宇野功芳

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宇野 功芳(うの こうほう、1930年5月9日 - )は、東京都生まれの音楽評論家指揮者国立音楽大学声楽科卒。父は漫談家牧野周一。なお、功芳は筆名であり、本名は宇野功(うの いさお)。以前は、宇野功芳を「うの いさお」と読み筆名としていた。

目次

[編集] 略歴

旧制東京府立第四中学校在籍中に学制改革に遭い、東京都立第四高等学校(現在の東京都立戸山高等学校)を卒業。上智大学英文科に入学するも中退し、6年かかって国立音楽大学声楽科に入学。

この間、体を壊し、肺結核で闘病生活を送った宇野は、敬愛する指揮者ブルーノ・ワルター(もっとも、本人は「ワルターは一つの憧れであり、その美しさを賞でつつも絶えず物足りない想いをしていたのは事実である」「抵抗はむしろワルターやクナッパーツブッシュにあった」等と述べている)に手紙を出したところ、ブロマイド付きの返事を得る。これがきっかけとなり、『ディスク』において「ブルーノ・ワルターの芸術」を執筆、評論家としてデビューする。

しかし大学在学時より合唱指揮者を目指していた本人にとって、評論を生業にすることは当初、不本意だと感じていたようである(近著『宇野功芳の「クラシックの聴き方」』では、学生の頃から取り組み続けている合唱への愛を繰り返し表明する一方、原稿を書くのは「あまり好きじゃない」と告白している)。ともあれ数年後には『レコード芸術』(音楽之友社)とのつきあいがはじまり、やがて数多くの雑誌で執筆活動を行うようになる。1963年ごろ『合唱界』(東京音楽社)誌上で日下部吉彦佐々金治とともに鼎談による演奏批評を行っていたこともある。

[編集] 文筆

後述のように、独自の評論観を特異な筆致で断定的に書き上げる批評には熱心な信奉者があった反面、敬遠する反応もあった。1989年講談社現代新書から出版した『クラシックの名曲・名盤』がベストセラーとなったことで、知名度と人気が高まり、宇野の独断的な批評も一般の認知を得る形となった。

文筆を行う一方で、成蹊大学帝京大学跡見学園女子大学の合唱団の常任指揮を勤める。1960年代からKTU女声合唱団(KTUは小松川高校定時制宇野の略)を主宰。1978年からはオーケストラの指揮も始め、日本大学管弦楽団を皮切りに新星日本交響楽団アンサンブルSAKURA大阪フィルハーモニー交響楽団東京フィルハーモニー交響楽団などと共演した。合唱、管弦楽の両分野で多くのレコード、CDが発売されている。

音楽面以外の趣味としては四柱推命がある。

[編集] 評論の特徴

宇野の評論は、対象の実質を直感的感覚的な言葉で把握することに優れ、地に足のついた文章で理解が容易であるのを特徴としている。全ての評論家と同様に、(しばしば大きな)嗜好の偏りはあっても、専門用語を振り回さずに演奏の良し悪しを伝えようとする真摯な素直さがある。クラシック音楽の録音の大海原に、一定の信頼度がおける羅針盤を提供したことで、日本の多くのクラシックファンにとって大きな恩人である。

しばしば「主観的」で「歯切れのいい」文章だと指摘される。本人の主張によれば、常に自分だったらどう演奏するかを頭に置き、演奏家の視点を反映させて評論しているから、「主観的」になるのは当然だということである(例えば、宇野功芳へのインタビューを参照)。

「歯切れのいい」と感じられる要因は、断定的な言い切り表現(「○○だ」「○○である」)が多用されることと、悪いと感じた演奏に対する遠慮のない辛口表現(「○○のブルックナーなど聴くほうがわるい、知らなかったとは言ってほしくない」「あの顔を見れば、およそどのような指揮をする人であるかは一目瞭然」など)が強く印象に残るためであろう。一方、文章中には反語表現や推量による婉曲な断定(「○○といえよう」)も適度に差し挟まれ、単調感を巧みに避けている。このほか「切れば血の出るような」「光彩陸離たる」「コクのある響き」「いのちを賭けた遊び」など、彼特有の言い回しは多い。

そのアクの強い文章は、しばしばクラシックファンの揶揄やパロディの対象となる。『クラシック悪魔の辞典』(1999年鈴木淳史著・洋泉社)には「ウノ語」という項目があり、「神が、宇野功芳だけに使用をお許しになったといわれる、独創性に彩られた最高級の紋切言葉。」と解説されている。

人気や巷間の評判などにかかわらず、良くないと思った演奏や演奏家はバッサリ切り捨てる(稿料をもらっているであろうディスクのライナーノートでさえ一切ほめずに酷評していることがある=クレンペラー指揮、ブルックナー交響曲8番など。敬愛するワルターの演奏でも駄目なものはバッサリ酷評している)が、優れていると思った演奏は、ふだん酷評ばかりしている演奏家のものであってもしっかりと褒めている(カラヤンR・シュトラウス4つの最後の歌」など)。

また、「音楽評論家である以上、好き嫌いではなく良し悪しを語らなければならない。」とも述べる。

唯我独尊的なイメージを想起させる文体の裏にある、真面目でかつ実直な評論姿勢が宇野の人気の一因であろう。

[編集] 評論家としての功績

日本におけるクラシック音楽需要を語る上で、宇野の影響は無視できない。たとえば日本では長年、色物的な扱いに甘んじていた指揮者、ハンス・クナッパーツブッシュを風潮にとらわれず長年にわたり一貫して評価したことは、クナッパーツブッシュのディスクがレコード店の店頭から消え去るのを防ぐ一助となった。

