富士登山
ウオッちず Google Map 富士山の位置
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[編集] 概要
現在使用されている主な登山道の入り口には、静岡県側では「富士宮口」・「須走口」・「御殿場口」、山梨県側では「吉田口」がある。
一般的な富士登山の期間は、山開きの7月1日から8月下旬までである。この期間はほぼ全ての山小屋が営業しているため利便性が高く、登山客が集中する。しかしながら、7月1日に山開きとは言っても、残雪の多い年は7月中旬までは登山道に雪が残っていることがあるため、登山ルートによっては7月中旬まで通行止めになることがある。
富士山は日本最高峰であるため、「日本最高峰」という表面的な観念・言葉に惹かれて、(そもそも登山経験もなく、標高が高い山に登山することがどのようなリスクを伴うことなのか知らぬまま)安易に登ろうと試みる人も多い(それが遭難の多さにつながっている。後述)。また遠くから見た富士山の姿に惹かれて、富士山の山中に入っても美しいだろう、などと空想して引き寄せられる人もいる。だが、登山者が登山の途中に登山道から見る富士山は、遠方から見る美しいフォルムの富士山とは全然異なっている。そこは火山灰と溶岩の荒れ果てた殺伐とした世界である。「富士山は遠くから眺めるための山であり、登るための山ではない」といったことも言われることがある。
自動車等でたどりつける主要な登山口の標高が(5合目あたりと)すでにかなりの高度にあり、そこから歩きはじめる場合、残りの標高差は富士山自体の標高の約半分程度に減っている。よって、普段から持久力を養っている人で、高高度の低酸素にも向いている身体をしていて、しっかり睡眠がとってあり、夜明けごろに出発し、偶然にも気候条件などにも恵まれ、事故も起こさない、などの好条件がすべて揃えば、日帰り登山も一応は可能ではあり、それを実際に行えている人も一定の割合存在している。だが、(初心者からベテランまで含めて)概して言えば、日帰りで山頂往復できるつもりで出発しても、途中で富士山特有の天候の急変、体調不良、小さな事故など何らかのトラブルに逢い、日帰りが困難になる確率は高いので、それなりの心がまえと準備は必要である。
また富士山登山というのは、持久力不足の人々、高高度向きでない人(高山病になりやすい体質の人)などはたとえ時間をかけても登りつづけることが困難な状況に陥ることになり、途中で引き返す人が多い登山でもある。
富士登山について、江戸時代から「富士山に 登らない馬鹿、二度登る馬鹿」という言葉がある。これは富士登山の厳しさを表した言葉で、疲労・寒さ・高山病・悪天候などのつらい経験する者も多く、「二度と登りたくない」と思う者も少なからず存在している
富士山登山では、宿泊をせず徹夜の夜間登山をする登山者や、暗くなってから山小屋に到着する登山者が多いなど、(他の山に比べて)無理・無謀な登山が行われている比率が高い。
富士山登山では毎年多数の人々が遭難しており、毎年のように幾人もの死者がでている。例えば、2011年は7月1日の開山から8月18日までの約1ヵ月半の間に34件(34人)の遭難があった[1]。ここ数年増加傾向にあり、2005年の17人から3倍以上になった[1]。
