実物貨幣
実物貨幣(じつぶつかへい)とは、素材そのものが商品としての価値をもっている貨幣のこと。商品貨幣(しょうひんかへい)とも呼ばれている。反対に素材自体にほとんど商品としての価値を持たない貨幣を名目貨幣と呼ぶ。
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概要 [編集]
それぞれの社会が持つ歴史や環境などの諸条件によって異なるものの、その社会にとって重要な生産物や高価な外来品である財貨が、最古の貨幣となった。代表的なものとしては、貝や穀物、家畜、布類などがその代表である。後に社会が発展していくと、高価でかつ商品としての価値が簡単には失われない貴金属(金や銀、極東では銅)に固定されるようになった。こうした一連の貨幣を指して実物貨幣と称する。
実物貨幣は素材の品質上の同一性、質的な分割・結合の容易、比較的少量でも大きな交換価値を持つこと、耐久性の高さ、運搬の容易さが条件とされ、特に最後の貴金属によって作られた一定の小塊は実物貨幣の条件としてもっとも優れたものであった。
貨幣学説のうち、通貨の価値の根拠をその素材である商品の価値に由来すると考える学説を商品学説あるいは金属学説と称する。この説によれば、社会的分業と私的所有を基礎として成立する商品経済社会では、そこでの生産物は全て商品とされてその価値を計られ、その評価によって定められた一定の交換比率によって交換が行われないとされている。実物貨幣として用いられた素材も例外ではなく、元は商品経済社会に存在する数多くの商品の中から、諸条件によって選び出されたものが貨幣として用いられたに過ぎない。従って、貨幣は実物貨幣(商品貨幣)である必要があり、名目貨幣は本来の貨幣の章票もしくは代替物・代用物の域を出ないものとされている。
主な商品貨幣論 [編集]
『群像』2010年11月号の柄谷行人、島田雅彦、奥泉光らの鼎談では、ソ連末期にルーブルが通用せずに煙草やパンストが貨幣になったことや、戦時ドイツではコーヒーがそうだったことや、遊牧民の間では羊が貨幣でありゴールドさえ受け取らないこと等が、例示されている[2]。
副島隆彦も、「ドル覇権の崩壊」なる著書において、実物資産の裏づけのない名目貨幣を批判し、金本位制、ブレトンウッズ体制の次は、コモディティ・バスケット通貨体制(ゴールドを中心に、石油、レアメタル、穀物などの基本物質を一つの”セット商品”と見なして、それを商品貨幣として名目貨幣とリンクさせる体制)が来ると書いた。上記の鼎談で柄谷も同様の予想をしている[3]。
参考文献 [編集]
- 浜野俊一郎「実物貨幣・信用貨幣」(『社会科学大事典 8』鹿島研究所出版会、1975年 ISBN 978-4-306-09159-7)