御先祖様万々歳!
『御先祖様万々歳!』(ごせんぞさまばんばんざい!)は、1989年5月から1990年1月にかけてリリースされた押井守によるOVA作品。全6話(全6巻)。
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[編集] ストーリー
高級マンションに住む高校生・四方田犬丸(よもた・いぬまる)は、ホームドラマ的な日常に退屈していた。 そんなある日、マンションのベランダから黄色い一輪の花を目撃する。その後、玄関のチャイムが鳴るが面倒臭がって出ない両親に 変わって犬丸は、しかたなく出ることにした。玄関の扉の覗き穴を見るとそこには、先程見かけた黄色い花がいた。 迷いに迷った挙句扉を開けると、犬丸は黄色いドレスの少女に抱きつかれる。その少女は、四方田麿子(よもた・まろこ)と名乗り 自分が犬丸の孫娘であり、彼に会いたいが為に未来からやってきたと言う。彼女の登場により、四方田家の日常と家庭は破天荒な形で崩壊していく事になるのだった。
[編集] 作品概要
スタジオぴえろ10周年記念作品として製作された。原作、脚本、監督は押井守。 舞台演劇のような演出をアニメに持ち込み、登場人物が過剰なまでに饒舌な台詞を話す。「立喰いそば」、「犬」、「大洗海水浴場」といった、他の押井作品で見られる題材やネタも随所に含まれる。 また南家こうじが担当したオープニングアニメーションは、エフェクト作画とセルアニメの撮影技術を最大限に利用した独特なものであり、当時としてはかなり衝撃的なものとなっている。
1990年に本作を90分に再構成・再編集したヴァージョンが、『MAROKO 麿子』というタイトルで劇場公開された。すべて犬丸の視点で描かれているため、OVAとは違った視点で楽しめるものの、犬丸不在で麿子の正体に迫るクライマックスがばっさり省略されており、押井自身もOVAの方がずっと面白いと認めている[1]。
本作と同じスタジオぴえろで製作し押井が監督したヒットアニメ『うる星やつら』と同様に、ある家族に美少女がやって来て起こる混乱を描くコメディーである。『うる星やつら』との類似は押井の意図[2]で、声優の配役も重なっている部分があり、後にしばしば「裏『うる星やつら』」とも評された。しかし、売れ線の企画だと期待したスタジオぴえろ社長布川ゆうじの思いに反して、押井の趣味が反映された小劇場での舞台劇を模した演出と独特の長台詞は、アニメファンのニーズに合わず、商業的には成功とはいかなかった[3]。それにもかかわらず最後まで作らせてくれた布川社長に感謝していると押井は語っている。一方、出演した声優陣からは舞台劇を模したスタイルは概ね評判がよく[4] 、山寺宏一と鷲尾真知子が絶妙のデュエットを見せた挿入歌「興信所は愛を信じない」には録音演出(音響監督)の千葉繁(これが初の音響監督であった)による「山寺、歌うますぎるよ!」というガヤが(わざと)入っていたり、各巻冒頭のプロローグと次回予告のナレーションを担当した永井一郎が自分の出番が終わっても「面白いからもうちょっと見させてよ」とアフレコを全部眺めていったという話が残されている。
本作で、うつのみや理がレイアウトと作画監督のデビューを飾っている。
1990年代に入ってからNHK-BS2でオンエアされたが、毎回放送終了後に案内役の林原めぐみが絶句したままコメントに詰まっていた。 また、放送が予定されていた最終話が当日になって事前に説明も無く別作品(スノーマン)に差し替えとなった。 その件の問い合わせに対して、NHKはフィルムに異常があったためと説明したとされるが、本作は途中からビデオマスターしか制作されておらず、フィルムに異常があることはありえない。放送を決めておきながら本作第5話で描かれる意外にも過激な展開に驚き、急遽中止にしたのではないかというのが、もっぱら推測される理由である[5]。
関西では讀賣テレビ放送の『アニメだいすき!』のプログラム内で1993年3月20日に「MAROKO 麿子」が放送されている。同プログラムは、春休み・夏休み・冬休みの学休期間中の昼間にマニアックなOVAやアニメ映画を中心に放送した名物特番枠で、押井守のインタビューを放送する(1988年11月23日放映「鬼才・押井守の世界」)など野心的な企画も行なっていた。
なお、2005年3月にはキッズステーションで全話放送された。またその前には「MAROKO 麿子」も放送されている。
[編集] キャスト
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- 四方田麿子(よもた・まろこ): 勝生真沙子
- 未来からやってきた犬丸の孫娘。彼女の登場で四方田家の家庭は、崩壊する。
- 未来人の割には、古風な喋りをする。
- 四方田犬丸(よもた・いぬまる): 古川登志夫