富士山登山での遭難者は(登山全般と比べると)40歳未満の者の割合が高い[1]。2009年には40歳未満が全遭難者の48%を占めた[1]。若者に多い登山初心者が、いきなり富士山に挑んで遭難するケースが多いのではないか、と関西大総合情報学部の青山千彰教授は指摘した[1]。遭難者の中には、(登山としてはとても非常識なことなのだが)なんと、かさばる枕や毛布を持参するなどという非常識なことをした者がいたという[1]。また、登頂から下山まで、わずかな休憩しか挟まずに一気に歩き、体力を尽きさせてしまった者[1]、つまり登山での歩行のしかたの基本も知らずに自滅してしまった者もいたという。富士登山は実際には危険が高いのだが、危険が高いという認識が足りない人が多い[1]。富士山登山というのは、(普段から持久力をつけるためのトレーニングなどを行って)しっかり体力を養ってから行うものである[1]。体力もつけないままに富士山登山に挑戦すべきではない。最近の登山ブームの影響もあり、登山経験がろくに無いまま富士山にいきなり挑戦して遭難する者たちが多く、救助活動などで地元の警察に負荷をかけており、治安維持活動に悪影響を及ぼしている[1]。本来は、登山未経験者はいきなり富士登山を行うべきではなく、そういう人はまずは初心者向けの低山(例えば、登山の入門書などで「初心者向け」などと紹介されている、標高千メートル以下の山)から始めて、段階的に標高の高い山の登山に慣れるべきなのである。
遭難のうち報道されるのは一部にすぎないが、富士での遭難のうち報道された件について情報をまとめているサイトも存在している[3]。
上記のように、(他の名山に比べて)登山者から見るとあまり美しい山ではなく、また独立峰の高山であることにともなう様々な過酷な環境・危険がともなう山ではあるが、それでもそうした富士山に魅了され何度も登る人たちもいる。毎年1度登ることにしている人もおり、少数ではあるが毎年何度も登る人もいる。
現在は多くの外国人登山者の訪れる富士山であるが、記録が残る初の外国人登頂者はイギリス初代日本総領事ラザフォード・オールコック一行で、1860年9月11日(万延元年7月27日)のことであった。富士宮口新五合目にはその登山記念碑が建てられている。
[編集] 気候
山頂は最暖月の8月でも平均気温がわずか6℃しかなく[3]、ケッペンの気候区分では最暖月平均気温が0℃以上10℃未満のツンドラ気候に分類され、平均風速は7月 8.5m/s、8月 7.3m/sであり、(真夏でも)体感気温は0℃以下となる。従って、平地では30℃を超えていても、防寒着が必要である。
富士山は独立峰であるため、低気圧が日本付近を通過中は、猛烈な強風となる。(台風なみの)風速20m/s以上となることも多く、強風の間の富士登山は非常に危険である。
また、富士山にガスがかかることは多い。気象庁発表の、富士山山頂のアメダスデータで湿度100%となっているときは、富士山山頂でガスがかかっていることが多い。2006年度は、平均湿度が90%以上となった日の数は、7月は24回、8月は9回である。ガスが原因で道を誤り遭難したケースもある。また、ガスがかかっていると御来光も見られない。
[編集] 高山病
他の日本の山の登山に比べると、富士登山というのは高山病に陥る人の割合が非常に高い登山である。
富士山頂の平均気圧は638ヘクトパスカルであり、これは海面の2/3以下である。高度が増すと、血中酸素濃度不足などが原因で、頭痛・吐気・眠気(あくび)などの症状が現れる。統計的に見て、富士山では七合目付近から高山病症状を訴える人が増え始め、高度が上がるにつれその率がどんどん高くなる。また、人によっては五合目でも高山病の症状が出る場合がある。高山病を予防するには(理論的に言えば)色々な方法で血中酸素濃度が低下しないようにすればよいのだが、山中ではなかなか理屈どおりにゆかないことが多い。山のベテランで高山慣れしている人ですら、富士山では(ちょっとした睡眠不足などがきっかけで)あっけなく高山病になってしまうことがある。根本的な治療は下山するほかない。よって、数名以上のグループで富士登山する場合は、かなりの確率でその中の誰かが高山病になってしまい進めなくなる、とあらかじめ想定しておき、そうなった場合にどのように対処するのか(全員が登るのを止めその高度の富士を楽しんで全員で下山するのか、それともグループを分割しある高度の小屋で留まるメンバーとさらに登り続けるメンバーを分けるのか、等々)、山中で慌てないよう、あらかじめある程度は考えておく必要がある。
