・オプション取引所英語版(CBOE)が、S&P500を対象とするオプション取引のボラティリティを元に算出、公表している指数。数値が高いほど投資家が相場の先行きに不透明感を持っているとされる。通常は10から20の間で推移する。1993年より発表されるようになった。

理論的バックグラウンド[編集]

理論的にはVIXは満期までのS&P500のボラティリティの平均値の期待値として解釈される。満期をT としたVIXは以下の式で算出される[1]


VIX_{T} = 100 \times \sigma,


\sigma^2 = \frac{2}{T}\sum_{i}e^{RT}\frac{Q(K_{i})}{K_{i}^2}\Delta K_{i} - \frac{1}{T}\left[\frac{F - K_{0}}{K_{0}}\right]^2

ここでR は金利であり、F は満期をT とするオプションのインデックス価格に対して望ましいレベルの先渡価格のインデックスである。K_{i} はオプションの行使価格の水準を表しており、行使価格の小さい方から昇順で番号付けられていて、K_{0}F を下回る最も大きな行使価格の値となるようになっている。\Delta K_{i} K_{i+1}K_{i-1} の差分の2分の1(K_{i+1} - K_{i-1})/2 である。Q(K_{i}) は行使価格K_{i}、満期T のオプション価格のビットアスクスプレッドの中点となる。ただし、K_{i} < K_{0} ならばプットオプション、K_{i} > K_{0} ならばコールオプションの価格が用いられている。

第2項は補正としての意味合いが強く、VIXの理論的なバックグラウンドを理解する上で重要なのは第1項の総和である。そこで第2項は無視して、第1項について考えてみる。第1項は積分を離散化したもので、あらゆる水準の行使価格でのオプションが市場で取引可能であるとすれば、次の積分形式での表示が可能である。


\sigma^2 = \frac{2}{T}\left(\int_{0}^{F}e^{RT}\frac{P(K,T)}{K^2}d K + \int_{F}^{\infty}e^{RT}\frac{C(K,T)}{K^2}d K\right)

ここでC(K,T),P(K,T) はそれぞれ満期T、行使価格K のコールオプションとプットオプションの価格を指す。この時、リスク中立確率測度による期待値E^*で表すと、リスク中立確率測度の定義から


C(K,T) = E^*[e^{-RT}\max\{S(T) - K, 0\}],\quad P(K,T) = E^*[e^{-RT}\max\{K - S(T), 0\}]

となる。ここでS(T) は満期T におけるオプションの原資産の価格である。よって


\sigma^2 = \frac{2}{T}E^*\left[\int_{0}^{F}\frac{\max\{K - S(T), 0\}}{K^2}d K + \int_{F}^{\infty}\frac{\max\{S(T) - K, 0\}}{K^2}d K\right]

と表されることが分かる。ここでCarr-Madan の展開公式[2]から次の式変形が可能である。


\int_{0}^{F}\frac{\max\{K - S(T), 0\}}{K^2}d K + \int_{F}^{\infty}\frac{\max\{S(T) - K, 0\}}{K^2}d K
 = - \log S(T) + \log F + \frac{S(T) - F}{F}

したがって


\sigma^2 = \frac{2}{T}\left(- E^*[\log S(T)] + \log F + \frac{E^*[S(T)] - F}{F}\right)

となる。現時点を0 時点とすると先渡価格の無裁定価格 F = E^*[S(T)] = e^{RT}S(0) なので次が得られる。


\sigma^2 = \frac{2}{T}\Big(RT - E^*[\log S(T) - \log S(0)]\Big)

ここで原資産価格S のリスク中立確率測度下での価格変動がボラティリティが変動する幾何ブラウン運動に従うとする。つまり


S(T) = S(0) + \int_{0}^{T}RS(t) dt + \int_{0}^{T}v(t)S(t)d W^*(t)