- スケベかつ血気盛んな高校生で、本作の実質的な主人公。孫娘であるはずの麿子と禁断の恋に堕ちる。
- お尻の部分に四方田家の人間のみに引き継がれる、大人になっても消えない『五芒星の蒙古斑』を持つ。
- 名前の由来は、映画評論家の四方田犬彦。押井はこのアニメから二年後に製作される『トーキング・ヘッド』の中で、四方田の著書『映画はもうすぐ百歳になる』の内容を大々的に引用している。
- 四方田甲子国(よもた・きねくに): 緒方賢一
- 多美子の夫にして犬丸の父親であり麿子の曾祖父に当たる。どこの家庭にもいる中年のサラリーマン。
- 妻との仲は、冷え切っており、息子との仲も悪い。妻と息子に逃げられ、麿子のために購入したマイホームのローン返済のために強盗を働き、最終的には蒸発するなど本作で一番不幸な人物。
- 四方田多美子(よもた・たみこ): 鷲尾真知子
- 甲子国の妻で犬丸の母親、麿子の曾祖母。旧姓:八甲田多美子(はっこうだ・たみこ)。SFやファンタジーを嫌う、現実主義者。
- 麿子の登場で四方田家を去り、その後、彼女の身辺調査を担当した探偵・多々良伴内と気が合い、夫の死後、彼と再婚する。
- 室戸文明(むろと・ぶんめい)/四方田犬麿(よもた・いぬまろ): 玄田哲章
- 未来の世界から麿子を捕まえに来たタイムパトロールで、その正体は、犬丸の息子にして麿子の父親だが目的の為に正体を隠している。奇抜なサングラスに赤いスピードスケートスーツを着ており、独自の奇抜なポーズをとる。室戸文明は、押井監督の実写映画作品『紅い眼鏡』の登場人物が元であり役者も本作品で同役を演じた玄田哲章である。
- 多々良伴内(たたら・ばんない): 山寺宏一
- 多美子に麿子の身辺調査を依頼された探偵。ヤクザ風の容姿をしているが、意外と臆病。
- ナレーション: 永井一郎
- 毎回(最終話を除く)冒頭で、漫談のような口調で特異な生殖・繁殖習性を持つ鳥類についての紹介を行う。その内容は直接本編と関係しないが、本編のテーマである「家族」を連想させるものになっている。
以上で物語・作品・登場人物に関する核心部分の記述は終わりです。
[編集] スタッフ
- 原作・脚本・監督: 押井守
- キャラクターデザイン・作画監督: うつのみやさとる
- 作画監督補佐: 橋本浩一
- 美術: 池田祐二
- 撮影: 小山信夫
- 音楽: 川井憲次
- 録音演出: 千葉繁
- 編集: 森田清次 (森田編集室)
- オープニングアニメーション: 南家こうじ
- 主題歌: 『御先祖様万々歳!』
- 作詞・歌: 児島由美
- 作曲・編曲: 川井憲次
- 挿入歌:全て 作詞:児島由美 作曲・編曲:川井憲次
- 『時の番犬』歌:玄田哲章
- 『興信所は愛を信じない』歌:山寺宏一,鷲尾真知子
- 『立ち食いの唄』歌:古川登志夫
- プロデューサー: 梅崎浩志
- 製作: 布川ゆうじ
- 制作協力: エスピーオー
- 企画製作: スタジオぴえろ
[編集] 各話タイトル
- 悪婦破家(あくふいえをやぶる)
- 酒池肉林(しゅちにくりん)
- 虎視眈眈(こしたんたん)
- 捲土重来(けんどちょうらい)
- 一蓮托生(いちれんたくしょう)
- 胡蝶之夢(こちょうのゆめ)
[編集] MAROKO 麿子
1990年にOVAを90分に再編集した劇場版『MAROKO 麿子』が作成されている。
[編集] ドラマ化構想(実現せず)
『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』の舞台化(「うる星やつら」の設定は用いていない)を手がけたこともあるじんのひろあきが自らのウェブサイトで明らかにしているところでは、1998年頃に「本作をテレビ東京で13回連続の深夜枠テレビドラマとする企画を、じんのが脚本・監督を引き受ける条件で押井が許可した」という話が持ち込まれたという[6]。このドラマ化については、押井から川井憲次の楽曲の使用や、登場人物を旅回りの芝居座一家として「家族全員の話を家族で演じている」構成にすることなどの指示があったが、実現せずに終わっている。
[編集] 脚注
- ^ 別冊宝島 「押井守ワークス スカイ・クロラ」より。
- ^ 『うる星やつら』のラムが宇宙人で諸星あたるの妻という設定がイカサマであり、実は結婚詐欺師だったらというシナリオを考えたが没になった経緯を元にしたという。
- ^ ただし、押井自身は同人誌のインタビューで「OVAというものは長い目で見れば少しずつ売れて最終的にはペイするもの」という持論を展開している。
- ^ 山寺宏一は自身の書籍『山寺宏一のだから声優やめられない!』の千葉繁との対談において「自分の代表作にしてもいい」と語っている。
- ^ 参考文献 『ユリイカ 4月号』 第36巻第4号(青土社) ~特集 押井守 映像のイノセンス~ 押井守フィルモグラフィー 藤津亮太 著 より
- ^ ご先祖様万々歳 じんのひろあきウェブサイト