詳細は「高山病」を参照
[編集] 混雑期
富士山のシーズン期は7月と8月であるが、日によって登山者数が大きく異なる。7月中旬~8月下旬の金土日祝は混雑期である。さらに、8月上旬~8月中旬は平日も混雑期である。
[編集] 登山ルート
吉田口・富士宮口・須走口・御殿場口が4大登山口である。[4]それぞれの登山口(自動車道の終点)は全て「五合目」あるいは「新五合目」を名乗っているが、各登山口で五合目の標高が大きく異なる。例えば4つの登山口のうち最高標高の富士宮口の新五合目では約2400mであるが、御殿場口の新五合目は約1400mである。
| 色 | 登山口名 | 県 | 登り | 下り | 五合目(新五合目)の標高 | 山小屋の数 | 標準所要時間 | 車でのアクセス |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 富士宮口 | 静岡県 | 5.0 km | 5.0 km | 2,400m | 9(新五合目1・頂上1含む) | 登り5時間・下り2時間30分 | 県道152号・県道180号 | |
| 吉田口 | 山梨県 | 7.5 km | 7.6 km | 2,305m | 20軒+頂上に4軒 | 登り5時間30分・下り3時間 | 富士スバルライン | |
| 須走口 | 静岡県 | 7.8 km | 6.2 km | 2,000m | 13(新五合目3・頂上4含む)[5] | 登り7時間・下り3時間30分 | 県道150号 | |
| 御殿場口 | 静岡県 | 11.0 km | 8.5 km | 1,440m | 7(新五合目2・頂上1含む)[6] | 登り7時間30分・下り3時間 | 県道152号 |
上記の所要時間は目安であり、個人の体力や単独か団体かでも差が出る。また、混雑時(ご来光など)は渋滞でさらに時間がかかる。また、各登山口のルートを登りきった場所(お鉢巡りルートとの合流点)を○○口の「頂上」または「山頂」と呼んでいるが、これは富士山最高地点の剣ヶ峰とは異なる場所である。富士山は各登山口の「頂上」に到達すると登頂したことになるため、「頂上」で登山を完了し、最高標高地点までの登山を行わない登山者が多い。
剣ヶ峰への経路については、剣ヶ峰 (富士山)#剣ヶ峰への到達を参照
- 宝永登山(宝永遊歩道)
富士山の登山には、富士山頂上を目指す登山以外にも、宝永登山がある。宝永山は富士山最大の側火山で標高は2,693 mと富士山頂と比べると1083m低く、また比較的短時間で登れるため、体力的に富士山登頂が不可能な場合の選択肢となる。
詳細は「宝永山」を参照
[編集] 富士宮口
- 利点
- 各登山道の中で歩行距離が最も短い。新五合目の標高が最も高い。砂地が少なく岩場が多いため滑りにくい。登山道頂上から最高標高地点剣ヶ峰までの距離が最も短いので、剣ヶ峰に行く場合は最も早く辿り着ける。名古屋・関西方面からのアクセスが良い。
- 難点
- 登りと下りが同じ道のため混雑しやすい。平均勾配が約29%と最も大きい。岩場が多いため下りでは膝に負担がかかる。登山道や山小屋からでは御来光が拝めない所が多いため、御来光を拝みたい時は日の出の時間に登頂が必要(時期や場所によっては山腹でご来光が拝めることもある)。南側のため晴れている日は日差しが強い。バスの本数が吉田口に比べると少ない。新五合目の駐車場の収容力が少なく(約500台)、新五合目から遠く離れた路側での駐車を強いられることもあるため、徒歩で新五合目に到達するだけで時間と体力を使うことがある。マイカー規制の無い時期の週末は、富士山スカイラインが大渋滞を起こすことがある。近年は残雪が多いため7月中旬まで登山道が開通しない年が多い。
