学童保育

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学童保育(がくどうほいく)とは、労働などの事情により昼間保護者が家庭にいない小学生の児童に対し、放課後や長期休暇中、保護者に代わって行う保育を指す。

現在は「放課後児童クラブ」と呼ばれることが多く、行政においても「放課後児童クラブ」という名称を使用することが一般的である。

概要[編集]

授業終了後(長期休暇中は午前中)から、指導員の保育の下で宿題をしたり、おやつを食べたり遊んだりして、仕事を終えた保護者が帰宅するまでの時間を過ごす。「放課後児童クラブ」、「学童クラブ」、「児童クラブ」、「○○小クラブ」、「子どもクラブ」、「児童ホーム」、「留守家庭児童会」、「児童育成会」など、さまざまな名称があるが、「学童保育」という名称が最も一般的である。

戦前より共働き家庭や一人親家庭の自主的な保育活動として始まったとされている。戦後の高度経済成長期における女性の社会進出に伴う共働き家庭の増加と核家族化の進行により、いわゆる「カギっ子」が増加したことから、学校外における児童の教育の受け皿としての需要が高まり、放課後児童健全育成事業(児童福祉法)を行う第二種社会福祉事業(社会福祉法)として法制化された。また、少子化対策として成立した次世代育成支援対策推進法による児童福祉法改正で、子育て支援事業の一つに位置付けられている。

厚生労働省のホームページ[1]には「児童福祉法第6条の3第2項の規定に基づき、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校に就学しているおおむね10歳未満の児童(放課後児童)に対し、授業の終了後に児童館等を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図るものです。」 と説明されている。

一方、児童福祉法第6条の3第2項の規定にある「おおむね10歳未満の児童」という文言は、10歳以上の児童を受け入れてはいけないという意味ではなく、10歳以上(小学校高学年)の児童を受け入れているクラブも多く見られる。なお、「放課後児童健全育成事業の実施について」(平成13年12月20日雇児育発第114号厚生労働省雇用均等・児童家庭局育成環境課長通知)において、小学校(盲・聾・養護学校も含む)に就学している4年生以上の児童の積極的な受け入れについて配慮するよう都道府県・指定都市・中核市の民生主管部(課長)あて通知されている。

学童保育の全国組織である全国学童保育連絡協議会は「共働き家庭や母子・父子家庭の小学生の子どもたちの毎日の放課後(学校休業日は一日)の生活を守る施設が学童保育です。学童保育に子どもたちが入所して安心して生活が送ることができることによって、親も仕事を続けられます。学童保育には親の働く権利と家族の生活を守るという役割もあります。」 [2]と定義している。

2013年の厚生労働省の調査では、学童保育所設置数は21,482、学童保育所登録児童数は889,205名となっている。(ちなみに同年の小学校設置数は21,460、児童数は6,676,920名である。)また、2013年の全国学童保育連絡協議会の調査では、全国1,718市町村において学童保育所を設置している市町村は1,612ある。

今後の課題としては、運営基準の明確化、財政基盤の安定化、指導員の身分の安定化、障害児の受け入れの増加等が挙げられる。また、待機児童問題も起きており、地方の実態に即した運営が求められており、行政に対して運営費補助等の拡大を求める声が上がっている。

年表[編集]

  • 1904年(明治37年) - 神戸市婦人奉仕会が市内2箇所で幼児と児童を引受ける
  • 1928年(昭和3年) - 大阪・石井記念愛染園が学童保護部を設置。主任は冨田象吉
  • 1940年代 - 日本各地で学童保育が始まる。
  • 1960年代 - 各地の学童保育関係者の組織化と、国や地方公共団体への制度化要求の活動が本格化する。
  • 1961年(昭和36年) - 東京都北区による地域運営委員会への補助開始
  • 1963年(昭和38年) - 渋谷区が「渋谷学童館」設置。これが公設公営学童保育の始まり
  • 1966年(昭和41年)4月 - 文部省が「留守家庭児童会育成事業補助要綱」による児童会育成事業を開始。
  • 1971年(昭和46年) - 「留守家庭児童会補助事業」は1971年度で打ち切られ、「校庭開放事業」に統合される。
  • 1974年(昭和49年) - 総理府「婦人問題総合調査報告書」にて、学童保育の制度化を提言。
  • 1976年(昭和51年)4月 - 厚生省が「都市児童健全育成事業実施要綱」により「児童育成クラブ」の設置・育成事業を開始。(これが事実上の学童保育への国庫補助の始まりと言われる。)
  • 1991年(平成3年) - 「都市児童健全育成事業実施要綱」は廃止され、「放課後児童対策事業実施要綱」による放課後児童対策事業に引き継がれる。
  • 1993年(平成5年) - 総合研究開発機構(NIRA)が学童保育の制度化を提言(『女性の社会参加と課題』第3回「母親の就労と子ども」、NIRA、1993)。また、子供の未来21プラン研究会報告(厚生省)は学童保育の法制化を提言。厚生省が学童保育の法制化の検討を開始する。
  • 1997年(平成9年)6月3日 - 「児童福祉法等の一部改正に関する法律」が成立し、学童保育が「放課後児童健全育成事業」として法制化される。
  • 1998年(平成10年)4月1日 - 学童保育は児童福祉法と社会福祉事業法に基づく第二種社会福祉事業に位置づけられ施行される。

