弱測定

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量子力学において弱測定弱い測定: weak measurement)とは、量子状態の重ね合わせを壊さずにその状態(可観測量)を測定する観測手段である。1988年にヤキール・アハラノフDavid Z. AlbertLev Vaidmanらによって提唱された。

弱測定により、ある量子状態についてその始状態と終状態とを特定することで、量子状態の弱値弱い測定値: weak value)を得ることが出来る。弱値は、負の粒子数、負の確率といった通常の測定ではありえない値もとりうるが、これは通常と逆の物理的性質を持っているものと解釈されている。

アイデア[編集]

一般的に、量子状態の重ね合わせにある物理系を観測してその状態を測定しようとすると、重ね合わせが壊れてしまう。その壊れの程度は、観測によって得られた情報量の2乗に比例するので、得られる情報量を極限まで減らした測定を行えば、重ね合わせにある量子状態そのものを壊すことなく知ることができる。

一回の測定で得られる情報量も微小であるが、前後の状態を特定したうえで繰り返し測定することで、誤差を減らすことができる。

手順[編集]

  1. 対象となる複数の物理系に普通の(弱測定でない)測定を行い、特定の始状態にあるものを選び、量子実験を開始する。
  2. 実験中に弱測定を行い、重ね合わせ状態の測定結果を記録する。
  3. 実験終了後に普通の(弱測定でない)測定を行い、特定の終状態にあるものを選ぶ。
  4. 3で選ばれた対象について2の記録を平均することで、特定の始状態と終状態を選んだ場合の弱値が得られる。

議論[編集]

  • 弱測定の概念は観測問題と時間の流れの考察から考え出された。ヤキール・アハラノフは過去から現在までと、未来から現在までとを記述する二つの波動関数により量子力学を記述しなおすことで、量子的な重ね合わせに物理的な実在性を持たせようとした。弱測定はこの実在性を観測する手段である。
  • アハラノフはこれを宇宙全体に一般化し、宇宙の始状態と終状態によりただ一つの宇宙が選択され実現していると考えた。
    • これは宇宙が量子的な重ね合わせ状態にあり、実現可能性がある無数の宇宙が並行して存在すると考える、エヴェレットの多世界解釈による宇宙観と対立する考えである。
  • 弱測定の概念はまだ成熟されたものではないが、実験による実証が可能であり、専門家に受け入れられつつある。一方で、アハラノフの宇宙観は広く受け入れられてはいない。

参考文献[編集]

  • 語り:Y.アハラノフ 聞き手:古田彩 監修:鹿野豊、細谷暁夫、2012、「宇宙の未来が決める現在」、『別冊日経サイエンス』(no.186 実在とは何か)、日経サイエンス社 pp. 48-52

関連項目[編集]