恋の予感

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恋の予感
安全地帯シングル
初出アルバム『安全地帯III〜抱きしめたい
B面 「Happiness」
リリース
規格 7インチレコード
ジャンル
時間
レーベル Kitty Records
作詞 井上陽水
作曲 玉置浩二
チャート最高順位
安全地帯 シングル 年表
マスカレード/置き手紙
(1984年)
恋の予感
(1984年)
熱視線
(1985年)
安全地帯III〜抱きしめたい 収録曲
ミュージックビデオ
「恋の予感 (2010バージョン)」 - YouTube
EANコード
EAN 4988031003695
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恋の予感」(こいのよかん)は、日本のロックバンドである安全地帯の楽曲。

1984年10月25日Kitty Recordsから7枚目のシングルとしてリリースされた。前作「マスカレード/置き手紙」(1984年)より3か月ぶりにリリースされたシングルであり、作詞は井上陽水、作曲は玉置浩二、編曲は安全地帯および星勝が担当している。「妖艶で切ないメロディのロックバラード」であり、当初は作詞家の松井五郎も作詞を行ったが採用されず、井上による歌詞が採用されることとなった。

井上が同年にリリースしたアルバム『9.5カラット』にて本作をセルフカバーしている他、安全地帯としてはシングル「オレンジ」(2010年)の両A面曲として再録音リアレンジされたものが収録された。他にも中森明菜河村隆一などの著名な歌手や、中国語圏の歌手によって多数のカバー作品がリリースされている。

音楽性と歌詞[編集]

本作の歌詞は当初作詞家の松井五郎も手掛けていたものの30回程度書き直しした末に没となり、結果として井上陽水が歌詞を制作することとなった[3][4][5][6]。井上が書いた歌詞を見た松井はシンプルな内容に感嘆し、「書かないことの美学、美しさというのがあって。あ、これで良いんだって解答を見せられた感じがすごくあった」と述べ、また本作の歌詞による経験がなければ9枚目のシングル「悲しみにさよなら」(1985年)のようなシンプルな歌詞は書けなかったとも述べている[3]。本作はヒット曲となった「ワインレッドの心」(1983年)のリリース以前にすでに原型が制作されており、安全地帯がアマチュア時代に制作した曲は全く売れなかったため、玉置が苦心の末に一気に制作した「ワインレッドの心」、「碧い瞳のエリス」(1985年)、「プルシアンブルーの肖像」(1986年)などの楽曲の中の1曲であった[7]

音楽情報サイト『CDジャーナル』では、本作の世界観に関して「感情を押し殺して繰り広げられる男女の駆け引き」と表現した上で、言葉にできないような切なさを感じさせる繊細なメロディーによって「揺れる恋心を切々と綴っている」と表記したほか、「大人の恋愛模様がありありと浮かぶよう」とも表記している[8]。ベスト・アルバム『ALL TIME BEST』(2017年)の楽曲解説では、本作がギターピアノが加わるイントロから始まる「妖艶で切ないメロディのロックバラード」であると記しており、玉置によるボーカルが低音から高音までカバーできる表現力があるからこそ成立する楽曲であるとも記している[9]。また井上による歌詞について、成就しない「恋の予感」に対して「~~だけ」という言い回しで「短編小説のような濃密にかつ鮮やかに」描いていると記している[9]

リリース、プロモーション[編集]

本作は1984年10月25日Kitty Recordsより7インチレコードとしてリリースされた。ジャケットは、玉置浩二だけにスポットが当たった写真が使用されており、他のメンバーは影に隠れた形で、かつ後ろ向きで写っている。同年にはJAL「ハワイツアー キャンペーン'84」のコマーシャルソングとして使用された[10]ミュージック・ビデオは、北海道釧路市にある釧路市湿原展望台標茶町にある釧網本線茅沼駅などで撮影された。