設置と運営の形態[編集]

学童保育所には、公設公営、公設民営、民設民営がある。最も多いのが自治体による公設公営で、直営が45%、外郭団体に運営を委託しているものが11%になり、56%が広義の公設公営学童保育といえる。残り約43%が民営で、自治体が設置し社会福祉法人や運営委員会、法人等に運営を委託している公設民営、保護者や地域運営委員会、法人などが施設も用意する民設民営である。

民設民営では、運営委員会・父母会が自治体からの補助金を受けているところや、自治体に学童保育に関するサービスが無かったり所定の条件を満たすことができず公的補助無しで、父母会やその他の任意団体、個人が設置・運営しているところもある。また私立保育園等により設置・運営されているところもある。

なお、運営委員会とは、地域の役職者(学校長、町内会長、民生・児童委員等)、保護者代表、指導員等により構成された組織で、自治体からの支援を受ける条件として設置される。父母会とは保護者自身によって構成された組織の学童保育における一般的な名称である。いずれも、学童保育所の設置や運営を目的とした組織であるが、日常の運営は父母会が行っているところが多いと言われている。

学童保育の日常[編集]

宿題おやつ遊び等をして、帰宅までの時間を過ごす。遊びは、学童保育所内で遊んだり、庭や近所の公園で遊んだりと様々である。学校の休業日には揃って外出することもある。

複数の学年が揃った集団での生活なので、大まかながらも時間割と役割、規則がある。例えば、おやつの時間が決まっていたり、学童保育所内の掃除の係や、ランドセルロッカーに仕舞う等である。

この保育は指導員が行う。指導員は、帰って来る子ども達を迎え、次の行動へと促し、子どもと一緒に遊びつつ、塾や習い事のある子どもは送り出す。また、危険や体調に変わりが無いか目を配り、些細な程度であれば手当てを施し、必要に応じて保護者に連絡を入れる。そして、仕事を終え迎えに来た保護者に子どもを引き渡す。子ども達にとっては、保護者に次いで頼るべき者となるのが一般的である。

すなわち、保護者の代わりに指導員がおり兄弟姉妹の他に学年の異なる大勢の友達と時を過ごすという点を除き、一般の家庭と変わりない生活を過ごしている。塾等とは違い、構成している児童・指導員がずっと変わらない面で、児童の安心感も大きく、中には「小学校は嫌だけど学童(保育)には行きたい」とか、「家にいるより学童(保育)にいたい」という子もおり、第2の家庭としての役割も担っている場合もある。

キャンプクリスマスパーティー、餅つき等の行事が盛んに行われ、父母会が運営の主体となる学童保育所では、家族間の交流も活発なところが多い。

指導員[編集]

指導員になる際、現在のところ特別な資格の保持が法的に決められている訳ではないが、各施設の裁量により、保育士小学校教諭幼稚園教諭などの資格保持や児童指導員児童厚生員児童の遊びを指導する者)に関する資格取得・研修受講、子育ての経験や子供に関するボランティアの経験等を要件としている所が多い。

財政難や、季節ごとの児童数変動が大きい事(夏期休業後の退所など)を理由に嘱託パートなどの非正規雇用が多く、また正規職員であっても身分は未だ不安定である。

課題[編集]

  • 指導員の身分保証(国家資格化を求める声もある)
  • 運営指針などに全国的なスタンダードが存在しない
  • 公費支出を削減するため運営形態の変更などが行われている
  • 大都市を中心に遊び場提供事業との一体化が行われ始めた
  • 退職教員の雇用対策を兼ねた「放課後児童プラン」への融合が示唆されている
  • 待機児童数の削減
  • 学童保育への参加意欲が低い児童の存在(父母は行かせたいが、子どもは行きたくない)
  • 民営の場合は更に以下の点がある
    • 公の補助が少ないことから起こる財政難
    • 運営にかかわる父母の負担感
    • 不慣れな父母による未熟な運営
    • 児童の事故の補償