- 主なアクセス
- 東海道新幹線・新富士駅下車し登山バス(新富士駅から約2時間15分)
- 東海道新幹線・三島駅下車し登山バス(三島駅から約2時間5分)
- 東海道新幹線・静岡駅からJR東海道本線に乗り、富士駅で身延線に乗り換え、富士宮駅下車し登山バス(富士宮駅から約1時間20分)
[編集] 吉田口
六合目で古くからの吉田口登山道と、本八合目で須走口と合流。頂上には久須志神社がある。
なお、五合目駐車場のあるところを富士スバルライン五合目と呼ぶ。吉田口五合目は佐藤小屋のある場所(吉田口六合目の直下)である。登山標識も、富士スバルライン五合目と吉田口五合目で区別しているので注意が必要。また、以前は特に富士スバルライン五合目からのルートは「河口湖口」の別名があったが、現在は名称の統一により現地の標識等では全く使われていないので注意が必要である。
- 利点
- 特に関東方面からアクセスしやすく、バスの本数も最も多い。登山者が最も多いので、登りルートには山小屋も非常に多く休憩や、天候の急変時の避難がしやすい。御来光がどの地点でも拝める。9月になっても営業している山小屋が多い。人が非常に多いので緊急時に救援を周囲に求めやすい。積極的に除雪作業が行われるため、山開きの7月1日に登山道が開通することが多い唯一の登山ルートである。5合目から7合目付近まで乗馬が利用できるため、かなり高価ではあるが予算に余裕がある人は体力を使わずに済む。
- 難点
- 最も登山者が多いために最も混雑する登山口でもある。御来光時には八合目から上が渋滞になりやすく、渋滞により御来光時に頂上にたどり着けない場合も多い。七合目付近に急な岩場がある。歩行距離が富士宮口や須走口より長く、登山道頂上から剣ヶ峰までの距離が最も長いため、剣ヶ峰まで登山を行う際は体力を消費しやすく高山病にかかる危険性も高い。下山時に八合目の「下江戸屋分岐」で誤って須走口に降りてしまうケースが多発している。下山道には山小屋が一軒しかなく、ルートも登山路に比べて遠回りとなる。下山時、最後に緩い登りがある。山小屋が非常に多いため、人工物である山小屋が連続して見えるため、自然の雰囲気が削がれる。マイカー規制の無い時期の週末は、富士山有料道路が大渋滞を起こすことがある。乗馬用の馬がいるため、7合目付近までは登山道に馬糞が多く落ちている。
- 主なアクセス
- 新宿駅からJR中央線、大月駅で富士急行線に乗り換え、河口湖駅下車し登山バス(河口湖駅から約50分)
- 新宿駅西口から富士山五合目行き中央高速バス(新宿駅西口から約2時間40分)
[編集] 須走口
- 利点
- 人が少なく、本八合目での合流点までは落ち着いて登れる。樹林帯があり木々を観察できる。下山道に砂走りがある。新六合目から上なら御来光が見られる。もともと登山者が少なかったためマイカー規制がなかったが、近年は登山者が増加し、平成19年度から社会実験としてマイカー規制が行われることとなった[7]。
- 難点
- 新五合目の標高が少し低いので、富士宮口や吉田口より体力がいる。砂走りは石が多く、御殿場口の大砂走りほどは軽快に下れない。混雑期に砂走りすると前を歩く人の砂埃が舞い上がってひどい。本八合目から上が吉田口と一本化するため、山頂御来光目的の場合は渋滞しやすい。新五合目のすぐ上の樹木帯は夜間は真っ暗闇になり、登山路と下山路の分岐が多いため、夜間にここを通ると迷いやすい。マイカーでないとアクセスしにくい。新五合目駐車場は駐車可能台数が多くないので、混雑期は満車になりやすい。
- 主なアクセス
- 新宿駅から小田急小田原線、新松田駅下車し登山バス(新松田駅から約1時間30分)
