希土類元素

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
希土類から転送)
移動: 案内, 検索
21 Sc スカンジウム
39 Y イットリウム
57 La ランタン




58 Ce セリウム
59 Pr プラセオジム
60 Nd ネオジム
61 Pm プロメチウム
62 Sm サマリウム
63 Eu ユウロピウム
64 Gd ガドリニウム
65 Tb テルビウム
66 Dy ジスプロシウム
67 Ho ホルミウム
68 Er エルビウム
69 Tm ツリウム
70 Yb イッテルビウム
71 Lu ルテチウム

希土類元素(きどるいげんそ、レア・アース英語: rare earth element)は、スカンジウム 21Sc、イットリウム 39Y、ランタン 57La からルテチウム 71Lu までの17元素からなるグループである(元素記号の左下は原子番号)。周期表の位置では、第3族のうち第4周期から第6周期までの元素である。なお、希土類希土とは、希土類元素の酸化物である。

目次

[編集] 概要

希土類元素は化学的性質が互いによく似ている。性質を若干異にするスカンジウムおよび天然に存在しないプロメチウム以外の元素は、ゼノタイムやイオン吸着鉱などの同じ鉱石中に相伴って産出し、単体として分離することが難しい。そのため、混合物であるミッシュメタルとして利用されることも多い。金や銀などの貴金属に比べて地殻に存在する割合は多いが、単独の元素を分離精製することが難しく、流通価格が貴金属並みに高価となることがある。そのため、2007年の現在でも稀(まれ, : rare)な元素であり[1]レアメタルに分類される。

アメリカ地質調査所によれば、レアアースの世界の埋蔵量はおよそ9,900万トンであり、全世界の年間消費量約15万トンから比較すれば、資源の枯渇はあまり危惧されていない。レアアースは日本の工業生産品として、蓄電池発光ダイオード磁石などのエレクトロニクス製品の性能向上に必要不可欠な材料である。しかしながら下記産地にも示すように採算性を突き詰めていった結果中国に産地が偏在する結果となり、近年の産出量の95%以上を中国のバヤンオボー鉱床とイオン吸着鉱鉱床により産出されてといった、生産国一国に大きく依存している政治的リスクを負うようになっている。このため、2010年頃から調達環境の悪化が顕在化した。特にレアアースの工業的寄与が大きい日本ではこのようなリスクが再認識され、再び中国以外からの調達を試みている。具体的には、インドの漂砂、ベトナム北部のカーボナタイト、カザフスタンのウラン鉱床残渣、オーストラリアのカーボナタイトなどからの生産プロジェクトを開始した。これらの代替地から供給は早くても2012年以降であることから、2011年の必要量の確保が問題となった。日本では「元素戦略」と銘打ち、この問題への対応が図られている。

[編集] 分類

希土類元素のうちスカンジウムとイットリウム以外の 15 元素はランタノイドである。ランタノイドの中で、Gd よりも原子量が小さい元素を軽希土類元素 (: light rare earth element, LREE) (La-Eu)、重い元素を重希土類元素 (: heavy rare earth element, HREE) (Gd-Lu) と呼ぶ。また、中間のものを中希土類と呼ぶこともある。

元素ごとに分離されたものを分離希土、分離されていないものを混合希土(ミッシュメタル)と呼ぶ。

[編集] 用途

希土類元素、特にランタノイドは電子配置が通常の元素とは異なるために物理的に特異な性質を示す。 水素吸蔵合金二次電池原料、光学ガラス、強力な希土類磁石蛍光体研磨材などの材料となる。マグネシウム合金に微量添加することで機械的特性を向上する。

レア・アースの種類と用途例[1]
用途 21
Sc
39
Y
57
La
58
Ce
59
Pr
60
Nd
61
Pm
62
Sm
63
Eu
64
Gd
65
Tb
66
Dy
67
Ho
68
Er
69
Tm
70
Yb
備考
磁石磁性体材料 不対電子を持つもの
光ディスク
光磁気ディスク
蛍光体 Eu:赤, Tb:緑, Y:赤
レーザー
光ファイバ増幅器
コンデンサ
水素吸蔵合金
超伝導材料
光学ガラス 高屈折率、低分散

