守護国界章

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守護国界章』(しゅごこっかいしょう)とは、弘仁9年(818年)に天台宗最澄が、法相宗徳一の『中辺義鏡』に対し反論した書である。

享保18年刊の最澄『守護国界章』の版本(部分)

概要[編集]

『守護国界章』は全9巻からなり、徳一・最澄論争を代表する著作の一つである。徳一『中辺義鏡』は現存していないが、本書がほぼ全文を引用しながら逐一反論しているものと思われる。主な内容は以下のとおり。

  • 法相宗の三時教判批判(巻上之上「謗法者の浅狭なる三時教を弾ずる章・第一」)
  • 天台宗の教判への批判に対する反論(巻上之上「麁食者、謬りて四教を破するを弾ずる章・第二」〜巻上之下「麁食者、謬りて五味を破するを弾ずる章・第九」)
  • 止観をめぐる論争(巻上之下「麁食者、謬りて止観を破するを弾ずる章・第十」〜「謗法者の大小交雑せる止観を弾ずる章・第十三」)
  • 法華玄義』への批判に対する反論(巻中之上「麁食者、謬りて妙法を破するを弾ずる章の第一」〜巻中之中「麁食者の経体を駁するの章の第八」)
  • 法華文句』への批判に対する反論(巻中之中「如来の使、伝ふる所の法華正宗の文を助照する章の第九」〜巻中之下「麁食者、示す所の三事の体を駮する章の第二十六」)
  • 仏性一乗をめぐる論争(巻下之上「麁食者、謬りて一切の有情皆悉く成仏するを破するを弾ずる章の第一」〜巻下之下「謗法者、法華を謗する詞を弾ずる章の第十二」)

目次[編集]

  • 巻上之上
    • 謗法者の浅狭なる三時教を弾ずる章・第一
    • 麁食者、謬りて四教を破するを弾ずる章・第二
    • 麁食者、謬りて八教を破するを弾ずる章・第三
  • 巻上之中
    • 麁食者、謬りて不定教を破するを弾ずる章・第四
    • 麁食者、謬りて四教所詮の理を破するを弾ずる章・第五
    • 麁食者、謬りて四教の位を破するを弾ずる章・第六
    • 麁食者、謬りて三教の不同を破するを弾ずる章・第七
  • 巻上之下
    • 麁食者、謬りて総じて四教を破するを弾ずる章・第八
    • 麁食者、謬りて五味を破するを弾ずる章・第九
    • 麁食者、謬りて止観を破するを弾ずる章・第十
    • 麁食者、謬りて絶待止観を破するを弾ずる章・第十一
    • 麁食者、謬りて止観の三徳の相摂を破するを弾ずる章・第十二
    • 謗法者の大小交雑せる止観を弾ずる章・第十三
  • 巻中之上
    • 麁食者、謬りて妙法を破するを弾ずる章の第一
    • 如来の使、伝ふる所の迹の十妙を助照する章の第二
    • 如来の使、伝ふる所の本の十妙を助照する章の第三
    • 麁食者の妙法を駁する章の第四
  • 巻中之中
    • 麁食者、謬りて蓮華を破するを弾ずる章の第五
    • 麁食者、示す所の蓮華を駁する章の第六
    • 如来の使、伝ふる所の経体を助照する章の第七
    • 麁食者の経体を駁するの章の第八
    • 如来の使、伝ふる所の法華正宗の文を助照する章の第九
    • 麁食者、法華の正宗を駁する章の第十
    • 如来の使、伝ふる所の経首の如是を助照する章の第十一
    • 謗法者、偽訳の如是を弾ずる章の第十二
    • 法華同聞菩薩の歎徳を助照する章の第十三
    • 麁食者示す所の法華の歎徳を駁するの章の第十四
  • 巻中之下
    • 謗法者の浅八大義を弾ずる章の第十五
    • 如来の使、伝ふる所の八大義を助照する章の第十六
    • 如来の使、伝ふる所の仏教の七善を助照する章の第十七
    • 謗法者の浅仏教の十徳を弾ずる章の第十八
    • 如来の使、伝ふる所の方便品の文句の短尽を助照する章の第二十
    • 如来の使、伝ふる所の一大事を助照する章の第二十一
    • 麁食者、示す所の一大事を駮する章の第二十二
    • 如来の使、伝ふる所の無二無三を助照する章の第二十三
    • 麁食者、示す所の無二無三を駮する章の第二十四
    • 如来の使、伝ふる所の三車の体を助照する章の第二十五
    • 麁食者、示す所の三事の体を駮する章の第二十六
  • 巻下之上
    • 麁食者、謬りて一切の有情皆悉く成仏するを破するを弾ずる章の第一
    • 麁食者、謬りて、定性の二乗、無余に入りて後回心をすると破するを弾ずる章の第二
  • 巻下之中
    • 麁食者、謬りて報仏の智常を破するを弾ずる章の第三
    • 真如所縁縁種子を救ふ章の第四
    • 有漏より無漏を生ずる諍を評する章の第五
    • 偽りて教の前後を破ナるを弾ずる章の第六
    • 偽りて教の権実を破ナるを弾ずる章の第七
    • 五種姓の謬を決する章の第八
    • 謬りて小乗畢覚無種性の有情を建立するを決する章の第九
    • 無種性有情の相を示すを讃ずる章の第十
    • 華厳家の一乗の義を救ふ章の第十一
  • 巻下之下
    • 謗法者、法華を謗する詞を弾ずる章の第十二

なお、最澄の著作とされる『法華去惑』は、『守護国界章』中巻と大同小異であり、草稿ではないかと考えられている。

テキスト[編集]

参考文献[編集]