- 新宿駅から小田急小田原線で新松田駅下車、徒歩3分松田駅でJR御殿場線に乗り、御殿場駅下車し登山バス(御殿場駅から約1時間)。なお新宿から御殿場まで直通で、新松田(松田)駅での乗り換え不要な特急「あさぎり」を使うと便利。
[編集] 御殿場口
- 利点
- 人が非常に少ないので落ち着いて登れる。新五合目の標高が低いので高度に身体を順応しやすい。大砂走りがあり快適に下山できるため、下山道として人気がある。新5合目の駐車場は、登山者の割に大きなものがあり、駐車場が満車になることはほとんどない。御来光がどの地点でも拝める。山小屋の宿泊者数が他のルートの小屋と比較して少ないため、詰め込まれることが少なく、食事のお替りが出来る小屋もある。
- 難点
- 新五合目の標高が極めて低いため体力が必要。滑りやすい砂礫の部分が多く登りづらい。景色が単調。山小屋が少なく休憩しにくく、トイレも少ない。特に新五合目から7合目まで全く山小屋・トイレ・売店がないため、天候の急変時や体調の悪化時に山小屋に避難できない。砂礫道のため道がわかりにくいところがあり特に夜間は道に迷いやすい。バスが少なくアクセスしにくい。
- 主なアクセス
- 新宿駅から小田急小田原線で新松田駅下車、徒歩3分松田駅でJR御殿場線に乗り、御殿場駅下車し登山バス(御殿場駅から約1時間)。なお新宿から御殿場まで直通で、新松田(松田)駅での乗り換え不要な特急「あさぎり」を使うと便利。
- なお、富士宮口の新六合目と御殿場口の本六合目の間には宝永火口経由の連絡路があり、これを使うと御殿場口の登山口である新五合目の標高の低さという難点を回避できる。詳細は皇太子の富士登山を参照。
- 2000年に御殿場市が行った調査では、新五合目を通過した登下山者数は、登山者数460人であったのに対し下山者数が18911人と、圧倒的に下山路としての利用が多いことがわかる。
[編集] ルートごとの登山者数
環境省の集計によると、2010年の8合目における登山者数の合計は約32万1千人となっている。但し静岡県側に関しては、登山日数が10日ほど短い。
| 登山道 | 登山者数 | 割合 | 最大カウント数 | カウント日 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 吉田口 | 184,320人 | 57% | 6,692人 | 7月31日 | |
| 富士宮口 | 78,614人 | 24% | 3,501人 | 7月31日 | |
| 須走口 | 48,196人 | 15% | 2,441人 | 7月18日 | |
| 御殿場口 | 9,845人 | 3% | 627人 | 8月1日 | 7月5日10時頃から19日13時頃までのデータは欠損 |
8合目付近に設置された赤外線カウンターによる登山者数調査(平成22年7月1日から8月31日まで)[8]
[編集] 山小屋
富士山では、日帰り登山や徹夜登山する者も多いものの、山頂で御来光を見るために山小屋に宿泊する登山客もまた多い。また、売店やトイレの利用、天候急変時等で山小屋の存在意義は大きい。
[編集] 営業時期
7月1日から8月下旬までが多いが、吉田口の山小屋は9月に営業している山小屋もある。五合目の山小屋は観光客にも対応するために、営業期間が長い。一部10月半ばまで営業する山小屋もある。
- 吉田口 - 富士山吉田口旅館組合
- 富士宮口 - 富士山表富士宮口登山組合
- 須走口 - 静岡県小山町の富士山山小屋案内
- 御殿場口 - 御殿場市観光協会の富士山情報
[編集] 設備
多くの山小屋は就寝スペースと食事スペース及びトイレ程度の設備しかない。外来用の食堂や専用の売店スペースを持つところもあるが、その数は少なく、宿泊スペースの一角を、昼間などは食堂や売店スペースに転用しているところが多い。水が貴重なため、宿泊者用の風呂はなく、トイレも水の節約のため、流水の手洗い所が無い。ただし、残雪に近い山小屋の中には、手洗い水だけは豊富な小屋もあるものの、宿泊者用の風呂は燃料輸送の問題から設置されない。
