微笑み

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
自然な笑顔。左端の男の子は眼元がしっかりわらっている。
イラクの少女がカメラマンに向かって見せてみた笑顔(やや作り笑顔が入っている。)
あくまで仕事(アルバイト料)のために、目前にいる大勢の見ず知らずの観客たちに対して作っている作為的な笑顔。口元ばかりが意図的に引っ張りあげられて無理やり形をつくっている。女性は仕事の場で(また男性を操ろうとする時に)こうした笑顔をしばしば作るが、この笑顔が作為的だと気付かない(おめでたい)男性もいるが、作為的だとしっかり気付いている男性もいる。
作り笑い。しばしば詐欺師がこうした笑顔を作る。

ほほえみ(漢字表記では「微笑み」あるいは「頬笑み」、: sorriso: sourire: smile)とは、ほほえむことで[1]、ほほえむとは声をたてずに、にこりと笑うこと[2]。「微笑(びしょう)」とも。また、ほほえんでいる顔は笑顔(えがお)とも呼ばれる。

概説[編集]

ほほえみとは、声をたてずに、ニコリと笑うことである。 人間表情のひとつで、嬉しさの現れであったり、好意の表現や、敵意を持たないこと表現するために使われる。

笑顔には、自然な笑顔と不自然な笑顔があると指摘されることがある。 まず心に嬉しさがあって自然に出ているほほえみと、そうではなく、内心嬉しいとは感じていないのに意識的に表情筋を動かして作っている笑顔がある、と指摘されているのである。

人のコミュニケーションの研究者や、あるいは嘘の研究者は、 自然な笑顔は、眼もとまわりの表情筋が中心になって動き、つまり眼もとまわりがゆるんでほほえむ、という。(わずかに「たれ目」ぎみになる[注 1]) それに対して、意図的・作為的に作られた笑顔というのは、口もとあたりの表情筋肉が主に動いていて、しばしば眼元の表情筋がほとんど動かない、と指摘されている。口の端だけが引っ張られてつりあげられたような笑顔というのは、心に喜びがあってでた笑顔ではなく、意図的あるいは作為的に作っている笑顔だと指摘されているのである。[3]

相手が心から喜んでいるか、それともそうでないか見分けるためには、口元は無視して、眼元をよく観察すれば分かる、ということになる。

眼元もわらっていて、なおかつ口元もわらっていれば特には問題は無い。 だが、もしも口元は引っ張りあげられて笑っているような形になっていても、眼元が明らかに笑っていない場合は、あくまで無理に笑顔をつくろうとしており、本心ではむしろ不快に思っている場合がほとんどで、要注意であり、顔を見ている人(=あなた)が抱く印象を操作することで商売をうまくすすめようとしたり、時に、だまそうとしている可能性もあり、笑顔と言っても、むしろ要注意な場合があるという。

しばしば社会では、意識的に作られた微笑みが用いられている。例えば、ビジネスの場や、商店で従業員がお客に接する時などは、特に感情が無くても、とりあえず少なくとも敵意は持っていないということを示すために、挨拶の時などに笑顔を作ってみせる、ということは広く行われている。 作り笑いであることを理解した上で成り立っている。

赤ちゃんの笑顔。

なお、 新生児は感情表現とは別に自然と微笑む(ような表情をみせる)「新生児微笑」を行う。この新生児の微笑行動は、人に限らず、の赤子にも見られる[4](後述)。

日本人の悲しい時に作る微笑みの文化[編集]

日本人の不自然な微笑に関しては、小泉八雲の『日本瞥見記』内の「日本人の微笑」において語られており、「愛する人が亡くなった重大な時にこそ、みだりに表情を表すことを控え、むしろ笑みを浮かべることを美徳としていた」とし、そうした日本人の美徳を外国人である小泉自身は不可解であったと記している。この日本人独特の微笑の不可解さは、新渡戸稲造著の『武士道』内においても説明されている(外国人女性のケース、すなわち男女にかかわりなく、日本人の微笑は不可解に見られていた)。「悲しい時の微笑」を日本人独特とするのは、小泉自身が韓国にも旅をしており、葬式を見学した際、肉親のほとんどが大声をあげて泣いており(泣き女も参照)、日本の葬式では見られないほど、率直な感情の吐露がみられたことによる。『武士道』内の説明によれば、悲しい時の微笑は、相手を気遣わせないための配慮であり、他人を心配させないための表情であるとしている。

本来なら悲しむ時の状況であるにもかかわらず、作られる微笑み習慣は、現代でも一部で見られる[5]

2010年の日本とオランダの大学による共同実験においても、日本人は文化的に本当の感情を出さない傾向があり、否定的感情も笑顔で取りつくろうため、感情を読み取る際、「顔」ではなく、「声」の方を重視することがわかっている[6]。声までは偽装しにくいためと考えられている(微笑みが本心ではなく儀礼的というのは、日本人間では共通認識)。これに対し、オランダ人は感情を顔の表情で読み取っていたという結果が出ている。このため、文化的誤解が生じやすい。