1988年12月10日には8センチCDとして再リリースされた[11]2010年5月5日には両A面シングル「オレンジ/恋の予感」として、再録音リアレンジバージョンがリリースされた[12][13][14]。リアレンジバージョンの制作経緯は、プロデューサーから「今の声でもう1回昔の曲を歌いませんか?」と提案されたことが切っ掛けとなり、当初は伴奏には一切手を加えずボーカルのみ再録音する予定であったが、他メンバーも各パートの再録音を希望したことから当時のトラックをベースに部分的に演奏を差し替えることとなった[15]。また、当初は本作と「ワインレッドの心」(1983年)のみ再録音する予定であったが、興に乗って来たために過去のヒット曲すべてを再録音することになり、結果としてカバー・アルバム『安全地帯 Hits』(2010年)がリリースされることになった[15]

チャート成績[編集]

本作はオリコンシングルチャートでは最高位3位、登場週数は18回で売り上げ枚数は43.6万枚となった[1][2]。本作の売り上げ枚数は安全地帯のシングル売上ランキングにおいて3位となった[16]

TBS系音楽番組『ザ・ベストテン』(1978年 - 1989年)において1984年11月15日に第9位で初登場、11月29日から1985年1月24日の期間はアルフィー恋人達のペイヴメント」、松田聖子ハートのイアリング」、チェッカーズジュリアに傷心」、中森明菜飾りじゃないのよ涙は」に阻まれながらも、8週連続で3位を維持し続けた[17]。番組中では「いっそ セレナーデ」で同時期にランクインした井上陽水とも共演した。また、玉置が野球を愛好していたことから野球に因んだトークが多く、歌前のコーナーでは雪だるまの上のリンゴに雪玉を命中させる場面も放送された[18]。その他、第17回(1984年度)「日本有線大賞」で、有線音楽賞を受賞している。

本作はデビュー40周年記念ベスト・アルバム『THE BEST ALBUM 40th ANNIVERSARY 〜あの頃へ〜』(2022年)の収録曲を決定するファン投票において第2位を獲得した[19]

カバー[編集]

日本語バージョン[編集]

歌手名 収録作品 編曲 備考 出典
石丸幹二 2021年 アルバム『kanji ishimaru』 安部潤
井上陽水 1984年 アルバム『9.5カラット 萩田光雄
WEAVER 2017年 アルバム『S/S WEAVER [20][21]
大城バネサ 2019年 アルバム『ザ・カバーズ』 綾瀬悠
大橋純子 2007年 アルバム『Terra』 小島久政
柏原芳恵 2016年 カバー・アルバム『アンコール3』 佐々木章
加藤登紀子 2008年 カバー・アルバム『SONGS 〜うたが街に流れていた〜』 島健
河村隆一 2006年 カバー・アルバム『evergreen 〜あなたの忘れ物〜 Gatchang, Taryan [22]
香西かおり 2017年 カバー・アルバム『香西かおり 玉置浩二を唄う』 久米大作 [23][24]
JUJU 2010年 シングル「Trust In You E-3, DJ HIRO nyc
樹里からん 2011年 アルバム『TORCH II』 阿部篤志
髙木奏子 2008年 オムニバス・アルバム『On/Off 3rd Season 〜Seven Colors〜』
田中桜 2015年 オムニバス・アルバム『Sing! Sing! Sing! 2nd Season』 島田昌典 TBS系バラエティ番組『Sing! Sing! Sing!』内のオーディション歌唱曲[25]
W.C.D.A. 2017年 配信シングル「恋の予感(安全地帯) House Remix」 ハウスミュージックアレンジによるカバー
千宝美 2009年 カバー・アルバム『On/Off Sea Breeze』 Edison
中西保志 2010年 カバー・アルバム『Standards4 新川博 [26]
中森明菜 2003年 カバー・アルバム『歌姫3 〜終幕 千住明
NATSUMETAL 2020年 アルバム『NATSUMETAL』
森川七月 2016年 カバー・アルバム 『『J』〜Sentimental Cover〜』
森恵 2013年 カバー・アルバム『RE:MAKE1』 [27]
山本潤子 2007年 カバー・アルバム『SONGS』 鈴木康博 [28]

英語バージョン[編集]

歌手名 曲名 収録作品 備考 出典
Tomoko Miyata 2010年 「The Shadow Of Love」 アルバム『SECRET OF LIFE』 [29]