[編集] 具体的用途

  • 超強力磁石の磁性体(モーター、バイブレータ): ネオジム、サマリウム、ジスプロシウム(Sm-Co磁石・Nd-Fe-B磁石)
  • 液晶ガラス基板研磨剤: セリウム
  • 蛍光体(テレビ、蛍光灯、LED): イットリウム
  • 光ディスク (書き換え可能タイプ) の記録層 (DVDCDBlu-ray Disc)
  • 光磁気ディスクの磁性層 (MOMD)
  • 石油精製触媒、自動車用排気ガス浄化触媒

[編集] 産地

世界のレアアース産出量 1950年 - 2000年
(アメリカ合衆国内務省地質調査所のデータより作成)

中国内モンゴル)が世界の産出量(12.4万t、2009年推定)の97%以上を占めており[2][3]、その他の産地もインドオーストラリアブラジルなどに偏在している。日本は世界需要の約半分を占めるが、大部分を中国からの輸入品である風化花崗岩に頼っている。しかし、中国からの輸出が減少しており、世界的な需給バランスのひっぱくが懸念されている(詳細後述)。

ただし中国は埋蔵量の3割であるため、新しい供給先を開発中である。

最近の研究で日本国内のマンガン鉱床に花崗岩を上回る割合で希土類元素が含有されていることが判明し、現状打破の新たな資源として注目されている。また、火力発電所等の集塵機で回収される石炭石油にも含まれているため、今後の利用促進が期待される。また、海底のマンガン団塊コバルトクラスト熱水鉱床等の海洋資源も供給源として期待される。

米国ではカリフォルニアの鉱床で希土類元素採掘が再開される見込みがある[2]

ジスプロシウム (Dy) やテルビウム (Tb) の重希土類は、中国南部のイオン吸着型鉱床と呼ばれる特殊な風化鉱床でしか生産されていない[4][5]。今後、需要が増加すると見られるハイブリッドカー電気自動車用の高出力モーターの磁石にジスプロシウム (Dy) とテルビウム (Tb) の添加で保磁力が高まるため、不足が懸念される。重希土類の産生が期待されるカナダのThor Lake鉱山の稼動開始が2010–2011年であり、少なくともそれまでは、中国に依存する体制が続く[1]

[編集] 中国依存問題

中国では1980年代から、貴重な外貨獲得源として希土類鉱山の採掘に力を注いできた。しかし、これにより希土類市場は供給過剰となり、価格が急落した。価格低下によりコスト面で採算が釣り合わなくなった中国以外の希土類鉱山は次々と閉山し、中国依存の状態が起こった。特に、テルビウムやジスプロシウムなどの重希土類の生産は、中国一国に限られている。

しかし中国政府は、2006年に国土資源部から、希土類を対象とした資源保護計画を発表し、2010年7月には、商務部が輸出枠大幅削減方針を発表するなど、資源保護政策に転換しつつある。[6]それにともない、希土類の価格が上昇している。例えば、ジスプロシウムの価格は2005年には1kgあたり50ドル(米国ドル)程度であったが、2010年初頭には1kgあたり160ドル、2010年6月末時点で400ドルに高騰している[7]

さらに2010年9月から11月、通関上の手続きを表向きの理由に、日本への希土類輸出が全て止まるという異常な状態が突如発生した。これは、同時期に起こった尖閣諸島における漁船船長拿捕の報復が主な理由だとみられている[8]。これにより、希土類生産を中国に過度に依存することは、市場の安定性にとって危険であることが、世界的に認識された。

