宇宙の便所

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国際宇宙ステーションのズヴェズダモジュールの便所

宇宙の便所(うちゅうのべんじょ、英語:space toiletあるいはzero gravity toilet(無重力便所))は、無重量環境において利用することが可能な便所である。 重量が存在しないため、液体と固体の収集と貯留には空気流が用いられる。廃棄物を流すのに使用された空気はキャビンに戻されるため、臭気を抑え、バクテリアを除去するためにあらかじめ濾過される。旧式のシステムにおいては、廃棄水は空間に放出され、そしてすべての固体は圧縮して貯蔵され着陸時に運び出される。より近代的なシステムは、バクテリアを死滅させるために固体廃棄物を真空圧力にさらし、これによって臭気問題を解消し病原体を死滅させる[1]

背景[編集]

人間が宇宙空間を旅行すると、重量が欠如しているせいで流体は人体のあちらこちらに一様に分布する。腎臓が流体の運動を感じ取り、そして人間は生理学的な反応から地球の出発から2時間以内に用便をすることを必要とされる。すなわち、宇宙の便所は宇宙飛行士がバックルをはずしたのち、シャトルの飛行において作動させる最初の機器である[2]

基本的なパーツ[編集]

スペース・シャトルの廃棄物収集システムの諸要素の図[3]

宇宙の便所には基本的なパーツが4つある:液体廃棄物真空チューブ、真空室、廃棄物貯蔵庫、および固体廃棄物収集バッグ。液体廃棄物真空チューブは、長さ2から3フィートのゴムまたはプラスチックのホースで、真空室に取り付けられていて、吸引力を提供するファンに通じている。チューブの端には、分離可能な尿の容器があり、これは男性用、女性用がそれぞれ存在する。男性の尿の容器は、幅が2から3インチ、深さ4インチのプラスチック製の漏斗である。男性宇宙飛行士は、2ないし3インチの距離から漏斗のなかに直接、排尿する。女性の漏斗は長円形で、そして幅は縁のところで2インチ×4インチである。漏斗の縁の近くには複数の小穴あるいは細長い裂け目があり、空気を逃がし過吸引をさけるようになっている。真空室は、深さ1フィートほど、幅6インチのシリンダーで、縁には廃棄物収集バッグと吸引力を提供するファンを取り付けることができるクリップがある。尿は、廃棄物貯蔵庫にポンプで送り込まれ貯蔵される。固体廃棄物の貯蔵バッグは気体だけが通過できる特殊繊維でつくられており、このために真空室の後ろにあるファンは、廃棄物をバッグの中にひきこむことができる。宇宙飛行士は用便を終えると、バッグをひねり、それを廃棄物貯蔵庫にいれる。尿および固体廃棄物の試料は、冷凍され、そして地上に持ち帰られ検査される。

デザイン[編集]

スペース・シャトル廃棄物収集システム[編集]

搭乗運用技術者クロード・ニコライアーが、STS-46の廃棄物処理システムの修理マニュアルをふたたび見る。

スペースシャトルで用いられた便所は、「廃棄物収集システム」(Waste Collection System (WCS))とよばれた。空気流にくわえて、飛行中の貯蔵庫に固体廃棄物を収めるため回転ファンも使用する。固体廃棄物は、シリンダー形のコンテナに収められ、それから廃棄物を乾燥させるために真空に曝露される[要出典]。液体廃棄物は、空間に放出される。STS-46ミッションのあいだに、ファンの1つが機能不全におちいり、そして乗組員クロード・ニコライアー(Claude Nicollier)は、飛行中修理(in-flight maintenance (IFM))をしなければならなかった。これ以前のSTS-3の8日目は完全に故障し、乗組員2人(ジャック・ルーズマ(Jack Lousma)とゴードン・フラートン(Gordon Fullerton))は、廃棄物廃棄と処理のために大便コンテナ装置(fecal containment device)(FCD)を使用しなければならなかった[要出典]

国際宇宙ステーション[編集]

国際宇宙ステーションには、便所が2つ、ズヴェズダトランクウィリティーにある[4]。これらはスペースシャトルの廃棄物収集システムと類似した、ファン駆動の吸引システムを使用している。液体廃棄物は、20リットルのコンテナに収集される。固体廃棄物は、それぞれ微小な穿孔のあるバッグに収集され、アルミニウムのコンテナに貯蔵される[5]。いっぱいになったコンテナは、処分のためプログレス補給船に運ばれる。追加の廃棄物衛生区画(Waste and Hygiene Compartment)は、2010年に打ち上げられたトランクウィリティーの一部である。2007年に、NASAは国内で開発するのではなく、すでに国際宇宙ステーションに搭載されていたものと類似した、ロシア製の便所を購入した[6]

