広島小1女児殺害事件

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広島小1女児殺害事件
場所 日本の旗 日本広島県広島市安芸区矢野西
日付 2005年11月22日 (2005-11-22)
午後(発見は同日17時頃) (UTC+9)
標的 小学1年生女子
攻撃手段 絞殺
死亡者 1人
容疑者 日系ペルー人の男(33歳)
動機 「悪魔が乗り移った」などと主張
最高裁判所判例
事件名 強制わいせつ致死、殺人、死体遺棄、出入国管理及び難民認定法違反被告事件
事件番号 平成21年(あ)第191号
2009年(平成21年)10月16日
判例集 刑集第63巻8号937頁
裁判要旨
  1. 刑事裁判において、関係者、取り分け被告人の権利保護を全うしつつ、事案の真相の解明することが求められるが。したがって、審理の在り方としては、合理的な期間内に充実した審理を行って事案の真相を解明することができるよう、具体的な事件ごとに、争点、その解決に必要な事実の認定、そのための証拠の採否を考える必要がある。そして、その際には、重複する証拠その他必要性に乏しい証拠の取調べを避けるべきことは当然であるが、当事者主義(当事者追行主義)を前提とする以上、当事者が争点とし、あるいは主張、立証しようとすることの内容を踏まえて、事案の真相の解明に必要な立証が的確になされるようにする必要がある。
  2. 第1審で被告人の検察官調書を取調べに関し、第1審裁判所に釈明義務を認め、検察官に対し、任意性立証の機会を与えなかったことが審理不尽であるとして第1審判決を破棄し、第1審裁判所に差し戻した原判決は、第1時的に第1審裁判所の合理的判断にゆだねられた証拠の採否について、当事者からの主張もないのに、審理不尽の違法を認めた点において刑事訴訟法294条、379条、刑事訴訟規則208条の解釈を誤った違法があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反する。
第二小法廷
裁判長 古田佑紀
陪席裁判官 今井功中川了滋竹内行夫
意見
多数意見 全員一致
意見 なし
反対意見 なし
参照法条
刑事訴訟法294条、刑事訴訟法379条、刑事訴訟規則208条
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広島小1女児殺害事件(ひろしましょういちじょじさつがいじけん)は、広島市安芸区矢野西2005年11月22日、帰宅途中の女子児童がペルー人によって強制猥褻のうえ殺害された事件である。

状況[編集]

11月22日午後、下校途中の女子児童(当時7歳)が学校を出てから行方不明となり同日17時頃に路上に放置されていた段ボール箱の中から遺体となって発見された。死因は絞殺による窒息死で、推定死亡時刻は13時から14時。遺体の下半身には性的暴行の際に受けたと思われる指で傷つけられた痕跡が存在していた。頬には涙の跡があった。

広島県警海田署捜査により、遺体が入れられていた段ボール箱から東広島市ホームセンターで売られていたガスコンロを購入した顧客が割り出された。これを受けて29日夜、事件現場の近所に住んでいた自称日系ペルー人の男(当時30歳と自称していたが、後に33歳であることが判明)が指名手配され、この男は翌30日に三重県鈴鹿市内の親族宅で逮捕された。

この男はペルー国内でも未成年者に対する3件以上の複数件の婦女暴行をしたとして指名手配されていたため、本名を偽って就労ビザを取得したうえで2004年4月に日本に渡航していたことが判明した。男は当初は三重県に在住し、2005年夏頃に広島県に引っ越していた。母国には被害者と同じくらいの年齢の子供を残してきていた。

事件後、殺害現場である被告アパートは、取り壊され駐車場となった。

事件当時の報道[編集]

この事件は2004年11月17日に発生した奈良小1女児殺害事件からほぼ1年が経過して発生した事件であったためか、容疑者が逮捕されていない段階からワイドショーのコメンテーターを中心に「オタクによる性犯罪目的」説が喧伝されていた。2005年11月23日のテレビ朝日『やじうまプラス』では、勝谷誠彦犯人について「これねかなりねぇ、心理的に見ると、まるでね子供をフィギュアの様に扱ってますよね」と発言し、いわゆるフィギュア萌え族と関連付けた。だが、逮捕された容疑者像が「オタク」とはまるでかけ離れたものだったことが判明している。

週刊文春』2005年12月8日号では、段ボール箱を封印する際のテープの型が、当時、『週刊少年ジャンプ』で連載中であった漫画『魔人探偵脳噛ネウロ』に登場していたものに似ているとの記事が掲載された。また、日本テレビの『NNNニュースプラス1』でも同様の報道がなされた。

実名報道の是非[編集]

当初、被害女児の実名は報道されていたが、性的暴行を受けた事が判明したため、各種報道機関は遺族の感情を考慮するという名目の下、実名報道を取りやめた。しかし、その後、被害者遺族が氏名報道を行うこと、性犯罪が行われた事実を報道することを各種報道機関に要請したため、実名報道及び性犯罪に関する報道も復活する形となった。

裁判[編集]

容疑者は取り調べに対し「悪魔が乗り移った」などと主張。広島地方裁判所における第一審では検察より死刑求刑した。

公判から50日目の2006年7月4日に判決。地裁では猥褻行為を生前に行ったこと、「悪魔」は罪を逃れるための言い訳であり責任能力はあると認められた。しかし、容疑者が過去ペルー国内において犯した犯罪について指名手配中であったが、推定無罪の原則上、前科が証明できず初犯扱いとなり、無期懲役の判決が言い渡された。

2008年12月9日控訴審広島高等裁判所は第一審判決を破棄し、犯行場所についての供述を含む被告人の検察官調書が第一審で取り調べなかったことは違法であるとして審理を広島地方裁判所へ差し戻した。スピード裁判で十分な審理が行われなかったことに触れ、前科について破棄した事について「賛同することはできない」とした[1]。この判決を不服とし、現在被告側が上告したところ、最高裁は控訴審判決を破棄した。その理由は、検察官が第一審で取調べを請求した被告人の検察官面前調書の立証趣旨は被告人の弁解状況、殺意の存在及び被告人の責任能力とされ、犯行場所については立証趣旨とされていなかった。そのような中で、第一審裁判所が被告人質問の内容から犯行場所に関する供述内容が記載されていると推測し、弁護人に具体的な任意性を争う点を釈明させ、任意性立証の機会を与える義務まではないとして否定した。さらに、検察官が控訴審においてはこの点について特に解明する必要がないと態度をとっていた。したがって、第一審には釈明義務を認め、検察官に対し任意性立証の機会を与えなかったことが審理不尽として違法であるとし、当事者の主張もないのに、前記審理不尽を認めた判決は違法であるとした。

この事件は、裁判員裁判のモデルケースとされ、公判前整理手続が行われ、従来に比べ短い期間で判決が下され、公判における証拠調べのあり方についても問われた。最高裁は、証拠の採否について第一次的にゆだねられている第一審裁判所の合理的裁量を尊重し、当事者からの主張もないのに、たやすく控訴審がその判断を覆すのは妥当でないと判断したと思われる。

広島高裁に差戻された、やり直し第二審であるが2010年7月28日に、被告人に殺意があり猥褻目的による犯行であり、刑事責任能力が事件当時あったことを認めた上で、計画的犯行でなかったとして、無期懲役を言い渡し一審判決を支持した。この判決に対し検察側は最高裁への上告を検討したが、判例違反であると上告するのは困難であるとして断念した[2]。また被告人側も上告しなかったため無期懲役が確定した。

脚注[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]