[編集] 営業時間
24時間営業のところもあるが、多くの山小屋は宿泊客が就寝中の21時から翌日1時くらいまでは閉める。御殿場口の山小屋は消灯の21時頃から朝5時ごろまでは売店の営業を行わない。須走口の山小屋も夜間は売店の営業を行わないところが多い。山頂の山小屋は19時頃には消灯し、3時頃の起床となるのが一般的である。もちろん小屋ごとに営業休止時間は異なり、営業休止時間後の到着となる場合は宿泊や売店等の利用ができない。夜間登山で軽食や売店の利用を考えている場合などは、事前の確認が必要である。ただし、小屋の営業期間ならトイレの利用は24時間可能である。
[編集] 商品・軽食
ペットボトル飲料(500円程度)、ビール(600円程度)など。他の山域の山小屋に比べ200円程度価格が高い。その他、携帯酸素缶や菓子類を扱っているところもある。五合目や山頂の山小屋は記念品の販売に力を入れているほか、木製の金剛杖を扱っている。多くの山小屋では1回200円程度で、木製の金剛杖に登山記念の焼印を押印する。水場が全くない山のためペットボトル飲料の販売は貴重である。ラーメンやうどん、カレーなどの軽食を800円~1000円で食べられる山小屋も幾つかある。
[編集] 宿泊
予約が基本。他の山の山小屋は全ての宿泊希望者を受け入れるところが多いが、富士山はもともと夜間登山が盛んなこともあり、現在では定員以上になった場合や営業時間外の到着の場合は断るところが多い。もちろん営業時間中に到着したうえで余裕がある場合は、予約無しでも宿泊できるが、週末などは注意が必要である。ただし、天候の急変により激しい雷雨や暴風雨になった場合などは例外である。料金は素泊まり一泊5,000円~5,500円、2食付で6,500円~7,500円が多い。なお、ルートごとに宿泊料金がほぼ統一されており、登山口が同じなら標高に関係なく同一宿泊料金であることが多い。また、土日は1,000円程度上乗せするところもある。寝室は雑魚寝。定員宿泊でも混雑時には1枚の布団で3人が寝る小屋もあるが、1枚の布団に1人だけが定員の小屋もある。御殿場口の山小屋は比較的空いていることが多く、中には定員の半分以下しか予約を取らないところさえある。夕食はレトルトのカレーが一般的だが、中には手作りカレー食べ放題や豚汁食べ放題の小屋もある。朝食は炊き込みご飯やおにぎりなどの弁当やうどんなどの麺類が多いが、ハムエッグなど手の込んだ朝食を出す小屋もある。お代わりはご飯が残っている限り可能なところが多いが、あまりたくさんのご飯を炊いていないために、お代わりは「早飯」ができる宿泊者が有利となる。お代わり不可の山小屋や、お代わりのご飯がなくなった後で、食事の量が少ないと考える場合は別料金で麺類などを注文するしかない。水が不足しているために、食器は洗浄不要の使い捨てタイプのものが多い。
[編集] トイレ
以前はほとんど垂れ流しで、山の斜面に垂れ流された排出物の汚さが、富士山の世界自然遺産不推薦の原因の一つとなった。静岡県側を中心に、県や地元NPOにより早くからバイオトイレの試験的な導入が、ごく一部ではあるが行われていたが、前述の世界遺産登録問題があってから、山梨県側でも環境庁・環境省の指導により改築が進められた。2006年度でおがくず式、カキ殻式、燃焼式などの環境配慮型の便所に全ての山小屋が改築し終えた。
臭気の問題から、小屋から少し離れて建てられていることが多く、深夜や悪天候時、強風時などの利用は少々面倒である。また、山小屋の営業期間外は山小屋付属のトイレも閉鎖されるので、7月初めや8月の終わり以降に登山を予定している場合は確認が必要である。
[編集] 皇太子の富士登山
