学士(教育学)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

学士(教育学)(がくし きょういくがく)は、学士学位の一つ。

概要[編集]

英語ではB.A. in EducationないしBachelor of Educationと訳されることが一般的である。同じ教育学系統の学位に修士(教育学)博士(教育学)及び専門職学位として教職修士(専門職)がある。旧制度では教育学士と称し、学位ではなく称号として位置づけられていた。現在、教育学の学士号としては代表的な学位である[1]

日本では、四年制大学教育学部を卒業するか、大学等で所定の単位を取得した後、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構で学位審査に合格することで取得することができる[2]

大学ごとに異なるものの、原則として教育職員免許状の取得を必須とするものではない。よって、教員志望や免許の取得を希望する場合、大学に設置された教職課程等で必要な教科を履修する必要がある[3]

なお、教育学部を卒業し、当該学位を取得した場合、児童指導員任用資格が得られる[4]

さらに卒業後、厚生労働省令で定める施設において1年以上児童その他の者の福祉に関する相談、助言、指導その他の援助を行う業務に従事した者については児童福祉司任用資格が得られる[5]

また、教育学部在学中、厚生労働大臣の指定する科目の単位を取得し、卒業した場合には社会福祉主事任用資格が得られる[6]

各大学・授与機関の定める学位名称[編集]

1991年(平成3年)の学位制度改正によって、学士の称号は学位に移行。この制度改正に伴い、従前の制度で授与されていた教育学士の称号については学校教育法附則にて学位と看做されることとなった[注釈 1][7]。 また、この制度改正では従来、学士号を「○○学士」と専攻名称を先頭に冠した形式から「学士(○○)」と括弧書きで専攻分野を付記する形式に変更された。学位名称も従来、国が定めていたものが各大学や授与機関で自由に定められるようになった。その関係で学士号の種類も年々増加し全学問領域で700を超え[8]、教育学の学士号も教育課程や教育分野ごとに細分化、多様化しつつある[9]

教育学および関連分野の学士号の例(日本の例:その一部)[9]
教育学関係
教育学 教育 初等教育学 発達科学 臨床教育学
初等教育課程
教育学 教育 学校教育学 心理学
中等教育課程
教育学
中等教育学校課程
教育学 教育 学校教育学
養護学校課程
教育学 教育
体育学関係
体育学 スポーツ教育 スポーツ教育学 スポーツ学 武道学
障害児教育関係
教育学 教育 学校教育学
特別支援教育課程
教育学 教育 学校教育学
その他の教育学分野
教養 児童学 こども学 次世代教育学 こども教育学
子ども教育学 健康こども学 こども発達 人間関係学 情報教育
スポーツ健康政策学 行政社会 生涯教育 生涯教育学 特別支援教育学
福祉社会教育 発達科学 福祉社会教育 文学(幼児教育心理学) 幼児保育
社会科学分野
経営教育学

脚注[編集]

注釈[編集]

学校教育法

  1. ^ 附則 (平成三年四月二日法律第二三号) 抄 の4 改正前の学校教育法第六十三条第一項の規定による学士の称号は、改正後の学校教育法第六十八条の二第一項の規定による学士の学位とみなす。

出典[編集]

  1. ^ 日本学術会議編「学位に付記する専攻分野の名称の多様化について (PDF) 」参照。
  2. ^ なお、学位授与の方針、ディプロマポリシーとしては、「人間と社会を深く洞察しつつ、教育という営みを認識・理解し理論化しようとする強い指向性を持つことが重要である」「教育学の領域はきわめて多方面にわたるので、自らの関心を整理しつつ専門科目を選び取り、その結果が学修成果に十分に反映するようなかたちで学修することが求められる」としている。大学評価・学位授与機構編『新しい「学士への途 (PDF) 』(独立行政法人大学評価・学位授与機構、2013年) 57頁参照。
  3. ^ 但し、文教大学教育学部などのように全専修で、小学校の教員免許状の取得を必修としている事例もある。文教大学教育学部 取得免許参照。
  4. ^ 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和二十三年厚生省令第六十三号)第43条”. e-Gov (2017年3月31日). 2019年12月25日閲覧。 “2017年4月1日施行分” 」第43条では、児童指導員の任用資格として、「学校教育法 の規定による大学の学部で、社会福祉学、心理学、教育学若しくは社会学を専修する学科又はこれらに相当する課程を修めて卒業した者 」と規定している。
  5. ^ 児童福祉司について定める児童福祉法第13条では児童福祉司の要件として「学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づく大学又は旧大学令(大正7年勅令第388号)に基づく大学において、心理・教育・社会学に関する学部・学科を卒業した者であって、厚生労働省令で定める施設において1年以上児童その他の者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行う業務に従事した者」と規定している。
  6. ^ 厚生労働省「ページ9:社会福祉主事任用資格の取得方法」参照。
  7. ^ 電子政府ウェブサイト「学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)附則(平成三年四月二日法律第二三号)抄の4}”. e-Gov (2018年6月1日). 2019年12月25日閲覧。 “2019年4月1日施行分”」参照。
  8. ^ 「学士号急増、580種 受験生集めで次々に学部学科 文科省、ルール検討」『朝日新聞』2007年11月4日朝刊2社会34面、「「学士」乱立700種超す 感性デザイン、教育ファシリテーション...自由化で急増」『朝日新聞』2012年10月6日夕刊2社会10面、「ユニーク 難解「学士」増殖 700種 グローバル地域文化 映像身体...」『読売新聞』2013年7月31日東京夕刊1面参照。
  9. ^ a b 独立行政法人大学評価・学位授与機構編『H21年度 学位に付記する専攻分野の名称一覧(学士) (PDF) 』(独立行政法人大学評価・学位授与機構、2009年)から一部を掲載。

参照文献[編集]

行政資料等[編集]

報道資料[編集]

  • 『朝日新聞』2007年11月4日朝刊
  • 『朝日新聞』2012年10月6日夕刊
  • 『読売新聞』2013年7月31日東京夕刊

関連項目[編集]