中国語バージョン[編集]

歌手名 曲名 収録作品 備考
グローリア・タング(歌莉雅) 2013年 「一夜傾情」 アルバム『Perfect Match』
ケニー・ビー(鍾鎮濤) 1985年 「迷離地帶」 アルバム『痴心的一句』 広東語バージョン
ジャニス・ウェイ(衛蘭) 2005年 「一夜傾情」 アルバム『Day & Night』 広東語バージョン
ダニー・チャン(陳百強) 1985年 「冷風中」 アルバム『深愛著你』 広東語バージョン
吳岱融中国語版 1989年 「戀的預感」 アルバム『我心中有愛』 北京語バージョン
ミシェル・ツェー(謝巧丹) 2009年 「一夜傾情」 アルバム『新曲x精選』 広東語バージョン
レオン・ライ(黎明) 1992年 「一夜傾情」 アルバム『傾城之最』 広東語バージョン
1993年 「誰領我的心靠岸」 アルバム『深秋的黎明』 北京語バージョン

シングル収録曲[編集]

オリジナル盤
全作曲: 玉置浩二、全編曲: 安全地帯星勝
#タイトル作詞作曲・編曲時間
1.恋の予感井上陽水玉置浩二
2.Happiness松井五郎玉置浩二
合計時間:
2010年盤
全作曲: 玉置浩二。
#タイトル作詞作曲・編曲編曲時間
1.オレンジ玉置浩二玉置浩二安全地帯
2.恋の予感(2010ヴァージョン)井上陽水玉置浩二安全地帯、星勝
3.オレンジ(オリジナル・カラオケ) 玉置浩二安全地帯
4.恋の予感(2010ヴァージョン)(オリジナル・カラオケ) 玉置浩二安全地帯、星勝
合計時間:

リリース日一覧[編集]

No. リリース日 レーベル 規格 カタログ番号 最高順位 備考
1 1984年10月25日 Kitty Records 7インチ 7DS 0080 3位
2 1988年12月10日 8センチCD H10K-30036 -
3 2010年5月5日 ユニバーサル マキシシングル UICZ-9034(初回盤)
UICZ-5047(通常盤)
17位 オレンジ」との両A面
4 2013年3月1日 AAC-LC - - デジタル・ダウンロード、シングル「オレンジ/恋の予感」の再リリース
5 2015年8月26日 ハイレゾFLAC - - デジタル・ダウンロード、カップリング曲が「碧い瞳のエリス」に変更されている

収録アルバム[編集]

「恋の予感」
「Happiness」
  • 『安全地帯III〜抱きしめたい』(1984年)
  • 『ENDLESS』(1985年) - ライブ・バージョンを収録。
  • 『安全地帯/玉置浩二 ベスト』(1994年)

脚注[編集]