2008年8月に、登山を趣味とする皇太子徳仁親王が20年ぶりに富士登山を行っている。前回は悪天候により途中で引き返したが、今回は天候にも恵まれ山頂まで到達できた。富士宮口五合目から登山を開始し、混雑する富士宮口登山道から新六合目で分かれて宝永山に到着後に御殿場口登山道に入り[9]、御殿場口7.9合目の山小屋(赤岩八合館)に1泊した後、翌朝無事登頂とお鉢巡りを行った。下山は御殿場口の大砂走り経由で、そのまま御殿場口新五合目まで下り、昼までに下山を完了した。[10]
登頂の際、富士山頂で見た日の出を見て詩を詠んでいる。
「雲の上(へ)に太陽の光はいできたり富士の山はだ赤く照らせり」
御殿場市観光協会では皇太子の辿ったルートを、登山口となる富士宮口新五合目の標高の高さと、御殿場口の静けさや下山ルートの大砂走りなどの魅力を兼ね備えた「プリンスルート」[4]として宣伝を始めた。マイカー登山者の利便性を考慮し、2009年シーズン以降、富士宮口のマイカー規制時に二合目の水ヶ塚公園駐車場と御殿場口新五合目の間にシャトルバスを運転している。また、このルートを使う登山者の増加に伴い、休館状態だった御殿場口の山小屋「わらじ館」が2011年から本格的に営業を再開するなど、登山者の流れに変化が現れ始めている。
[編集] その他
[編集] 御来光と影富士
御来光とは高山で拝む日の出のことである。阿弥陀如来等、仏陀の出現に日の出を例えた表現である。富士山では御来光を頂上で見ようという人が多く、日の出直前の頂上付近は渋滞で動かなくなることもある。もちろん山小屋の前や登山道の途中でご来光を迎える人もいる。影富士とは富士山自身の影が日没前や日の出の直後に、太陽の反対側の雲海や地表に投影することである。多くの登山道からは日没時の影富士を見ることができる。山頂からは日の出直後の影富士を見ることができる地点がある。
[編集] 案内標識
従来の問題として、山梨県側の登山道の呼び方が「吉田口」と「河口湖口」の2種類が混用されており混乱を招いていることや、標識が統一されておらず分かりにくかったうえ、不必要な場所に標識が乱立しており必要な場所の標識の認識の妨げとなっていた。また、外国語の表記が少なく増加し続ける外国人登山者に不親切であった。そのため2009年の山開きに間に合うよう案内標識の統一化が図られ標識の乱立も改善された。その結果、山梨県側の登山道については「吉田口」(ただし五合目は「富士スバルライン五合目」)の名称で統一されることとなり、標識の整理から標識の枚数が大きく減少することとなった。この新標識は基本的に日本語・英語・中国語・韓国語の計4ヶ国語で表記されており、外国人にもわかりやすくなった。[11]また、各登山道で標識の色も統一された。
[編集] 9月登山
9月に入ると営業している山小屋がかなり少なくなり、宿泊・休憩・飲料水・食事・トイレの提供の問題により、登山者は徐々に少なくなる。9月最初の日曜日を過ぎると富士宮口と御殿場口の七合目以上の山小屋及び須走口の多くの山小屋は閉鎖される。吉田口の山小屋については、近年は、9月上旬まで大多数の山小屋が営業し、9月中旬まで営業するところが増えているが、それでも山頂の山小屋の多くが8月末で閉鎖される上に、気温もさらに低下するため、9月の登山は注意が必要である。吉田口は9月でも登れるのに対して、富士宮口は9月上旬に登山道が閉鎖され、登山するには静岡県富士宮警察署などに登山計画書の提出が必要となる。
[編集] お鉢巡り
お鉢巡りとは、富士山山頂の火口を一周することである。富士山は山頂(登山道を登りきった場所)まで登って下山する人が多く、お鉢巡りする人はあまり多くない。実行する者に時間と体力があり、天候に恵まれていないと実行は難しい。残雪が多い年はお鉢巡りルートに雪があるため、途中までしか行けないことがある。