関連法等[編集]

児童福祉法[編集]

  • 第6条の3 第2項 この法律で、放課後児童健全育成事業とは、小学校に就学しているおおむね十歳未満の児童であつて、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、政令で定める基準に従い、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業をいう。
  • 第21条の9 市町村は、児童の健全な育成に資するため、その区域内において、放課後児童健全育成事業、子育て短期支援事業、乳児家庭全戸訪問事業、養育支援訪問事業、地域子育て支援拠点事業及び一時預かり事業並びに次に掲げる事業であつて主務省令で定めるもの(以下「子育て支援事業」という。)が着実に実施されるよう、必要な措置の実施に努めなければならない。
    1. 児童及びその保護者又はその他の者の居宅において保護者の児童の養育を支援する事業
    2. 保育所その他の施設において保護者の児童の養育を支援する事業
    3. 地域の児童の養育に関する各般の問題につき、保護者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行う事業
  • 第21条の10 市町村は、児童の健全な育成に資するため、地域の実情に応じた放課後児童健全育成事業を行うとともに、当該市町村以外の放課後児童健全育成事業を行う者との連携を図る等により、第六条の三第二項に規定する児童の放課後児童健全育成事業の利用の促進に努めなければならない。
  • 第34条の8 市町村、社会福祉法人その他の者は、社会福祉法 の定めるところにより、放課後児童健全育成事業を行うことができる。
  • 第49条 この法律で定めるもののほか、児童自立生活援助事業、放課後児童健全育成事業、乳児家庭全戸訪問事業、養育支援訪問事業、地域子育て支援拠点事業、一時預かり事業、小規模住居型児童養育事業及び家庭的保育事業並びに児童福祉施設の職員その他児童福祉施設に関し必要な事項は、命令で定める。
    第56条の6 第2項 児童自立生活援助事業又は放課後児童健全育成事業を行う者及び児童福祉施設の設置者は、その事業を行い、又はその施設を運営するに当たつては、相互に連携を図りつつ、児童及びその家庭からの相談に応ずることその他の地域の実情に応じた積極的な支援を行うように努めなければならない。

社会福祉法[編集]

(昭和26年月29日法律第45号)

  • 第2条 この法律において「社会福祉事業」とは、第一種社会福祉事業及び第二種社会福祉事業をいう。
    • 3 次に掲げる事業を第二種社会福祉事業とする。
      • 2 児童福祉法 に規定する児童居宅介護等事業、児童デイサービス事業、児童短期入所事業、障害児相談支援事業、児童自立生活援助事業、放課後児童健全育成事業又は子育て短期支援事業、同法 に規定する助産施設、保育所、児童厚生施設又は児童家庭支援センターを経営する事業及び児童の福祉の増進について相談に応ずる事業

児童の権利に関する条約[編集]

  • 第18条
    • 3 締約国は、父母が働いている児童が利用する資格を有する児童の養護のための役務の提供及び設備からその児童が便益を受ける権利を有することを確保するためのすべての適当な措置をとる。

厚生労働省通知[編集]

  • 「放課後児童健全育成事業の実施について」及び別紙「放課後児童健全育成事業実施要綱」(児発第294号厚生省児童家庭局長通知、平成10年4月9日)
  • 「放課後児童健全育成事業の実施について」(児環第26号厚生省児童家庭局育成環境課長通知、平成10年4月9日)
  • 「放課後児童健全育成事業の一層の推進について」(雇児育発第89号厚生労働省雇用均等・児童家庭局育成環境課長通知、平成13年9月3日)
  • 「放課後児童健全育成事業の対象児童について」(雇児育発第114号厚生労働省雇用均等・児童家庭局育成環境課長通知、平成13年12月20日)

参考資料[編集]

  • 厚生省大臣官房統計情報部 保健社会統計課 児童福祉統計係「平成9年地域児童福祉事業等調査」(平成9年10月1日現在)
  • 厚生労働省大臣官房統計情報部 社会統計課 児童福祉統計係「平成13年地域児童福祉事業等調査」(平成13年10月1日現在)
  • 全国学童保育連絡協議会「2003年学童保育数調査の報告」(2003年5月1日現在)

注釈[編集]

  1. ^ 放課後児童健全育成事業について
  2. ^ 全国学童保育連絡協議会

関連項目[編集]

外部リンク[編集]