笑顔(微笑)を作ることによる心的作用[編集]

実情的には微笑む場面でなくとも、作為的に満面な笑み(微笑み)の表情を作ることによって、脳内では嬉しい気分を示す反応が得られる実験結果がある[7](ようは、作り笑顔であろうと、多少、内面では喜びの情が生じる)。人は笑顔を作ると、その時の筋肉の状態が感覚受容器から脳にフィードバックされ、こうした表情を作っている時は嬉しい時であると判断するため、嬉しさの内部モデルが働き、結果として、脳内では嬉しいと感じる反応を示す(心の状態としては、「情」が「私」は今嬉しいのだと判断させている)。いわば、笑った顔を作ってみようとする「意」が能動的であるのに対して、「情」は受動的ということになる。結果論として、「情」は、意図とは関係なく、自動的にわき上がってくるものと判断される。この実験結果からわかることは、「情」は、個が主体的・能動的に作り出すものではないということである[8]

前野隆司は、「情」の存在理由について、エピソード記憶にメリハリをつける(あじけないと明確な記録として覚えにくい=混同しやすい)ためと個人的見解を述べている(微笑み・笑顔もこの一環とみられる)。


笑い[編集]

日本語の「笑い」は、可笑しさによって笑う「laugh」と、嬉しさによって微笑む「smile」の二つの行為の意味を持つが、これらは異なったものである。とはいえ、近しいものでもある。笑いにはしばしば嘲りのニュアンスが加わったり、声が加わるのに対して、微笑みにはそのどちらもない。他に、つくり笑いや愛想笑い、苦笑い、泣き笑い等の様々な笑いの種類がある。

ただし、子供をあやしていると、ほほえみから次第に声が出て、やがて本格的に笑い出す場合もあるから、連続的な関係はある。

猿の新生児にも見られる微笑み[編集]

それまで人間とチンパンジーの赤子に特有とされてきた微笑みだが、2001年に京都大学霊長類研究所と聖心女子大学の共同チームがニホンザルのメスの新生児にも「自発的微笑」があることを確認している[9]。くちびるを動かす際に両方の頬を動かす場合は微笑みではないが、聖心女子大教授の川上清文によれば、「片方の頬を動かす行為」から微笑むしぐさであると判断したとされる。

モナ・リザの方頬だけのアルカイク・スマイル。眼元の表情筋、頬まわりの表情筋肉、口元の表情筋、それらの状態の組み合わせが、本物の自然な人間だったらあり得ないような組み合わせにになっていて、観た人の心に不思議な混乱を引き起こして、めいていると感じられ、それがこの絵の魅力になっているのだ、と絵画の専門家が分析したことがある。

記号としての笑顔[編集]

メール掲示板ブログなどでは補足的な感情表現の手段として、笑顔が顔文字アイコンなどの形で利用されることが多い。

  • 顔文字
 :-) :) (^_^) (^-^) (・∀・)(^o^)
☺ 0x263a
☻ 0x263b
  • アイコン
Smileyマーク

接客サービス[編集]

マクドナルドのメニューに「スマイル0円」が存在するように、サービス業では微笑みが重要視されることが多い。こうした点を逆手に取り、キャセイパシフィック航空労働組合では、労使交渉における戦術の一つとして笑顔の拒否を採用したことがある[10]

脚注[編集]

  1. ^ 相対的に言うと、人は怒っている時には普段よりも眼の端が上がる傾向がある。だからこそ「あなた彼に何を言ったの? 彼、ブリブリ怒って、眼がつりあがっていたわよ。」などと言うのである。
出典
  1. ^ 広辞苑「ほほえみ」
  2. ^ 広辞苑「ほほえむ」
  3. ^ TEDで嘘について講演した女性も同様の指摘した。(2015年1~2月放送)
  4. ^ 参考・読売新聞2001年11月16日(金曜)付、記事に猿の微笑写真も載せられている。
  5. ^ NHK Eテレの番組『100分de名著』「武士道」内で紹介されている。1990年代に海外の戦争で亡くなった日本人男性の遺族が見せた話が語られている。
  6. ^ 参考・朝日新聞2010年12月3日(金曜)付、記事を一部参考。
  7. ^ 前野隆司 『脳はなぜ「心」を作ったのか -「私」の謎を解く受動意識仮説-』 筑摩書房 2004年 ISBN 4-480-84265-9 p.69
  8. ^ 同書 p.69
  9. ^ 読売新聞2001年11月16日(金曜)付、記事に写真も載せられている。
  10. ^ “乗客への「笑顔」サービス拒否、昇給闘争でキャセイ航空労組”. CNN (CNN). (2012年12月15日). http://www.cnn.co.jp/business/35025805.html 2012年12月15日閲覧。 

関連項目[編集]