であるとする。ただしW^* はリスク中立確率測度下でのブラウン運動で、v は時間によって変動するボラティリティである。この時、伊藤の公式から


\log S(T) = \log S(0) + \int_{0}^{T} \left(R - \frac{v^2(t)}{2}\right) dt + \int_{0}^{T}v(t)d W^*(t)
 = \log S(0) + RT - \frac{1}{2}\int_{0}^{T}v^2(t)dt + \int_{0}^{T}v(t)d W^*(t)

となる。これを\sigma^2 に代入し、整理すれば


\sigma^2 = E^*\left[\frac{1}{T}\int_{0}^{T}v^2(t)dt\right] - \frac{2}{T}E^*\left[\int_{0}^{T}v(t)d W^*(t)\right]

が得られる。第2項は確率積分の期待値なのでv に妥当な仮定を課せばその値は0である。つまり次の結果が得られる。


\sigma^2 = E^*\left[\frac{1}{T}\int_{0}^{T}v^2(t)dt\right]

よって


VIX_{T} = 100 \times \sqrt{E^*\left[\frac{1}{T}\int_{0}^{T}v^2(t)dt\right]}

となる。したがってVIXは満期までの平均ボラティリティにリスク中立確率測度で期待値を取ったものを基準化した指数である。CBOEが発表しているVIXはS&P500を原資産としたオプション価格と先渡価格から計算されるので、VIXはS&P500のボラティリティに対するものとなる。またCBOEが発表しているVIXの満期は30日である[1]

発展と国際的広まり[編集]

2003年よりCBOEはゴールドマンサックスと共同して開発したより精度の高い計算方法でのVIXを公表するようになっている。日本では2008年より大阪大学 金融・保険教育研究センターから日経平均オプションの価格を対象としたVIXと同様のボラティリティ指数であるVXJが公表されている[3]。また2010年より日本経済新聞社から日経平均ボラティリティー・インデックスも同じく公表されている[4]。その他海外における同種のボラティリティ指数ではEURO STOXX 50英語版オプションに対するVSTOXX、イギリスのFTSE100種総合株価指数オプションに対するvFTSE、ドイツのドイツ株価指数(DAX 30)オプションに対するVDAX、フランスのCAC 40オプションに対するCAC 40 volatility index、韓国の韓国総合株価指数200(KOSPI 200)オプションに対するVKOSPIなどがある。さらにVIXを原資産とした派生証券であるVIX optionsやVIX futuresも取引されている。

バリアンススワップとバリアンスリスクプレミアム[編集]

将来の株価の対数収益率の分散に対する先渡契約バリアンススワップ(: variance swap)と言う[5]。またバリアンススワップにおける先渡価格をバリアンススワップレートと言い、S&P500に対する満期が30日のバリアンススワップレートはその値が理論上はVIXと同じであるため、近似値としてVIXが使用されることがある[6]

また実現した株価の対数収益率の分散の平均値(実現ボラティリティ)よりVIXの方が高くなることが統計的に確かめられている[7]。このVIXと実現ボラティリティの差をバリアンスリスクプレミアム(: variance risk premium)と呼ぶ。

過去の主要な高値[編集]

過去の主要な低値[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b CBOE VIX White Paper
  2. ^ Carr, Peter, and Dilip Madan. "Towards a theory of volatility trading." Option Pricing, Interest Rates and Risk Management, Handbooks in Mathematical Finance (2001): 458-476.
  3. ^ http://www-csfi.sigmath.es.osaka-u.ac.jp/structure/activity/vxj.php
  4. ^ http://indexes.nikkei.co.jp/nkave/index/profile?idx=nk225vi
  5. ^ http://www.nikkei.com/money/investment/toushiyougo.aspx?g=DGXIMMVEW4004004012011000001
  6. ^ Bollerslev, T., Gibson, M., and Zhou, H. (2011). "Dynamic estimation of volatility risk premia and investor risk aversion from option-implied and realized volatilities." Journal of econometrics, 160(1), 235-245.
  7. ^ Carr, P., and Wu, L. (2006). "A Tale of Two Indices." The Journal of Derivatives, 13(3), 13-29.

外部リンク[編集]