詳細は「お鉢巡り」を参照
[編集] 登山証明
富士山頂郵便局では、登山証明書と富士山登頂証の2種類を販売している。なお、富士山頂郵便局で投函された郵便物には基本的には風景印が押印される。
[編集] 金剛杖と焼印
近年は軽量な金属製のストックで登山する人が増えているが、富士山では昔ながらの木製の金剛杖で登山する人も多い。この金剛杖には日章旗や旭日旗などをつけて販売されることも多いほか、各山小屋では記念の焼印を有料で行っている。また、富士宮市の富士山本宮浅間大社の本宮や、山頂の奥宮では、金剛杖への刻印を有料で行っている。
[編集] 携帯電話
登山シーズン中は、NTTドコモ、au、ソフトバンクモバイル、全ての携帯電話キャリアが五合目~山頂で通話やメールが使える[要出典]。ただし、山頂の火口側(auは旧富士山レーダーに基地局がある為、使用可能)など、麓が見えない場所の一部では電波が極めて弱く、圏外になることがある。山小屋ではコンセントの数は限られており、コンセントの借用は原則認められないためコンセントでの充電は行えない。予備の充電電池や電池式の充電器を用意したり、夜間や長時間不使用時、電池消耗の激しくなる圏外地帯では電源をオフにするなどの対策が必要である。
[編集] 物資の運搬
五合目~山頂の物資の輸送はブルドーザーにより行われている。他山域で行われているヘリコプターでの輸送よりも、悪天候に強いというメリットがあるが、多くの車両の購入費用や保守費用の他、ブルドーザー道の保守費用がかかるため、ヘリコプター輸送よりも商品に対する価格上乗せ額が大きくなる。吉田口ではブルドーザー道は下山道としても利用されている。
[編集] 清掃登山
富士山の登山道や周辺には非常にゴミが多かったことなどが一因となり、富士山の世界遺産登録が実現に至っていない。[12] 富士山美化のために、NPOや企業などが毎年清掃登山活動を行っている。アルピニストの野口健も一部の活動に参加し、活動参加者が増えるとともに登山道周辺のゴミは減ってきている。[13]
[編集] 脚注
- ^ a b c d e f g h i j 東京新聞 山のニュース、[静岡]富士山軽視の遭難多発 1カ月半で34件、過去最悪ペース [1] 。左のアーカイブ [2]
- ^ “基準点成果等閲覧サービス”. 国土地理院. 2011年6月24日閲覧。二等三角点の標高は3,775.63m。
- ^ 富士山年・月ごとの値(気象庁)
- ^ 古来は他にも須山口、精進口(『山と高原地図 富士・富士五湖』昭文社、1990年、ISBN 4-398-75018-5)、船津口など多く存在していた。
- ^ 下山路(砂払五合)の小屋は宿泊できない
- ^ かつては営業期間が極端に短い小屋やそのシーズンは全く営業しない小屋もあったが「プリンスルート」の整備後すべての現存する山小屋が長期営業を再開している。なお新五合目の小屋のうち1軒は宿泊できない
- ^ ふじあざみライン(須走口)マイカー規制社会実験のお知らせ(静岡県建設部)
- ^ 環境省南関東地区自然保護事務所
- ^ 登山者が少なく警備が簡単で、多くの登山者に影響を与えることの少ないため
- ^ 産経ニュース 2008.8.8 08:26
- ^ 富士山:もう迷わない 乱立の標識、統一(毎日新聞)2009年6月25日
- ^ 『富士山が世界遺産になる日』小田全宏(著)、PHP研究所、2006年、ISBN 4-569-64733-2
- ^ 『富士山を汚すのは誰か』野口健(著)、角川書店、2008年、ISBN 978-4-04-710142-5
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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