  1. ^ a b オリコンチャートブック アーティスト編 1988, p. 34.
  2. ^ a b c スージー鈴木 2017, p. 201.
  3. ^ a b 志田歩 2006, p. 73- 「第4章 スターダム」より
  4. ^ 秦野邦彦 (2018年5月9日). “森恵×松井五郎「1985」対談|作詞家はシンガーソングライターに何をすべきなのか”. 音楽ナタリー. ナターシャ. p. 3. 2023年1月21日閲覧。
  5. ^ 松井五郎の作詞家としての人生を変えた「悲しみにさよなら」(安全地帯)”. ニッポン放送 NEWS ONLINE. ニッポン放送 (2021年4月20日). 2023年1月21日閲覧。
  6. ^ 森朋之 (2022年10月9日). “「悲しみにさよなら」「勇気100%」……作詞家 松井五郎が明かす、名曲誕生の裏側 時代との向き合い方についても聞く”. リアルサウンド. blueprint. 2023年1月21日閲覧。
  7. ^ 志田歩 2006, p. 60- 「第3章 ワインレッドの心」より
  8. ^ 安全地帯 / コンプリート・ベスト [2CD]”. CDジャーナル. 音楽出版社. 2023年3月25日閲覧。
  9. ^ a b 『ALL TIME BEST』収録楽曲解説”. ユニバーサルミュージックジャパン公式サイト. ユニバーサルミュージック. 2023年1月15日閲覧。
  10. ^ 玉置浩二&安全地帯、オールタイム・ベストをリリース”. CDジャーナル. 音楽出版社 (2017年2月28日). 2022年6月9日閲覧。
  11. ^ 安全地帯 / 恋の予感 [廃盤]”. CDジャーナル. 音楽出版社. 2022年6月9日閲覧。
  12. ^ 安全地帯17年ぶり連ドラ主題歌&2010年版「恋の予感」”. 音楽ナタリー. ナターシャ (2010年4月6日). 2023年2月4日閲覧。
  13. ^ 安全地帯、5月発表の復帰第2弾シングルで17年ぶり連ドラ主題歌”. オリコンニュース. オリコン (2010年4月6日). 2023年2月4日閲覧。
  14. ^ 安全地帯、『おみやさん』主題歌に決定!”. CDジャーナル. 音楽出版社 (2010年4月6日). 2023年2月4日閲覧。
  15. ^ a b 平賀哲雄 (2010年6月). “安全地帯 『安全地帯 HITS』インタビュー”. Billboard JAPAN.com. 阪神コンテンツリンク. 2022年2月17日閲覧。
  16. ^ 安全地帯のシングル売上TOP20作品”. オリコンニュース. オリコン. 2022年3月5日閲覧。
  17. ^ 別冊ザテレビジョン 2004, pp. 127–130- 「チェッカーズ、ヒット曲連発で大ブレイク 1984年」~「おニャン子クラブ登場! アイドル新時代 1985年」より
  18. ^ 別冊ザテレビジョン 2004, p. 127- 「チェッカーズ、ヒット曲連発で大ブレイク 1984年」より
  19. ^ 安全地帯デビュー40周年、玉置浩二ソロデビュー35周年 リクエスト投票 結果発表”. otonano. ソニー・ミュージックマーケティングユナイテッド. 2023年2月24日閲覧。
  20. ^ WEAVER新作にmabanuaプロデュース曲、NYLONコラボビジュアルも解禁”. 音楽ナタリー. ナターシャ (2017年3月14日). 2023年1月4日閲覧。
  21. ^ 新曲もカバーも!WEAVER、タワレコで新作「S/S」全曲パフォーマンス”. 音楽ナタリー. ナターシャ (2017年4月10日). 2023年1月4日閲覧。
  22. ^ 河村隆一、カヴァー・アルバムを発表!”. CDジャーナル. 音楽出版社 (2006年3月24日). 2023年1月4日閲覧。
  23. ^ 香西かおり「玉置浩二さんと一緒につくった作品たちは私の一生の宝物」、玉置浩二からのコメントも”. Billboard JAPAN.com. 阪神コンテンツリンク (2017年11月21日). 2023年2月5日閲覧。
  24. ^ 香西かおりニューアルバムは1枚まるごと玉置浩二”. 音楽ナタリー. ナターシャ (2017年11月22日). 2023年3月18日閲覧。
  25. ^ 今夜放送「Sing! Sing! Sing!」決勝戦、前夜祭から大盛り上がり”. 音楽ナタリー. ナターシャ (2015年4月20日). 2023年3月25日閲覧。
  26. ^ 中西保志、カヴァー・シリーズ『スタンダーズ』第4弾が発売!”. CDジャーナル. 音楽出版社 (2010年10月6日). 2023年3月25日閲覧。
  27. ^ “ストリートの女王”森恵によるなつかしの名曲カバーアルバム・書籍CD『Megumi Mori Soul Song‘s Book Re:Make1』、発売記念イベントに延べ1000人が集結!”. PR TIMES. PR TIMES (2013年5月21日). 2023年2月4日閲覧。
  28. ^ [Mr.Children] 山本潤子がJ-POPの名作をカバー”. 音楽ナタリー. ナターシャ (2007年5月22日). 2023年2月4日閲覧。
  29. ^ 桑原シロー (2010年3月4日). “Tomoko Miyata”. TOWER RECORDS ONLINE. タワーレコード. 2023年2月4日閲覧。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]