また宇野が著書『名演奏のクラシック』(1990年、講談社現代新書)で褒めちぎったピアニストエリック・ハイドシェックは、それ以後日本での演奏機会が激増し、廃盤になっていた数多くのディスクも再発売された。ハイドシェックの来日公演の際、宇野は指揮者として、ピアノ協奏曲(「皇帝」と「K595」)の伴奏も務めている。

また日本人指揮者では朝比奈隆を支持し続け、20世紀末には「朝比奈ブーム」とも言うべき社会現象を巻き起こした。それを通じて、朝比奈が得意としていたブルックナーをクラシックファンに浸透させていった業績も見落とすことができない。

他にはオットー・クレンペラー(宇野が擁護した頃は、実は日本での現役盤が極めて少なかった)やロヴロ・フォン・マタチッチエフゲニー・ムラヴィンスキーなど、いわゆる「スケールの大きな演奏をする演奏家」「個性的な演奏をする演奏家」を擁護している。

ハイドシェック賛美に関しては、黒田恭一や渡辺和彦らが直接的ではないものの、宇野の賛美を遠まわし的に嘲笑する発言をしている(特に渡辺は、「日本の一部でのみ支持者がいるハイドシェック…」と暗に宇野の存在をにおわす発言をしている)。最近では5年前に発売されたバルシャイの指揮によるショスタコーヴィチ交響曲全集の評価の遅さが指摘されている。

宇野に評価されない・されにくい演奏家のパターンは主に2通りある。一つは純粋に評価されない演奏家。もう一つは、「録音だけでその人の芸術を決め付けるべきではない」と実演は評価する演奏家である。なかなか来日しなかったムラヴィンスキーがそうであったし、アルトゥーロ・トスカニーニなど日本では録音でしかその人の芸術を知りえず、なおかつその録音が必ずしもその人の芸術を正しく伝えていない(と宇野が感じた)演奏家などが対象となっている。

[編集] 指揮者として

評論家としての知名度の高さゆえに、指揮活動が隠れてしまっている面は否めないが、本人は、合唱指揮者が本職だと主張している(『宇野功芳の「クラシックの聴き方」』)。宇野が指揮したレコード、CDは、プライベート盤を含めて延べ50枚以上に及ぶが、合唱の分野はそのうちの約7割を占める。彼は、合唱の中でもとりわけ女声合唱に魅了され、モーツァルトの「戴冠ミサ曲」や「魔笛」、日本の昔の歌謡曲などを女声合唱曲に編曲し、日本女声合唱団などで演奏している。

オーケストラ指揮者としての宇野は、レパートリーを古典派ロマン派に絞っている。とりわけモーツァルト、ベートーヴェンブルックナーが中心になっている。 アマチュア団体のオーケストラSAKURAを指揮したCDをいくつか発売しているが、ベートーヴェンの演奏に強化ティンパニを使用するなど、その解釈は奇天烈なものである。一般の演奏者からは「これは解釈ではなく冒涜だ」と忌み嫌われたりもするが、一方では熱狂的な信者も存在したりする。

[編集] 著作

  • 『たてしな日記』(音楽出版社/1969 → 帰徳書房/1974 → 学習研究社/2003)
  • 『ブルーノ・ワルター レコードによる演奏の歩み』(音楽之友社/1972;1979改訂)
  • 『モーツァルトとブルックナー』(帰徳書房/1973;1977改訂 → 学習研究社/2002)
  • 『名曲とともに』(帰徳書房/1974;1977改訂 → 学習研究社/2002)
  • 『オーヴェルニュの歌 宇野功芳随筆集』(帰徳書房/1976 → 学習研究社/2002)
  • フルトヴェングラーの名盤 全レコード批評』(芸術現代社/1977)
  • 『音楽には神も悪魔もいる 宇野功芳の世界』(芸術現代社/1981)
  • 『僕の選んだベートーヴェンの名盤』(音楽之友社/1982)
  • 『オーケストラのたのしみ 僕の名盤聴きくらべ』(共同通信社/1983;1990改訂)
  • 『クラシックの名曲・名盤』(講談社現代新書/1989;1996新版)
  • 『名演奏のクラシック』(講談社現代新書/1990)
  • 『交響曲の名曲・名盤』(講談社現代新書/1991)
  • 『協奏曲の名曲・名盤』(講談社現代新書/1994)
  • 『名指揮者ワルターの名盤駄盤 全盤レコード番号・CD番号付き』(講談社+α文庫 /1995)
  • 『フルトヴェングラーの全名演名盤』(講談社+α文庫/1998)
  • 『魂に響く音楽』(音楽之友社/1999)
  • 宇野功芳編『宇野功芳編集長の本 音から音楽へ』(音楽之友社/1999)
  • 宇野功芳、中野雄、福島章恭『クラシックCDの名盤』(文春新書/1999)
  • 宇野功芳、中野雄、福島章恭『クラシックCDの名盤 演奏家編』(文春新書/2000)
  • 『宇野功芳のクラシック名曲名盤総集版』(講談社/2001)
  • 『宇野功芳の白熱CD談義ウィーン・フィルハーモニー』(ブックマン社/2002)
  • 『指揮者・朝比奈隆』(河出書房新社/2002)
  • 『わが魂のクラシック』(青弓社/2003)
  • 宇野功芳ほか『クラシック人生の100枚 異論・反論vs返答付』(音楽之友社/2003)
  • 『いいたい芳題』(学習研究社/2004)
  • 宇野功芳企画・編集『フルトヴェングラー 没後50周年記念』(学習研究社/2005)
  • 『モーツァルト 奇跡の音楽を聴く』(ブックマン社/2006)