2008年5月21日、ズヴェズダの7年間使用された気液分離ポンプが故障したが、固体廃棄物部分はなおも機能中であった。乗組員はさまざまなパーツを交換しようとしたが、しかし機能不全のパーツを修理することはできなかった。その間は、尿収集のために手動モードをつかった。乗組員にはほかに選択肢があった:ソユーズの輸送船の便所を使用すること(わずか数日間の使用のための容量しかない)、それとも必要に応じて尿収集バッグを使用すること[7]ディスカバリーが6月2日にSTS-124のミッションの一部として交換のポンプをステーションに運んだ[8][9][10]

ソビエトのミールの便所もまた、廃棄物収集システムと類似したシステムを使用した[11]

ソユーズは、軌道船内の空間を確保するために1967年の導入以来船内便所設備を有していたが、すべてのジェミニとアポロの宇宙船では、宇宙飛行士は、いわゆる「用足しチューブ」("relief tube")に排尿する必要があった。そこでは尿は空間に捨てられた(映画『アポロ13』の尿を捨てる場面が例になるだろう)が、いっぽう大便は特別にデザインされたバッグに収集された。スカイラブ宇宙ステーションは、1973年5月から1974年3月までNASAによって用いられたが、船内廃棄物収集システム設備を有していたが、これはシャトルの廃棄物収集システムの原型であっただけでなく、また船内シャワー設備を特長としてもいた。スカイラブの便所は、ロング・アイランドのフェアチャイルド・リパブリック会社(Fairchild Republic Corp.)によってデザインされ組み立てられたが、本来は尿、大便および嘔吐物を収集して地上に持ち帰り、宇宙飛行士のカルシウムのバランスを研究するための医療システムであった。これらの設備を備えてさえ、米ソ双方の宇宙飛行士は、排便の必要を最小化するために、打ち上げ前の腸洗浄と低残余食餌(Low residue diet)を採用した[12]。ソユーズの便所は、ミールからの帰還のミッションで用いられている[11]

NPP ズヴェズダは、ロシアの宇宙機器開発会社であり、そのなかには無重量便所もふくまれている。[13]

脚注[編集]

  1. ^ Gigapan: Space Shuttle Discovery Toilet”. National Geographic. National Geographic Society. 2013年9月8日閲覧。
  2. ^ Walker, Charles D. (2005年3月17日). Oral History 2 Transcript. インタビュアー:Ross-Nazzal, Jennifer. NASA Johnson Space Center Oral History Project. 
  3. ^ NASA (2001年11月15日). “Configuration Changes and Certification Status – Shuttle Urine Pre-treat Assembly”. STS-108 Flight Readiness Review. 2006年12月28日閲覧。
  4. ^ Cheryl L. Mansfield (2008年11月7日). “Station Prepares for Expanding Crew”. NASA. 2009年9月17日閲覧。
  5. ^ Lu, Ed (2003年9月8日). “HSF – International Space Station – "Greetings Earthling"”. 2006年12月21日閲覧。
  6. ^ Fareastgizmos.com (2007年7月6日). “19 million US Dollars for a space station toilet”. 2007年7月9日閲覧。
  7. ^ Space station struggles with balky toilet”. 2014年2月18日閲覧。
  8. ^ Astronauts To Fix Space Station Toilet”. 2008年9月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年2月18日閲覧。
  9. ^ ISS – Zvezda Bathroom Repairs and Shuttle Preps for Crew”. 2014年2月18日閲覧。
  10. ^ Space Station Toilet Parts Set for Liftoff”. 2014年2月18日閲覧。
  11. ^ a b Shuttleworth, Mark (2002年2月9日). “Toilet Training”. First African in Space. 2006年12月28日閲覧。
  12. ^ Low Residue Diet”. Buzzle.com (2011年12月15日). 2012年5月24日閲覧。
  13. ^ Assenisation Sanity Unit ASU-8A”. Zvezda-npp.ru. 2012年5月24日閲覧。

外部リンク[編集]