これに対し、以下の4点が主な対応策である。

  1. 他鉱山の開発
    前述の通り、以前に閉山した希土類鉱山や、新たな鉱山を開発することにより、中国依存を脱却する取組みが、2010年以降世界各地で顕在化している。
  2. 資源備蓄への取組み
    価格が安い時に国家が計画的に金属資源を国家が備蓄する手段があるが、それを希土類にも適用する対策がある。既に実施している国もあり、日本でも希土類以外の金属資源は国家備蓄は行われていた[9]。また、2010年7月経済産業省令の改正が行われ、希土類を含めたレアメタルの備蓄も制度上可能となっている。
  3. 脱希土類技術の開発
    希土類の利用を減らす、あるいは必要としない代替技術の開発を推進し、希土類の供給リスクを低減する対策がある。日本では、文部科学省[10]や経済産業省[11]が政府として取組み、企業でも電気自動車用高性能磁石、二次電池などで脱希土類技術の開発が推進されている[12]
  4. リサイクル技術の開発
    生産過程や、商品として捨てられる廃棄物から、希土類を抽出し再利用する対策がある。日本では希土類を含め、レアメタルの新たな国内資源、都市鉱山として認識されている。しかし、都市鉱山からのリサイクルにかかるコストは、鉱山から生産される価格を大幅に上回るため、現在のところ経済性は乏しい。また、日本国内でリサイクルする場合、廃液などの環境コストが大きいため、実施は容易ではない。[9][12]

[編集] 脚注

[ヘルプ]
  1. ^ a b c 日経エレクトロニクス 2007年8月27日号「レア・アース」
  2. ^ a b 中国、レアアースの輸出禁止を検討 2009年08月27日11時19分閲覧、WIRED VISION
  3. ^ “中国のレアアース対日禁輸 「在庫増」「代替」 産業界は冷静”. サンケイビズ. (2010年9月25日). http://www.sankeibiz.jp/business/news/100925/bsc1009250503003-n1.htm 2011年2月15日閲覧。 
  4. ^ 産業技術総合研究所 レアメタルタスクフォース編 『レアメタル技術開発で供給不安に備える』 工業調査会、2007年、65-88頁。
  5. ^ 足立 吟也 監修 『希土類の材料技術ハンドブック 基礎技術・合成・デバイス製作・評価から資源まで』 NTS、2008年、ISBN 978-4-86043-194-5
  6. ^ 『レアアースに手を焼く中国』 日経エコ・ジャパン、2010年12月3日-オンライン資料、2010年12月9日閲覧。
  7. ^ 『EV用モーターにかかる中国という暗雲』 日経エコ・ジャパン、2010年8月5日-オンライン資料、2010年12月9日閲覧
  8. ^ 「中国、レアアース対日輸出停止 尖閣問題で外交圧力か」 『朝日新聞』 2010年9月24日-オンライン記事、2011年2月10日閲覧。
  9. ^ a b 『誰も知らないレアアースの現実』 日経エコ・ジャパン、2010年11月15日-オンライン資料、2010年12月9日閲覧。
  10. ^ 「元素戦略プロジェクト」 文部科学省実施事業-オンライン情報例、2010年12月9日閲覧。
  11. ^ 「希少金属代替材料開発プロジェクト」 経済産業省実施事業-オンライン情報例(PDFファイル)、2010年12月9日閲覧。
  12. ^ a b 大西孝弘 『レアアース、代替技術は有望』 日経ビジネス、2010年11月15日-オンライン資料2010年12月9日閲覧。

[編集] 関連項目

  • レアメタル
  • 白雲鉱区: 世界最大の希土類元素鉱床・バイヤンオボ鉱床がある、中国内蒙古自治区包頭市市轄区
  • キドカラー日立製作所が製造・販売していたカラーテレビの商標・愛称。輝度を上げるためにブラウン管内部の蛍光体材料に希土類が用いられたことから「輝度」と「希土」をかけて「キドカラー」と名付けられた。
  • 日本希土類学会
  • キリンジ:アルバム「Buoyency」に収録されている曲「都市鉱山」の歌詞でタンタル、イッテルビウム等の鉱物名がそのまま羅列されている。


[編集] 外部リンク


個人用ツール
名前空間

変種
操作
案内
ヘルプ
ツールボックス
他の言語